昆虫の”女王”に身体を乗っ取られてしまった篠原怜奈…。
今や彼女は、”心を消されてしまい”完全にクィーンに肉体を
奪われてしまっていたー。
虫を身体に這わせ、人類に宣戦布告した怜奈と、人類の戦いの行方は…?
※昆虫の逆襲 の新シリーズデス!
⇒過去の昆虫の逆襲はこちら
※過去作を読んでいなくても、話が分かるようにはしてあります!!
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「-「これはお前達への復讐…
私たちは、お前達に何万、
いえ、何億という数、殺されてきた…」
「---ーーだが、そんな時代は終わった。
今度は、わたしたちがお前らの大切なものを
奪う時代になるのよ」
身体中にあらゆる虫を這わせながら、
女子大生・怜奈が両手を広げて高らかに宣言するー。
怜奈はー
普通の女子大生だったー。
同じ大学に通う彼氏・塚本 卓也(つかもと たくや)と共に
送っていた幸せな大学生活ー
だがー
”虫”に対して厳しい卓也は、”昆虫の女王”の怒りを買ってしまったー。
ちょうど、人類に対して復讐を目論んでいた昆虫の女王・クィーンは、
卓也の彼女・怜奈に憑依、その身体を、彼氏の卓也の前で
完全に乗っ取って見せたー。
虫を迫害する人間に対する復讐のスタートとして
”昆虫に厳しい彼氏”を持つ怜奈の身体を乗っ取ったのだー。
「---ホラ、見て…
わたし…こんな風に虫に支配されちゃった…!
みんなも、わたしみたいに、
虫の為に働く”体”になるの!
もうわたしは、虫たちの意のまま!
体の中に入った虫に、
この綺麗な体も、記憶も、精神も、人生も!
ぜ~んぶとられちゃった!」
そして、怜奈は人類に宣戦布告したー。
乗っ取られた姿をテレビで見せつけー、
”お前たちもこうなるのだ”と
全人類に宣戦布告したのだー。
各地で駆除隊が結成されー
政府も対応に当たったー。
しかし、各地の昆虫がクィーンに呼応するかのように
狂暴化し、人類を襲い始めたために、
人類は”昆虫に押されていく”という未曽有の危機に
陥っていたー
怜奈の彼氏である、卓也も既に命を落としてしまったー
だが、人間も負けてはいなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---篠原怜奈は今、どこに?」
昆虫対策のために、特別に組織された
特殊部隊の隊長が作戦本部で呟くー
作戦本部の敷地には多数の殺虫灯が
設置されており、昆虫たちを駆除し続けているー
「--分かりません」
隊員の一人が答えるー。
「--しかしまさか、人間の肉体を乗っ取るとはー」
隊長の久保塚 忠雄(くぼづか ただお)は戸惑いながら
言葉を口にするー
「--篠塚怜奈にコントロールされるかたちで各地の昆虫は
狂暴化したー。
だが、狂暴化したとは言えー…」
参謀の男は、テントから顔を出すと、
殺虫灯の餌食になっている昆虫たちを見つめたー
「所詮は昆虫…」
参謀が呟くー
”統率”が取られていてー
篠塚怜奈という”女王”が命令を下していることで、
脅威となったがー
個々の力自体は脅威ではないー
「--つまり、篠塚怜奈を潰せば、
各地の昆虫たちは元の状態に戻りー…
この戦いは終息するー」
隊長の忠雄が呟くと、
参謀は笑みを浮かべたー。
「---ですが」
オペレーターを務める・鈴(すず)が呟くー。
「--篠塚怜奈さんのご両親からの嘆願もありますしー、
何より政府が、篠塚怜奈さんへの攻撃を許可していません」
「--むぅ…」
忠雄は戸惑うー。
この国はー
法治国家だー。
”昆虫の女王に乗っ取られたから”と
篠塚怜奈という一人の人間を射殺する許可は
降りないー。
大臣たちが、顔を突き合わせて会議を繰り返しているものの、
結論は出ないー。
「くそっ!篠原怜奈ごと、やつらのクィーンを葬るのが
一番の近道だと言うのに!」
机を叩く隊長の忠雄ー。
篠原怜奈は、完全に昆虫の女王を名乗る存在に支配されているー
生前、怜奈の彼氏であった卓也という男の証言から、
昆虫駆除のために結成されたこの特殊部隊も、それは把握しているー
既に、”篠原怜奈という女性は死んでいる”
特殊部隊の本部は、そう結論付けたー。
しかしー
政府は、それを良しとしなかったー。
世論もある。
仮にー
篠原怜奈がもう絶対に助からないのだとしても、
女子大生の身体を葬り去るー、
ということは、この国では、できないのだー
「---…隊長…」
参謀の男が口にしたー。
「このまま、昆虫を駆除し続けても、キリがありません。
やはり、篠原怜奈を取り除くべきかと」
参謀の言葉に、
忠雄は戸惑うー。
「だが、どうやって?
上の連中は、人道的対応がどうこう言って、
話し合っているだけだぞ?」
忠雄の言葉に、参謀は
「ですが、このまま昆虫を駆除し続けてもキリがありませんし
犠牲は甚大です。
それにー
昆虫の数が激減しても
生態系に狂いが生じる可能性があります。
やはり、篠原怜奈を始末するしかありません」
「--だから、どうするのだと聞いているのだ!」
忠雄が、回りくどい参謀に対して声を上げたー
「”事故”」
参謀が呟くー
「--”事故”であれば、誰も、文句は言えないでしょう?」
とー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「-----ふふふ、可愛い子たち」
自分の身体に這わせた虫を撫でる怜奈ー。
怜奈の自我は完全に乗っ取られているー
怜奈を乗っ取ったクィーンは、彼氏の卓也に対して
”怜奈の意識は既に消えた”と断言していたー。
「----」
だがー
怜奈の瞳には時折、悲しみのようなものが映るー
「--愚かな人間どもよー」
服の代わりに、身体に張っている虫たちが、
胸やアソコを隠した状態の怜奈が笑うー
「--我らの怒りを思い知るがいいー!」
怜奈は鬼のような形相でそう叫ぶとー
目をつぶるー。
各地にいる”虫”たちに指令を下しているのだー。
”クィーン”の存在によってー
昆虫たちは、”団結”し、人間を敵視、攻撃し始めたー。
それから既に、1年近くが経過したー。
しかし、人間たちも必死に怜奈たち昆虫に抵抗ー
戦いは続いていたー。
「----人間どもは、この身体に手出しはできまい」
怜奈は嬉しそうに自分の身体をなぞるようにして触るー
「--ふふふふふふふふ…あはははははははっ!
お前たちの破滅は目の前だー
地球は我ら昆虫のものになるのだ!」
怜奈はそう叫ぶとー
アソコからー
蜜のようなものを、まるで尿を出すかのように
放出しー
近くの虫たちが嬉しそうに集まって
その蜜を吸い始めたー
怜奈の身体はーー
もはや”変質”を始めていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
特殊部隊が、怜奈の居場所を突き止めるー。
街の中心部にそびえ立つビルー。
昆虫たちによって占拠された地域の一角に存在するそのビルの中にー
怜奈がいることが判明したー。
「---篠原怜奈の居場所を知っているのは、我々だけか?」
隊長の忠雄が言う。
「---はい 上には”昆虫の拠点を発見した”と報告してあります」
副隊長の男が言うー。
”昆虫の拠点破壊作戦”は
今までに何度も行っているー
参謀の作戦はー
”ここに怜奈がいる”とは知らなかった、ということにしておき、
怜奈ごとビルを破壊する、というものだったー
勿論、後々問題になる可能性はあるー
だがー
”不慮の事故”であれば仕方がないー。
国は動かないー。
篠原怜奈という人間の自我が、
仮に完全に失われているとしても、
人道的に反する、だとか
世の中の”反対”の声に押されてー
いつまで経っても決断することができないままー
このままでは、人類はいずれ昆虫に押されて
壊滅してしまうー。
”害虫の発生源”を放置している状態で
害虫を駆除し続けても、キリがないのと同じだー
”元凶”を叩かねばなるまいー
”ふふふふふふふふふふ!
ようこそ、愚かな人間どもよ”
怜奈の声が響き渡ったー
かつての穏やかな怜奈のことを知る人間は、もう、ほとんどいないー
全国の人間は、
篠原怜奈という人間を”恐怖の対象”として、見ているー
乗っ取られる前の怜奈を知っている人間はごくわずかー。
怜奈と面識がなかった人間からしてみれば
元々の怜奈がどんな人間であったにせよ
”恐怖の象徴”でしかないのだー
「--お前は終わりだ!このビルは完全に包囲した!」
隊長の忠雄が叫ぶー
「ーーーふふふふ」
怜奈は不敵に笑うー。
そして、ビルの中のモニターに映像が映し出されるー
映し出されたのは、怜奈の顔ー。
怜奈が”テレビ”を乗っ取っているのだー。
「--きゃあああああ!助けて!!わたし、、殺される…助けて…!」
怜奈が突然、テレビのチャンネルの一つを乗っ取って
叫び始めるー。
全国に向かってー
「--!?」
忠雄が戸惑うー
「--わたし、殺されちゃう!怖い人たちに、、
わたし、、乗っ取られているだけなのに…!
助けて…!
場所は…」
怜奈は、テレビを乗っ取りー
人々の同情を買うような映像を流すー
本当は怜奈が喋っているわけではないのにー
怜奈のふりをするクィーン
「--たすけて!わたし、死にたくないー!」
怜奈の言葉は、全国に拡散されたー。
「--くそっ!」
忠雄は戸惑うー。
参謀も舌打ちしたー
これでは”命令無視で乗っ取られたかわいそうな女子大生ごと昆虫を駆除しようとした悪”
として、世間に拡散されてしまうー。
「---たすけて!!!わたし、、身体を乗っ取られてるだけなの…!
お願い、たすけて…!」
怜奈本人の意識ではないー
怜奈に憑依した昆虫のクィーンが
”怜奈のフリ”をしているだけだー
だが、このまま怜奈を殺せば
”世間”は黙っていないだろうー。
もちろん”上”もだー。
仮に女王を倒しー
昆虫たちが人間を積極的に襲う現在の状況を
解決させたとしても、
忠雄らは”悪”として世間から猛バッシングを受けることにーーー
「---くくく」
参謀が笑ったー
「--!」
忠雄が参謀の方を見るー
参謀は言うー
「こうなることは、分かっていましたよー」
とー。
だがー、と、参謀は続けるー
「ここまで来たからには、もう引き返すことはできないでしょう?」
参謀の言葉に、忠雄は「お前…」と呟くー。
参謀の男にはー
怜奈が追い詰められれば、人間の心理を利用することは
”予想”できていたー。
”わたしは乗っ取られてるの!たすけて!”と叫べば
”怜奈を殺すべきではない”と主張する人間たちが
増えるし、うるさくなるだろうー。
だが、それでも、怜奈を仕留めなくてはならないー
もう、彼女は、完全に乗っ取られて死んでいるのだー
身体は彼女のものでも、
彼女の魂は、もう、そこにはないー
仮に残っていたとしても、
このままでは
”篠原怜奈一人のために”
世界は昆虫に支配されてしまうー
それは、避けなくてはいけないー
「--お前…わざとこの状況に持ち込んだなー?
俺が引き返せない状況になるように…?」
忠雄が言うと、
参謀は「ええ」と頷いたー
「-----」
隊長の忠雄は頭をかきむしるー。
「-これで、もう退くことはできません。
我々はどのみち、上の命令を無視して
篠原怜奈ごと、昆虫の女王を葬ろうとした悪人ですー
世間的には、ね」
参謀の言葉に、
隊長の忠雄はしばらく考え込んでいたがー、
「--それでも、篠原怜奈を倒さねば
人類は昆虫によって、滅びる、かー」
と、呟くと参謀の方を見つめたー。
「わかったー。
我々がたとえ悪党扱いされようとー…
戦うしかないー
そう言いたいんだな?」
その言葉に、参謀は頷いたー。
例え自分たちが悪人にされてしまおうと、
今、ここで篠原怜奈を葬り去らなければ
昆虫との戦いは永遠と続き、人類は疲弊し、滅ぶー。
そうなる前にー
「---よし、行こう」
隊長の忠雄は、同じく戦う決意を固めた部下たちを見つめながら
乗っ取られた怜奈の待ち受ける、上層階を目指し始めたー。
<後編>へ続く
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次回が最終回デス~!
火曜日の小説だけ、私のスケジュールの都合上書置き(予約投稿)なので、
続きはまた来週の火曜日になります~
少しお待たせしてしまい申し訳ありませんが、来週までお待ちください!!
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