<憑依>告白の瞬間①~運命~

”告白”

彼は、それを諦めたー
何度、告白しても、それが報われることはなかったからだ。

そして、今、男の手にあるのは、憑依薬ー。
彼が起こす行動は…?

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「--好きです」

高校1年生の時ー
彼は、人生で初めて”告白”をしたー。

相手は
図書委員の先輩の女子生徒ー

大人しく、真面目な感じの女子だー。
図書委員の仕事を優しく教えてくれてー、
真面目な彼女に、彼は惹かれて行ったのだー。

だがー
彼女は、カレンダーを見ると、首を傾げたー。

「---あ、あの…エイプリルフールは
 3月じゃなくて4月だよ?」

と、真顔でー。

3月1日ー。
彼の生まれて初めての告白は、失敗に終わったー。

その先輩は、ただ天然なだけだったのかもしれないー
時が経ち、その傷も癒えた彼は、
高校3年生になった時、今度は所属していた美術部の後輩に告白したー。

しかしー

「--え~?先輩~!冗談はやめてくださいよ~?
 先輩と付き合うぐらいならわたし、スカイツリーのてっぺんから
 紐なしでバンジージャンプしたほうがマジですよ!」

その後輩特有の遠回しな言い回しで、
”お前と付き合うなら死んだ方がまし”と言われた彼は
傷ついたー。

だが、彼は、それでもあきらめなかったー

大学生になり、気の強いバイト先の先輩に告白したー。

「--頭が高い!わきまえな!」

気の強い先輩に振られたー。

大学の同級生にも告白したー。
けれどー

「--ごめん。わたし、誰とも付き合う気はないから」
と、断られたー

しかもその子は1週間後に別の男と付き合い始めたー。

彼の告白は失敗続きだったー。
そして、最後にはー
社会人になってから告白した彼は、セクハラとして
通報されて、そのまま会社をクビになってしまったのだったー

別に付け回したわけでも
しつこくしたわけでもない。
単純に1回、告白しただけだー。

だが、セクハラになってしまったー。

彼…
菅山 宗徳(すがやま むねのり)は、
その時に決意した

”二度と告白などするものか”
とー。

告白など、無理ゲーである、と。

最初からクリアする方法が用意されていないゲーム
最初からあたりが用意されていないくじ
最初からレアなキャラなど存在していないガチャ。

それらと同じで、詐欺である、と。

彼はー
告白という行為は、詐欺だと感じた。

何故なら、ゴールが用意されていないから。

告白に対して激しい怒りを感じた宗徳は
”二度と告白なんかしない”と、
26の時の決意したのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そんな彼も30歳になった。
告白することを止め、恋愛から身を引いた彼は
それはそれで、穏やかな生活を送っていたー

セクハラで仕事をクビになってしまったものの、
一応の仕事にはありつくことができており、
収入面に関しては、そこまで心配はない。

「----」

しかし、彼が毎年イライラを募らせるシーズンがあるー。

それが、
クリスマス
バレンタインデー

恋愛イベントだ。

告白して成功しているような場面や
告白の話題などが
ネットやテレビに溢れー
それを見るたびに、宗徳の怒りは
まるで噴火直前の富士山のようにグツグツと煮えたぎっていくー。

「---許せん!」

”嫉妬”
そうなのかもしれないー

だが、真面目に生きて来た自分のような人間が
最終的に告白でセクハラ扱いまでされてしまい
会社をクビになってしまったのにー

”なぜ”
と、宗徳はテレビを見つめて怒りに震えるー

”どうして、こんなチャラいやつは、告白に成功しているんだ…?”
と、バレンタインデーネタのバラエティ番組を見ながら
震えていたー

最近では同じ高校出身の友人まで
彼女が出来たのだと言うー。

「--な~~~~にが 告白だ!」
宗徳はそう叫ぶと、
無意識のうちに

”告白 滅茶苦茶にする方法”と
ネットで検索をかけて
鬼のような形相で、検索結果を睨んでいたー

これは、毎年の出来事だー
毎年のクリスマスや
バレンタインデーのたびに、
彼は怒りを勝手に感じて、
そして、”告白の瞬間”をどうにかして
滅茶苦茶にすることはできないかどうか、
こうしてネットで検索しているー

当然、そんな方法はほとんどあるはずがなく、
前回のクリスマスの際にも
宗徳は結局、最後には舌打ちをして
そのままスマホを放り投げたのだったー

しかしー
今年は、違うー

”告白を滅茶苦茶にするなら憑依薬”

そんな、ネット広告が目に入ったー。

「あ?」
宗徳は思わず、その広告をクリックしてしまうー。

すると、画面に”憑依薬”の概要が表示されるー。
それを食い入るように見つめる宗徳ー

それがーー
宗徳と、憑依薬の出会いだったー。

”告白の瞬間”を
破滅に追いやる悪魔、誕生の瞬間でもあったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--あの…」
放課後ー
女子生徒が男子生徒を呼び出す。

男子生徒はイケメン風の生徒だー。

「---話って?」
イケメンながら優しそうな男子が言うと、
女子生徒の方が、
顔を赤らめながらー

「ずっと、、ずっと、、ずっっと…」
と、口にしているー

”告白”をするようだー。

イケメンな男子生徒が、首を傾げながら
その子の方を見つめているとー

その子はー
告白の言葉ーーー

ではなく、
”うっ”とうめき声をあげたー

「-?」
男子生徒が戸惑う。

「--ずっと、、ずっと、、ずっと…
 トイレを我慢してたの~~♡」

告白しようとしていた少女が
突然おかしなことを言うー。

「-え?」
男子生徒は、唖然とするー。

わざわざ放課後に呼び出されたから何かと
思っていたが、
突然のトイレ発言ー

「あ~~~もう我慢できなぁ~~~い♡」
目の前の女子が、突然その場でお漏らしをし始めて
スカートの中から水滴が零れ落ちて来るー

「うわっ!?何してんだよ!?」
男子生徒は戸惑うー

「ええへへへへへへ~
 こっちも出しちゃお~」
下品な音を立てながら、
彼女から悪臭が漂い始めるー

「うわっ…!?!?!?
 な、、な、、な、、なんなんだよ!?」
男子生徒は戸惑いながら、
イヤそうな顔をすると、
そのまま女子生徒の前から立ち去って行ったー

両方漏らしてしまった少女は笑みを浮かべるー

「へへへ~告白しっぱ~~~~~~~い!」
憎しみの口調で呟く少女ー

彼女は、自らの意思でお漏らしをしたわけではないー
宗徳に憑依されてしまったのだー

「--へへへへへ…
 ”告白”を引き裂く瞬間、たまらないぜ」

そう呟くと、宗徳は少女から飛び出すー
自分が漏らしたものの上に、
意識を失ってへなへなと座り込む少女ー

”へへへへ…”

憑依薬を手に入れてしまった宗徳は
人々の告白の瞬間を”破壊”して回っていたー

なぜ、そんなことをしているのか。
こんなことを繰り返したその先に、
自分に何のメリットがあるのか。

それは、宗徳にも分からない。

それでも、
告白の瞬間を破壊せずにはいられない。

”俺が上手くいかないことを
 他人は当たり前のようにヘラヘラやってることに腹が立つー”

宗徳は、そう思っていたー

「--お!」
次のターゲットを見つけた宗徳は、今度は男の方に憑依したー

「---と、付き合ってください!」
ちょうど目の前の女性が、男に向かって言い放ったところだったー。

男に憑依した宗徳は笑みを浮かべるー

「へへへへ」
男は中指を、その告白してきた女に向かって突き立てー

”これが返事だ”と、
叫んでやったー

泣きそうな表情をする女ー

「--頭が高い!わきまえな!」
乗っ取った男の身体でそう叫んでやったー

宗徳がかつてバイト先の女に言われた言葉だー。

悲しそうに「…急に告白して、ごめんなさい…」と
謝罪の言葉を口にする女ー

宗徳が乗っ取っている男は、
「--ばーか!」と叫びながら、そのまま走り去っていったー

「へへへへへ」
走りながら男の身体で笑う宗徳ー

「へへへへへへ!ひひひひひひひひ!」
告白の瞬間をぶち壊しにするー。
なんてたまらないんだー!

そう思いながら、乗っ取った男の身体で、
彼は楽しそうにスキップしたー

やがて、男の身体から抜け出した宗徳は
満足そうに空高く舞い上がり、
そのまま街並みを見つめたー

「憑依…最高だぜ」
宗徳は、久しぶりに”楽しい”と心から思ったー

高校生の頃から、告白して振られるたびに
暗い気持ちになり、
周囲は告白に成功しているのを見て、
彼はーー
次第に心からわら笑えなくなっていった。

”どうして自分だけがこんなに苦しまなくてはいけないのか”
と、周囲を何度も何度も呪った。

自分にだって、幸せになる権利はあるはずだ、と
何度も何度も。

だがー
今は違う。
霊体になった宗徳は、満面の笑みだ。

こうして、他人の告白の瞬間を破滅に追いやることが
できるのだからー。

”絶対に告白が成功する”
と、信じて疑わないやつらを、滅茶苦茶にしてやるのだ。
快感を覚えないはずがない。

「--っまぁ…自分の身体は死んじまったけどな」
宗徳は、少しだけ寂しそうに呟いたー

自分の身体は憑依薬を飲んだ時に死んだ。
説明書らしきものにもそう書かれていたし、
それは何も間違いではないー。

自分の身体は抜け殻になって、
呼吸もしていなかったし、
もう、元の自分に戻ることはできないー

けれどー
それでもー
別に、彼はそれでも良かった。

憑依薬の説明書きには
”強い精神的ショックさえ受けなければ、永遠に行動することが可能”
と書かれていたー。

強い精神的ショックが、ダメなのはー
どうやら、精神的にショックを受けてふさぎ込んでしまうと、
霊体である自分が成仏してしまう可能性があるー

とのことだったー。

「へへ…ショックなんて受けやしねぇよ」
そう呟くと、宗徳は、次の告白の瞬間を、
破滅に追いやろうと笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「---ずっと、、ずっと…」
男子大学生が、友達の女子大生に告白しようとしていたー

幼馴染同士で、
ずっと仲良しだったふたりー

既に彼は、告白すればOKを貰えるという
”確信”すら持っていたー

「ずっと、好きだったー
 僕と…僕と付き合ってください」

彼が言うー

相手の女子大生はー
ずっとその言葉を待っていたー

「--うれしい…」
女子大生は、嬉しそうに笑うー

”ーーはは、うれしいか! はははは!”

だがー
偶然その光景を見つめていた
宗徳の霊体はー

”最高のターゲット”を見つけてー
笑みを浮かべたー。

「--っ…」
ビクンと震える女子大生ー

告白の返事を待つ相手の男子大学生は
緊張で、彼女のわずかな変化に気づくことは
できなかったー。

「---ふふふふふ うれしい~~~!」

大好きな彼女からの返事ー
男子大学生の彼は、嬉しそうに顔を上げたー。

「--じゃあ…!」

とー

本来の彼女の返事は、
きっとーー
”Yes”だったのだろうー

けれど、
彼女は不運にも、憑依されてしまったー。
”告白の瞬間”
にー。

「---でも~わたし、セフレが10人ぐらいいるけど、
 それでもいい~~?」

笑う女子大生ー

「え…」
告白した男子大学生は真面目な性格ー
途端に顔が引きつるー

「--だって~~男の人と寝るのきもちいいんだも~ん!
 おじさんと寝て、お金を貰ったり、ね♡

 あんたも、わたしにお金、くれるんでしょ?」

悪魔の言葉をささやくー

この子にセフレなんていないし、
男と寝た経験もないー

けれどー
真面目な彼は、真に受けてしまったー

「---……ご、、ごめん…
 そういうのはー」

戸惑いながら首を振って
立ち去っていく男子大学生ー

その様子を見つめて、
宗徳が憑依している女子大生は、
嬉しそうに笑みを浮かべると

「ざまぁ!」と、大声で叫んで、
その場で嬉しそうに笑い始めたー

②へ続く

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告白の瞬間を引き裂くためだけに
憑依を悪用している男のお話デス~!

続きはまた明日!

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憑依<告白の瞬間>

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