<憑依>暗黒のショータイム②~狂気~

彼女の身に何が起こっているのかも知らないまま、
憑依された彼女の”狂気”を
見せつけられる彼氏ー。

彼氏の、運命はー?

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「---な、なんだって?」
忠治は凍り付きながら、由愛のほうを見るー。

由愛は笑うー。

「わたしが今から、この”裏切者”を殺すの」

クスッと悪気もまるでなく笑っている由愛ー

「な、、な、、何を言ってるんだ!?」
忠治は思わず叫ぶー

舞台の上で縛り付けられている気の弱そうなおじさんは
今にも死にそうで、
血を流しながらはぁはぁ…と苦しそうに息をしているー
鉄パイプで何度も殴られたからか、呼吸もおかしいー

「--ふふふふふふふふふ」
バニーガール姿のギャル・香帆も笑っているー。

香帆は、さっき、あの中年のおじさんのことを
”おとうさん”と言っていたー

「き、、君!あの人、君のおとうさんなんだろう!?」
忠治が、香帆に向かって叫ぶー

香帆は「そうですけどぉ~」と、全く相手にしていない様子だー。

「----き、、君…」
気の弱そうなおじさんが、顔をあげて忠治のほうを見たー。

「---君…こ、、この女、君の、、、、知り合いか?」
気の弱そうなおじさんが、苦しそうに
ラバースーツ姿の由愛のほうを見て呟くー

「え、、、あ、、はい…お、俺の彼女です」
観客席に縛り付けられている忠治が苦しそうに返事をすると、
気の弱そうなおじさんが首を振るー

「…そうか…次は”君”がー」
意味深な言葉を呟くおじさんー

「--ど、どういうことですか!?」
忠治が叫ぶー

「--な、なんとかしてここから逃げるんだ!
 彼女のことは諦めてー!
 君の彼女はーーー」

「--黙ってろ!」
由愛が大声で叫ぶと、おじさんを鉄パイプで力強く殴りつけて
おじさんのアゴを掴んだー

「--テメェ、今すぐ死にてぇのか???あ~~~~~~??????」

確かに由愛の姿ー
確かに由愛の声ー

なのにー
まるで、別人に見えるー

「---君の…君の彼女は、、憑依されて…!」
おじさんがそれでも必死に叫んだー

”憑依!?”
忠治は、その言葉に、”嫌な感じ”を覚えたー。

「---テメェ!」
由愛が怒鳴り声をあげると、狂ったように鉄パイプで
おじさんを殴り始めたー

髪を振り乱しながら狂ったように笑いー
怒鳴り声をあげている由愛ー

「おい!由愛!やめろ!!やめろってば!」
忠治が必死に叫ぶー

だが、その言葉もむなしくー
由愛はーー
おじさんを殺してしまったー

「--ケッ」
由愛が鉄パイプを舞台の下に放り投げると、
「おい」と、
ガラの悪い男二人に指示して
「処分しとけ」と、おじさんの処分を命じたー

二人の男が、頭を下げて、おじさんを”処分”するー。

「---な、、な、、何やってんだよ…」
忠治が目に涙を浮かべながら叫ぶー

「何やってんだよ!!由愛!」
とー。

由愛はクスクスと笑いながら、
「最高のショー」でしょ?と、笑みを浮かべたー。

「----…憑依って、憑依ってなんだよ!?」
縛られた状態のまま、忠治が叫ぶー

憑依とは何か。
まるでー
まるで、意味が分からないー。

「--チッ…あのおっさんのせいで」
由愛が小声で舌打ちすると、
バニーガール姿の香帆が、「ま…見せてあげようよ」とほほ笑むー。

「そうだな」
由愛はそう言うと、
忠治のほうを見たー

「じゃあー教えてあげるー」

そう呟いた由愛は、突然苦しそうに、「おぇっ…お…うぉぁあああ…」と
しゃがみこむーーー

そしてー
信じられない光景が目の前に広がったー

「お、、おい…由愛…?」

由愛が口から、ドロドロとした、ゼリーのような、
スライムのような、謎の物体を吐き出しているー。

口から、にょろにょろと出て来る謎の物体ー

由愛の口に繋がったまま、
飛び出したスライムのような物体の先端部分がー
人の顔のような形になったー

「なんだ…これ…?」
信じられない光景に震える忠治ー

やがてー
ランプの精霊のように、下の部分が、由愛の口に繋がったまま、
飛び出した部分が人間の姿になったー

由愛の口とつながっている狂暴そうな男が、宙に浮きながら呟くー。

「くくくく…お前の彼女は俺たちのものだー。
 俺が彼女に憑依して、乗っ取ってるんだよ」

男が言うー

由愛は、男の背後で、膝を折ったままー
大口を開けて、ガクガク震えているー。

「--お、、おい!!由愛を!!由愛を返せ!」
忠治が必死に叫ぶー

「あ、、、、あ…ぐぁ、、、、、あ、、、げ、、、」
由愛が、白目を剥いたまま、口から嘔吐物のようなものを
吐き出しているー。

男が口から飛び出しているせいだろうかー。

由愛の身体がけいれんしているのが、観客席に
縛られている忠治にもよく分かったー

「やめろ!!!おい!!!何が目的だ!」
忠治は泣き叫ぶようにして叫ぶー

バニーガール姿のギャル女、香帆も突然、おえええええ…と叫ぶと
同じように別の男が、口からランプの精霊のように飛び出したー

香帆と由愛の身体が、苦しそうなうめき声をあげながらー
嘔吐物を吐いたり、泡を吹いたり、けいれんしたりしているー
二人とも、白目を剥いて、とても苦しそうだー。

「--俺たちはーーー
 ”憑依劇団”だー。」

香帆から飛び出している男が言うー。

「--こうして女どもの身体を乗っ取って
 裏社会の男どもを相手に最高のショーを見せてやってるのさ」

由愛から飛び出している男が笑うー。

「--な、、なんだって…?」
忠治は戸惑いながら、二人を見つめるー

「お、、お、、俺に、何か恨みでもあるのか…!
 俺を恨んでるなら、由愛を巻き込まないでくれ!」
忠治が叫ぶとー
男は笑ったー

そしてー
二人とも由愛と香帆の中に戻っていくー

再びスライム状になった男たちは、
二人の口の中から二人に入り込みー
そして、再び、憑依状態となったー。

「---くく」
由愛が口元の涎を拭きながら微笑むー

「--別に恨みなんてないさー
 ただ、この女が”エロかった”からー
 身体を貰っただけさー

 ひゃはははははははっ!」

由愛が笑うー

「-ちょうど”大事な人”もいてさぁ…
 俺たちの憑依劇団にぴったりの身体だった。
 それだけさ!」

由愛が表情を歪めながら
ラバースーツの上から身体のあちこちを触るー

「貴様ああああああ!」
忠治が怒りの形相で叫ぶー。

「--この女もー」
バニーガール姿のギャル女・香帆が言うー

「元々は、優等生だったんだぜ」
写真を見せて来る香帆ー

優しそうな女子高生の写真がそこにはあるー。

「--金持ちの娘でさぁ、
 父親を脅して、俺たちの資金源にしてたんだけどさ、
 この女の父親、俺たちを裏切ろうとしたから
 さっき”処刑”したんだよ」

香帆が笑うー

”このギャル女も乗っ取られた子だったのか…”と
忠治は思いながら、由愛のほうを見つめるー

「おい!由愛!目を覚ませ!」
忠治が叫ぶー

「--覚まさない」
由愛が微笑むー。

「--頼む!由愛…!正気を取り戻してくれ!」
忠治はなおも食い下がるー

「--この女に、お前の言葉なんて届かないー」
由愛はそこまで言うと、
「んー」と何かを思いついたのか、笑みを浮かべると
「--ショーの続きを始めようか」と
微笑んだー。

香帆がうなずいて再びマイクを手にするー

「それではぁ、ショーの続きをはじめまぁ~す!」
香帆が笑うー。

由愛が、にこにこしながら忠治のほうを見るー

「おい!!!由愛を返せ!!!おい!!!!!」
大声で叫ぶ忠治ー

「---忠治ぅ?わたしたちに協力する、って誓ったら、
 ショーを終えてあげてもいいのよぉ~?」
由愛がクスクス笑いながら言うー。

そしてーーーー
次の瞬間ー

由愛が「んぁっ…」と苦しそうな声を出してー
そのまま舞台に倒れ込んだー。

「---」
由愛の耳からスライムのようなものが出てきてー
男が今度は由愛から完全に抜け出したー

「起きろ!」
倒れたままのラバースーツ姿の由愛を蹴り飛ばすー

由愛が「う…」と意識を取り戻すー

「あ、、、れ…わたし…」
由愛が虚ろな目で周囲を見渡すー

「ゆ、、由愛!」
忠治は叫んだー

だがー
次の瞬間ー

「---ひぅっ!?」
飛び出した液体状の男が、再び由愛の耳から強引に
由愛の中に入り込んでいく。

「---あ、ぅ…あぁ…」
ビクンビクンと震える由愛ー

由愛は乱れ切った髪を触りながら、
口から泡のようなものを拭きながら、忠治のほうを見つめるー

「--ふふふふふ…どうだぁ?俺たちに協力するかぁ?」
由愛が苦しそうな声で呟くー。

「--く、、くそっ!」
忠治は乗っ取られた由愛のほうを睨むー。

ここで”協力します”と言えばーーー
由愛が苦しめられるのは”一旦”は終わり、
忠治も拘束からは、解放されるかもしれないー

だがーー
忠治は理解しているー

ここで”協力します”と言ってもー
何も終わらないことをー
むしろ、状況はさらに悪化することをー。

何故ならー
今、主導権を握っているのは相手だからだー。

こういう状況のとき、相手の意のままに動くことは
さらに状況を悪化させることを意味するー。

協力しますと言っても、由愛は解放されないー。

考えろー
何か、方法を考えろー

忠治は由愛を睨みながら、必死に頭をフル回転させるー
何か、何か由愛を助けてここから逃げ出す方法はーー

「---ぅぁっ」
由愛が再び舞台の上で倒れるー

由愛の鼻から、液体状になった男が飛び出すー

完全に人間の身体に戻った男が笑うー

「すごいだろう?憑依薬は?
 飲むと、身体をいつでも液体や気体にすることができてー
 誰の身体でも、乗っ取ることが、できるんだ」

男が笑うー。

由愛が苦しそうに痙攣しているー

「--ふざけるな…由愛を返せ!」
忠治がなおも叫ぶー。

”この男の心を折ることはできない”
相手にそう思わせれば、由愛も解放されるかもしれない…

いやー
それも”わずかな可能性”かー。

忠治は、なおも頭をフル回転させて、とにかく由愛を助ける方法を考えるー。

「---あぁ…ぅっ…あぁあ…」
由愛が再度憑依されるー

男は、由愛に憑依したり、抜け出したりを繰り返して、
由愛を苦しませているー

由愛が、さっきよりも口から激しく泡のようなものを吹いているー。

「--く、、くくくく…どうだぁ?自分の彼女が…
 いいや、わたしが憑依されたり、解放されたり繰り返してるのをみるのはぁ?」
由愛が、青ざめた顔色のまま、不敵な笑みを浮かべるー。

「ふざけるな…ふざけるな…!」
忠治は拳を握りしめようとするー

だが、
それすらもできないー

「---ぁっ…」
由愛がうめき声をあげて意識を失ってそのまま、倒れるー。

由愛から出た男が由愛を蹴り飛ばして起こすー

「た、、すけて…」
由愛が泣きながら、這いずるようにして、男から逃げようとするー

だが、男はげらげら笑いながら由愛を追いかけると、
髪の毛を乱暴に掴んでキスをするー

男が由愛に憑依してー
由愛の身体でげらげらと笑うー

忠治は唇から血が出るほどに、
唇を噛みしめながら
その光景を睨むー。

目すら逸らさず、
忠治は、”お前を八つ裂きにしてやる”と
由愛のほうをー
いいや、その中にいる男を見つめるー。

「----はぁ…はぁ…さすがにこの身体への負担も大きいなぁ」
そう呟くと、由愛は、ニヤニヤしながら舞台から降りてきて、
忠治のいる観客席に近づいてきたー

拘束されている忠治は、何もすることはできないー

「---協力、するか?」
由愛が忠治の目の前でそう呟いたー

「ふざけるな…由愛を開放しろ」
忠治が由愛を睨むー

由愛は笑いながら、忠治の頬を思いっきりビンタしたー

③へ続く

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絶望感しかないお話に…!
果たして彼の運命は…!

続き(最終回)はまた明日デス~!

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