<MC>君が代わりに犬になれ②~対峙~

「君が代わりに犬になれー」

そんな言葉と共に、洗脳されてしまった沙苗は、
サイコパスな飼い主の犬になってしまっていた…

必死の捜索を続ける彼氏…
そして…

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「----この子を見ませんでしたか?」
彼氏の智也が、沙苗の写真を手に、沙苗の捜索を続けているー

八枝の提案により警察にも捜索を依頼し、
沙苗の家族にもその話を伝えたが、
ただ待っていることも出来ず、智也は沙苗の捜索を続けていたー

「---大丈夫?少しは休みなよ?」
沙苗の親友・八枝がペットボトルのお茶を智也に
手渡すと、そう呟いたー。

「ああ、ありがと」
智也が言うと、八枝が呟くー

「それにしても、沙苗…どうしちゃったのかな?」
とー。

普段、いい加減な性格の八枝も、さすがに1週間以上
沙苗が行方不明なこともあって、
心配している様子だー。
八枝も智也を手伝い、この数日は聞き込みを続けてくれているー。

「----分からない…でも…」
智也はスマホを見つめるー。

沙苗に対していくらLINEを送っても
既読もつかないし、当然、何の反応もないー

「何かに巻き込まれているのは確かだー」
智也は、悲しそうな表情で、そう呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「本当ですか?」
智也が聞き返すー。

「ええ。ここで先週、事故がありましてね。」
通行人がうなずくー。

「---どんな事故だったんですか?
 誰が巻き込まれたんですか?」
智也の言葉に、通行人は

「犬、ですよ」と答えたー

「犬?」
智也が聞き返す。

「そうです。よくこの辺に出没してる
 そうですね…40、50ぐらいに見えるおじさんが
 いましてね…。

 その人の犬が車に轢かれてしまったんです」

通行人の男がそう答えるー。

彼は、先週の事故の現場に居合わせていた人物ー。
沙苗が犬の飼い主のおじさんと口論している場面も目撃しているー。

「---それで、その写真の子が、
 おじさんに声をかけたんですけど、
 そのおじさん、この辺じゃ有名な変わり者でしてね…

 その子に逆ギレし始めたんですよ」

目撃者の言葉に、智也は「それで…どうなったんですか?」と聞き返す。

目撃者の男は
「--そこそこの時間、口論してましたけど…
 和解したのか、最後は犬の飼い主のおじさんとその子が
 一緒にどこかに歩いていきましたよ」
と、答えたー。

「----………」
智也が表情を歪めるー

その犬の飼い主に連れ去られた…ということだろうか。
だが、目撃者の男によれば、連れ去られた感じではなく
沙苗が自らついていった感じだったのだと言う。

「--その飼い主の方の住所は、分りますか?」
智也が聞くと、目撃者の男は答えたー

「知ってますよ。この辺じゃ、変わり者で有名ですからね」
と、”犬の飼い主のおじさん”の住所を教えてくれた。

「--ありがとうございます」
智也は”犬の飼い主”が何か知っているはずだー、と
教えてもらった住所を握りしめながらー
別の場所で聞き込みを続けてくれている沙苗の親友・八枝と、
友人の龍にも連絡を入れたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

飼い主の家を訪れる前に
八枝・龍のふたりと合流する智也ー

「-ーーーそこに、沙苗がいるってこと?」
八枝が言うと、
智也は「わからない」と首を振るー

「でも、有力な手掛かりだとは思うんだ。
 もしかしたら、その男が何か知ってるかも」
とー。

「---」
八枝は不安そうな表情を浮かべるー。

「---そういうことならー
 勇者の血を引く、僕もついていくぜ!」
龍が変なポーズを決めながら叫ぶー

「はいはい、そういうのいいから」
八枝が龍の頭にチョップを食らわせると、
龍は「いてっ!」と叫びながらも
「でもまぁ、危ないおっさんかもしれないし
 僕もついていくよ」と、智也のほうを見る。

智也は「ありがとう」と頷くと、
八枝も「わたしもついていく」と呟くー。

智也は一瞬迷ったが
”沙苗のこと、みんな心配だもんな”と考えて
頷くー。

智也、八枝、龍の三人は
”犬の飼い主のおじさん”の家に向かうのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

木々に囲まれた見晴らしの悪い場所ー

そこに、おじさんの家はあったー

敷地は意外と広くー
木々が生い茂っているー。

中の様子は、見えないー。

智也は龍と八枝のほうを見て頷くと
インターホンを鳴らしたー

「なんだか魔王の城に踏み込む前って感じで
 わくわくするな」

龍が呟くー

「--あんたは口を閉じてなさい」
八枝が小声で龍に向かって言うー。

龍は両手を広げて「やれやれ」のようなポーズをとると
そのまま沈黙したー。

”はい”
おじさんの声が聞こえたー

「---…ーー今日はお聞きしたいことがあってきました」
智也は自己紹介をして、事情を説明した上で、
話を聞きたい、と、おじさんに向かって
インターホン越しに伝えたー

するとおじさんは”どうぞ”と、だけ呟き、
門のロックを解除したー

「----」
智也は警戒しながらも、門を開けて中に入るー

龍と八枝も後に続くー

敷地内は自然に囲まれていて、
外からは見えない感じだったー。

少し進むと、築年数何十年か分からないぐらい
古い建物が中央にポツンと存在していたー

おそらくは、事故にあった犬の飼い主の住み家だろうー

智也が建物に近づいていくとー
おじさんが建物の中から姿を現したー

「--ーーお忙しい時間に申し訳ありません」
智也は、礼儀正しく頭を下げるー。

龍と八枝も頭を下げるー
3人は、このおじさんが、沙苗を洗脳して「犬」にしているとは知らないー

「---先週の事故について聞きたいこととは、何かな?」
不潔な感じのおじさんが呟くー

お風呂にあまり入って無さそうなイメージも受けるー。

「---この子が、先週から行方不明なのですが…
 何かご存じないですか?」
智也が言うー

沙苗が彼女であるということは隠したー
出来るだけ、個人情報は教えないほうがいいと判断したからだー

「----」
おじさんは沙苗の写真をじっと見つめる。

「---先週の事故の際に、この子と口論しているのを
 見かけたって人がいたので、何か知らないかと思いまして」
智也が言うと、
おじさんは、なおも沈黙した-

「---わたしたち、凄く心配してるんです!
 何か知ってたら、少しでもいいんです!
 教えてください!」
八枝が叫ぶー

だが、おじさんは答えないー。

「ちょ、ちょ、ちょ、何か一言ぐらいコメント下さいよ?
 ノーコメントはないっしょ?」
龍がたまらず声をあげるー

おじさんが口を開こうとしたその時だったー

「わん!わん!わん!わん!わん!」
家の中から声が聞こえてきたー

犬のーーー

「---!?」
智也が表情を歪めるー

犬の声ーー
ではないー

”女”の声ー

しかも、その声はーーー

「沙苗!」
智也はおじさんを押しのけて
おじさんの家に飛び込んだー

すると、そこにはー
全裸で首輪を繋がれた沙苗の姿があったー

「さ、、さ、、、沙苗…?」
智也が唖然とするー

後から駆け込んできた八枝が
驚いて両手で顔を覆うー

「---わぁお」
同じく後から駆け込んできた龍も驚いているー

「--わん!!グルルルル…」
沙苗が睨みつけるようにして四つん這いのまま智也を見つめるー

「さ、、沙苗…!
 くそっ!なんてことを!」
智也がおじさんのほうを睨むー

無理やり拉致・監禁されていたのだー

そう思った智也は「沙苗!遅れてごめんな…今、助けるから…もう大丈夫だぞ」と
リールで繋がれた首輪を外しー、
沙苗を開放したー

「--わん!わん!」

しかしー
沙苗は「わん!」としか言わないー
智也を見ても、まるで沙苗らしい反応がー
いや、人間らしい反応がないー

「沙苗…おい…俺だよ…?分かるよな?」
智也が不安になりながら言うと、
背後にいたおじさんは鼻で笑ったー

「---その”犬”は、さなえなんて名前じゃないよー。
 
 ”ポチ”おいで」

おじさんが優しく言うと、
沙苗が嬉しそうに四つん這いのまま走って、
おじさんの傍に駆け寄ったー

「さ、、沙苗…」
智也は戸惑うー

「--沙苗!?ねぇ、ちょっと、どうしちゃったの!?」
八枝も戸惑っているー

「---沙苗なんて名前で呼ぶんじゃない!!!!!」
おじさんが突然怒鳴り声をあげた。

「--!?」
智也も八枝もビクッとしてしまうー

舌を出しながら嬉しそうにハッハッ、と声を出している
沙苗を見て唖然とする智也と八枝。

そんな沙苗の頭を撫でながら、おじさんは
優しく微笑むー

「この子は、おじさんのポチだ」
とー。

「--わぁお…これは……」
龍は、戸惑いながらもなんだか嬉しそうにしているー。

「--ぽ、、ぽ、、ふ、、ふざけないでください!」
智也が叫ぶー

「--彼女はポチなんかじゃない!人間だ!
 い、いったい彼女に何をした!?」

智也が沙苗を見ながら言う。

正気であれば、沙苗がこんなことをするはずがない。
脅されているのだとしても、
智也たちに何の反応も示さず、
全裸で完全に犬のような振る舞いをするはずがないー。

「----わん!わん!」
沙苗が声をあげるー。

「---おじさんはねぇ、ただ、奪われたものを取り返しただけさ」
おじさんが笑いながら言う。

「この女が、おじさんのポチ太郎を笑ったんだ!
 インスタ蠅女が!」
おじさんが叫ぶー。

「--な、なにを言ってるの?」
八枝がドン引きと言いたげな表情でおじさんを見つめるー

智也も表情を歪めるー。
目撃者から聞いた話では、
おじさんは、日ごろから危ない場所で犬を散歩させていて
その結果、車に轢かれてしまったー。

つまり、おじさんの自業自得ー
起こるべくして起きた事故と言える。

そして、沙苗は、そんな事故を心配して
おじさんに声をかけたのだと聞いている。

明らかに、おじさんの逆恨みー

「--だからさぁ、代わりにポチになってもらったんだ…
 この女に、代わりに、ポチに、ね」

おじさんが、笑うー

「さぁポチ!ご主人様を守るんだ!」
おじさんがそう叫ぶと、
沙苗は歯をむき出しにしながら
「グルルルルルル」と変な声をあげ始めたー

智也たちを睨む沙苗ー

「お、、おい!沙苗…ちょ、、正気に戻ってくれよ!
 おい、沙苗!」
智也が叫ぶー

沙苗が何をされたのかは分からないー
だが、おじさんの言葉から”何か”をされたことは
間違いなかったー

「--沙苗!!そんな格好で…!しっかりしなさいよ!」
八枝も叫ぶー

「--う、、うつくしい…」
龍は顔を赤くして、おかしなことを呟いているー。

「--がうううううっ!」
沙苗が四つん這いで智也の方に走ってきたー

智也を容赦なく襲う沙苗。

「うわっ!やめろ!おい!」
智也が必死に沙苗から逃げながら
沙苗に目を覚ませ!と叫ぶー。

「--すごいぞ!つよいぞ!かっこいいぞー!」
おじさんが嬉しそうに叫ぶー
まるで、無邪気な子供のようにー

完全に洗脳されてしまっている沙苗が智也を爪でひっかくー

「うわっ!」
智也は悲鳴を軽くあげながらー
変わり果ててしまった沙苗のほうを悲しそうに見つめたー

③へ続く

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狂気のおじさんから、彼女を救い出すことはできるのでしょうか?
続きはまた明日デス~!

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憑依空間NEO

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