<憑依>餅で幽霊になった男①~戸惑い~

お正月ー

餅を食べていた時に、それは起きたー

まさか、自分がー
そんな油断から、餅を喉に詰まらせて、
男は幽霊になってしまったー

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「--はははははは!だよな~!」

お正月ー
集まった男三人がゲラゲラ笑いながら
新年のひと時を過ごしているー

スーパーで購入してきた雑煮を食べながら、
趣味の話や、他の人の話、
世間話など、色々な話をしながら笑う三人ー

そのうちの一人・矢守 慎吾(やもり しんご)は
だんだんビールで酔っ払ってきていたー

それ故ー
だろうか。

無謀なことに、挑戦してしまうー。

「餅の早食い対決しようぜ!」
慎吾が言うと、
友人の大学生二人・武郎(たけろう)と、一(はじめ)が、「へへへ、いいねいいね!」と笑うー。

三人が餅を早食いし始めるー

「----」
武郎だけが、少し食べるスピードが遅い。

それを見た慎吾が笑う。

「ははは!びびってんじゃねぇよ
 俺たち若いし、餅なんか喉に詰まらねーよ!」
そんな風に笑いながら、慎吾が餅をさらに口に含めて
飲み込んだ瞬間だったー

「--!?!?!?」
慎吾が、喉のあたりを押さえるー。

「--慎吾?」
武郎と一が慎吾のほうを見つめるー

慎吾が顔を真っ赤にして苦しそうにもがき始めるー

「ははははは!面白いジョークだな!その手には乗らないぜ」
酔ってた一は、餅を喉に詰まらせて苦しむ慎吾を
”冗談”だと判断して笑ったー。

「あはははは!笑えない冗談だなぁ~」
武郎もそう言いつつ、笑っているー

だが、慎吾は、「はぁ、、、、あ、、、、ぅ」と苦しそうにうめき、もがきー
そして、明らかに顔色が悪くなっていくー

演技では到底できない、顔色ー

「お、、おい?慎吾?」
一がようやく異常に気付くー。
明らかに、普通ではないー

「え?やばくね?」
武郎が叫ぶー。

二人は慌てて救急車を呼んだーーーー

ーーーーー

ーーーーーーーー

「----ん」
慎吾が気づくとーーー
そこは、自宅だったー。

「---あれ?昨日、俺、何してたっけ?」
慎吾が首を傾げるー。

家の中は散らかったままー
食べかけの雑煮に飲みかけのビール
つまみも散乱している状態のままー

「ったく、武郎と一のやつ、そのまま帰ったのか」

そうだー
昨日は大学の友達2人とお正月を過ごしたんだったー
つい飲み過ぎてしまったが、
そういう日もあるー。

一応、大学生とは言え、20を超えているから
ビールを飲むこと自体には、何も問題はないー

だがー
記憶が飛んでしまうぐらいに飲むのはよくねぇな、と
慎吾は苦笑いしながら、
武郎や一の残した雑煮を片付けようとしたー。

しかしー

「え…?」
雑煮の容器に手を触れたはずの慎吾は異変に気付いたー

自分の手が、雑煮の容器をすり抜けたのだ。

「---!?」
慎吾は表情を歪める。

そして、もう一度雑煮の容器を掴もうとする。

だが、やはり、
雑煮の容器を掴むことができないー

「え…なに?」
慎吾はベッドのほうを見るー

これが幽体離脱か?と思いながらー。

だがー
ベッドには自分の身体はいないー。

慌てて鏡の方に向かって走っていく慎吾ー。

そして、唖然とするー

鏡にはー
慎吾の姿が写っていなかったー。
確かに自分は鏡の前に立っているのに、
鏡に慎吾の姿が写っていないー

「---え……え…????」
慎吾は困惑したー

「な、なんだよこれ…?夢か…?」
慎吾は慌てて、部屋の方に戻るー

何が何だか分からないー
そういえばさっきからー
何の”感触”も感じないー

臭いもー
寒さも暑さもー
何もーーーー

ガチャ

部屋の扉が開いた。
慎吾が振り返ると、
そこには武郎と、慎吾の彼女である里穂(りほ)がいたー。

「--里穂!武郎!
 どうなってんだいったい?」

慎吾が二人に話しかけるー

だがー

武郎は、悲しそうに雑煮の容器の前に立つとー
「--俺が止めてれば」
と悲しそうに呟くー

「----…バカ」
里穂が悲しそうに涙を流すー。
雑煮の容器の前にうずくまる里穂ー。

「お、、おい、なんだよ、二人とも…」
慎吾が里穂と武郎に話しかけるがー
二人は反応しない。

無視されている。
そう感じた慎吾は
「おーーーーい!!!!!」と叫ぶー。

それでも、二人は反応しなかった。

慎吾は表情を曇らせるー。

「病院には一がいる…」
武郎は、そう言いながら里穂のほうを見つめたー。

「うん…」

病院?
慎吾は表情を歪めたー

「餅を喉に詰まらせて…なんて、ホント馬鹿だよ」
武郎は悲しそうにそう呟いたー

ーーーーー!!!

慎吾は、酔った中の記憶をわずかに思い出したー

そういえば、俺、餅の早食いをしていてーー

「--えっ…ちょ!?嘘だろ…!?おい!」
慎吾が叫ぶー

二人は反応しないー

病院に運ばれた自分ー
そして武郎と里穂の表情ー

その状況からー
慎吾はイヤでも自分の置かれている状況を
理解するしかなかったー

「---……ーーー」
里穂と武郎が沈黙しているー

少しすると武郎が「慎吾の両親にも連絡してくるー」と呟き、
里穂がうなずくと、武郎はそのまま部屋の外に出て行ったー。

「---……嘘だろ…?おい、里穂…!」
慎吾が声をかけるー。

里穂は泣いたまま反応しないー

これはーーー

慎吾は理解したー。
”餅を喉に詰まらせて、俺は死んだ”のだとー。

「おい…!里穂!おいってば!」
慎吾はなんとか里穂に話しかけようとするー。

死んでしまったなんて冗談じゃないー
どうにか、どうにか里穂に気づいてもらってー。

里穂に必死の呼びかけを繰り返す慎吾ー。

それでも、里穂は反応してくれないー

「お~い!」
慎吾は里穂の胸を触ろうとするー。

こうすれば気づいてもらえる、と思ったからー

しかしー

「えっ!?うおぉぉぉぉ!?」
里穂の身体にずぶっ、と自分の手が入り込んでしまうー

「ひっ!?」
里穂が声をあげたー

「え…これ、、なんだ?うぉおおおおおおおお!」
慎吾が叫ぶー。

そしてー
急激に自分の身体にあらゆる感覚が戻って来たー

人間としての感覚ー
空気ー
寒さー
感触ー

「え…」
里穂は呟くー

「あれ…?え?」
身体をキョロキョロ見回す里穂ー

たった今まで、里穂の目から流れていた涙は、
もう消えているー。

「--え…??え???あれ???
 うおっ…おおおおおおおおおおお!!?!?」
里穂はがに股になって、自分のスカートのほうを見つめたー

「ま、、マジか…」
里穂が呟くー

幽霊になってしまった慎吾はーー
里穂に憑りついてーー
憑依してしまったのだったー

「--え、、、え、、、え…や、、、やべぇ」
里穂がイヤらしい笑みを浮かべるー。

慎吾はーー
ドキドキしながら、里穂の身体で笑みを浮かべるー

「--ゆ、幽霊ってのも、悪くないな…」
ふほっ、と里穂の身体で笑うと、周囲を見渡すー。

武郎のやつは、部屋の外に出て行ったー

「---どうせなら、ちょっとだけー…
 このあとどうするかは…そのあと考えるとしてー」
里穂は、小声でそう呟くと、
「--ちょっとだけ、身体借してくれよな」
と、笑みを浮かべて、そのまま慎吾の部屋から
立ち去っていくー。

・・・・

「--あれ?」
慎吾の両親と電話で話し終えて
慎吾の部屋に戻って来た武郎は、
里穂の姿が消えていることに首を傾げたー

・・・・・・・・・・・

「--はははっ!まさか里穂になれちゃうなんて!」
里穂は街中を嬉しそうに歩くー

スカートってこんな感触なのか~、だとか
長い髪ってこんな感触なのか~だとか、
胸ってすごいなぁ、だとか
色々な感動を覚えながら、
里穂を乗っ取った慎吾は、里穂の家に向かうー

「---……」
ドキドキドキドキー

ドキドキが止まらないー
しかも、慎吾がどきどきしているはずなのに、
里穂の身体がどきどきしていると想像するだけでー

「---ふぁぁぁ…♡」

胸に手を触れる里穂。
鏡がないから分からないが、今、里穂はきっと
とんでもなくエッチな表情を浮かべていることだろう。
それを想像しただけでもドキドキしてしまうー

胸を”自分のもの”として
触るこの喜びー

何者にも代えがたい快感を感じるー

「--ぁぁ…しあわせ…♡」
里穂が左手で胸を触りながら、
思わず路上に涎を垂らしてしまうー。

「---って」
里穂が我に返って周囲を見つめると
通行人たちが、里穂のほうを見ていたー

路上で女子大生がニヤニヤしながら
急に胸を揉み始めたのだー。
注目を集めてしまうのも、無理はない。

「あ、はは、はははははっ」
里穂が誤魔化すようにして笑いながら
その場から慌てて立ち去るー

”やべぇやべぇ、危うく里穂を痴女にしてしまうところだった”

そんな風に思いながら慌てて歩く里穂ー
スカートがふわふわしていて、
なんだか歩き方を間違えているような気もしないでもないが、
とにかくまずはーー

「----」
里穂はキョロキョロしながらアパートのほうを見つめたー。

「--とりあえず部屋で遊ぼう」
里穂はそう呟くと、
里穂に憑依した慎吾自身の部屋を見つめるー

武郎はもう帰っただろうかー。

里穂の家に行くことも考えたのだが、
”色々してみたい”し、里穂の家を荒らせば、里穂が
荒れた部屋を見て怯えたり、
何か疑われるようなことに
なってしまうかもしれないー

「---俺の部屋で…っと」
里穂はそう呟きながら、
自分の部屋の周囲を見渡したー

幸い、武郎はもう帰ったようだったー。

「よっしゃ」
里穂はそう呟くと、
部屋の扉の前に隠してある鍵を使って
自分の部屋の扉を開けるー。

「よしよしよし」
里穂はニヤニヤしながら、自分の部屋の中に飛び込んだー。

「-ーーへへへへへ…やったぜ!」
部屋の中でガッツポーズする里穂ー。

「まさか…餅を詰まらせて死んでしまうなんて
 思わなかったけど…
 こうして幽霊になって、里穂に憑りつくことが
 できちまうなんて、びっくりだなぁ~」

里穂の声でそう呟くー。

「---う~ん でも」
ソファにあぐらをかきながら、
里穂の膝をすりすり触りながら考え込むー

「俺、このあとどうなるんだ?」
里穂に憑依した慎吾は少し不安に思うー。

このままずっと幽霊として行動できるのであれば、
むしろ、餅を詰まらせてこうなっていることを
喜ぶべきー
なのかもしれない。

だがー
もしも、成仏させられたり、お迎えが来たりするのだったらー
それはそれでー

「---でもまぁ」
膝をぱんぱん叩きながら呟く里穂。

「考えても仕方ねぇか。
 とにかく今は、せっかく借りた里穂の身体を
 楽しまなきゃな」

里穂の身体を意のままに操ることができる
今、この状況ー

里穂は考えるー
「里穂にナニさせちゃおうかなぁ…」

慎吾にとって、当然、里穂は大事な彼女ー
里穂の身体を傷つけたり、
人生が壊れるような真似をするつもりはないー。

だがー
今は、慎吾自身の部屋にいる。

何をしようとー
”個人的なお楽しみ”の範疇で済むはずだー。

「--ふふふふ…
 楽しい時間の始まりだぜ」
里穂は舌でペロリと唇を舐めると、
イヤらしい笑みを浮かべたー

②へ続く

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コメント

餅を食べるときは、気を付けて食べるようにして下さいネ~!

今日もお読み下さりありがとうございました!

コメント

  1. ステン より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    いつ見ても何を読んでも同じパターン。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます!!

    同じ人間が書いているので、仕方がない部分ですネ…!汗