肝試しを楽しむ高校生カップルー。
その最中に、彼女が”悪霊”に憑依される瞬間を
彼氏は目撃してしまうー。
しかし…!?
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男子高校生の倉野 雅史(くぎの まさし)は、
彼女の河井 静穂(かわい しずほ)と共にー
”肝試し”を楽しんでいたー
地元に幽霊な心霊スポットがあり、
そこに、好奇心旺盛な雅史は、静穂を連れて
やってきていたのだー
静穂も、最初は「え~やだよぉ~」と言っていたが、
友達の一人に「大丈夫大丈夫、幽霊なんていないよ!」などと
散々押され続けた結果ー
ついに折れて、雅史と一緒に、肝試しに
やってきていたのだったー。
”悪霊のトンネル”と呼ばれて
恐れられている心霊スポットー
夜になると、幽霊が出現する、などと噂されていて、
誰も、近寄ろうとしない。
そこに、雅史と静穂はやってきていたー
雅史は、授業態度はまじめで、
どちらかと言うと優等生に属するタイプ。
しかし、好奇心旺盛で
こういう都市伝説のようなものを聞くと
確かめずにはいられないタイプー
彼女の静穂は
雅史の幼馴染で、小さいころから雅史と一緒に過ごしてきたー
眼鏡がトレードマークの可愛らしい雰囲気の美少女だー
明るく、なんでもできてしまうタイプであるものの、
守ってあげたくなるようなドジっぷりも時々ある、
不思議な感じ女子生徒ー。
「---ゴクリ」
雅史はトンネルの前にやって来るとー
唾を飲み込んだー
自転車でも通行できるトンネルで、
それほど距離は長くないー。
だが、夜になると不気味なうめき声が聞こえるだとか
幽霊が出現するだとか
色々な噂が飛び交っている悪魔のトンネル…なのだ。
「---ど、どうしたの?だいじょうぶ?」
静穂が、そんな雅史の方を見て、呟くー
「--な、、なんか…いざ見ると怖いなって…」
雅史が苦笑いすると、
静穂も苦笑いしたー
「自分から誘っておいて、入る前にビクビクしちゃうなんて…」
半分あきれ顔の静穂ー
とは言え、静穂も、このトンネルから
ただならぬ気配を感じていたー
昼間はごく普通のトンネルなのだがー
夜になると、凄く不気味な雰囲気を醸し出すー。
田舎なこともあってか、
夜になると人通りもほとんどなくなるためにー
より不気味さを際立たせているー。
「--ちょ、ちょっとトイレ」
トンネルに入る前にトイレ!と、雅史は、トンネルの入り口から
少し離れた公園の公衆トイレに行こうとするー
「--も~!早く済ませてきてね!」
静穂は、眼鏡をいじりながら、
あきれ顔で言うと、
「ここで待ってるから!」と付け加えたー
雅史はぶるぶると震えながら
公園の公衆トイレで、トイレを済ませるー。
「ふぅ~…いざ、目の前にすると緊張しちゃうな…」
雅史はそんな風に思いながらも、
自分に言い聞かせるようにして呟いた。
「しっかりしろ俺!
幽霊なんていない、幽霊なんていない、幽霊なんていない」
雅史はそう呟くと、よし!と頬を叩いて、
そのままトンネルの方に戻っていくー。
時刻は19:30-
お互いの両親には、ちゃんとここに来ることは伝えてあるし、
ちゃんと、21時頃までは帰る約束をしているー。
何も、悪いこともしていないー
堂々と、心霊スポットのトンネルを突破してーー
「あれ…?」
雅史が、トンネルの前に戻ると、
静穂の姿がないことに気づいたー
「--あ…あれ?」
雅史が戸惑うー
”先にトンネルに入っちゃった♡”
LINEが届くー
「--おい!驚かすなよ…」
雅史は震えながらトンネルの中を見つめるー
周囲には誰もいないー
これが、田舎の夜だー。
雅史は、「くっそ~…静穂め…」と苦笑するー
静穂は、急に、お茶目な行動に出ることも多いー
今の行動も、静穂らしい行動と言えたー
トンネルに入る前にビビッて、トイレに向かった雅史を見て
雅史をもっと怖がらせちゃお!と、トンネルの中に
先に入ったのだろうー。
雅史は、くそっ、と思いながら
さらに追加で届いたLINEを確認した。
”トンネルの中間ぐらいで待ってる~”と、
静穂からのメッセージ。
「くぅぅ…」
雅史は”静穂に負けるわけにはいかない”と、
持ってきていた小さなライトを手に、
トンネルの中を照らしたー
「(静穂のことだからーきっと………
どこかから急に飛び出してくるぞ…)」
そんな風に思いながら雅史は、
トンネルの中を進むー
一応、照明はあるのだが、
既に古いのか、かなり暗くー昼間は
そんなに広いトンネルではないため、ある程度入口と出口から
光が見えるのだが、夜になると、本当に真っ暗に、ちょっとだけライト、
みたいな感じになってしまっているー
心霊スポットとして知られるほか、
”変質者”が出る場所としても知られているー
これだけ暗いと、確かにそういう、
ヤバいやつからすれば、行動しやすいのかもしれない。
「----」
冷たい空気ー
異様な空気を感じるー
外よりも重苦しく、
負の感情すら感じるような、
そんな空気だー
「びびるな、俺…」
雅史は呟くー
外と空気が違うはずがないー
トンネルの中だから、若干そういうことはあるかもしれない。
けれどー
”邪悪なオーラを感じる”とか
そんなことは、あるはずがないのだ。
「----」
”心霊スポットにいる”
そういう、気持ちが、こういう恐怖心を増長させているのだろうー。
そんな風に、思う雅史ー
その時だったー
薄暗いトンネルの先の方に、人影が見えたー
「----」
静穂かーー?
それとも別の人間かー?
それともーーー?
そんな風に思いながらライトで照らすとー
静穂が背を向けて立っていたー。
「--しず・・・---」
静穂に声を掛けようとしたその時ー
雅史は異変に気付いたー
「--!?!?!?」
静穂の周囲に、黒い煙のようなものが
蠢いているー
「(な、、なんだ…?)」
静穂の身体がビクッビクッと時々震えているように見えるー。
やがて、黒い煙は”幽霊”のような形を作りー
静穂の方に”突撃”したー。
静穂が背を向けているため、
黒い煙のようなものがどうなったのかは分からないがー
”消えた”
「--(今、静穂の中に…?)」
雅史はそんな風に思ってしまうー
黒い煙が静穂の口か、目か、鼻かー
そのあたりから、中に入っていった気がするのだー。
「---し、、静穂…?」
雅史がライトで静穂の方を照らしながら
恐る恐る声を掛けるー
”悪霊に憑りつかれたー”
そんなことがあるはずがないー
そう、思いながらー
「----あ、」
静穂が振り返るー
静穂は、いつものように微笑んだー
「雅史~!遅かったね~?
急にわたしがいなくなって
ビクビクしながら来たんでしょ~?」と、
冗談を口にしながらー
ほっと、胸をなでおろす雅史ー。
静穂に、黒い煙のようなものが入っていったように見えたが
見間違いだったようだー。
「--…あ、、、あのさ」
しかしー
”そう見えた”だけでも雅史は不安だったー
「今…静穂の周りに黒い煙みたいなものがあって、
それが静穂の中に入っていったように見えたんだけどー」
雅史が言うと、
ニコニコしながら、雅史の前を歩いていた静穂が立ち止まったー
「し…静穂…?」
雅史も立ち止まるー
不気味なトンネルの出口付近で、
重い空気が流れるー。
「------見たんだ?」
静穂が低い声で呟くー
「え……あ、、、え…」
雅史の声に恐怖の感情が混じるー
「---クククク……」
静穂が振り返ったー
そしてー
目を、一瞬、赤く光らせると、
静穂は呟いたー
「--この女に、憑りついたところを…見たのか?」
静穂がゆらゆら歩きながら近づいてくるー
「ひっ!?」
雅史は思わず尻餅をついてしまうー
「--だったら生かしてはおけないなぁ!!!!」
静穂が大声でそう叫ぶとー
雅史は「うわあああああああああああああ!」と悲鳴を上げて
目を瞑ったー
だがー
何も起きなかったー
「--な~んちゃって!」
静穂が笑うー。
「-ーーーひ、、、え???」
雅史が目に涙を浮かべながら言うと、
静穂は笑ったー
「--幽霊なんて、いるわけないでしょ?」
笑う静穂ー
「-ーーーな、、な、、な、、なんだよ!びっくりさせるなよ!」
雅史が言うと、
静穂は「ごめんごめん」と苦笑いしたー
「---で、、でも…黒い煙みたいな…幽霊みたいなやつは…」
雅史が震えながら言う。
あれは、見間違いではない。
確かに、静穂の周りに黒い霧のような「幽霊」のような
謎の物体が存在していて、
それが静穂に入り込んだのを見たー。
「---ーーわたしの周りをウロウロしてたやつだよね?」
静穂が笑う。
やはり、静穂にも見えていたのだー。
「-や、、やっぱ静穂…幽霊に憑りつかれたりされたんじゃ…?」
雅史が震えるー
「--いやいや、ただの煙でしょ~?」
静穂が笑いながら、雅史の肩を叩く。
その手はひんやりと冷たいー。
雅史は、そんな”怯える必要のないこと”にまで怯えてしまうー
「--え、、ほ、、ほら、幽霊に憑依されるとか…
そういう…」
雅史がさらに続けると
静穂は笑ったー
「--ホラー映画とか見すぎなんじゃない?」
とー。
「-そ、そ、そ、そんなことねぇよ」
雅史は、そこそこホラー映画やホラーゲームの類が好きだー
そのせいで、”静穂が憑依されたのではないか”などと
おかしな妄想をしてしまうのかもしれないー。
「---憑依されたけど、大丈夫」
静穂がにっこりと笑うー。
「---え」
雅史は震えながら静穂のほうを見た。
「-な~んちゃって。
ただの煙だよ~!砂ぼこりとか、何かじゃない?」
静穂は笑いながらトンネルの出口の方に向かっていくー。
雅史も「お、置いていかないでくれよ!」と震えながら
静穂についていくー
ようやくトンネルから出た雅史と静穂。
雅史は「大丈夫か?本当に何ともないのか?」と
不安そうに静穂のほうを見るー
静穂に”黒い霧”のようなー
幽霊のような物体が入っていったように見えるー
もしこれがホラー映画だったら
静穂は悪霊か何かに乗り移られてー
…なんて、展開になるのだろうー。
「だいじょうぶだってば~!わたし、何ともないよ?
自分から誘っておいて、そんなに怖がるなんて…」
静穂は苦笑いを浮かべるー。
「--ほ、ほんとに???
憑依されたりとか、されてない?」
雅史がなおも静穂を心配するー
「--大丈夫だってば~~!!
もしあの黒いのがオバケとかそういうのだったとしても
ほら、わたしは元気だし、正気だよ!」
静穂が身体を動かしながら微笑むー
「な、、ならいいけど…」
雅史は不安に思いながらも、
それ以上は確認せずに、深呼吸してようやく落ち着きを取り戻したー
「---はぁぁ…緊張したらお腹空いてきた」
雅史のそんな言葉に、静穂は
「久しぶりにごはん!いいねいいね!いこっ!」と
微笑んだー
雅史は、時計を見るとー
”ファミレスか何かで静穂とご飯を食べてから帰宅すれば
だいじょうぶだな”と、心の中で考えてからー
静穂と共にファミレスに向かったー
雑談しながらファミレスに向かうふたりー
その最中ー
雅史はふと、さっきの静穂の言葉を思い出すー
”久しぶりにごはん!いいねいいね!いこっ!”
ファミレスの入口にたどり着いたところで、
雅史は思わず立ち止まるー
”久しぶりにごはん!”
ひさしぶりにーーーー
ごはんーーー?????
雅史は、目の前で微笑む静穂を見て
凍り付いたー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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彼女は憑依されてしまったー……のでしょうか?
謎に包まれたまま、明日に続きます~!
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