<憑依>餅で幽霊になった男②~幽体~(完)

餅を食べていた際に
喉に詰まらせてしまった男性ー。

幽霊になって彼女に憑依した彼の運命は…?

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「------ふふん」
腰に手を当てて挑発的なポーズをとる里穂ー

「--はぁぁぁ…自信に満ち溢れた里穂…
 いいなぁ…」
里穂はニヤニヤしながら姿見を見つめるー

慎吾は、自分が餅を喉に詰まらせて
幽霊になってしまったことを忘れるほどに
興奮しながらー
自分の部屋で、里穂の身体を乗っ取ったまま
色々なポーズを決めたりして、
楽しんでいたー

挑発的なポーズー

里穂の身体で中指を突き立てて
過激な言葉を口にさせてみるー
いつもは絶対に見ることのできない、里穂の表情が
鏡には写っているー

「あぁぁぁ…すげぇなぁ…」
里穂はニヤニヤしながら、
ぶりっ子のようなポーズをとって
甘える言葉を口にしてみるー

「--ひひひ…里穂が里穂じゃないみたいだ」
里穂の心臓がどんどん高鳴っていくー。

スカートの感触も
髪の感触もー
胸の感触もー
何もかもが新鮮だったー

20年以上も男として生きて来た慎吾にとっては、
女性の身体になる、ということが
何もかも新鮮でー
快感だったー

ヤンキー座りをする里穂ー

敬礼してみる里穂ー

モデルのように歩きながら、ウインクしてみる里穂ー

あらゆるポーズは仕草を楽しむー

慎吾は、もはや
自分が餅を喉に詰まらせて今、この状況であることも完全に忘れていたー。

幽霊になってしまった人間のよく取る行動のひとつがー
自分がどのような状況になっているか、確認することー。
しかし、慎吾はそれすらもしなかったー。
里穂に憑りついて憑依することが出来てしまったことで、
その快感に飲み込まれて
自分の身体のことも、興味を完全に失っていたー

「ーーーうほうほうほうほうほっ!」
里穂の身体でゴリラポーズを取らせる慎吾ー

うほうほ里穂に言わせている快感ー
ゴリラのように胸のあたりをドンドン叩かせている快感ー

「ははははっ!最高だぁ」
少し疲れてきて里穂はソファーにどかっ、と座るー

「--そういや、これ勿体ねぇな」
餅を喉に詰まらせて、そのままになっていた
昨日の御雑煮を口に運ぶ里穂ー。

「へへ、間接キスになっちまったなぁ」
里穂はそんな風に呟くと、
少し寂しそうな表情を浮かべるー

”そういや、俺の身体はどうなるのかな?”とー

武郎の発言から、今は病院で、
もう一人の友人である一が、見ていてくれているようだが、
やはり、このあとは火葬されてしまうのだろうー。

「----」
自分の身体を失うことに、少し寂しさを覚える慎吾ー

慎吾の意思に合わせて、里穂の表情も暗くなっているー。

どうするー?
慎吾は色々な選択肢を考えるー

このまま里穂として生きていくのもー
悪くはないかもしれないー

だがー
鏡に映った里穂を見つめるー。

慎吾は、憑依しておいて言うのも説得力はないが、
里穂を大切にしているー
このまま里穂の肉体を奪ってしまって
自分が里穂として生きていく、ということは、
ある意味で、里穂を殺すようなものだー。

里穂には、幸せでいてほしいー

「里穂の身体は返したほうがいいな」
里穂は、頬を撫でながらそう呟くー

と、すればー
別の誰かの身体を奪って生きるかー。

同じ大学に通う女子の誰かを乗っ取って
その身体で生きるのもいいー

「----でもなぁ」
里穂が、ソファーの上であぐらをかきながら呟くー

「それだと、里穂の彼女にはなれないしなぁ…」

女の子同士の恋人になることはできるかもしれないー
でも、里穂にそういう趣味は無さそうに見えるー。

「--じゃあ男か…?」
里穂は呟くー

男に憑依するのもアリだー。
少なくとも、里穂の恋人になれるチャンスはあるし、
第2の人生を送ることも出来るー

「--う~ん」
里穂は綺麗な髪をボリボリかきながら頭を抱えるー。

どっちも捨てがたいー
女子に憑依すれば女子大生ライフを送れるし、
色々…その、エッチなこともしてみたいー
けれど、里穂と付き合うのは、難しいだろうー

男子に憑依すればー
身体自体のお楽しみは体験できないが、
里穂と付き合うことはできるかもしれないー。
慎吾として里穂を幸せにすることは
できなかったが、
他の身体でも良いのであればー

「--ま、時間はたっぷりあるし、今は里穂を堪能するかー」

里穂はそう呟いて立ち上がるとー

「--…ちょ、ちょっとだけ」
と顔を赤らめながら、胸を触り始めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「------」

病室ー
慎吾がベッドで横たわっているー

餅を喉に詰まらせて救急搬送された慎吾ー

「---里穂ちゃんは、どうしたんだ?」
病院で慎吾を見つめていた一は、やってきた武郎にそう呟いた。

「それがさ、さっきまで一緒だったんだけど、急にいなくなっちゃってさ」
武郎が説明すると、
一は「ふぅん」と呟いたー

「そうだ、昨日の餅とかそのまんまだったよな?」
一が言う。

昨日、餅を喉に詰まらせて緊急搬送された際に、
家の戸締りをするため、一と武郎は、慎吾の部屋の鍵を
預かっているため、慎吾の部屋に入ることは可能だー。

「--あぁ」
武郎が言うと、一は
「とりあえず片づけといてやるかー
 いつ、”意識”を取り戻すか分からないし」
と呟くー

武郎は「そうだな、じゃあ、俺がしばらく見てるわ」と呟くと、
一は「頼んだぞ」とそのまま病室の外に出て行ったー

慎吾はーー
辛うじて一命をとりとめたーと、医師は言っていたが、
意識が戻らないー

「-…慎吾」
武郎は、心配そうに慎吾のほうを見つめるー

慎吾本人は”勘違い”しているが
慎吾はまだ死んではいなかったー
意識不明の重体の状態で、ギリギリ、持ちこたえ、
今はなんとかある程度安定しているー
そんな状態なのだと言うー。

「---早く、戻って来いよ」
武郎は、慎吾が意識を取り戻すことを願って
そう呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---はぁぁぁ…♡ ふふふふふふ…♡」
里穂が、甘い声を出しながらー
ニヤニヤしているー

胸を触り始めて興奮が収まらなくなってしまった里穂は、
そのまま服を脱ぎ捨てて、
アソコを触りながら一人、喘いでいたー

「-あぁぁぁ…里穂…♡」
里穂が、自分で自分の名前を呼びながら興奮しているー

「--」
里穂とエッチなことをしたことはー
ないと言えばうそになるー

が、
里穂として、自分で自分の身体を刺激しているとなると
その興奮の種類は、全く異なるものになるー。

今、自分は里穂であるという興奮と快感を味わいながらー
里穂の身体で、男としては絶対に味わえない快感を
味わっていくー

「--はぁぁ…そうだ…アレ…アレ、やってみたかったんだぁ」
自分の脱いだ服を踏みつけながら慌てて移動すると、
里穂は机の角で、自分の身体を刺激し始めるー

「角オナ…しちゃおっ…」
里穂は真っ赤になりながらそう呟くー

里穂の身体が恥ずかしがっているのかー
それとも、慎吾の意思に従って里穂の身体も恥ずかしがっているのかー
それすらも分からなくなりそうな中ー
里穂は、角オナをしながら大声で喘ぎ始めたー

「あ、、、♡ 隣の部屋に…聞こえちゃう…かもぉ…
 で、、でも…」

あまりの気持ちよさに理性まではじけ飛びそうになるー

激しく身体を動かしー
激しく喘ぐ里穂ー

いつもの里穂の姿は、そこにはなかったー

快感はさらに膨れ上がっていくー

”どこまで気持ちよくなるんだ この身体ー”
そんな風に思いながら
里穂は、さらに気持ちよくなっていきー

底なしの快感を味わっていたー

「こんなの…男じゃ、、絶対に…! あぅぅ…」

里穂の表情は性欲まみれの女に
成り果てていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一が、慎吾のアパートの前にやってきて
階段を上る。

「雑煮とかは片づけておいてやるか。
 しかしー
 何とか助かってよかったな…」
一が呟く。

予断を許さない状況ではあるものの、
ひとまず、餅は取り除かれたし、
慎吾はきっと大丈夫だろうー。

意識が戻らないことに関しては
医師も首を傾げていたがー
きっとー。

ガチャー

扉を開けるとー

えっー…

一は思わず固まった。
里穂がーー
ソファーにだらしなくぐったりしてー
ヒクヒクと震えているー

部屋の中にはー
何か液体がー

「--え…り、、里穂ちゃん…?」
一は言葉を失いかけながらも、
やっとの思いで、その言葉だけ口にしたー。

「は~~~♡ は~~~きもちよすぎるよぉ…♡」
里穂がうっとりとしているー。

「--ちょ、、えっ!?何してるんだよ?」
一は戸惑う。

里穂の裸から目を逸らしながら
「ふ、服ぐらい着ろって」
と、叫ぶー

あまりの快感にうっとりしていた里穂が、
ようやく一に気づくと「うわっ!」と叫んで、
慌てて言い訳を始めるー

「こ、、これは、、その、俺、、いいや、、あ、、い、、、
 あは、、あはははははは!」
里穂は、誤魔化す言葉すら浮かばず、
満足に言い訳もできないまま
慌てて拭くを切ると、
一のほうを見つめた。

「--(里穂ちゃんも、慎吾があんなことになってショックを
 受けてるんだろうな)」と思いながら、
一は沈黙するー

「あ、、え、、えっと、なんで俺の…いいや、慎吾の家に?」
里穂がソワソワしながら言うと、
「---あぁ、いや、雑煮とか片づけておこうと思って」と、
一が呟いたー。

「-ふ~ん…死んじゃったお、、慎吾のために…ありがと」
里穂はそれだけ言うと、
一は「ん?」と首を傾げたー

「なに言ってるんだ?意識が戻らないだけで、慎吾はー」
一がそこまで言うと
「え、、、えええええええええええっ!?!?!?」と
里穂は大声で叫んだー。

里穂に憑依している慎吾は、武郎と里穂が部屋に来た時の反応から
自分は死んだと思い込んでいたのだが、
実は死んでいなかったー

意識不明の重体になりながらも、
なんとか生き延びていたのだー

「そ、そういや、あいつら、俺が死んだなんて一言も…」
小声で呟く里穂。

「え?」
一が戸惑うー

「そういうことならー」
里穂に憑依している慎吾は笑うー。

里穂の身体から抜け出して
自分の身体に戻ればきっと自分は
意識を取り戻すのだろうー

”なんだぁ、死んだのかと思っちゃったよ”

里穂はそれだけ言うと
「あ、そうだ、ちょっとわたし、これから気絶するけど、
 気にしないで」
と、一に向かって言うー

「は??え???」

「----いや、ちょっと色々事情があってさー、
 とにかく一旦気を失うからよろしk

「--!?」

里穂が、言葉の途中で、突然糸が切れたように倒れたー。

「お、、おい!?里穂ちゃん?」
一が慌てて倒れた里穂に駆け寄るー。

慎吾が里穂の身体から抜けたー

しかしー
慎吾が自ら抜けたわけではないー

”予想外の出来事”により、
慎吾自体がー
消えてしまった…。

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

病院ー

「そんなーーー」
武郎が膝をつくー

病院では、意識が戻らないまま急変した慎吾が
今、まさに息を引き取っていたー

身体が死んだことによって、
幽体離脱状態だった慎吾も、消えてしまったのだったー。

「---残念ですが」
医師が首を振るー

なんとか一命をとりとめていたのにー
何らかの原因で抜けてしまった慎吾の霊体が
自分の肉体にいつまでも戻らなかったために
身体がバランスを崩して急変、死に至ってしまったのだったー

「慎吾…」
がっくりと、茫然とした様子で呟く武郎ー。

彼女の身体でお楽しみしてしまった代償は、
あまりにも、大きかったー。

おわり

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餅を食べるときは注意してくださいネ!(2回目)

幽体離脱してしまったときはまず、自分の身体の様子を
見に行くようにしましょう~!

お読み下さりありがとうございました!

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