<女体化>俺の銀髪美少女デビュー⑥~渦巻く陰謀~

最終決戦の時は、近い。
その先に待ち受ける結末は…?

女体化したあの日から始まった
美少女な日々と戦いの果てに待つものは…!?

※果実夢想様(@fruitsfantasia)との
 リレー形式合作デス。
 内容は一切打ち合わせなしで、
 数百文字程度ずつで交代交代で書いた作品になります!
(※誰が書いているか、担当箇所ごとに表記しています (例 ②無名 など)

※本日の通常の小説は、既に更新済みデス
(この1個前にあります)


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51【果実】

「くっ……な、なんだと……!?」

 自分のシルクハットが床に落下し、男は驚愕に顔を歪める。
 そうだ。力を増強しているというシルクハットさえなくなれば、あとはもう普通の人間と変わりはない。

「貴様ァ……!」

 憤怒に彩られた瞳で俺を見下ろし、咄嗟にシルクハットを拾おうとする男だったが――。
 その寸前で、それは叶わなかった。

 俺が男の眉間に、銃口を突きつけていたから。

 手が震える。唾を飲み込む。
 俺は力の限り、引き金を引いた。

 甲高い、銃声が鳴り響く。
 男の眉間から赤黒い鮮血が吹き飛び――ゆっくりと、背後に倒れていった。

 やっぱり、銃を撃つのは怖い。
 だけど、ちゃんと俺でも戦えていることが嬉しかった。

「……ふっ」

 と。肌色のシルクハットの男と戦っていた相生さんがこちらを振り向き、小さく微笑んだのが見えた。
 だが、それはほんの一瞬のことで。

 俺なんかより数倍は俊敏な動きで銃口を上に向け、シルクハットに向かって撃った。
 銃弾はシルクハットを貫通し、その勢いでシルクハットは後方へ落下。

「――さよなら」

 そんな小さい呟きを掻き消すように。
 銃声が、辺りに轟いた。

52【無名】

「これはこれはー
 お久しぶりでございますー
 実無果名さんー」

銀色のシルクハットの男がー
笑みを浮かべるー。

”003”とシルクハットには刻まれているー。

「---銀城(ぎんじょう)…」
果名が表情を歪めるー。

銀色のシルクハットの男ー
銀城は笑みを浮かべたー

「--私に逆らっても”無駄”だと言うことはー
 あなたなら、よくお分かりだと思いますー。

 違いますか?」

銀城の言葉にー
果名は一緒にいる優姫の方を横目で見つめるー。

銀城 零(ぎんじょう れい)-。
彼はー果名の研究室の配下ー。

相生命を中心に性転換薬を研究していた研究所にはー
3つの研究室があったー。

第2研究室長だった、黒神凱亜の配下は、
ほとんどが第2研究室に所属していた人物ー

しかし、この銀城は例外ー
銀城はー
第1研究室のトップだった果名の腹心とも言える人物だった男ー

故にー
果名は”この男の危険性”を知っているー

銀城が”行動”を起こすときは、
何重にも下準備が行われていることを、意味するー。

つまりー
銀城が果名の前に姿を現したということはー
”抵抗したら死が待っていること”を意味するー

「--(あの子を巻き込むことはできない)」
果名は、両手を上げたー

優姫を、死なせるわけにはいかないー

「え…どうして…!?」
戸惑う優姫ー。

「---物分かりが早くて助かりますよ」
銀城はそう呟くと、
果名を車に案内するー。

「---あなたを黒神の元に連れていきます
 大人しくしていてくださいよ?」

銀城はそう呟くと、命たちと戦闘後に、
置き去りにされていた緑色のシルクハットの男と合流し、
彼に車を運転させてー
そのまま相生命や旭たちが戦っている
格納庫に向かって、車を走らせるのだったー。

53【果実】

 果名と優姫を乗せた車は、まっすぐ相生命や旭のもとへ向かって走り続ける。
 その間、会話が行われることはなく、車内は静寂そのものだった。

 優姫も、果名も、言葉が出ない。
 二人は、このまま黒幕だという黒神のところにまで連れて行かれてしまう。

 そこで、何をされるのかは分からない。
 だけど当然、過ぎていく時間に比例して、不安は大きくなっていく一方だった。

 この静かな空間が、余計に不安を煽らせる。
 優姫は目を閉じ、静かに祈る。
 早く。早く、この絶望から抜け出せるように――――と。

「……なん、だ……?」

 だが、そんな祈りも、次に発せられた奇妙な一言で中断せざるを得なかった。
 思わず頭を上げ、前を見る。
 緑色のシルクハットの男が車を運転させながらも、窓の外を見て驚愕に目を見開いている。

 訝しみながら、優姫もつられて外を見る。
 思わず、絶句した。

 空の色が、おかしい。
 赤い。朱い。紅い。まるで、この世のものではないかのように。
 まるで、魔界にでも迷い込んでしまったかのように。

 しかし、生じた異変はそれだけではなく。
 突如――緑色のシルクハットの男が背中から血を流したかと思うと、そのままうつ伏せに倒れてしまう。

「おい、どうし――銃痕、だと……?」

 突然倒れた緑色シルクハットの男。
 その体を確認した銀城は、誰にともなくそう呟く。
 そう。それは、車の中にいた彼を、誰にも悟られることなく一瞬で誰かが狙撃したということに他ならなかった。

     §

「――温い」

 男は、低い声で静かに呟いた。

「やっぱり、あいつらの考えは僕には合わない。そんなの、ただの力の無駄遣いでしかない」

 口々に独り言を述べ、持っていた銃を肩にかける。
 ただの銃ではない。
 大きな、狙撃銃だった。

 果名や優姫たちが乗っている車から、およそ数百メートル離れたビルの屋上。
 そこに、彼は立っていた。

 被っているシルクハットの色は、虹色。
 そして書かれた番号は――013。

「力を手にするには、相応の覚悟と、その力を扱いきれるだけの技量がなくてはいけない。それが、あいつらには不十分だ。あまりにも、脆く弱い」

 背を向ける。
 そして小さく足音を響かせながら、ビルを下りていく。

「だから、この僕が。この力も、この世界も、何もかも――」

 そこで一拍あけ、彼は言った。
 ニィッと、不気味な笑みを浮かべながら。

「――全てを、独占してやる」

54【無名】

ニィっと笑みを浮かべるー

金色のシルクハットに手を触れながら
黒神凱亜はほほ笑むー

「No,777-、母親との再会はもうすぐだッ…
 少年よー
 実の母親を前に、どうするのかなー?」

パッー

モニターに銀色にシルクハットの男
銀城が映し出されるー。

「--”虹”の襲撃を受け、”緑”がやられましたー」

銀城が淡々と告げるー。

「-なんだとッ? 果名は確保できたのか?」
黒神凱亜がそう呟くと、
銀城は笑みを浮かべたー

「---”虹”も私には手出しできませんよ」

銀城の不敵な笑みー。

黒神凱亜は”どこからそんな自信が…”と少し不気味に思いながらも
「ご苦労ッ、到着次第連絡しろ」
と、告げたー

銀城の映像が、消えるー。

「----」
背後に控えている青色のシルクハットの男が黒神凱亜を見つめるー

”銀”

”虹”

”金”

ボウッーー
と、青色のシルクハットの男が持っている球体が輝きー

そこにー
黒神凱亜と
銀城零ー

そして、”虹”の現在の様子が映し出されるー

「--ここまでは全て”予想”通りー」

青色のシルクハットの男が、黒神に見えないように微笑むー。

全てを支配するのはー
このーー
蒼樹 流星(あおき りゅうせい)-

なのだからー

「----」
青のシルクハットの男に背を向けながら立っている
黒神凱亜は、モニターを見つめながら、少しだけ笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--止まって!」

俺は相生さんに言われて立ち止まったー

ザッー

白色のシルクハットの人物が目の前に現れるー。
シルクハットを深々と被っているが、
その顔は見えないー

無言で銃を構える”白”

そのシルクハットには”777”の文字ー

「----」
相生さんが銃を構えるー

「---」
俺は白のシルクハットの人物のラバースーツ越しに見える
ふっくらとした胸を見つめたー

”女ー?”

銃を構えた相生さんー

俺も身構えつつ、”白”の方を見つめるのだったー。

55【果実】

 ――虹尾(にじお)依貴(よりたか)。

 それが、虹色のシルクハットを被った男の名前だった。
 彼は大きな狙撃銃を肩にかけたまま、静かにビルから出る。

「金、銀、青……そして、相生命に実無果名。あとは――あの兄妹、か」

 確認するように、独り言を呟く。
 そしてすぐに、ぷっと吹き出した。

「ふふふ……誰も、僕の敵ではない。全員、僕が鏖(みなごろし)にしてやるさ」

 依貴がそう言った、直後。
 ぽつぽつと雨が降り始め、やがて大雨に変わっていく。
 更に雷が鳴り――依貴に、直撃した。

「ふふ、ふははははっ」

 しかし、それでも彼は動じない。
 雷をその身に受けてもなお――否。正確には、体に受けてはいなかった。
 持っている狙撃銃で、雷を全て吸収していたのである。

 何分間も、銃口を天へ向け続け。
 やがて全てを吸収し終えた頃、空は再び元の色へ戻った。

「……誰も、僕には勝てない。誰も、この銃には勝てない。金も、白も――神ですらも」

 依貴は歩む。
 次なる、標的のもとへ。

「なぜなら――僕は、あの 凡人どもとは違うからだ。待っていろ、すぐにお前を――」

 銃を構える。
 そして――引き金を引いた。

「――葬ってやる」

 銃口から、先ほど吸収した雷を纏った銃弾が発射される。
 それは、とある場所へ向かってまっすぐに飛び続けた。

 やがて、黒神凱亜のいる建物に、雷が落下。
 途端に停電を起こし、全ての電気が止まってしまった。

「まずは、お前からだ」

 そう言って、依貴は嗤った。

56【無名】

白いシルクハットの女と対峙していた俺たちー

突然、照明が消えたー。
激しい音と共にー

”なにッー?”

黒神凱亜の声が聞こえるー

「---」
俺は警戒しながらも思うー。

黒神とかいう男の反応ー
あいつが、停電させたわけではないということ…なのか?

「--気を付けて!」
相生さんの声が聞こえるー

白いシルクハットの女が、蹴りを加えて来たー。

・・・・・・・・・・・

”ーーー到着しました”

銀城からの無線ー

「-わかった。今すぐ向かう」
黒神凱亜はそう返事をすると、
”青”に向かって

「”虹”の仕業か?」
と、呟くー。

「おそらくは」
青はそう答えると、
黒神が、格納庫の外に向かう階段に足を運ぶー。

「--ここは任せるッ
 俺は、銀城から果名の身柄を受け取りに行くー」

「-はっ」
青の返事を聞くと、黒神凱亜は、外に向かって歩き始めたー。

・・・・・・・・・・・・

「--どういうこと?」
果名が、少し離れた場所に停車している車の中から呟くー。

先ほど、雷のようなものが見えて
黒神凱亜たちのいる施設が停電を起こしたー

その直後、銀城は”到着しました”と連絡を入れたがー
銀城は、車の運転席でくつろいだままー。

運転席にいる銀城はほほ笑んだー

「--私を誰だと思っているのです?
 私が動くときにはー”何重にも準備が済んでいる”-

 それは、あなたもよく、ご存じでしょう?」

果名の方を見て、うすら笑みを浮かべる銀城ー。

”あなたは、いったい、何を考えているのー?”

果名は、そう思いながら心の中で呟いたー

・・・・・・・・・・・・

黒神凱亜は格納庫の外に向かって歩きながら、
相生命に告白した時のことを思い出していたー

”貴方こそー我が女神にふさわしいッ”

「--あんたと?笑わせないで」

”うぉぉぉぉぉぉぉぉ…このような悲劇繰り返してはならぬッ!”

”--私のように、振られてつらい思いをする人間を
 これ以上作りだしてはならぬッ!

 私は、これより全人類女体化計画を実行に移す!”
 

「---相生命ー
 私はただ、あなたと歩みたかっただけだッ…」

黒神凱亜はそう呟くとー
研究所が、発足した直後に撮影した写真を、ペンダントから取り出して見つめるー

命ー

凱亜ー

果名ー

そして、第3研究室の所長であったーーーーーーー

「---?」
黒神凱亜は足を止めたー

格納庫の前にやってきたのにーーー
銀城がいないー

そしてー

パァン…!という音が響いたー

「----!」
黒神凱亜は、表情を歪めたー

何が起きたのか、
理解できなかったー

がーーーー
数秒後に、理解したーー

理解した時にはー
黒神凱亜は既に命を落としていたーーー

”虹”がいるのは分かっていたー
だが、”銀城”なら”虹”対策もしているはずー。

だから、格納庫の外に出てきたー

その”銀城”がいなかったー

なぜー?

・・・・・・・・・・・・

「--♪」
口笛を吹く虹尾依貴ー

「まずは、黒神ー

 そしてー」

手元のスイッチを押すー

格納庫から少し離れた場所の車が爆破されるー

「---銀ー」

虹尾は笑ったー

「あとはーー」
格納庫の方に、歩き出す虹ー。

その様子を格納庫の中にいる蒼樹流星は、謎の球体を通じて知るー。

ニィー
と、笑みを浮かべる”青”

”---聞こえますか?”

青が、笑みを浮かべながら
格納庫で戦っている命たちに声を掛けるー。

「-!」

非常電源が入り、格納庫が薄暗いながらも照らされるー。

”--黒神凱亜は死にましたー
 ”虹”の手によってー

 でも、安心なさいー。
 ここに虹が入って来るまでにはまだ時間が掛かるー

 それまでじっくりー
 楽しみなさいー

 ”母親”との戦いを…ね?

 ひゃははははははははっ”

本性を現した青ー。

俺はその言葉を聞いて、耳を疑ったーー

「母…親…?」

まさかー
目の前にいる白いシルクハットの女はー?

・・・・・・・・・・・・・・

「--さっき、車を乗り換えたのは、そういうわけ」

果名が言う。

「-そうです。これで虹は、私が死んだと思うでしょう」
銀城は、笑みを浮かべながら余裕の表情で
”爆破された車とは別の車”から、格納庫の方に向かう
虹の姿を見つめたー

57【果実】

「どういう、ことだよ……?」

 そう呟いた俺の声は、自分でも分かるくらいに震えていた。
 しかし、眼前のラバースーツに白シルクハットの人物は、何も答えない。

「……ちっ、どこまでも腐った奴ら」

 相生さんも、忌々しげに舌打ちを鳴らす。
 いや、違う。そんなの嘘だ。
 そんなこと言われても、信じられるわけが――。

「旭ッ!」

 ふと。相生さんの、切羽詰まったような叫び声が聞こえ、俺の意識は我に返った。
 そして――。

 俺の頬を銃弾が掠め、すぐ背後の地面に当たった。

 たらり……と、頬から血が流れる。
 目の前の白シルクハットの女は、こちらに銃口を向けていた。

「ぼさっとしないで! 死にたくないなら!」

 袖で血を拭う。
 そうだ、相生さんの言う通りだ。
 あの人がほんとうに母親だなんて信じられるわけないが、それはあとで確かめればいい。

 俺も銃を構える。
 今の俺は、もう前までの俺じゃない。
 少しではあるものの、既に何人かシルクハットの男を倒してきているのだ。
 こんなところで、やられるわけには――。

 パンッ!

 甲高い音が鳴り響いた。
 俺の手に鋭い痛みが走ったかと思うと、持っていた銃を弾き飛ばされてしまう。

 今のは……もしかして、俺の手を撃って銃を弾き飛ばしたのか……?
 全く見えなかった。
 まさか、そんな早撃ちをしてくるなんて。

「ちっ……油断しないで。いくよ、旭っ!」

「ああ……!」

 相生さんの叫びに呼応し、俺は銃をすぐさま拾って。
 二人同時に駆け出した。

58【無名】

「--私があいつを引き付けるから、アンタはシルクハットを狙って!」
相生さんが叫ぶー

そうだー
赤いシルクハットの男のようにー
もし、あれが母さんなのであればー。

白のシルクハットを狙えばーーーー

”くくくく…素晴らしいー
 私に最高のショーを見せてくれー

 ”力”とは、支配者の象徴ー
 性転換薬は”力”-。
 私はこの力で、世界に名乗りを上げるー”

”青”
蒼樹流星の声が格納庫内に響き渡るー

「--俺は、負けない」
俺は、白のシルクハットを狙って走り出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・

格納庫の外の車の運転席に座る
”銀” 銀城 零が呟くー

「-ーこれで虹も青も、私が死んだと思っているでしょう」

銀城は笑ったー。

「--あなたの目的はいったい…」
果名が言うと、銀城は笑うー。

「---そしてあなたも、”死んだ”と、虹と青は思っているでしょうな」
とー。

「---?」
果名と優姫が首をかしげるー。

「---こんなところでボサッとしていて、良いのですか?
 私とそこの娘 以外、”あなたが生きている”とは思っていないー

 今がチャンスー
 違いますか?」

銀城が、後部座席の果名のほうを振り返るー

「チャンス…?」

果名が呟くー。

銀城は、”あえて”黒神らの仲間のフリをして、
果名や命を助けてくれているのではないかーー
果名はそう思ったのだったー

「銀城…もしかして、あなたは…」

果名は、

ここまで車で銀城が果名らを連れて来たのは
”他のシルクハット”に狙われないようにするためー

先ほどの車の乗り換えはー
”虹”と”青”から、果名が銀城ごと死んだと思われるように
仕組み、果名のとってのチャンスを作り出すためー

そしてー
黒神を呼び出して虹が黒神を狙う様に仕向けたのはーー
黒神を始末するためーー

ーーなのではないかと、頭の中で考えた。
そして、呟くー。

「--あたしたちのために、あえて黒神の仲間に…?」
果名が言うと、
銀城は笑ったー。
 
「---さぁ、どうでしょうね…」

その言葉に、果名は少しだけ考えると
「どうせあんたのことだから…全て下準備してあるんでしょ?」とだけ
呟いて、車から降りるー。

「---えぇ…私は”勝てる戦い”しか、しませんからね」
銀城は運転席に座ったまま笑うー。

果名は、迷いながらも
銀城が”作ってくれた”チャンスー

青と虹に自分が死んだと思われているこのチャンスを生かしてー
格納庫の方に走って行ったー

青と虹を倒しー
全てを終わらせるためにー

「-----」
銀城が少しだけ笑うー

「--あの」
後部座席の優姫が口を開くー

「--ん?」
銀城が振り返ると、
優姫が、死んだ”緑”の男が被っていた緑色のシルクハットを指さしたー

車でここに来るまでの間に
銀城と果名が”シルクハットは力を強化するため”と会話していたのを
聞いていた優姫は、シルクハットを指さしながら言ったー

「---わたしでも、それ被れば、”力”が手に入るの?」
優姫の言葉に、銀城は笑うー

「-お嬢ちゃんには、似合いませんよ」
とー。

「---似合わなくてもいい!わたしはお兄ちゃんを助けたいの!」
優姫の言葉に、
銀城は、優姫を見つめ返すと、
静かに呟いたー

「--どうなっても責任は取りませんがね…
 好きにすればいい」

銀城の言葉に、優姫は「ありがとう!」と叫ぶと
車から飛び出して、緑色のシルクハットを手に、格納庫へと
走り出したー

59【果実】

 俺と相生さんは、二人で白のシルクハットを被った女と戦っていた。
 ずっと、相生さんが引きつけてくれており、俺はその隙にあのシルクハットを狙い撃つだけ。
 おそらく、こいつも他のやつらと同じように、あのシルクハットがなくなれば俺たち普通の人間と変わらなくなるだろうから。

 それだけのはずなのに。
 相生さんが、一人で奴を引きつけてくれているというのに。
 俺が隙を狙って撃とうとした瞬間に、こちらを振り向いて早撃ちをしてくる。
 俺の銃弾と奴の銃弾が衝突し、相殺されてしまうのだ。

 今までの男たちよりも、数段銃の扱いが上手すぎる。
 あのシルクハットだけで、こうまで人並み外れた力を手に入れてしまえるのか……。

 もう、あれからどれだけの時間が経ったのだろう。
 あの女に一撃も与えることはできず、ただこちらの体力が尽きてくるだけだった。
 俺たちも攻撃を食らっていないが、このままでは体力の関係でじり貧となるだろう。

 でも、俺は少し疑問に思っていることがあった。
 こいつの銃の腕ならば、俺たちを瞬殺することなど造作もないはずだ。
 そう、本気になりさえすれば。
 少なくとも、ここまで時間がかかってもなお、俺たち二人とも無傷とはならないだろう。

 まるで、わざと生かしているかのような――。

 いや、だめだ。
 さすがに時間をかけすぎた。もう、体力が限界に――。

「あ、旭っ!」

 相生さんが、甲高い叫び声を響かせる。
 前を見ると、白シルクハットの女が、俺に向かって凄まじい速度で肉薄してきていた。
 何で、銃を撃たない――?

 そんな俺の思考を掻き消すかのように、女の蹴りが迫り――。

 パンッ! と、乾いた音が鳴り響いた。

 女の足元に一発の銃弾が放たれ、女は蹴りを空中で止める。
 そんな彼女をよそに、俺の視線ははとある一ヶ所に注がれていた。

 そこには――緑色のシルクハットを被った、優姫が立っていた。
 こちらに、銃口を向けて。

60【無名】

「あはは!なんだその格好は?」

俺の緊張感がー
ほぐれたー

緑色のシルクハットを被った優姫を見てー

「う、、うるさいわね!助けに来たんだから、感謝しなさいよ!」

優姫のその姿を見ながらも、
俺は”理解”したー。

力を得て、俺たちを助けてくれたのかー。

とー。

「--ははははは、笑いが止まらねぇ…」

「--お兄ちゃんだって、女の子のままだし!」
優姫が叫ぶー。

「--はは、確かに、お互い変な姿のままだな!」

俺はそう言うと、
かすかに動揺が感じられる白いシルクハットの女の方に向かって走り出したー。

”今がチャンス”

あのシルクハットをフッ飛ばせばー
あの人が母さんだとしても、正気を取り戻すはずだー。

「---ククク…生意気な餓鬼たちだ」
蒼樹流星はコントロールルームからその様子を見つめるー

そして、手に持った謎の球体で
”虹”の様子を確認するー

”虹尾もそろそろ到着する頃…か”

蒼樹流星は笑みを浮かべるー

「--だがー
 性転換薬を手にし、”強大な力”を持って
 世界を支配するのは、この私だー」

「---No016ー迎え撃て」
”青”はそう呟くと、
”まだまだ楽しもうじゃないか…”と、
笑みを浮かべたー

”サイコパス”
昔から、彼はよくそう呼ばれていたー

そう、私はサイコパスだー。
どんな物事も楽しんで楽しんで、最後に、勝つー。

それこそーー
最高の快楽なのだー。

・・・・・・・・・・・・・・・

「---」

ザッ

「--へぇ」
格納庫を進んでいた”虹”は笑みを浮かべたー。

「---銅厳(どうげん)、僕の邪魔をしないほうがいいよ」
虹尾が、No016と書かれた銅のシルクハットを被る男に語り掛けるー。

「--それは、吾輩の台詞だ」
立派な髭を蓄えた銅のシルクハットの男が、
虹尾に銃を向けたー。

⑦へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

次回(明日掲載)が最終回デス~!

以前も、打ち合わせナシ リレー合作を別の方としたことがありますが
その時よりも、まとまった感じになっている…
ような気がします~!
(前は急に魔界に飛ばされたりして大変でした!!)

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