夏休みの最中に
突然女体化してしまった少年ー。
女体化してしまった少年の運命は…?
そして、その真相は…?
--------------------------
夏休み最終日ー。
忠雄は、母親の絵里に髪を切って貰っていたー
絵里は美容師として働いているため、
こういうことは、お手のものだったー
「-ーー僕、いつまで女の子でいればいいのかな?」
忠雄が呟くと、
横で見ていた父の慎太郎が答えるー
「必ず、元に戻る方法を見つけ出すからー。
それまで、女の子として… な?」
慎太郎の言葉は力強かったが
その言葉からは”今すぐに元に戻る方法はない”ということも
伝わってきた。
少し落ち込んだ表情を浮かべる忠雄。
しかし、両親共に、一生懸命、忠雄のために
今の状況を調べてくれていることは
まだ子供である忠雄にも伝わってきていたー。
髪を切り終えると、
母の絵里が「終わったよ~!」とほほ笑むー
「わぁ…」
忠雄が鏡を見つめると、
男に戻ったような、そんな気分になったー
顔立ちは少し違うがー
それでも、元の自分のような髪型になると、
自分が忠雄に戻ったかのような、
そんな感覚を覚えるー
「--でもなぁ~」
忠雄がズボンのほうを見つめるー
父の慎太郎がそれに気づくー。
「------」
忠雄が寂しそうな表情を浮かべるー
どんなに外見を男っぽくしたところで、
女体化してしまった今、
ズボンの下に、男の象徴でもある”アレ”は
もう存在しないのだー。
「--…ーーー」
父の慎太郎がその様子を見つめるー
そして、忠雄を元気づけようと、呟いたー
「ウィンナーでも、ズボンの中に突っ込むか?」
と、笑いながらー。
「--へっ!?!?」
忠雄が思わず変な声をあげてしまうとー、
母の絵里が、満面の笑みで父の慎太郎をビンタしたー
「はぅあっ!?」
慎太郎が悲鳴を上げるー。
絵里が笑いながら文句を言っているー
そんな様子を見ながら、忠雄は笑顔を浮かべて笑い出したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
部屋に戻って、残った夏休みの宿題を必死に
進めていくー
結局、今年も夏休み最終日まで
宿題が残ってしまったー
今年は、母親に少し手伝ってもらって
なんとかなりそうだがー
結局、今年もこのざまだ。
去年と何も変わらないー。
「そろそろ夏休みの宿題、進めたほうがいいよ」
誰かに言われた、そんな言葉を思い出すー。
「--ー僕、ちゃんと終えられるもんね~!」
そんな風に思いながら
ラストスパートをかける忠雄ー。
忠雄の夏休みは、こうして終わりを迎えるのだったー
2学期が始まるー。
忠雄は、忠雄として、男子として
学校にやってきていたー
しかしー
やっぱり”顔”が少し違うのか
”雰囲気が変わったな”などと何人かに言われてしまった。
それだけではないー
トイレに行くときに、とても困ってしまったー
女体化したことを隠しているわけだから
女子トイレに入るわけにはいかない。
女子トイレに入ってしまったら、
男子・忠雄が女子トイレに侵入したことになってしまうー
つまり、正真正銘の変態になってしまう。
だから、男子トイレに行くしかないー。
しかしー
今の忠雄は女体化してしまっていて、
既に”男”ではないー
だからー
立ってすることができないのだー。
周囲にバレてしまう可能性が高まるし、
何より、立ってするのは、非常に難しいー。
「---」
忠雄はいつも、トイレの個室に入って
用を済ませるようになっていたー
体育の授業のときも、強い違和感を感じるー。
「--はぁ…はぁ…」
比較的運動が得意で、クラスでも1,2を争うタイムを
短距離走で出していた忠雄だったがー
タイムが遅くなってしまったー
どんなに全力で走っても”男子”にかなわないのだー。
「--やめろって!!!!!!!!」
体育の授業前の着替えの時間で、
ふざけてパンツを下ろそうとした男子生徒に向かって
忠雄は大声で叫んだー。
パンツを下ろされたらー
ばれてしまうからだー。
顔を真っ赤にして、大声で叫ぶ忠雄を見て
いたずらをしようとした男子生徒は慌てた様子で謝ったー。
そんなこんなで、女体化した少年・忠雄の生活は続くー。
男子なのに、”男子のふりをして生きる”はめになるとは
夢にも思わなかったー。
やがて忠雄は6年生となりー
わずかに胸が大きくなり始めたー
「--どうしよう…」
両親に相談する忠雄ー。
胸が大きくなってきたら、いよいよ
隠すことができなくなるー。
「--今年までが限界かもな」
慎太郎がそう呟くー。
「忠雄…中学に入ったら…
女の子として…女子として……学校で過ごすことになる」
慎太郎が神妙な面持ちで言う。
女体化してから既に1年近くー。
父の慎太郎も母の絵里も、忠雄が元に戻れるように
必死に色々と調べたり、絵里の父親の知り合いに医師がいるために
相談してみたりもしたが、解決策は見つからなかったー
「----うん」
忠雄が暗い表情で呟くー
「これから…大きくなっていくにつれて
男と女では色々な差が出て来るんだ」
慎太郎は、まだ幼い忠雄に対して言う。
「髪はどうにかなる。
でも、そう…胸とか、身体とか、、
声とか…
そういう、どうしようもない部分も、どうしても出てきてしまう
それにー
もし、もしも、元に戻れないのだとしたらー
今後、ずっと”身体は女なのに、男と偽って生きていく”
ことになってしまうー
だからー」
慎太郎の言葉に、
忠雄は頷いたー
「僕、頑張るよー
僕……女の子になる…」
忠雄は悲しそうにー
けれども、前向きにそう呟いたー
中学に入ったら、女子として生きていくー
忠雄は、そう決意したのだったー。
やがてー
中学に入学し、
女子として生活を始める忠雄ー。
両親が必死に色々な場所に相談しに行き、
忠雄は、”智佐”という名前で生きていくことになったー
どうしてその名前にしたのかは分からないが
それがしっくりと来たー
智佐になった忠雄はー
次第に心も女体化していきー、
高校生になった今では、完全に”女子”になっていたー。
「お母さんただいま~!」
おしゃれをしてー
可愛らしい髪型をしてー
可愛いものが大好きになった忠雄ー。
忠雄が女子として普通に振舞えたのは
”思春期突入前”に女体化したことが大きかったー
まだ、男女の関係や、
エッチなことに興味を抱く前の年齢に女体化したことで、
自分が女になったことに興奮したりすることもなく、
自然にそれを受け入れた。
もし、女体化するタイミングが”高校生”だったりしたのであれば、
自分の胸を揉んだり、興奮したりー
そういったこともあっただろうー。
だが、性を強く自覚する年頃になる前に
女体化したことによって
忠雄は女の子として成長したー。
だから、あまり違和感を強く覚えることもなく
自然と女子として成長することができ、
今ではすっかり身も心も女子だったー
「--小さいころ、僕、僕、なんて言ってたなんて
もう今じゃ考えられないよ~」
母親と雑談しながら笑う忠雄…智佐。
「--」
そんな忠雄を微笑ましく見つめる両親ー
一時はどうなるかと思ったが
忠雄は女として、人生という階段を順調に駆け上がっているー
「あ、そうだ!宿題やらなくちゃ!」
微笑みながら、2階に上がる忠雄ー。
だがーー
”それ”は唐突に訪れたー
”封印”されていたはずの記憶がー
急にー
引き出されたー
何が原因だったのかは分からないー
だがー
鏡を見てー
女子高生としての自分を見てー
”ある面影”を
急に思い出したのだー
「-----お姉ちゃん…!?」
鏡に映る自分の姿がー
姉の姿そっくりだったー
「---!?!?!?!?」
智佐を名乗り、女として生活を送る忠雄は戸惑ったー
お姉ちゃんーーーーー!?!?!?!?!?
どうしてー?
忠雄は戸惑うー
忠雄には、姉がいたー。
名前はたしか……智佐子。
今、自分が「智佐」を名乗っているのはーー
潜在意識の中に残っていた智佐子の存在があったからー
「え…」
忠雄は戸惑うー
姉の存在を、忘れていたー?
父も母も、姉のことを何もーー
そしてーーー
”あの夏の日の出来事”がフラッシュバックしたーーーー
女体化した5年生の夏ー。
夏祭りー
賑やかな人混みー。
チョコバナナや焼きそばのおいしそうな香りー
お祭りを満喫する忠雄ー。
「--明日からは、宿題ちゃんとやるのよ~?」
姉の智佐子が苦笑いしながら言うー
「まだ夏休み半分以上あるから、大丈夫だもんね!べーっ!だ」
逃げる忠雄。
「あ、こら!待ちなさいー!」
忠雄を追いかける智佐子ー。
祭りの会場から外に飛び出して、
姉の智佐子に向かって「べーっ!」と舌を出す忠雄ー
「こらーーーー!!!」
悲劇は、突然だったー。
姉の智佐子は、”油断”したのだろうかー。
弟との楽しい時間に”夢中”だったのだろうかー。
弟がいる反対側の広場に向かおうと、
道路に飛び出してしまったー
一瞬の、油断ーーー
智佐子は、あの日ーー
車に跳ねられてーーーー
死んだのだー。
「--お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
血まみれの姉・智佐子ー
「---泣かないで…」
智佐子は、悲しそうにそう呟いたー
弱っていく姉ー。
夏祭りの会場にいた両親も、
現場に駆け付けるー。
智佐子は、今にもーーー
消えそうな笑顔でーーー
「みんな…泣かないでーー」
と、呟いたー
家族思いの智佐子はー
”みんなを悲しませたくない”
と、最後の瞬間に強く願ったー
何よりも、強くー
その思いがーーー
通じたのだろうかー
智佐子の身体から、光が放たれてー
智佐子は、雫となって、忠雄に吸い込まれたーー
智佐子が最後に残した光に包まれてー
両親も、忠雄も、智佐子が存在した記憶を失いーーー
周囲の人々からも、智佐子の記憶は消えーーー
そしてー
智佐子を吸収した忠雄は、翌日、女体化したー。
それは、
智佐子の家族を悲しませたくないという
強い”未練”から起きた不思議な出来事ー。
結果ー
両親も忠雄も、智佐子のことを忘れー
世の中に智佐子が存在した痕跡は消えー、
”家族”は、智佐子の最後の願い通りー
”悲しむ”ことはなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「-----お姉ちゃん…」
忠雄は、何かの拍子に、
姉の存在を思い出したー。
今になって、どうして姉のことを急に思い出したのかー
今まで、どうして忘れていたのかー
そのことは、忠雄には理解できなかったー
けれどー
姉・智佐子を受け継いだとも言える状態の忠雄は、
少しだけ微笑んだー
姉・智佐子は
いつも”みんなに迷惑はかけられないから”が口癖だった。
きっとー
智佐子のことをみんなが忘れているのもー
お姉ちゃんがそう望んだからなのだろうー、と
忠雄はそう思ったー
「--------」
忠雄は、鏡を見つめたー
そういえばー
今の自分の姿は、当時高校1年生だったお姉ちゃんによく似ているー。
「--お姉ちゃんは、僕の中で生きている…
…ってことかな?」
そう呟いて、一人笑うと、
忠雄は「僕、お姉ちゃんの分も頑張るよ」
と、呟いたー
何らかの拍子でー
もう戻らないはずの記憶が”わずかな間”だけ戻ったー。
でもーー
その記憶は、霧のように霧散してー
また、消えていくー
翌日ー
智佐を名乗り、女子高生として生きる忠雄は、
もう、姉の存在を覚えていなかったー
「----」
忠雄は、”誰か”大事な人がいたような気がして、
静かに呟いたー
「----…僕、頑張るからーー
僕のこと、見ててね」
とー。
誰に言っているのかは分からないー
けれどー
きっと誰か大切な人がいたー
そう思いながら、忠雄は今日も女子高生・智佐として
学校に向かうのだった
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
Hなことはしない女体化モノでした~!
思春期突入前に女体化すると
こうなるんじゃないかな…?という
私の勝手な想像デス~!
お読み下さりありがとうございました!!
コメント