姉と妹ー
醜い争いを繰り広げるふたりー。
その果てに下された”決断”は…?
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「お姉ちゃんを助けなさいよ!ほら!!言えよ!!
あいつに身体をあげます!って言えよ!!」
「--ひっ…ぁ…」
姉の静香がパニックを起こして、妹の智里の頭を
壁に叩きつけているー。
「---わたしがどれだけあんたのために
親切にしてやったか、分ってるの!?
恩を返しなさいよ!
ほら!!!
このクソ女!」
これがーー
静香の本性なのだろうー。
朝芳は醜悪な汚物を見るかのような目で
静香を見つめたー
「ひ、、、あ……たすけて…」
智里が、悲鳴を上げながら呟くー
これ以上やれば、智里は死んでしまうー
恐怖心からか、智里は、
「--たすけて…言う通りにするから…」と、
姉の静香に向かって、放心状態で呟くー
「--最初からそう言え!」
ヒステリックに騒ぎながら静香が、智里を床に押し倒すー
ボロボロになった智里は泣きながら
「もう…好きにして…」と呟くー
「---」
朝芳は、時計を見つめたー
「終了~
どっちの身体を僕にくれるかどうかは、決まったみたいだね」
ボロボロの智恵と、
はーっ、はーっ、と鬼のような形相を浮かべている静香ー
静香は言うー
「聞いたでしょ!
このクソ女が、あんたに身体をあげるって!」
静香が言うー
”好きにして”
それは、降参の証ー。
ボロボロになった智里は、床にうずくまってずっと泣いているー
「--そうだね。智里が僕に身体をくれるんだね」
朝芳は笑ったー
「た、、たすけて…たすけて…」
智里が、泣きながら壁際の方に向かって走っていくー
「たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて」
智里は、ガクガク震えながら、
朝芳の方を見つめるー
朝芳は、笑みを浮かべたー。
”これが、いつも人を変態扱いしてきた生意気な妹の姿かー”
と。
いい気味だー
今まで散々人を馬鹿にしていたのにー
「--たすけて…あぁぁぅぅぅぅ…」
智里は尻餅をついて、その場で失禁してしまうー。
お漏らししてしまった智里は、
そんなことにも気づかないまま、泣き叫ぶー
「往生際が悪いわよ!」
静香が叫ぶー。
”自分が助かる”
そう決まったからだろうかー。
さっきまでの怯えた様子は無くなりー
高飛車な態度に変わっているー
「--ふ、、ふふふふふ」
朝芳は思わず笑ってしまったー
「ははははははははははっ!
人間は、ここまで醜悪になれるんだねぇ!」
朝芳の言葉に、静香は表情を歪めるー。
「僕、決めたよー」
朝芳は、突然、静香の方に向かって歩き出したー
「--へ???え?」
静香の表情が途端に曇るー。
「--な、、なんで!?智里が!!智里があんたに身体をあげるって!」
静香が悲鳴まじりの叫び声をあげるー
智里がガクガク震えながら、その様子を見つめているー
「--最初から僕さ”名乗り出たほうの逆の身体”を
貰おうとしていたんだよね」
朝芳がにっこりと笑ったー
「ひっ…なんで!?!?なんで!?!?!?」
静香が叫ぶー
「--なんで!?!?!?!?
や、、やめて…!
ちょっと!!!
智里!!!こいつ、、こいつなんとかしてよ!」
静香が叫ぶー。
朝芳は笑うー。
「--おやおや
さっきまでクソ女って言ってたのに、
今度は助けを求めるのかぁ~
どうしようもないね」
ゲラゲラと笑う朝芳ー
「--智里!!お姉ちゃんを助けて!!助けて…!
わたしたち…姉妹でしょ!?たすけて!」
静香はなおも叫ぶー。
朝芳は静香の目の前にやってくるとー
笑みを浮かべたー。
「--助けてなんかくれないよ」
朝芳の冷たい言葉ー
「--だってーー
見てごらん」
朝芳は、背後にいる智里を指さしたー
智里の髪は乱れ、頭を打ち付けられた際の
打撲や出血で、その顔は酷い有様ー
恐怖で、表情は歪み、ガクガクと震えているー。
「---…う、、うるさい!あんたにわたしと智里の
何が分かるの!」
静香はそう叫ぶと、
智里の方を見たー
「--智里……お姉ちゃんを助けて…!
ほら、こいつをどうにかして!」
静香が、引きつった笑顔を作りながら言うー。
「---じゃあ」
朝芳は笑みを浮かべるー。
「--智里、お姉ちゃんを助けたい?」
朝芳が笑いながら智里の方を見たー
「--今なら、お姉ちゃんを助けるチャンスをあげるよ
さぁ、どうする?
お姉ちゃんを助けたいかい?」
朝芳は、妹の智里に余裕の表情で語り掛けたー
静香の表情から少しだけ緊張が消えるー
そうー
こいつは貧弱な、浮気女から生まれたゴミみたいな息子だー。
憑依能力を持っていたとしても
最終的に憑依なんか、するはずがないー
こいつは所詮臆病者…!
静香はそう思いながら、
智里の方を見たー
「ーーよかった…智里…」
智里が”助けてくれる”と、
信じて疑わない静香ー
しかしー
「-----い」
智里は、震えながら、静香の方を見たー
いつも元気で活発な智里の面影なんて、
もうそこにはなかったー。
「-え?」
静香が首をかしげるー
朝芳は笑うー。
「さぁ、言ってごらん。智里がそういうなら
姉さんを助けてあげるからさ」
とー。
「--ーー智里!」
静香が智里の方を笑顔で見つめたー
「---らい…!」
「--!」
静香の表情から笑顔が消えたー
「--お姉ちゃんなんて、大っ嫌い!」
智里が泣き叫ぶー
「----!!!!!」
静香が鬼のような形相になるー
「--智里ぉおおおおおおおおおおおおお!!!
恩知らず!!!!!!!!!!
この、、クソ女!!!!!!!!!!!!!」
朝芳は笑ったー
「--あ~~~あ、
妹に嫌われちゃったね~!」
朝芳は笑いながら、その場に気絶しー
幽体離脱をして、静香の身体に憑依を始めるー
「いやっ!?!?いやっ!?たすけ…たすけて!」
静香がもがくー
だがー
霊体が相手ー
どうすることもできないー
「---わたしの中に、、入って来ないで!
やめて…たすけて…やめてえええええええええええ!」
もがく静香ー。
「--、言ったろ?30分乗っ取られ続ければ
何も分からなくなるって、さ」
「---いや…いやあああああああああ!
助けて…助けて…智里っ…智里っ!!!!!!!」
泣きながら命乞いをする静香ー
そこにー
いつも冷静な感じの姉の姿はもうどこにもなくー
醜悪に悲鳴を上げる女の姿しか、
そこにはなかったー。
「----」
智里は震えながらその様子を見つめているー
「あ…あ…あああ…」
静香が、徐々に青ざめていくー。
「---…お、、お姉…ちゃ…」
智里は、怯えながらもー
自分がされた仕打ちを思い出してー
もはや、何も言うことはできなかったー
「---ふ~~~~~」
静香が笑みを浮かべながら立ち上がるー。
「--これで、僕は今日から静香だ」
静香はにっこりと笑いながら、智里の方を見たー
智里は、化け物を見るような目で静香を見て
震え続けたー。
いつもの威勢は、すっかりと消え失せー
智里は、乗っ取られた静香を見て、
ぶるぶると震え続けるー
「----今日から、僕が、いいや、わたしがお姉ちゃん。
いいね?」
静香が言うー。
けれど、智里は、あまりの恐怖から返事をすることすらできないー
「--怖がらなくていいよ。
僕は、姉さんと違って暴力を振るったりしないし、
僕は本当は、仲良くなりたかっただけなんだから。
思い出してみてよ。
最初に宣戦布告してきたのは、どっちか。」
静香の言葉に、
智里は震えながら、
思い出すー
両親が再婚したあとー
確かに朝芳は、静香や智里に危害を加えるようなことは
何もしていなかったー。
そうー
静香と智里が一方的に敵視して、
朝芳をイジメ始めたのだー
「---…う…ううう」
智里がうめき声をあげるー。
「--姉さんと、智里が、僕をいじめはじめたんだよ?
覚えてるよね」
乗っ取られた静香が微笑むー
静香の意識が何かわめいているが、朝芳は
完全に無視していたー
30分もすれば、消えるー。
「---これからは、仲良くやっていこうよ。
ほら、僕が姉さんの身体になったから、
あんな風に暴力ふるったりはしないし、
ね?」
静香が笑うー。
朝芳はー
十分に復讐を果たしたと満足していたー
静香を乗っ取りー
智里には、お仕置き以上の恐怖心を与えたー
父には”朝芳の死”で、精神的な復讐を与えるだけで十分だー。
静香の身体でこれから生きる自分はーー
もう、自分自身…朝芳の身体に戻るつもりはなかったー。
「---から…」
智里が目から涙をこぼしながら言うー
「--お、、お姉ちゃんが、あなたをいじめようって言うから、
わたし、仕方なく…」
「----」
静香の表情から、笑顔が消えるー。
「ーーーわ、、わたしは、、、止めたの…!
キm…ううん、お兄ちゃんに酷いことするのやめようって…」
智里は、泣きながら言うー
「--全部、、全部、お姉ちゃんのせいなの…
わたしは、お姉ちゃんに脅されて、仕方なく…
でも、、お姉ちゃんはもう、、お、、お兄ちゃんに乗っ取られたんだし…
これからは、、二人で仲良く…
わたし、、お兄ちゃんと一緒にーー
---!!!」
智里は、静香が、冷たい目で自分を見ていることに気づいたー
「そうかそうか、つまりきみはそんなやつなんだな」
静香がそう呟いたー
「---…」
智里は目から涙をこぼしながら「へ?」と呟くー
「---姉さ~~~ん!
智里がこんなこと言ってるけどぉ~?」
静香を乗っ取った朝芳がー
静香の身体から抜け出すー。
静香が、ビクンと震えて、目を覚ますー
すっかり怯え切っている静香ー
「---智里、全部、姉さんに命令されて
仕方なく僕に嫌がらせしてたんだってさぁ~」
朝芳が言うと、
智里が「ちが、、ちがっ!」と悲鳴を上げるー。
静香は、智里を怒りの形相で泣きながら見つめているー。
「--結局さー
お前らは、どっちも同類だよ!
醜悪な姉妹だ!
僕をいじめて優越感に浸っておきながら
いざとなったら自分だけが助かろうとする…
人間の皮を被った醜悪なモンスターだ!」
朝芳が叫ぶと、
朝芳は、そのまま怒りの形相で、
部屋から外へと出ていくー
「………」
静香と智里が、唖然とした様子で、
朝芳が部屋の外から出て行ったのを確認するとー
二人はお互いに相手のことを睨みつけたー
「この恩知らず!」
「お姉ちゃんが悪いんでしょ!
いつもお姉ちゃん気取りして!!」
二人は、互いの髪を引っ張り合って、
激しい罵り合いを始めたー
二人のわめき声を聞きながら、
朝芳は自分の部屋へと戻ったー。
二人のどちらかを乗っ取るつもりだったー。
けれどー
朝芳の想像以上にふたりが醜悪すぎて
”こんな身体を乗っ取ったら僕まで腐ってしまう”と、
彼はそう思ってしまったー。
「--なんかもう、、どうでもいいや」
朝芳は、そう呟くー
静香と智里には、もう関わりたくないー。
復讐も、もういいー
とにかく、関わりたくないー
可愛い見た目でも、
中身が醜悪すぎて、
二人の顔を見るだけで、吐き気がしてくる。
吐き気を催すほどの、醜悪ぶりだー。
後日ー
朝芳は、姉妹が母親に助けを求めたことを知るー
朝芳からすれば”義理の母”である、母親ー。
しかしー
母は”憑依”のことを聞いたからかー、
朝芳に対して
「静香と智里は、昔から出来が悪くて、ごめんねぇ…」と
申し訳なさそうに微笑んだー。
こいつも、同じー。
この母親がいるからこその、あの姉妹かー。
朝芳は、完全に失望したー。
この母親も、影で静香と智里の二人と一緒に
朝芳のことを笑っていたのを、朝芳は知っているー。
「--静香と智里にも、あなたを見習うように言っておいたから!」
母親が笑うー。
「--もういい」
朝芳は、そう呟いたー
高校を卒業したら、速攻でこんな家、出て行ってやるー。
もう、関わりたくないー
見たくもないー
憑依したくもないー
僕の心が、腐ってしまうー。
朝芳は、心の底から3人を軽蔑してー、
今からバイトでお金を必死にためて
高校卒業と同時にこんな家、出て行ってやる、と
決断したのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ダークまっしぐら…な、感じでしたが、
犠牲者は出ないエンド…でした~!
姉妹の絆はもう、修復されることは無さそう…デス!
お読み下さりありがとうございました!!
コメント
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こうきましたか。名乗り出た方の逆の体に憑依する展開までは予想してましたが、その後に完全に失望して憑依しない展開になるのまでは読めませんでした。
それにしてもこの話は極限少女にかなり近い話でしたね。
極限少女とこの話の違いは憑依対象が四人から二人になってるとこと、関係が友達ではなく姉妹になってるとこですね。
こういう話は大好きなので、またいつか類似作品を読んでみたいですね。今度は仲良しカップルとか仲良し母娘版の話が個人的には見てみたいかな?
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コメントありがとうございます~!
極限少女と同ジャンルのお話でしたネ~!
私も、書きながら、極限少女のことを思い出していました!
結末は一緒にならないように気を付けました笑
仲良しカップルに仲良し母娘…
確かに面白そうですネ…!
機会があれば…!