肝試しの最中に、彼女に”何か”が入り込んだー。
その影響を心配するも、
本人は「大丈夫」の一点張り。
しかし…?
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ファミレスに入った二人ー
「---わ~!美味しい!」
パフェを食べて嬉しそうにしている静穂。
そんな静穂の様子をさりげなく見つめながら
チキンとご飯を口にする雅史ー。
肝試しの最中の
トンネルの中での光景を思い出すー。
静穂にーーー
”謎の黒い影”が、飛び込んだ行った光景ー
静穂が背中を向けていたから、
どこに入ったのかは分からないー
だが、確実に、あの黒い霊体のようなものは
静穂の中に入ったー
気がする。
静穂自身もそのことには気づいている様子だったが、
静穂本人は「大丈夫」なのだという。
”久しぶりにごはん!いいねいいね!いこっ!”
ファミレスに入る前の静穂の言葉が引っ掛かるー。
”久しぶりにごはん”
”久しぶりにー”
久しぶりに…とは?
「--だいじょうぶ?まだ怖がってるの?」
静穂がパフェを食べ終えて、
ジュースを口にしながら言う。
「--え、あ、いや…」
雅史は静穂から思わず目を逸らしたー。
「肝試し終わってから、なんかずっと変じゃない?」
静穂が苦笑いするー
雅史は「あ、、いや…」と静穂からさらに目を逸らすー。
そしてー
聞きたかったことをー
疑問に思っていたことを、口にしたー。
「--あ、、、あのさ…」
雅史がようやく静穂のほうを見るー。
「----…!!!!!!!」
その時だったー。
静穂の目が一瞬、赤く光ったー。
「--ひっ!?!?」
雅史が手にしていたコップを倒してしまうー
「--ちょ!?」
静穂が驚いた様子で「何やってるのよ~!」と苦笑いしながら
雅史がこぼした水を慌てて拭き始めるー。
「ご、、ご、、ごめん」
雅史が慌てて謝ると、
静穂が、「こーら!だめでしょ!」と、雅史の背後に向かって
声を出したー。
雅史が振り返ると、
家族連れの子供が、赤いLEDライトを持って、笑っていたー。
「---あ…」
雅史は、”静穂の目が一瞬赤く光ったように見えたのはこれか”と
思いながら深呼吸をするー
同じファミレスにいた子供が、静穂にイタズラで光を
当てたのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「そんなに怖かったの~?」
帰り道ー
静穂が笑うー。
「--あ、い、、いや…静穂が、悪霊みたいのに
乗り移られたんじゃないかって、ずっと気になってて」
雅史が今一度言うと、
静穂は立ち止まったー。
「--大丈夫だってば~!
確かに黒い煙みたいなものはあったけど、
あれは砂ぼこりとか、そういうものでしょ?」
笑いながら言う静穂。
「--で、、でも…」
雅史の言葉に、
静穂は、「大丈夫!ほら!どこからどうみても、いつも通りのわたしでしょ!?」と、
身体を元気よく動かして見せるー
「---し、、静穂がーー」
緊張する雅史ー
「静穂が…”久しぶりにごはん”って言ったのがー
どうしても気になってー」
ついに、聞きたかったことを口にした雅史ー。
静穂は一瞬、表情を歪めたー。
だがー
すぐに笑みを浮かべたー
「な~んだ!
そんなこと?」
静穂の笑顔ー
雅史は「え…?」と、戸惑いを隠せない。
「”久しぶりにごはん”って、いうのは~
わたし、今日、朝ごはん食べてから
ずっと何も食べてなかったから」
笑う静穂ー
”久しぶり”の感覚の違いー。
静穂は、雅史の意図を察して
「まさか、わたしが悪霊か何かに憑りつかれて
”久しぶりの飯だ~”みたいな感じになってると
思ってたの?」と
呆れたように笑ったー。
「--ま、、まぁ…はは…ごめん」
雅史は”何、いつまでも肝試しのことでビクビクしているんだか”と
自分で自分に呆れながら、「--もう大丈夫。ごめんな」と呟いたー
静穂は、笑いながら「いいよいいよ」と笑みを浮かべるー。
そして、歩きながら静かに呟いたー。
「でも、ビクビクしてる雅史もたまには貴重かも!」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「-----」
ゆっくりと家に向かって歩く静穂ー。
「---------」
少ししてから立ち止まると、静穂は、笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
週明けー
「--おはよ~!一昨日は楽しかったね~!」
静穂が言う。
「--もう、怖い気持ちは抜けた~?」
揶揄うようにして笑う静穂ー。
「もう全然大丈夫さ」
雅史はそう言いながら静穂のほうを見たー
静穂の化粧がいつもより濃い気がするー
気のせいだろうかー。
どうしても、静穂を見るとー
どうしても、静穂を見るとーーーー
静穂に”違和感”を抱いてしまうー
カチッーー
「--!?」
雅史の周囲の光景が一瞬にして変わるー
雅史が周囲を見渡すー。
困惑する雅史ー
あの、トンネルー。
黒い影ー
「--ひっ!?!?」
雅史が小さな悲鳴を上げるとーーー
静穂が笑みを浮かべながら雅史のほうを見つめていたー
「だいじょうぶ?」
静穂が首を傾げるー。
「---え、、、あ、、、、うん…」
雅史は戸惑いながら周囲を見渡すー
周囲はいつも通りの教室ー
”俺…まだびびってんのかな…?”
都市伝説が好きで、心霊現象の噂されるトンネルにも
自分から行こうと言い出したのに、
ここまでびびってしまうなんて…
自分で自分を情けないと思いながらも、
雅史は深呼吸するー。
静穂が不気味な笑みを浮かべたー
そんな、気がしたー。
首を振る雅史ー
静穂の振る舞いは、いつも通りだー
雅史が勝手に変な妄想をして
”静穂は悪霊に憑依されて乗っ取られているのではないか”だとか
変な思考に傾いてしまっているだけだー。
もし、悪霊が静穂を乗っ取っているならー
必ずいつもと違う振る舞いを、静穂は見せるはずー。
「---……」
雅史は深呼吸をするー
静穂は、いつも通りー。
そう、いつも通りなんだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---ふふふふ…くくくくく♡」
静穂が、胸を触っているー
「--あぁぁっ…いい♡ いぃ♡」
興奮した様子で、自分の乳首を触って
ゾクゾクを感じている静穂ー。
「--はぁぁあああぁあぁあっっ♡」
女子高生の身体を手に入れて、興奮した様子の
静穂ー
いやーー
”悪霊”--
静穂の耳から、黒い煙のようなものが飛び出すー
静穂と、黒い悪霊が同時に笑みを浮かべるー
「いい身体をーーー
手に入れたゼェ…」
静穂と悪霊の不気味な声が、同時に部屋の中に響き渡るー
「--なっーー」
雅史がやってくるー
空き教室でーー
一人ー
邪悪な笑みを浮かべながらー
耳から不気味な黒い物体がはみ出している静穂を見てー
「うわあああああああああああああああああ!!!!」
雅史は悲鳴を上げたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---はぁっ…はぁっ…」
夢ー
雅史は周囲を見回して、そこが自分の部屋だと気づくー。
夢を見ていたー
週明けの月曜日ー
学校でも、静穂におかしなところはなかったー
勝手に、静穂が憑依されたと思い込みー
勝手にーーー
だがー
あの時ー
トンネルで、黒い煙を確かに見たー
確かに、見たんだー
雅史は頭を抱えるー
”こんなことになるなら、いかなきゃよかった”と思いながらー。
”--たすけて”
”----お願いーーーーー 助けてーーーー”
「--え!?」
雅史が振り返るー。
「---」
声が聞こえた気がした。
静穂の、声がー。
「---静穂…?」
雅史は不安に思うー
やっぱり、何かがおかしい気がするー。
単純に、自分がびびっているだけならいいー。
でもー
でも、もしも、静穂が、悪霊に憑りつかれて、
操られているようなことがあるのならー。
雅史は、深呼吸しながら、学校に向かう準備をするー。
今日は、火曜日ー。
静穂にまた、”大丈夫か?”と聞くべきだろうかー。
いや、だが、聞いたところでー。
静穂はまた、「大丈夫」と言うだけだろうー
”憑依なんてされていない”なら、それでいいー
だがー
もしも、
今の静穂が悪霊に乗っ取られていたりー
本人は「憑依されたけど大丈夫」と思っていてもー
本人も気づかないところで、徐々に乗っ取られている可能性もあるー。
「--やっぱりーー……やっぱり、このままじゃダメだ」
雅史はそう呟くと、意を決して立ち上がった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学校に向かうー
空気が重く感じるー
雅史は、”本当に俺がびびってるだけなのか?”と
首を傾げるー。
やはり、静穂は、あの日、トンネルの中で
”何か”に憑依されてしまったのではないかー。
そんな思いが、ぬぐえないー。
暗い表情のまま学校にやってくると、
静穂が、「おはよ~!」と声を掛けて来たー。
「---おはよう…」
雅史が静穂のほうを見るー。
静穂が微笑むー。
いつものような、明るい、笑みー。
「--あのさ…静穂…ちょっと今日の昼休み、
話、できるかな…?」
雅史が戸惑いながら呟く。
「---え?いいけど…?
急にどうしたの?」
静穂が首を傾げるー
静穂にとっては数日前の
”肝試し”など、もはや”終わったこと”でしかなく、
いつまでもそのことに固執している雅史が
”不思議”でしかなかった。
”どうして雅史はいつまでもビクビクしているのだろう”
とー。
「---もしかして、また肝試しの時の話とかじゃないよね?」
静穂の言葉に、
雅史は、「あ、、いや…ちょっと」と言葉に詰まるー
いい加減、静穂にうんざりされてしまうかもしれないー。
そうは思いながらもー
雅史は「どうしても…どうしても大事な話なんだ!」と呟いたー。
「わかった」
静穂はそれだけ言うと、
「じゃあ昼休みに、ね!」と言って、
そのまま立ち去って行ったー。
”やめて!!!”
”もう、、やめてよ!!!”
雅史が表情を歪めるー
静穂の声が、聞こえた気がするー。
頭を抱える雅史ー。
座席の方に向かった静穂のほうを見るー。
静穂が、友達と雑談しているー。
”普通”だー。
だがー
今の静穂の声はー?
”ははは…俺…幻聴でも聞こえるようになっちゃったのかな…?”
そんな風に思いながらも、
”もし、静穂が憑依されているなら、絶対に静穂を助ける”と
決意するのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お~~~さみ…」
雅史は今日も寒いな、と思いながら、
廊下の外を見つめるー
昼休みの時間がやってきたー。
静穂を呼んだ、校庭裏の庭へと向かうー。
その時だったー
「---!?!?!?」
雅史の目にーー
ふと”黒い煙”が目に入ったー
「--!?!?!?」
雅史が、反対側の廊下を横切った、その黒い煙を追うー。
”あれは…静穂の中に入っていった煙”-
煙を追いかけていくとー
使われていない教室前の行き止まりにたどり着いたー
そして、
そこで雅史が目にしたものはーーー
「-----ぎゃああああああああああああ!?!?」
雅史は思わず悲鳴を上げたー
大破した車のようなものが、何故か校舎内にあってー
そして、その目の前にはー
ボロボロになった、謎の男ー。
男が不気味に口元を歪めるー
”貰った”
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---!!!!」
雅史が意識を取り戻すと、そこは、保健室だったー。
保健室の先生と
静穂が心配そうに、雅史を見つめているー。
「----お、、俺…?」
雅史がはぁ、はぁと荒い息をしながら言うと、
静穂が「廊下で倒れているのを1年生が見つけて…」と
状況を説明したー
雅史は「そっか…」と呟くー
静穂は「--雅史…どうしちゃったの?最近」
と心配そうにつぶやいたー
雅史は”これ以上は本当におかしくなってしまう”と、
全ての気持ちと、全ての見たものを吐露したー。
「-----」
静穂は、雅史の話を聞き終えるとー
雅史を優しく抱きしめてー
そして、雅史の頭を撫でたー。
「--大丈夫だよ…雅史…
わたしは、憑依なんてされてないからー。」
”大丈夫”
何度も聞いた言葉ー
確実に憑依されているように見えたー
でも、静穂は、”大丈夫”と何度も言っているー
「---…そっか、そうだよな…」
雅史は、少しだけ心を落ち着かせて、そう呟いたー
だがーーー
空は不気味に紫色に染まりー
静穂と保健室の先生の目が、不気味に赤く光ったことにー
雅史は気づいていなかったー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
”憑依されたけど、大丈夫”
果たして、彼女は”無事”なのでしょうか~?
次回が最終回デス!
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