後輩が皮にされた…!
そんな場面を目撃しながらも、
何も行動を起こせない彼ー。
そんな、彼の決断はー!?
---------------------
文化祭の当日が近づいてくるー
姫奈は”ふつう”だー。
修平に対してもそうー
部長の莉菜子に対してもそうー。
いつもの姫奈にしか見えないー
けれどー
「----」
修平は、この数日間、姫奈のことで頭がいっぱいになっていたー。
姫奈のことが好き、とかそういうことではない。
先輩と後輩の間柄としてー
同じ学校に通う仲間としてー
もし、姫奈が”誰かに乗っ取られている”ならー
姫奈を助けてあげたかったー。
「--顔色、悪いよ?」
部長の莉菜子が、心配そうに修平の方に近づいてくるー。
「---あ、、いや、ごめん。ちょっと考え事してて」
修平の言葉に、莉菜子は、「ほんとに大丈夫?」と表情を歪めるー
ちょうど現在は、
姫奈と、後輩の満田、そして残り2名の部員のシーンが行われているー。
「---……何があったの?」
莉菜子はため息をつきながら、修平の方を見るー。
「良ければ、聞かせて?」
莉菜子の言葉に、修平は莉菜子に相談してみようかとも思うー
莉菜子は口が固いし、
信頼できるタイプの女子だー。
そのことは、中学時代から一緒だったため、よく知っているー。
「---練習終わったら、ちょっと話、聞いてもらえるかな?」
修平が迷った挙句、そう呟くと、
莉菜子は「これで部長だからね。部員の悩みは聞かないとね!」と
優しく笑みを浮かべたー。
今、この場で相談することはできないー
当事者である姫奈もここにいるー
「---…」
姫奈がリハーサルを終えると、
「先輩!」と、微笑みながら修平に近づいてくるー。
「----部長と、何を話していたんですか~?」
姫奈がニコニコしながら言うー。
「--え、あ、いや、別にー」
修平が言うと、
姫奈は頬を膨らませながら「隠し事!ダメですよ!」と、
不貞腐れた様子で言うー。
「--た、、単に文化祭の話を」
修平はそれだけ言うと、莉菜子の方を見て
助けを求めたー
「--ほんとに文化祭の話してただけよ」
莉菜子が微笑みながら、修平を助けるー
「--それならいいですけど~」
姫奈はそれだけ言うと、立ち去って行ったー
「---…ふぅ」
修平は戸惑った様子でため息をついたー。
あの時ーーー
姫奈は確実に”後頭部から引き裂かれるようにして、真っ二つになったー”
そして、まるで脱ぎ捨てられた着ぐるみショーの着ぐるみのような状態になってー
”男”が、姫奈を着ぐるみのように”着た”
そして、男は姫奈になったのだー
そんなこと、現実では絶対にありえないー
あるはずがないー。
何度も何度も、修平は”あの時の光景が見間違いであった理由”を
頭の中で考えるー
とにかく、何か、何か答えがあるはずだー、と。
けれど、それは見つからないー
もし、姫奈を”着た”男が、姫奈の記憶を受け継いでいるのだとすればー
「----」
修平は、満田と話している姫奈を見つめるー
”中身が他人でも”
姫奈として振舞うことは、可能なのかもしれないー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
部活の練習が終わりー
部室には、部長の莉菜子と二人だけー
修平は”絶対に他の人には言わないでほしい”と
前置きしたうえで、
これまでのことを全て話したー
下校中に、姫奈が男に皮にされて、着られて、乗っ取られたように見えたことー
姫奈が、”脅すようなこと”を遠回しに言ってきているような気がすることー
全ての”不安”を、莉菜子に打ち明けたー
現実離れした突拍子もない話でありながら、
莉菜子は、笑うことなく最後まで聞いてくれたー。
そして、話を聞き終えた莉菜子は、難しい表情を浮かべたー
「---じゃあ…
沼澤さんの中には、知らない男の人がいて、
今の沼澤さんは、その男の人にーー
操られていてーーー
見た目は沼澤さんだけど、沼澤さんじゃないってこと?」
莉菜子が確認するように言うー。
修平は、「----信じられないと思うけど」
と、頷くー。
「もちろん、僕が見間違えただけかもしれないけど…
どうしてもーー」
修平の言葉に、莉菜子は
「最近、妙に沼澤さん、トイレに行くのよね…」と、呟くー
確かに、部活の練習中に
部室を離れる回数が明らかに増えた気がするー
「---……」
莉菜子はしばらく沈黙すると、
修平の方を見たー
「--信じられないけど…でも、根尾くんが言うなら
本当なのかもね…」
莉菜子はそれだけ言うと
「わかった。明日ー、沼澤さんが部活中に部室から
出ていくときー
何してるか後をつけてみる」
と、答えたー
「えぇっ!?」
修平は驚くー
そこまでしてくれるとは思わなかったー。
「---ほら、根尾くんじゃ、トイレの中まで
確認することはできないでしょ?
女子じゃないんだし」
莉菜子の言葉に、
修平は「ま、、まぁ…」と呟くー
「--そんな話聞いちゃうと、わたしも心配だし、
わたしに任せて!」
莉菜子の言葉に、
修平は心強く思いながらも、
少し、不安を感じたー
「-----------------」
部室の入口の扉が少しだけ開いていたー
「ーーーーーー」
ギリッー
部室を覗いていた姫奈が歯ぎしりをするー
ピキッ…
姫奈の後頭部に亀裂が入るー
姫奈の目が、ぐるんと、白目になって、
中から男が出て来るー
「--俺の邪魔をするなー」
男が呟くー
姫奈は、修平が見た通りーー
男に乗っ取られていたー
男は、姫奈の記憶を読み取り、
姫奈として振舞いー
女子高生ライフを送っていたー
”ごく普通の女子高生ライフを送りたい”
それが、男の目的ー
男は、別に悪さをするつもりはないー
”沼澤 姫奈”として、
ただ、生活を送りたいだけだー
姫奈を狙ったのは”たまたま可愛かったから”
それだけー。
「---」
男は、再び姫奈の皮を完全に着込むと、
部室の前から立ち去りながら呟いたー
「--”邪魔”をするならー
消えてもらうしかないですよぉ… ふふふ」
”女子高生として平穏な生活を送りたいー”
それを、邪魔するのであればー
”抹殺”するしかないー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝ー
修平は、姫奈を呼び出していたー
”表向き”は文化祭の相談ー
しかし、”裏”はー。
修平はーーー
思い切って口を開いたーーー
”部長の莉菜子が、姫奈を尾行する”ということを
莉菜子にさせたくなかったー
莉菜子の身に危険が及ぶ可能性があったからだー。
莉菜子に相談したのは、修平自身だが、
まさかそこまで助けてくれるとは思ってなかったし、
あまり、莉菜子に危険が及ぶようなことは
させたくないー。
その前に、ケリをつけたかったー。
「---僕、見たんだー」
修平は警戒しながら、姫奈に対して全てを打ち明けたー。
「------」
姫奈の表情から笑顔が消えているー
「----ふふっ」
話を聞き終えた姫奈は笑ったー
「--先輩。よく考えてくださいー
”仮に”先輩が見た光景が現実で、わたしが乗っ取られているとしてもー
”誰か”悲しんでいますか?
わたしは、わたしですー。
今のままなら、友達も、先生も、家族もー
誰も、悲しまないー
でもーー
もしも、もしも、わたしが乗っ取られていてー
そのことを周囲が知ってー
わたしが、ボロボロにされるようなことになればー
家族も、友達も、先生も悲しんじゃいますよ?
娘が、皮にされて、乗っ取られているーーーー
な~んて、知ったら家族は、どう思うと思います?」
姫奈は淡々とそう語ったー。
「----今のままならー
”誰も”悲しまないー
先輩が、全てを飲み込めばー
それで、解決するんですー
”本人”以外は、誰も悲しまないー
わたしはー
”姫奈”として、ずっと生きていくー
誰も気づかなければ、誰も悲しまないー」
姫奈の悪魔のような笑みにー
修平は声を上げて叫び出しそうになったー
「---な~~~んて、言うと思いましたか?ふふっ
先輩に怖い顔は似合いませんよ~!」
姫奈はクスッと笑いながら手を叩いたー。
「---先輩が見た光景は、夢ですよ夢!
先輩はいつも、頑張ってますし、疲れてたんですよぉ~!
わたし、あの日もスーパーでお買い物して
普通に帰りましたし!」
姫奈の言葉に、
修平は戸惑うー
夢ー
そんなわけないー
でもーーー
「---このままにしてれば、誰も傷つかないのにー
それを暴こうとするー
それってー
先輩の”自己満足”ですよねー?」
姫奈は耳打ちするかのように、そう呟いたー。
「---って、、もしわたしが乗っ取られてたらいいそうですよねぇ~ふふ」
姫奈は笑いながら、空き教室から立ち去っていくー
”僕はーー
僕はーーーどうすればーー”
姫奈が乗っ取られている可能性は高いー
でも、確証はないしー
もし、本当にそうだとしても、
”秘密”を暴こうとすれば、周囲が傷つくかもしれないー
例えば、皮にされた姫奈がもう元に戻らないのならー
秘密を暴くことで、
姫奈の両親は、娘の無残な姿を見ることになるー
仮に今の姫奈が乗っ取られているのだとしてもー
奴は、”姫奈として振舞う”つもりで、
悪さをするつもりはあまりなさそうに思えるー
本当に乗っ取られていたとしてもー
修平の勘違いだとしてもーー
黙っているほうが、利口なのかもしれないー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
明日は文化祭ー
部活の練習が始まるー
最後のリハーサルが行われている。
部長の莉菜子も、最終調整に忙しいー
後輩の満田と、修平のシーンのリハーサルが
行われている最中ー
「--あ、ちょっと失礼しますね」
姫奈が部室の外に出るー
やはり、今日も、トイレなのか、
何なのか、部室から抜け出すことが多いー。
「-----」
莉菜子はそれを確認すると、修平のほうをチラッとみて頷くー
”危険だから”
と、止めようとも思ったが
後輩・満田とのリハーサル中であるため、
修平は身動きを取ることができなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「♪~~~」
姫奈はご機嫌そうにお手洗いに向かっていたー
放課後の演劇部の練習中、
西校舎にあるトイレを使う人間は
まずいないー。
「---ふふ、せっかく女の子になったんだから…」
姫奈はトイレに入ると、嬉しそうに胸を揉み始めるー
”普通の女子高生として生活したいー”
その一心で、姫奈を乗っ取ったー
けれどー
”普通”に生活しながらー
こういうこともしたいー。
昼間はさすがに、他の生徒にバレるリスクが高すぎるし、
姫奈の家では、家族の仲がとてもよく、
悪く言えば家族間のプライバシーが守られていないタイプで、
隠れて自分の部屋でヤルのは、なかなか難しいー
だからー
放課後の学校でー
姫奈がスカートの中に手を入れて、
気持ちよさそうな笑みを浮かべているー
当然、姫奈を乗っ取った男は
”誰かが”このトイレを使う可能性は
視野に入れているー
だから、個室の中でお楽しみをしているしー
喘ぎながらも、物音には注意しているー
この付近は、放課後は人通りもないから
誰かくれば分かるのだー
「---へへへへ」
あまりの気持ちよさに姫奈の頭がぱっくり割れてー
中から男が出て来るー
「ふへっ…ふへへへへ♡」
姫奈の顔の部分だけ半分割れた状態ー
その時だったー
「---!」
「---!」
個室の扉が、開いたー
鍵までは、かけていなかったー
「---あ、、、」
姫奈の顔半分が割れた状態で、男の顔が少し見える状態ー
慌てて瞬間的に、姫奈を再び着こんだがーーー
見られたかもしれないーー
部長の莉菜子にーー
莉菜子は、気配を殺して、こっそりと尾行
してきたのだったー
姫奈に何が起きているのかを、知るためー。
「-------」
姫奈が、冷や汗を掻きながら驚いているとーーー
「---ふぅん」
と、莉菜子は、姫奈に対して何かを呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
部室に戻って来る莉菜子と姫奈ー。
「---何ともなかったみたい」
莉菜子が、修平にそう告げるー。
「--そ、そっか、よかった」
修平がそう言うと、
莉菜子は続けたー
「---たぶん、気にしすぎじゃないかな?
このまま”普通”にしてればいいと思うー
何かあったら、先生なり警察に言えばいいし、ね?
わたしも沼澤さんにおかしなところがあったら
伝えるから、それでいいでしょ?」
莉菜子の言葉に、
修平は少し安心した様子で頷いたー
「--さ、明日は本番!がんばろ!」
莉菜子が修平の肩を叩くと、
修平は”僕の気にしすぎ…なのかな”と、
少しだけ、前向きな気持ちになって、
リハーサルに臨むのだったー
「-----」
姫奈が少しだけ震えていたー。
トイレでの会話を思い出すー。
「”わたしは”3年前からー」
「---え?」
「--”わたしは”3年前からー
この女として生きてるのー
ふふー
”記憶”も受け継いでー
ちゃんとうまくやればー
誰にも気づかれずに
女の子として生きていけるー。
でもねー
あんたは、やり方が下手ー。
遠回しに脅したりせず、”ふつうに”してなさいー
”ふつうにー”」
莉菜子の信じられない言葉に、姫奈は震えたー
「---ま、、まさか、、部長も…
い、、いえ、、あなたも俺と同じで、女を乗っ取…」
姫奈の言葉に、
莉菜子は壁ドンしたー
「---”ふつうに”してろー
あの修平とかいう餓鬼を脅したりするなー
”ふ・つ・う”にしてろ
そうすりゃばれないー
そうすりゃ女の子として生きられるー
お前がへますりゃ、もしかしたら俺にも影響が
出るかもしれないー
お前が誰だか知らないが、
ふつうにしてろ。」
莉菜子はそう言い放ったー
「---ひ、、は、、はい…!」
そんな姫奈を見て、莉菜子はほほ笑むー。
「ーーーうん。よし。
じゃあ、沼澤さん、わたしは、何も問題なかった、って
報告するから、
これからは、普通に沼澤さんとして生活するのよ?
わかった?」
莉菜子の言葉に、姫奈は「は、、はい!」と、嬉しそうに返事をしたー
たとえ中身がかわってもー
その”中身”が、以前の”中身”の記憶を全て受け継ぐことができてしまったらー?
周囲の人間はその変化に気づくことはできないー。
もしかしたらーーー
身の回りにも、知らぬ間に”中身”が
変わっている人間が、いるかもしれないー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
少し変わったスタイルの皮モノでした~!
これでは気づくのは難しそうですネ~!
お読み下さりありがとうございました~!
コメント
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確かに下手に脅したりするのは賢くないと思うけど、それ以前に決定的瞬間を目撃されちゃってる事の方が致命的な問題な気がします。
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コメントありがとうございます~!
目撃されなければ、そもそも疑われませんでしたからネ…!
そのあとも作中で指摘された余計なことを色々してますし、
(乗っ取った人が)詰めが甘いのかもしれません~!