<憑依>芝居のはずがホントに憑依されました①~演~

憑依シーンが存在する劇の最中にー

劇中で、憑依される役者が、本当に憑依されてしまって…?

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とあるホールでは、
劇団による劇が行われていたー。

”守るべき姫様が、倒すべき魔王に”という
キャッチコピーの劇で、
魔王軍にさらわれた姫が、魔王に憑依されてしまって
主人公の騎士と敵対することになってしまう、というお話だったー。

”ポゼッション・プリンセス”

この日も、その劇の上演が行われていたー

「--姫様ーーー!」

「リチャードーーーー!」

劇は、この日も順調に進行していた。

物語の舞台・ルード王国。
王国の姫である、ネール姫がさらわれてしまうところから、物語が始まるー

「ガハハ!姫は我が貰っていくぞ!」
大魔王・サタンが、ネール姫をさらうー。

主人公である騎士・リチャードは悔しそうに空を見つめー、
姫を守り切れなかったことを悔い、
”しばらく様子を見るべきだ”という王国の大臣たちの方針を無視し、
騎士団の長としての位を返上、リチャードは魔王を倒すためのたびに出たー。

行く先々で色々な人々と出会い、
仲間を増やしー、
魔王の部下たちと戦うー。

そしてー場面は、魔王城に突入するところまでやってきたー

劇場の幕が下りるー
観客席が明るくなると
”これより、15分の休憩に入ります”とアナウンスが流れたー

「--後半はアクションが激しいからなぁ」
リチャード役の男・田所 弥一(たどころ やいち)が、汗をぬぐいながら言うー

「----まぁでも、由紀乃(ゆきの)さんよりマシかぁ」
恭一が笑いながら
ネール姫役の眞上 由紀乃を見つめるー。

「--そうですね~…切り替えが結構大変ですよね…
 あと、この格好でアクションするのとかも」
由紀乃が笑うー

このあと、ネール姫が大魔王サタンに憑依されて
騎士・リチャードと戦う場面があるー。

その際に、由紀乃もそれなりにアクションをするのだが、
この姫としての格好でアクションをするのは
正直、なかなか大変だった。

「--でも、由紀乃さん、
 いつもホントに魔王に憑依されてみたいな迫真の演技するから、
 こっちも負けてられないや!って気持ちになるよ」
弥一が言うー。

「--ふふ、ありがとうございます。
 後半も頑張りましょうね」
由紀乃が微笑むー

大魔王サタン役の又原(またはら)は
緊張しているのか、ずっと深呼吸をしているー。

それなりにベテランなのだが、
いつも緊張していて
”舞台は何年やっても緊張しますねぇ”などと、
いつも口にしているー。

そうこうしているうちに、休憩時間が終わるー

”これより、ポゼッションプリンセスの後半の部を
 上演いたしますー

 移動の際は、足元に気をーー”

アナウンスが鳴り響く中ー
劇場内は再び暗くなっていくー。

そして、後半の部が始まったー

「--これで、終わりだー!」
騎士リチャードが、
魔王軍の大幹部・ギドラテックオルガを倒すシーンからー

「GUOOOOOOOOO!!!」
ギドラテックオルガが悲鳴を上げて倒れるー

ついにー
魔王とリチャードが対峙するシーンが始まるー

「がはははは!よく来たな!騎士・リチャードよ!」
大魔王サタンが笑うー

「--リチャード!たすけて!」
ネール姫が叫ぶー

「--姫様!今、助けます!」
リチャードが叫ぶー。

「--がはは!我を倒す?
 魔界の闇を支配し、統べる、この我を?」

大魔王サタンはそこまで言うと、
笑みを浮かべたー

「---貴様に本当の闇を見せてやるー」

シュウウウウーーーー

煙が舞台上に出現するー

これも”いつもの”演出だー。

「えーー、なに、、なにこれ?」

魔王サタン役の又原が、煙で自分の姿が
見えなくなったタイミングで、舞台の脇に下がっていくー

”がははははは!我は実態を持たぬ存在”

舞台の脇に下がった又原が、声だけを響かせるー

「--なんだと!」
騎士リチャードが叫ぶー

これも、いつもの演出ー

ネール姫が「ひっ!」と声をあげるー。

ネール姫の元に煙が集まっていきー
そして、効果音が流れー
ネール姫が、大魔王サタンに憑依される場面が、
描かれたー

「--ひぅっ!」

だがーー
ネール姫が、台本にないはずのビクン、と震える仕草をしたー。

アドリブだろうかー。

舞台にアドリブは、よくあるものだー。
リチャードは「姫様!」と、そのまま演技を続けるー

「---我に触れるな!」
ネール姫が、リチャードを突き飛ばすー

「--!?」
突き飛ばされたリチャードは驚くー

”台本と違う”-

いつもは、リチャードがネール姫に駆け寄ると、
ネール姫が静かに目を開き、
リチャードが、闇の減界を感じて
ネール姫から離れるー

と、いう流れだー

しかしー
今日は、ネール姫にいきなり突き飛ばされたー

”えっ…”

リチャードは戸惑いながら
ネール姫の方を見るー

「--我は魔王ガロンー」

ネール姫が叫ぶー

「--ま、、ま、、魔王、ガロン?」
リチャードは戸惑うー

ひとまず、劇としての体裁を整えられるように、
咄嗟にそう叫んだがー
リチャード役の弥一は内心では戸惑っていたー

”え、、ちょ、由紀乃さん?
 魔王ガロンとか聞いてないケド!?!?
 魔王の名前は、、サタンだけど!?!?!?”

弥一は戸惑うー

「--愚かな人間どもよー
 我がまとめて、滅ぼしてくれる!」
ネール姫が叫んだー。

そして、ネール姫が何かを唱えると、
ネール姫の手に、剣が出現したー

「--!?」
リチャードは戸惑うー

”なんの、特殊演出だ!?”
とー。

ネール姫役の由紀乃の手に、
突然剣が出現したー

ように、リチャード役の弥一には見えたー

「--!?!?」
弥一が、舞台裏に隠れるようにして、
魔王サタンの声を演じている又原の方を見るー

”又原さん!?台詞は!?”
と、目で訴えるー

このあと、
魔王サタンの声で
”我はネール姫とひとつになった”と叫ぶ場面だー

だがー
又原は何も言わないー

何か目で合図をしているー

「--え???」
リチャードが戸惑っているとー
ネール姫役の由紀乃が剣を手に近づいてきたー

「-!」
リチャードが作り物の剣で応戦するー

”魔王サタンの台詞なしでアクションシーン?”
弥一は戸惑いつつも、
「貴様…魔王サタン!姫様の身体から出ていけ!」と叫ぶー。

いつもの台詞だー

「魔王サタン?」
ネール姫が笑うー。

「---我は、魔王ガロンなり!」
ネール姫役の由紀乃の身体から、衝撃波のようなものが飛ばされて、
リチャードが吹き飛ばされるー

「がはっ!?…え…えっ!?」
リチャードは戸惑うー。

何だ今のー?
ワイヤーアクション?
いやー
自分の身体にワイヤーはついていないー

これはいったいー?

ネール姫が襲い掛かって来るー
剣で必死にそれを防ぐリチャードー

だがーー

「--愚かな人間め!」
ネール姫がそう叫ぶとー
ネール姫の持っていた剣がー
リチャードを切り裂いたー

ぶしゅうう!

赤い血が吹き飛び、観客の一部が悲鳴を上げるー

だが、観客たちは
これが”演出”としか思っていないー

「がっあっ!?」
リチャード役の弥一が膝をついたー

”え…?”
リチャード役の弥一は慌てて腹部を触るー

”え…????”
血の演出なんてないはずー

しかも、
この”痛み”はーー

「-ぐふふふふ…この女も、この世界も、我のものだ!」
ネール姫は大声で叫んだー

「--我は魔王ガロンなり!!!!!」
ネール姫役の由紀乃の目が、おかしいー

まるで、正気を失っているかのようにー

「---は、、、え…」
苦しそうに蹲ったまま立ち上がれないリチャード。

「お、おい…なんかおかしくね?」
観客の一部も「異変」に気づき始めたー

まるで、リチャード役の弥一が、本当に苦しんでいるかのように
見えたからだー

ざわつき始める観客席ー

「ふん」
ネール姫役の由紀乃が壇上の真ん中に歩いていくと、
「愚かなゴミどもが、たくさんおるわ…!」と
凶悪な笑みを浮かべたー

「な、、な…由紀乃さん、、、何が…?」
リチャード役の弥一は苦しみながら由紀乃の方を見るー

まるで、意味が分からないー

「く…」
リチャード役の弥一は斬られた部分をさりげなく確認するー

”くそっ…本物の剣なのか…?”
どう考えても血糊などではないし、
そんなもの仕込んだ覚えもないー
リアルの血が出ているーー

だが、同時に弥一は思うー

”傷はそこまで深くはなさそうだな…”

リチャード役の弥一は、そう判断したー。
血はそこそこ出ているが、
致命傷ではないー。

驚きから、過剰に痛みを感じてしまっていたが、
動けないレベルではないー。

「---…魔王…!」
リチャードとして、弥一が叫ぶー。

「---ほぅ まだ立ち上がれるか」
ネール姫役の由紀乃が振り返るー。

”くそっ…何が起こっている…?”
そう思いながらも、リチャード役の弥一は
”アドリブ”での劇を続けるー。

「--魔王…サタン、いや、魔王ガロンと言ったな?」
リチャード役の弥一が叫ぶと、
ネール姫役の由紀乃は笑ったー

「サタン?そんな魔王は魔界にはおらぬ。
 魔界はこの我・ガロンが支配しているのだ!」

ネール姫役の由紀乃の身体から、
紫色の霧のようなものが放たれるー

観客たちは、どよめいているー。

リチャード役の弥一は、
ネール姫役の由紀乃と戦いを始めるー

由紀乃に近づいた隙を見て、
弥一が小声で語り掛けるー。

「由紀乃さんっ、これはいったい…?」

「--ゆきの?この人間の名前か?」
由紀乃が小声で答えたー。

「--台本が直前で変わったのか?」
弥一が確認するー

だがー

「だいほん?何を言っておる?
 それにー…
 貴様、勇者の癖に、偽物の剣を持っているようだなー」

弥一が由紀乃の目を見るー

由紀乃の目はーー
どこか輝きを失っているように見えたー。

”まさか、本当に憑依されて…?
 いや、そんなはずはー”

「--ぐあっ!」
由紀乃に蹴り飛ばされる弥一ー

舞台脇の方に吹き飛ばされた弥一は、
観客たちから見えない位置に飛ばされたことを
瞬時に確認すると、
狼狽えている魔王サタン役の又原に話しかけた。

「--又原さん!…由紀乃さんの様子がおかしい!」
弥一の言葉に、又原は「あ、、あぁ、わかってる!」と
狼狽えながら答えたー

「--もしかしたら観客も襲われるかもしれないー」
弥一が血を押さえながら言うと、
又原は「ひ、避難させよう!」と叫ぶー

だがー

「待て!」
弥一が叫んだー

「--何が起きてるのかは分からないが、
 とにかくアドリブでこのまま劇を続けるー…

 裏方のやつらにも、そう伝えておいてくれー」

弥一らが所属する劇団の裏方たちも、当然
由紀乃の脚本外の行動に唖然としていたー
じきに止めに入るかもしれないー

「---…いや、いや、由紀乃さんの様子がおかしいなら
 止めたほうがいいだろ?
 ってか、由紀乃さん、どうしたんだよ?」

魔王サタン役の又原はなおも戸惑うー

「わからないー…でも、本当に憑依されたのかも」

「は?」

さらに狼狽える又原に背を向けると、
リチャード役の弥一は立ち上がるー

「--俺が由紀乃さんと戦うー
 俺は、劇を続けるー

 でも、もしも俺が倒れたら、その時は劇を直ちに中止して
 観客を避難させてほしい」

リチャード役の弥一がそう言うと、
さらに付け加えたー。

「--どんな状況でも、俺はお客さんを楽しませるために
 ここに立っているんだからなー」

それだけ言うと、弥一は再び観客たちから見える位置に戻るー

「やるじゃないか。魔王ガロン!
 だが、ネール姫の身体から、出ていってもらうぞ!」
リチャードとして弥一が叫ぶとー
”本当に憑依されてしまった”ネール姫役の由紀乃が不気味な笑みを浮かべた-

②へ続く

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コメント

劇の最中に本当に憑依されてしまった…!
と、いうお話デス~☆

続きはまた明日書きます!!

憑依<芝居のはずがホントに憑依されました>
憑依空間NEO

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