<他者変身>彼女とデートしてるつもりが親友とデートしてました②~想い~(完)

相手が「親友」だと知らずに
デートを楽しむ彼氏ー。

とある事情から、彼女に変身して
デートを続ける親友ー。

二人のデートの行方は?

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”蔵居くん…お願いがあるんだけど”
事の始まりは、今朝のことだったー。

今日は幸春と陽菜乃のデート当日。
親友である隆三も、そのことは知っていた。

だからー
突然、陽菜乃が家にやってきたときには驚いたー

陽菜乃と隆三の家は、それほど遠くはないー

だが、彼氏とのデート当日に、何の用なのだろう?と、
隆三は疑問に思いながら、玄関の扉を開いたー

「---朝倉さん…今日は、幸春のやつとデートだったはずじゃ?」
隆三が心配そうに言うと、

「うん…そうなんだけど…」
と、陽菜乃は、スマホを見せてきたー。

”たすけて”
と、表示されたLINE-。

”おばあちゃん”と画面の上に表示されている。

「え!?」
隆三が驚いていると、
陽菜乃の祖母が、今朝、こんなLINEを送ってきたのだと言う。

「---LINEの返事もしたし、電話もかけたけど、
 返事がなくて…」
陽菜乃は少し動揺している様子だったー

警察に連絡…とも考えたけれど
何が起こっているか分からないから、
陽菜乃が直接見に行くのだと言うー。

「ーーー…そっか…おばあさん、心配だな」
隆三は、それだけ言うと

「じゃあ、デートは中止ってことかな?」
と、陽菜乃を見るー。

陽菜乃は、”祖母の家”に向かう途中ー
ちょうど隆三の家の近くも通ることから
”あるお願い”をしようと思って、ここに立ち寄ったのだったー。

「---ううん…幸春、、ホントに今日のデート楽しみにしてたし…
 それに…」

陽菜乃は、幸春に心配を掛けたくないー、と、
隆三に告げるー。

陽菜乃自身も、幸春とデートしたいし、
今日をとても楽しみにしてくれていた幸春を裏切る行為はしたくないー。

そして、心配性の幸春に
「おばあちゃんが」と、伝えることも陽菜乃は躊躇していたー。

勿論ー
小さいころから可愛がってもらっていた祖母のことも、とても心配しているー。

「--だったら…どうするんだよ?
 俺が、、朝倉さんのおばあちゃんの様子、見に行こうか?」
隆三が言うー。

陽菜乃は「ありがとうー」とほほ笑むー

陽菜乃のお願いは”それ”なのだー。

だがー
「---”逆”をお願いできれば、って思って…」

陽菜乃の言葉に、隆三は目を丸くした。

「--は?逆?」

「--うん…わたしの代わりに…遊園地に行って、
 幸春とデートを…お願いできるかな?」

陽菜乃が何を言っているのか分からないー

「いやいやいやいや、俺が言っても幸春のやつ、
 楽しくねぇだろ?

 幸春が楽しみにしてるのは
 遊園地じゃなくて、朝倉さんと一緒にいれること、だろ?」

隆三が言うと、
陽菜乃は「蔵居くんだって、幸春と大の仲良しでしょ?」とほほ笑むー。

そしてー
真剣な表情に戻ると
「わたしもおばあちゃんの様子を確認して、大丈夫そうならすぐに遊園地に向かうからー…
 それまで、”わたしとして幸春とデート”してもらえないかな…?」
と、呟いたー

鞄から、陽菜乃は服を取り出すー。

「--わたしに変身したら、これに着替えて、わたしの代わりに
 遊園地に行って、幸春とデート… お願い」

陽菜乃の言葉に、隆三は「は???は????」と
首を傾げることしかできなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして今ー

親友・幸春と
親友・陽菜乃のためーー

隆三は、陽菜乃としてーーー

ジェットコースター”ブレイン”に乗っていたー

「うあああああああああああああああああ!!
 おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
 うぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!!」

女子とは思えないような悲鳴を上げ続ける
陽菜乃に変身した隆三ー

「-------!!!」
幸春もさすがに怖いのか、しがみつくような姿勢になって
言葉を失っているー

「---ぎゃあああああああああああああ あ…
 -----------…」

陽菜乃に変身している隆三は、
あまりの恐怖に、気を失ってしまうー。

「----」
涎を垂らしながら、失神した陽菜乃を見てー

「えぇっ!?」
と、幸春は戸惑うー

そしてー

陽菜乃の方を見てから、
再び前を向くと、ジェットコースターの恐怖に耐えるために、
しがみつくようなポーズを取ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--は~~~怖かったぁ」

日が沈みー
遊園地がライトアップされ始めるー。

ジェットコースターで疲れ果てた陽菜乃に変身している隆三は、
ベンチに座って、一休みしているー。

「---あ」
つい、足をだらしなくしてしまい、幸春にばれないように、
慌てて足を整えるー。

今は、陽菜乃の姿なんだー。

「---……」
ライトアップされた遊園地を見つめる幸春ー

幸春は微笑みながらー
陽菜乃の方を見たー

本当に楽しそうで
幸せそうな幸春ー

陽菜乃に変身している隆三は
”親友”だがー、
幸春がこんなに嬉しそうにしていると、
こっちまで嬉しくなるー

”親友”として、役に立ててよかったー
心から、そう思ったー

だが一方で
陽菜乃の過保護ぶりは心配でもあったー。

陽菜乃とも”親友”と呼べる間柄な隆三は
陽菜乃が”過剰に幸春に気を遣う”面があることを
心配していたー。

幸春がいじめられていたことを知っているからか、
”過剰に気遣い”してしまうのだー

今日だってー
”おばあちゃんからのLINE”のことを
幸春に話して、
その上で、デート時間を遅らせたり
別の日にずらしたりすることはできたはずなのだー

そしてー

隆三は知っているー

昔はどうだったのか知らないが、
今の幸春は、少なくとも”強い”

ナヨナヨとしているように見えるかもしれないが
芯はとても強いー

陽菜乃が事情を説明すれば、
幸春は、間違いなく「おばあさんを優先してあげて」と、
言っただろうー。

落ち込むこともなくー
それを受け入れただろうー

♪~~~

”遊園地、到着~!”
本物の陽菜乃からのLINE-

陽菜乃が遊園地の入口の写真をLINEで送ってきたー。

役目は果たしたー。
あとは、”本物の陽菜乃”と交代してー
陽菜乃と幸春の”デート本番”を楽しんでもらえれば、
それでいいー

「あ、ちょっと、トイレ」
陽菜乃に変身している隆三は、そう呟くと、
幸春が「あ、うん、ここで待ってるよ」とほほ笑むー。

「----」

トイレに行く振りをして、入り口で、陽菜乃と交代するー。

「---あ!陽菜乃!」
幸春が、走り去ろうとする
陽菜乃に変身した隆三に声を掛けるー。

幸春は、陽菜乃の方に微笑みながら、
近づいてくると
陽菜乃を突然抱きしめた。

「--!?!?!?!?!?」
思わずドキッとしてしまう陽菜乃の姿をした隆三ー

”お、、お、、やめろ、俺は陽菜乃じゃないんだぞ!?”
と、ドキドキしながら思うー

幸春は、少しすると陽菜乃から離れて
「-ーありがとう」と、呟いてー

「あ、ここで待ってるから」と、静かに微笑んだー

陽菜乃に変身した隆三はドキドキしながら
「う、うん」と呟いて、そのまま
”本物の陽菜乃”との合流地点を
目指すのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

遊園地入口ー

陽菜乃の姿をした隆三が、やって来るー

本物の陽菜乃が手を振るー

「今日は、本当にありがとう」
本物の陽菜乃はそう言うと
”変身グッズ”役に立ったね”とほほ笑むー。

「--どこからんなもん手に入れたんだよ」と
突っ込みを入れる隆三ー。
まだ、姿は陽菜乃のままー

「-それにしても、並んでると双子みたい」
と、本物の陽菜乃が笑うー

そして、おばあちゃんの”助けて”は、
間違いだった、と陽菜乃は説明したー

少しボケはじめていて、
意味もなく陽菜乃にLINEを送りー
そして、そのまま寝落ちしていたのだと言う

おばあちゃんの家にたどり着いた陽菜乃は
おばあちゃんの無事を確認し、
少し雑談したあとに、こうして遊園地に
やってきたのだったー

「----あ、これ」
”変身状態”を解除するための薬のようなものを手渡す陽菜乃ー

隆三はそれを受け取ると
「ここで解除したら、女装男子になっちゃうから、家に戻ったら
 解除するよ。」
と、苦笑いしたー。

服は、今度返すからー、
と。

「--うん。今日は本当にありがとう。 円華ちゃんにもよろしくね」
本物の陽菜乃はそう言うと、
「幸春が待ってるから行かなくちゃ!」とほほ笑んだー。

”円華”とは隆三の彼女で
幸春・陽菜乃カップルの共通の友人だー。

「----あ、朝倉さん!」

呼び止められて立ち止まる陽菜乃。

「---幸春のやつー…
 朝倉さんが思ってる以上にー
 強いよ」

笑いながら言う隆三ー。

「---え」
陽菜乃は一瞬、何を言われているのか
分からなかったが、
少し間を置いてから、理解して
「そっか」とほほ笑んだー

「今日は本当にありがとうー
 今度、幸春と一緒に、4人で遊びに行こうね!」

陽菜乃はそれだけ言うと、嬉しそうに、幸春の待つ
遊園地の中に入っていったー。

「----さて…」
隆三はLINEを確認するー

彼女の円華からのLINEがいつの間にか
大量に入っていたー

「ひっ!?」
隆三は、”早く返事をしないと怒られる!”と
慌てて返事をしながら、
”人前で変身を解除したら、女装した俺になっちまう”と
苦笑いして、
陽菜乃の姿のまま、自分の家へと向かうのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お待たせ~!」
本物の陽菜乃が幸春と合流するー。

「--あ、陽菜乃!」
幸春は、陽菜乃の方を見ると、
嬉しそうに微笑んだー。

「--”最初”はお化け屋敷だよね」
幸春が、そう言いながらお化け屋敷の方に向かうー。

「---え?最初?」
陽菜乃が、そう聞き返すと幸春は

「あ、いや、お化け屋敷また行きたいかな~って」
と、微笑んだー。

「----…うん!行きたい」
陽菜乃が微笑むー

幸春が、先にお化け屋敷の方に向かうー。

陽菜乃は、そんな幸春の後ろ姿を見て、静かに微笑んだー。

「---幸春のやつー…
 朝倉さんが思ってる以上にー
 強いよ」

隆三の言葉を思い出すー

「そっかー…気づいてたんだね」

陽菜乃は、そう呟くと、

「--あ、待ってよ!幸春~!」と
先にお化け屋敷に向かう幸春のことを
追いかけ始めたー

”あー、
 でもーーー
 蔵居くんの演技が下手だったのかも”

と、心の中で笑いながら-。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

楽しいデートを終えて帰宅した
幸春ー。

”確信したのは、ジェットコースターに乗った時の反応だったけどー”

と、一人、苦笑いするー。

以前、カップル2組、4人で遊園地に行ったとき、
隆三はジェットコースターに乗って気絶していたー

それで、悟ったのだ。

他人に変身できる…なんて、信じられないけど、
そういう力も、あるのかもしれない、とー。

そして、幸春は
自分のために気を遣ってくれたのであろう
隆三と、陽菜乃のために、
あえて気づかないふりをして、そのままデートを楽しんだのだったー。

”今日は、ホントに楽しかった~!”
陽菜乃からのLINEを確認しながら、返事を送る幸春。

幸春は返信を終えると、
前からずっと、密かにつけている日記を開くー

誰に見せるわけでもないのだがー
なんとなく前から続けている日記ー

一番新しいページに、幸春は、
今日の出来事をこう記したー

”彼女とデートしてるつもりが親友とデートしてました”

とー。

おわり

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コメント

ダークな要素のない平和的な他者変身でした~!

本人は登場しませんでしたが、
親友・隆三の方の彼女の円華は、
ヤンデレ属性を持っているみたいデス!笑

お読み下さりありがとうございました~!

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