<入れ替わり>その身体いただきます①~宅配ピザ~

繰り返しピザやデリバリーを注文する男ー

彼は、”物色”していたー。

食べ物ではない。
”入れ替わる相手”をー。

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「--ご苦労様です~」
ピザを受け取る男ー

宅配ピザを注文し、それをアパートの玄関で受け取った男は、
玄関の扉を閉めると同時に舌打ちをしたー。

「-むさくるしいおっさん…ハズレだな」
ピザを部屋の中に放り投げる男ー

既に、部屋にはピザの他に、美味しそうなパスタなども
並んでいるー。

全て、デリバリーの類で届けてもらったものだー。

三船 寛太(みふね かんた)-
彼は、物色していたー。

届く食べ物をーー

ではないー。

”注文したものを持ってくる人間”

いいやー
”身体”を、だー。

部屋の中にある、空容器を見つめる寛太ー。

そこには、怪しげな液体が先ほどまで入っていたー。
そして今、その液体は寛太の体内にあるー。

寛太が飲んだのはー
”入れ替わり薬”と呼ばれる薬だ。

彼は、人生を逆転させようとしていたー。

寛太の人生は、順調だったー。
学生時代まではー。

だがー
大学で一流企業に内定をもらったあとー
直前になってその企業の業績が急激に悪化、
内定取り消しになってしまってから運命は変わったー。

突然の内定取り消しに焦った寛太はー
とある中小企業の内定をもらうことには成功したー。

しかし、そこはとんでもないブラック企業で
寛太は、この上ない地獄を見た。
肉体も、精神もすり減らすぐらいに働かされ続け、
寛太は最後には、自宅で意識を失い、
病院に緊急搬送されてしまったのだ。

脳梗塞だったー。
幸い、命は助かったものの、
寛太の手と足には、しびれの後遺症が残っているー。

何をするにも、不自由な生活。
原因は、過度の睡眠不足とストレス、
不規則な生活ー
ブラック企業での酷使が原因だった。

しかもー
その企業は、後遺症で、細かい作業が出来なくなった寛太を
容赦なくリストラしたー

再就職も手足のしびれでままならず、
ようやく、とあるコンビニが寛太の現状に理解を示してくれて
アルバイトとして雇ってくれたものの、
大学生時代から付き合っていた彼女には、
突然、別れを告げられたー。

”魅力のなくなった”寛太を捨てて
別の男に乗り換えられてしまったのだー。

加えて、バイト先のコンビニでは、オーナーが倒れ、
その妻が代わりにオーナーとなった。
妻は、前のオーナーとは違い、勘太のことを
”無能”と罵倒するような
ヒステリックなおばさんだったー。

寛太の人生は、歪められていたー。

そんな中に出会ったのが”入れ替わり”薬ー。

寛太は、まだしびれる左手と左足を見つめながら
「--俺は、もうこんな人生こりごりだ…」と呟くー。

アルバイトで必死にお金を貯めてー
決して”安い”とは言えない入れ替わり薬を購入した寛太ー

しかし、
寛太には、既に恋人も友人もいないー。

”奪うべき相手”となるような身体がいないのだー

恋人には捨てられー
友人たちは、ブラック企業勤務時代に、疎遠となったー。

だからー
寛太は”物色”していたー

”己の新しい身体”をー。

「--はい、よろしくお願いします」
寛太は、ファミレスのデリバリーを注文するー。

「--俺の注文は、喰いものじゃなくて、女なんだけどな」
寛太は笑みを浮かべるー。

寛太は大学生時代まで、心優しい青年だったがー
突然の内定取り消し・中小企業での酷使・脳梗塞による後遺症・
中小企業のリストラ・彼女の裏切りー、と
あらゆる過酷な経験をしたことで、
すっかり歪んでしまっていたー。

街中で見ず知らずの人間と入れ替わることはできるー。
ただ、入れ替わりには”キス”をする必要があるためにー
なかなか街中でキスをするようなことは、難しいー。

夜道で一人歩きをしている女をー、
と、勘太は考えたこともあったがー
夜だと”顔や身体”をよく確認することはできないし、
逃げられてしまうリスクもあるー。

万が一、入れ替わった相手が”美人だと思って入れ替わったら
ブスだった”では、困ってしまうし、
何より、入れ替わり薬は高額で、失敗することはできないー

そんなことをあれこれ考えているうちに
たどり着いたのが”デリバリー”だったのだー

配達員とは、確実に1:1になることが出来る。
玄関先でのやり取りで、顔も声も身体も確認することが出来る。
当然、夜道とは違い、はっきりと相手のことを確認できる。

加えてー
他の人間にバレるリスクも低いー
入れ替わったあとにギャーギャー騒いだとしても、
”入れ替わる瞬間”さえ見られなければ
こちらの勝ちなのだー

そういった意味でー
恋人や友人がおらずー
異性と1:1になれるような機会のない寛太にとって、
出前の類は、最高の条件と言えた。

♪~~~

”お待たせいたしました~”
先程注文したファミレスの配達員がやってきたー

”女!”
寛太は笑みを浮かべて立ち上がるー

入れ替わり薬の効果は半日ー。
まだまだ物色する時間はあるー。

玄関の扉を開けるとー
そこにはー
声は可愛いが、ガリガリに痩せた中年女性がいたー

「--違う」
寛太は思わずつぶやいてしまったー

「え?」
配達員の女性が戸惑うー

「あ、いや、すみません。こちらの話です」
寛太はそう言うと、右手で注文を受け取り、
しびれる左手を気にしながらお会計を払い、
扉を閉めたー

「ハズレだ。あれは俺にふさわしい身体ではない」
注文したハンバーグライスを机に放り投げると、
次の出前を注文する寛太ー

”可愛い女は来ねぇのか?”
そんな風に思いながら
寿司、2件目のピザ、そば、カツ丼ー
あらゆるものを注文していくがー
寛太の理想の相手は見つからないー。

寛太は、半日間、理想の身体が見つからず
入れ替わることができないまま
入れ替わり薬の効果が終わってしまった場合はー
”自ら命を絶つ”決意をしていたー

入れ替わる相手が見つからなかったということは
自分は運にも見放されたということー

だから、運命を受け入れて、静かに命を絶とう、と
そう思っていたー

”お待たせしました~”

可愛らしい声ー
玄関を開けるとー
そこには、長い黒髪のー
可愛らしい女性が立っていたー

「はい、こちらがご注文のマルゲリータピザになります~!」
女子高生ーいや、女子大生だろうかー。
とにかく可愛いー

典型的な、美少女という感じだー

寛太は、ピザを受け取りながら、呟いたー

「きみに、決めた」
とー。

「--はい?」
配達員の女性が困惑するー。

寛太は有無を言わさずー
玄関先で、その女性にキスをしたーー

「---やった!」
一瞬にして入れ替わった寛太は
配達員の女性の身体でガッツポーズをするー

「-ありがとう、ございましたぁ~!」
微笑む女性配達員(寛太)-

そのまま猛ダッシュで
アパートの階段を駆け下りるー

「え……」
寛太になってしまった配達員の女性は
何が起きたのか分からないー

当たり前だー
一瞬にして入れ替わったのだからー

最初は、自分と寛太の立っている場所が
一瞬にして入れ替わったのかと思い、
困惑していた彼女だったが
自分が目の前にいてー
自分の姿をした何かが、アパートの階段を
駆け降りていく光景を見てー
さらに混乱したー

「え…え?」

「--へへへへへへ」
困惑している寛太になった女性を放置して、
ピザ屋のバイクに乗りこむ女性(寛太)-

「--あははははははははっ!!!え~っと、あそこの店のバイトか~」
可愛い声で笑いながら、女性(寛太)は笑みを浮かべるー

「バイクとか、超久しぶりじゃん!」
女性(寛太)は、バイクを走らせながら笑うー

脳梗塞で倒れてから、彼はバイクに乗ることも
出来ない状態になっていたのだ-

「ふふふ、はははははっ!
 やった!人生逆転だ!!やった!!!やったぁ!」
女性になった寛太は大声で笑いながらバイクを走らせたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ちょっと…なにこれ…」
寛太になってしまった配達員の女性は、
寛太の部屋で鏡を見つめながらー
唖然としていたー

「嘘…どういうこと…?」
左手と左足が、自由に動かないー。

寛太が脳梗塞で倒れたことがあることを知らない
女性は戸惑うー。

それにー
寛太は、全てを失ってからは
”自分の容姿のことなど、気にしても無駄
 どうせ世間は自分のことをゴミのように見つめる”
という諦めから、身なりにも全く気を
使わないようになっていてー
学生時代の寛太とはまるで別人のような容姿に
なってしまっていたー

「---………え……え???」
寛太(女性)は訳が分からず混乱しているー

自分がー
ピザを届けた先の家の住人に
なってしまっているー

それだけは分かるー
この男にキスをされてー
気づいたら、自分が笑いながら走り去っていっていてー

「---………え???え???なに…??え???」
寛太(女性)は理解不能なこの状況を
パニックになりそうな気持を必死に抑えながら、
考えたーー

「------------」

大学生の金村 須美(かなむら すみ)-。
ピザの宅配のバイトをしていて、
人当たりの良い性格の持ち主ー。
バイト先でも、大学でも
何かと周囲から頼りにされがちな性格の持ち主だー。

彼女はー
冷静だったー。
ここで、寛太になってしまった須美が
パニックにならなかったのは
一つの幸運であった…
と、言えるかもしれないー

寛太(須美)は、慌てて寛太のスマホを手にするー。
だが、寛太のスマホの暗証番号が分からないー

寛太(須美)は、自分が笑いながら逃げていったこと、
そして、自分が今、寛太の姿になってしまっていることから、
自分の身体の中には、寛太がいるのではないか、と考えたー

「--これって…もしかしてーー」
寛太(須美)は震えるー。

”入れ替わり”
そんなワードが頭に浮かんだー

須美自身は、特にそういうお話が好きだったりだとか、
そういうことはなかったものの、
”入れ替わり”を題材とした有名な映画などは
知っていたー。

「--で、、でも…現実でそんなこと…」
寛太(須美)は焦るー。

さすがにそんなこと、現実で起こるはずがー…

「---…!」
寛太(須美)は自分のズボンを見つめるー

何故かー
寛太のアレが勃起していて、
寛太(須美)は「ひっ!?」と悲鳴を上げて
尻餅をついてしまうー

「な、、なにこれ…え???」
寛太(須美)は困惑するー。

大きくなったそれをどうやって
コントロールすればいいのか分からないー

「ちょ、、ちょっと!?
 なにこれ??え?」

勃起したそれを無理やり抑えようとするもー
よくやり方が分からないー

「--…は、、早く…静まって!」

勃起したのをどうやって小さくすれば良いのか
分からないままー
寛太(須美)は、
バイト先のピザ店になんとか、連絡しないとー

と、そう考えたー

けれどー
寛太のスマホは、暗証番号が分からず、使うこともできないー。
そして、寛太の部屋には固定電話は存在しない様子だったー

”バイト先に直接行くしか…”
寛太(須美)はそう思いながら、笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ピザ店ー

須美になった寛太が笑みを浮かべながら
ピザ販売店に入って来るー

そしてーー

「-わたし、今日でやめまぁ~す!!!」
嬉しそうにそう宣言すると、
唖然とするピザ店のスタッフを無視して
須美(寛太)は笑みを浮かべながら
その場から立ち去って行ったー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

奪われてしまった身体…!
果たして、取り戻すことはできるのでしょうか~?

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
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    確かにデリバリーを利用するのは賢いやり方ですが、どうせならデリバリー孃を頼んだ方が簡単たったのではという気がしますね。

    それなら確実に女が来ますし、容姿もそれなりの確率が高いでしょう。
    そのことに気づいてなかったのか、それともそういう仕事をしてる女の体は嫌だったとかいう感じだったんですかね?

    なにはともあれ、ただ宅配に来ただけで体を奪われてしまって大変災難です。続きが楽しみです。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
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    コメントありがとうございます~!

    彼は、身体を奪って遊んで使い捨てる目的ではなく、
    奪った身体で人生そのものをやり直すことを目的としているので、
    ”自分がその相手として生きていきたい”と思えるような身体を
    探していました~!

    そのため、普通のデリバリーを注文し続けていた、という感じになりますネ~!

    ②で少し目的に触れるような部分もあるので
    楽しみにしていてくださいネ~!

  3. TSマニア より:

    SECRET: 0
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    須美はピザをデリバリーしにきたら

    寛太にカラダをデリバリーされたって感じですね!!

    続きが気になりますね!!

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
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    コメントありがとうございます~!

    そういう感じですネ~!笑

    続きもぜひお楽しみください~☆