小さいころに仲良しだった幼馴染ー
大学生になって、
彼女と再会することになった彼は、
その時を楽しみにしていた…
しかし…?
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来週から大学生になる、富阪 厚善(とみさか あつよし)は、
久しぶりの故郷に胸を躍らせていたー。
小さいころー
仲良しだった幼馴染・上村 穂希(かみむら ほまれ)との
再会を楽しみにしているのだ。
穂希とは、小さいころ、とても仲良しで
毎日のように遊んでいた。
穂希は「大きくなったら厚善と結婚する!」とばかり言っていたし、
厚善も「大きくなったら穂希を幸せにする」なんてことばかり言っていたー。
周囲の友達からも揶揄われてばかりいるほどの
仲良しだった-。
しかし、6年生の時ー
”運命”は変わったー
厚善の父親が、都内に転勤となり、
生まれ育った北の大地を離れてー
大の仲良しだった穂希とも”離れ離れ”になったのだったー。
穂希は泣いていたー。
厚善はその時
穂希に約束したー
”大きくなったら、絶対に穂希のところに帰って来るから”
とー。
そしてー
その約束を果たす時がやってきたー。
厚善は、大学を、生まれ育った北海道の大学に進むことに決めて、
高校卒業後1年間、都内でバイトをしてお金を貯めつつ勉強してから、
両親に相談した上で、
北海道で一人暮らしをすることに決めたのだー。
”あの時の約束を果たすためー”
中学・高校と、大学に入るまでの1年間”合計で7年間”の空白が出来ているし、
穂希にはもう、彼氏もいるかもしれないー。
引っ越した直後は、穂希と連絡を取るようなことも
していたけれど、
最近はほとんど連絡を取るようなことはなくなっていたけれど、
厚善は勇気を振り絞って、穂希に連絡したー。
穂希からの返事のLINEはー
驚きに満ちたものだったが、
それでも穂希は、厚善が”あの時の約束”を覚えていてくれたことー
そして、大学生になってまで、約束を守ってくれることを、
喜んでくれたー。
飛行機から降りてー
久しぶりの北海道の大地に足を踏み入れるー。
「懐かしいな…」
なんとなく、故郷の空気を懐かしいと感じたー
何が違うのかー
そう言われてしまうと、言語化して表現することは
難しいー
だが、7年ぶりとなる故郷に
厚善は懐かしさを感じたー。
事前に手続きを済ませておいたアパートに向かい、
大家さんへの挨拶を済ませた厚善は
部屋について、わずかな荷物を、整理し始めるー
大きなものについては、明日、宅配便で届くことに
なっていたー。
”ついたよ、北海道”
厚善が穂希にLINEを送ると
穂希は”無事についてよかった”と
返事を返してきたー
穂希と会うのは明日ー
穂希は、今日はどうしても
手が離せない、とのことで、会うのは明日となっていたー。
「---さて、」
厚善が、玄関周辺の片づけをしていると、
背後から突然肩を叩かれたー
驚いて振り返る厚善ー
そこには、ニヤッと笑う男がいたー
「--吉森…!」
厚善が驚きながら言うと、その男は、「久しぶりだな!富阪!」と、
厚善の肩を叩いたー。
吉森 美智雄(よしもり みちお)-。
北海道にいるころ、仲良しだった親友だー。
「---お前が戻って来たって、上村から聞いてさ」
上村、とは穂希のことだー。
連絡先が変わっていて分からなかったため、
厚善はこの美智雄に北海道に戻ることは伝えていなかったが、
穂希が代わりに伝えてくれた様子だったー。
「--っかし、ずいぶん立派になっちゃってなぁ」
美智雄の言葉に、厚善は笑いながら
「吉森はなんていうか…小さい頃のまんま、大きくなった感じだな」と、言葉を口にするー
「はははは、久しぶりすぎて、「どなたですか?」って言われるかと
思ったけど、覚えて貰えててよかったよ」
笑う美智雄に
「お前の顔を忘れるかよ」
と、厚善は、笑ったー。
昔話に花を咲かせるふたりー。
厚善の新居の片づけを軽く手伝ってくれた美智雄は、ふと口にするー
「そういや、上村とはもう会ったのか?」
とー。
「--え?あぁ、穂希とは明日会う予定で」
厚善が言うと、
美智雄は、少しだけ複雑そうな表情を浮かべてから呟いたー
「お前が北海道を離れたのはー
小6…だったよな
ってことはー
まだ知らないのか」
「え?」
厚善が首をかしげると、
「お前はびっくりするだろうなぁ…」と
美智雄が、呟くー
けれどー
美智雄は”その先”を言わなかったー
「俺から言っていいのか確認してこなかったし、
上村がお前に言ってないってことはー
やっぱ、言いにくいんだろうし…」
美智雄はそれだけ言うと
「明日会えばわかるさ」と、厚善の肩を叩いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
穂希に何かあったのだろうかー。
厚善は、少し心配に思うー。
穂希と直接会ったのは、7年前が最後だー
都のほうに引っ越しをしたあとは
直接穂希と会う機会はなかったー
最初の頃はメールなどでやり取りもしていたが
最近ではそれもあまりなくなっていて、
穂希の現状をあまり知らないー
「--彼氏でもできたってことかな…?」
厚善はそんな風に思いながら、
”まぁ、それならそれで俺は応援するし
別に彼女にするために戻って来たわけじゃないし…”と
自分に言い聞かせながら、
その日は眠りについたー
翌日ー
厚善は目を覚ますと、
いつも通り身なりを整え、
午前中に指定しておいた実家からの荷物を回収、
それを部屋の中に運び込んだー。
「--ふぅ~…さて」
厚善は、スマホを確認するー
スマホには既に穂希からのメッセージ
”今から向かうね”
そう書かれていたー
厚善は”俺も向かうよ”と返事をするとー
”再会”の待ち合わせ場所であるカフェに向かって
歩き出したー。
さすがに7年ぶりの再会で自分の家に異性をー
と、いうのはあまりよくないだろう、と考えて
厚善は、開放的なカフェを待ち合わせ場所に
指摘したのだったー
小さいころは、どんなに仲良しだったとは言え、
7年も経過していれば
穂希も不安だろうし、
厚善にも、少なからず、色々な意味での不安はある。
厚善は、穂希とお別れした日のことを思い出すー
あの時は、まだ二人とも
良くも悪くも”子供”だったー。
でも、今はお互いに大学生ー。
もう、一人で色々な判断が出来る年齢になっているー
「大きくなったら厚善と結婚する!」
小さい頃のやり取りを思い出すー。
穂希は今、どんな女性になっているのだろうかー。
厚善は”少女”の穂希しか知らないー。
来週から大学生ー。
”大人の女性”とも言える年齢になった穂希にーーー
「ーーー」
待ち合わせ場所に指定したカフェに到着するー
穂希らしき人物を探す厚善ー。
だが、自分と同じぐらいの年齢の女性はそこにはおらずー、
穂希はまだ到着していない様子だったー。
「---」
カフェのテーブルに着席して、穂希を待つ厚善ー。
その時だったー
「--あの」
見知らぬ男が近づいてくるー。
「---はい?」
厚善が首をかしげるー。
知り合いだろうかー。
小さいころはこの辺りにいたわけだから、
知り合いと偶然鉢合わせをしてもおかしくはないー。
「----…あの…その…」
男が顔を赤らめながら、キョロキョロしているー。
「---?」
厚善は、”なんだこの人…?”と内心で
首を傾げながら
優しく「何かお困りですか?」と尋ねたー。
すると、その男は言ったー
「--ひ、、ひさしぶり…」
とー。
「--へ?」
厚善は”やっぱり知り合いだったか…?”と思いながら
「--ごめん…久しぶりで… えっと、、」
と、呟くー
「--清田くん? それとも…森橋くん?」
厚善は、記憶を必死に探りー
”似たような雰囲気”だった
小さい頃の友達の名前を口にするー
しかし、その男は首を振って、
こう口にしたー
「---あの、、、俺、、、あ、いや、わたし…
上村 穂希…」
「---は?」
厚善は変な声を出したー。
「--あ、、、あの…その、、だから…」
目の前の男が恥ずかしそうに呟くー
「---そ、、その…そう、、俺が穂希なんだよ」
そう呟くと、目の前の男は、厚善の座っているテーブルの
前に座ったー
「------」
厚善は、目をぱちぱちさせながら
その男を見たー
ボーイッシュな女子になったってことかー?
そんな風に思いながら
昨日の美智雄の言葉を思い出すー
「あ、、、あ~~~、、え???
えっ???? え????」
厚善は、無理やり頭を理解させようとしていたが
正直、どう考えても穂希に見えないー
あ、いやー
7年間も空白がある上に
ボーイッシュになっていればーー
こうーーー
「---随分男っぽくなったな」
厚善が苦笑いしながら言うー。
「----ーーーっ」
穂希を名乗る男は、厚善の手を掴むとー
そのまま自分の胸のあたりを触らせたー
「--!?!?!?!?」
戸惑う厚善ー。
だがー
女性のような胸はそこにはなかったー
「--男っぽく、じゃなくて…
男になったんだよ」
とー、目の前の穂希を名乗る男が言ったー
「---は、、はは、、、はははっ!」
厚善は思わず笑ってしまうー。
何を言っているのか、さっぱりだー、
とー。
「--で、誰だっけ? 7年ぶりだから、
ごめんな」
厚善が言うー。
厚善は目の前にいるのが穂希ではなく、
北海道に戻ってくることを知った別の同級生が、
穂希を名乗って揶揄っているのだと、
そう感じたー
「---……」
目の前の青年は、戸惑った様子で
恥ずかしそうにしながらー
「--俺、、…いや、だから、わたしが穂希!」
と、叫んだー
「いや、冗談きついっt-
「---これで満足!?」
穂希を名乗る男が、学生証を叩きつけるー。
そこにはー
確かに”上村 穂希”と書かれていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「----…え~っと…じゃあ…
中学の頃から、ずっと男ってこと?」
厚善が言うと、穂希は頷いたー。
確かに、顔立ちは穂希が成長した顔立ちを
男にしたような感じに見える。
しかし、いったいどうして男にー
「---…俺が北海道にいる頃って
女の子だったよな?」
厚善が確認がてら尋ねると、
穂希は「当たり前だろ!」と、反論するー
少ししてハッとした感じで、何度か咽ると
「--驚いてると思うけど、
もう、5年以上も男だから、
言葉遣いとか振る舞いも、すっかり男になっちゃって」
穂希の言葉に、
厚善は「あ、いや、無理しなくていいよ」と気を遣うー。
きっと、普段は男として振舞い、
男として話しているのだろうー。
「--え…あぁ、、、そうだよな……
いや、、でも、つか、、その…
厚善を前にすると、女としてのわたしが
表に出て来るっていうか…
その、複雑で…」
穂希が顔を赤らめるー。
「--あ~…そういうもんなのか…?」
厚善は戸惑うー。
ここ数年はずっと男として生きてきたが
小さい頃に仲の良かった厚善を前にしたことで、
穂希は、女としての自分を思い出して
戸惑っているー
の、だと言うー
「---……ま、、まぁ、とりあえず分かったよ。
穂希はーー
男になった…ってことで…
理解しておけばいいかな?」
「---うん…」
穂希は、そう返事をしつつも、少しだけ複雑そうだったー。
「----」
しばらくすると、穂希は口を開いたー
「あのさ……これからもー
”仲良く”してくれるー?
昔のようにー」
穂希の言葉に、
厚善は、少しだけ間を置いてから
「もちろんだよ」とほほ笑んだー
久しぶりの再会ー
厚善と穂希は雑談に花を咲かせたー
ふたりは分かれるー
帰宅した厚善は、
複雑な表情を浮かべていたー
性別も、見た目もーー
そして、既に男になってから何年も経過していることでー
穂希はすっかり男のような振る舞いになっていたー
”男になった穂希”とうまくやっていけるだろうかー。
そんな風に思いながら、厚善は、
穂希との小さい頃の写真を見つめるのだったー
<後編>に続く
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コメント
私が書くのはとても珍しい「男体化」モノです~!
たまにしか書かないジャンルだと
私自身も新鮮な気持ちになりますネ…!
スケジュールの都合上、続きはまた来週に
なってしまいますが、
ぜひ続きもお楽しみください~!
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