”他人に変身する力”を持つ、
週刊詩記者の男。
彼は、”強引なやり方”で、
スキャンダルを作っていたー。
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週刊誌が大々的に人気女優の不倫を報道したー。
「---あ~あ、これで終わったな」
ニュースを見ながら週刊記者の鍋原 修司(なべはら しゅうじ)が
呟いたー。
”悪魔の週刊誌記者”と異名を持つ男ー
鍋原 修司ー。
30、40代の髭が特徴的な男だが、
彼に狙われた人物は、
”確実”にスキャンダルが報じられて、
最終的に失脚にまで追い込まれるー…
と、言われているー
テレビで釈明をする人気女優ー。
”記憶にない”を繰り返しているもののー
”明確な証拠”がそこにはあったー。
彼女が、不倫してラブホから出て来た場面を、
週刊誌が映像付きで直撃しておりー、
もはや言い逃れは出来ない状況ー
”記憶にありません!”と
彼女が叫べば叫ぶほどー
彼女は不利になっていき、徹底的に叩かれるー。
結果ー
彼女は、半月も持たずに、全てのレギュラー番組を失い、
何もかもを、失ったー
「ははは!愉快愉快!」
修司が笑うー。
修司が信頼する二人の後輩記者、
上野(うえの)と、石川(いしかわ)も共に笑うー。
「--鍋原さんに掛かれば、どんな人だって
社会から抹殺できますからね」
石川が言うと、
修司は「へへ、違いねぇ」とたばこを口に咥えながら
笑みを浮かべたー。
「--要は、俺に睨まれるようなことはするなってことよ
はははははは!」
笑う修司ー
彼にはー
”他人に変身する力”があったー。
どのようにしてそれを手に入れたのか、
修司は周囲の人間に、絶対に語ろうとはしなかったが、
とにかく彼には”他人に変身する力”が備わっていたー
人気女優の姿に変身して、笑みを浮かべる修司ー。
「--へへへへへ!たまんねぇぜ」
胸を触る修司ー。
修司の変身能力は、完璧だー。
先日、大々的に不倫を報じられた人気女優はー
”不倫”などしていなかったー。
だが、修司が、彼女に変身し、
修司の後輩である上野が、人気女優に変身して
適当な男を捕まえてラブホに入りー
上野が、ラブホから出て来る女優の姿をした修司を
撮影、スキャンダルを”捏造”したのだー。
当然、世間は、人気女優の不倫として騒ぎ始めるー。
そしてー
本人が”記憶にないです”
”不倫なんてしてません”と、どんなに叫んでもー
それはー
”嘘つき女”として余計に状況を悪化させるだけー。
「--ーーー」
フリーの記者でもある修司は、
現在はとある週刊誌の編集部にお世話になっているー
編集部は、修司が毎回スキャンダルを持ってくることから
修司に莫大な報酬を払い、信頼していたー
「へへへ…お前らも一生、俺についてこいよ!」
修司が笑うと、
後輩の上野と石川は嬉しそうに頷いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--この生意気なクソガキを潰す」
修司が、現在人気のアイドルグループのメンバーの一人・
「ミナ」が、写った写真を机に叩きつけるー
「あれ?ミナちゃんじゃないっすか」
上野が笑うー
「--おう、
最近こいつら、人気で調子に乗りすぎてるからよぉ~
インパクトのあるスキャンダルでぶっ潰してやろうと思ってな」
修司の言葉に、
石川が「楽しそうですね」と、笑みを浮かべるー。
「--そうだなぁ…未成年が、おっさんと飲み歩きー…
ってのは、インパクトがありそうだなぁ…」
ミナの写真を見つめながら
修司は煙草を、ミナの写真に押し付けて、片づけるー。
「-”いつも通り”やるぜ」
修司の言葉に、
上野と石川は頷いたー
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人気アイドル・ミナは
現役の女子高生アイドルー。
そんな彼女の
スキャンダルを作り出し、
社会から抹殺するー
修司は笑みを浮かべるー
編集部から膨大な報酬が入ることはもちろんだし、
修司にとって”気に入らないやつ”を抹殺することで、
修司にとっても、大きな達成感”と、なることは間違いないー。
「---手筈通りにな」
修司の言葉に、
上野がうなずくー
修司は、”他者変身”の力により、ターゲットの姿に変身ー
自ら”スキャンダル”を作り出す役目ー。
元々何か”潰せるようなネタ”が見つかるようなやつが相手で
あれば良いのだが、
ミナのように”探しても大きなスキャンダルがない”人間は
たくさん存在するー
それならー
”自分がスキャンダルを作ってしまえばいいー”
それが、修司の考えだったー。
上野は、カメラマン役ー。
ターゲットの姿に変身し、”わざと”スキャンダルになりそうな
行動をした修司を写真や映像に収める担当だー。
もう一人の石川は、”本人の確認”役ー。
修司が、ミナに変身している間に
”ミナが他の場所にいる”ということを証明できる状態であった場合、
”同じ時間にミナは2か所にいること”になってしまい、
スキャンダルにならない可能性があるし、
最悪”変身能力”に気づくやつまで出て来るかもしれないー
そのためー
”本物”の行動を確認する必要があるー
その役割を担うのが、石川だー。
”修司さん、ミナは今、自宅でひとりです。
この状況なら、誰にもアリバイは証明できません
えぇ、電話もしてませんー。
何か動きがあればお伝えします”
石川からの連絡を受けて、修司は笑みを浮かべるー
ミナ本人が今、自宅にいることを”実際に確認”している人間は
石川のみー
これから、修司がミナに変身して、おっさんを捕まえてエッチをしてもー
”本物のミナが自宅にいたことを証明する手段はない”
「--よし、行くぜ」
修司は笑みを浮かべるー
上野がうなずくー
修司がミナの姿に変身すると、
ミナの姿のまま、繁華街へと出ていくー
ミナの姿をした修司が、繁華街を
歩いているおじさんたちに声を掛けていくー
4人目に声を掛けたところでーー
”乗って来る”おじさんがいたー。
「-へへへへ、本当かい?」
おじさんが笑うー
「うん!わたし、欲求不満なの♡」
ミナの姿をした修司が、怪しい笑みを浮かべながら言うー。
”ククク…中身は俺のようないかついおっさんなのに…
人間は見た目しか見ないからなぁ”
ミナに変身した修司は笑みを浮かべると、
誘惑に乗ったおじさんと共に近くのホテルに
入っていったー。
「----」
上野は身を潜めながら、ホテルから修司が出て来るのを待つー。
しばらくして、ホテルから出て来たミナの姿をした修司と
誘惑されたおじさんが手をつないでいる写真を撮影するー。
「---」
ミナの姿をした修司が合図をするー
”まだ”
という合図だ。
”直撃”は、まだするなー
そういう、合図。
ミナの姿をした修司は、ミナにさらに傷をつけようと、
バーに入るー。
そして、その中でアルコールを注文して、飲み干したー
すっかり酔った状態で、バーから出て来るミナの姿をした修司ー。
そこをー
上野が直撃したー
「-ミナさんですよね?お酒、飲まれてたんですか?」
上野が映像を撮影しながら言うー。
ミナの姿をした修司は、わざとらしく上野を避けようとするー。
「ミナさんは、未成年のはずですが、
お酒、飲まれてたんですか?」
上野もわざとらしく言うー
「うっせぇな、プライベートぐらい好きにさせろよ」
ミナの姿をしたまま、修司が言い放つー
「---さっき、男の人とホテルに行かれてましたが
あれはご家族の方ですか?」
上野の言葉に、ミナの姿をした修司は
「-セックスきもちよかった~!」とわざとらしく大声で叫んだー
ミナの姿をした修司が合図をするー。
上野は、引きさがり、そのままミナの姿をした修司が
裏路地に入るー
そしてー
修司は変身を解除し、上野の前に戻って来たー
「へへ、最高の映像が取れましたよ」
上野の言葉に、
修司は「へへへへ、これでミナも終わりだぜ」と、笑みを浮かべたー
電話で石川に”確認”する修司ー。
ミナは自宅で台本を読んでおり、
誰とも会っておらず、連絡もしていないー
かつ、両親も仕事で遅く、帰宅していないー
石川は、そう修司に告げたー
つまりー
この時間に
”ミナが自宅にいたこと”を証明できる人間は、いないー
「ははははは!俺たちの勝利だ!
な~にが人気アイドルだ!
俺たちの手に掛かれば、スキャンダルなんて
お手のものなんだぜ!」
修司と上野は石川と合流し、
三人で祝杯をあげたー。
映像と写真を元に早速記事を作りー
ミナを、終わらせるー。
「へへへ…また報酬も手に入るし、
俺の嫌いなクソガキを芸能界から
追放できるし、言うことなしだぜ!
はははははっ!」
しかしー
翌日、
朝、目を覚ました修司は、スマホを見て
青ざめていたー。
「--な、なんだこれは…?」
後輩の石川からの電話ー。
”修司さん!やばいっすよ!”
その言葉に、
修司はネットを見るー
ネット上にー
修司がミナに変身する瞬間ー
そして、変身したままラブホに入ったり、
飲酒したりする場面が
全て流出していたー
”ミナを終わらせる”
嬉しそうに、そう宣言している修司の姿もー。
既にネット上では
”他人の姿に変身する週刊誌記者”として
大炎上しているー
「くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!どういうことなんだ!」
修司が怒りの形相で叫ぶー。
修司がミナに変身した瞬間がネット上に
流出しているということはー
石川か上野の仕業…しか、考えられないのだー。
そしてーー
「--テメェか!上野!」
修司がスマホを手に、怒鳴り声をあげるー。
修司の変身した瞬間を流出させたのはー
映像を記録するため、修司と一緒に行動していた上野だったー。
「--裏切者っ!貴様、俺が目にかけてやった恩を忘れたのかっ!」
怒りの形相で叫び続ける修司ー
”------俺は”
上野が電話の向こうで口を開いたー
”俺はーーミナちゃんのファンなんです…
修司さん、、いいや、あんたなんかに
一生懸命頑張ってる彼女の人生、
壊させてたまるものか!”
上野が叫んだー
「--なんだって…?」
修司が怒りの形相で呟くー
上野は、修司のターゲットにされた「ミナ」のファンでー
ミナを守るために、情報を流出させたのだという
「--テメェ!今まで散々俺と一緒にスキャンダルを
作って来たくせに、自分だけ助かろうってのか!?
おいコラ!? テメェ!」
”--俺も、自首しますよ”
上野との電話は、そこで切れたー。
「--くそっ!…」
修司は、もう一度石川に連絡して
石川と共に海外に逃げようとするー
しかしー
♪~~
インターホンが鳴ったー
”鍋原 修司さんですね
お聞きしたいことがー”
警察ー
修司は、部屋の中でへなへなと座り込んで
タバコを口から落としたー
「---おわりだ…」
修司が怒りの形相で呟くー
「おわりだ…ぜんぶ、ぜんぶ、何もかも…!」
修司は、悔しそうにー
そして、狂ってしまったかのように笑みを浮かべて、
ひとり、笑いながら警察を出迎えたー
おわり
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コメント
今日から3月ですネ!
まずは1話完結の他者変身モノでした~!
以前書いた「捏造スクープ」というお話と
似通った部分もありますが、
今回は「他者変身」で書いてみました!!
お読み下さりありがとうございました!!
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