<憑依>憑依されたわたし②~正体~(完)

ある日、突然憑依されてしまった女子大生ー。

脳内に巣くう男の言いなりになる日々の果てに待つ、
”男”の意外な正体とは…?

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「---ふふっ♡ はははっ♡」
チアガールの格好をして、嬉しそうに
ぴょんぴょん飛び跳ねたり、
くるくる回ったりしている真凛ー

真凛は”男”に乗っ取られていたー

適当なBGMを流して、
チアガール風に応援してみる真凛ー

「うふっ♡ さいこう!」
真凛はポーズを決めてどや顔をするー。

ツインテールにした自分の髪を触りながら
「は~~~さいこう!乗っ取って他人の身体で好き放題とか、たまんねぇな」
真凛はそう呟くと、チアガールの姿のまま
タバコに火をつけて、それを吸い始めたー

ゲホゲホと咽る真凛ー。
真凛は喫煙者ではないー。
だが、真凛を乗っ取った男は、真凛の身体で好き放題しているー

「--」
チアガールの衣装を脱ぎ捨てて、下着姿で、スマホをいじる真凛ー。

スマホの暗証番号をたやすく解除しながら、
彼氏”だった”隆平からのLINEを見つめるー

「へへへへへ、彼女に鞭で叩かれたぐらいでふて腐りやがって」
真凛は太もものあたりをボリボリかきむしりながら
そう呟くと、「さ~て、そろそろ解放してやるか」と呟きながら
タバコの火を消したー

「ん…」
真凛が目を覚ますー

”へへへ、楽しかったぜ”
男の声が響き渡るー

”解放”とは、真凛に身体の主導権を返すことであって、
男が真凛の身体から出ていくことではない。

「----う……」
真凛が周囲を見渡し、慌てて服を着るー。

”へへへ、隠しても無駄だぜ。
 お前を乗っ取っていつでも俺はお前の裸を見ることだってできるんだからさ”
男の言葉に
真凛は泣きながら「い、、いったい誰なんですか…!」と叫ぶー。

”自分に憑依している男”の正体が分からないー。

”あ?”
男が不快そうにつぶやくー

「--あ、、、え…え、、、ご、、ご主人様は…何者なのですか…」
真凛が泣きながらそう呟くー

”ご主人様と呼べ”
男は、真凛にそう命じていたー

従わなければ、乗っ取って、滅茶苦茶にしてやるとー。
従ってさえいれば”おたのしみ”は家の中だけで済ませてやるー、と。

”俺?クク、俺か…?”
男は、脳内で笑ったー

”俺は、憑依薬でお前を乗っ取った男だよ”
とー。

「ち、、違うんです…ご主人様が、誰なのか…」
真凛が言うー

なんとかー
”この男”が何者なのかを知らなくてはいけない。

彼氏の隆平は、憑依されている間に会っているみたいだったから
さすがに違うと思うー。

真凛は一瞬”兄”の顔を浮かべるー

小さい頃の真凛に、無理やりハイスクール・エクソシストという映画を
見せてきた兄ー

真凛が”憑依”に対するトラウマを抱くきっかけになったのが、
兄だったー

兄が、見せてきた映画がきっかけでー
”乗っ取られて好き放題される”ことに対して強い恐怖と嫌悪を抱きー
そして、兄がそれをからかうことで、
現実には存在しないであろう、”憑依”に対してより強い恐怖を抱くようになったー

その、兄がー

”---俺は……へへっ、なんだろうな?”
男は笑みを浮かべたー。

「---ご主人様……もう、、もう、、やめてください…」
真凛が泣きながら言うー
本当は敬語でなんかしゃべりたくないが
この男の機嫌を損ねれば身体を乗っ取られてしまうー
だから、こうするしかなかったー

状況は日に日に悪化していくー
真凛が、真凛である時間が減っていくー

「ふふふふふふふ…あはははははははっ♡」
真凛が、メイド服で胸を揉みまくりながら笑みを浮かべているー。

ハイスクールエクソシストという映画では、
怨霊に乗っ取られた女子高生たちが滅茶苦茶にされていたー

そして、兄がそのあとに見せてきた”憑依”のAVでは、
乗っ取られた女が、今の自分のように、滅茶苦茶にされていたー。

「---ふはははは!お前のおにいちゃんは変態だよなぁ!?!?
 まだ未成年だった妹に憑依のAVみせるなんてさぁ!」

真凛はそう言いながら、胸を壁に強く押し付けてこすりつけて
「んっふぅぅ~♡」と奇妙な声を出しているー。

「--そして、ほんと~に憑依されちまうなんて、
 あぁもう、たまんねぇなぁぁぁぁぁ♡♡」
ビクンビクンしながら、真凛が叫ぶー

”真凛”の時間が減っていくー

真凛は、なんとか、親友に助けを求めようと思ったー

だがー
”その行為”が怒りを買ってしまったー。

”俺に逆らうのか?
 ふ~ん、そうかそうか”
男は、逆上し、真凛を外でも家でも乗っ取るようになってきたー。

乗っ取られている間の意識は、真凛にはないー。

「--最近、真凛、なんか、楽しそうね?」
親友の繁子(しげこ)が笑うー。

「ふふふ、そう??ふふふふふふっ」

当たり前だー。
”中身”が違うのだからー。

真凛は、笑みを浮かべながらー
”女子大生ライフ”を満喫したー。

だがー
外に出ている間の”乗っ取られた真凛”は
不思議なことに”自分の人生を壊すようなこと”はしなかったー

ごく普通の女子大生としてー
ちょっとエッチで、明るくなったぐらいー

だから、周囲は、真凛のことを”最近明るくなったね”ぐらいにしか
思わなかったー

「へへへへへ~~酔っちゃったぁ~♡」
大学のサークルで飲み会をしてきた真凛は
ふらふらになって、帰宅したー

そのままだらしない恰好で、ソファーに横たわる真凛ー

男は思うー。

”そういえばー”
とー。

真凛を乗っ取って好き放題やってー
憑依のゾクゾクを味わい続けてきた男ー

だが、ふとここにきて、男はあることを
疑問に思い始めたのだ。

「--あ、、、え…え、、、ご、、ご主人様は…何者なのですか…」
「ち、、違うんです…ご主人様が、誰なのか…」

真凛から言われた言葉ー

「----俺は……」
真凛の表情から笑みが消えるー

「俺は……誰だ?」
真凛を乗っ取った男は、”自分が誰”なのかー
よくわかっていなかったー

”憑依薬を使って真凛を乗っ取った男”ということはー
分かっているー
だが、それしか分からないー

「---…憑依した時に記憶も吹っ飛んだってか?」
そう呟きながら、真凛は「へへ、飲みなおしだ!」と冷蔵庫に入っていたビールを
ブルマ姿で飲み始めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

真凛は、ほぼ完全に乗っ取られてしまったー

真凛が兄に見せられた
”映画”や”AV”のようにー

「---は~~~」
真凛は煙草を吸いながら休日を堪能していたー。

「へへへへ、この女もそろそろ諦めたのかな」
ミニスカートに網タイツ、胸元を強調した服装で
部屋を歩く真凛ー

服装の好みも”男”の好みに変わってしまったー

♪~~~~

「--!」
真凛が、インターホンを見るとー
そこにはーー

”兄”の姿があったー

兄が真凛の家に遊びに来たのだー

兄が来たとたん、委縮してしまう真凛ー。

「----雰囲気、変わったな」
少し歳の離れた兄が言う。

「---え、、、あ、、うん」
真凛を乗っ取っている男は、
なんだか居心地の悪さを感じるー。

「----そ、、それで、今日は、何の用?」
真凛が落ち着かない様子でタバコを何本も吸うと、
兄は言ったー

「病院に行こう」
とー。

「は?」
真凛が首を傾げるー。

「---お前の彼氏さんから聞いたんだ。
 お前が豹変したって。

 俺、考えたんだ。
 なんか、お前、彼氏の前で憑依された!とか
 憑依憑依とか、言ってたらしいじゃないか」

兄の言葉に、
真凛は「はは、お兄様にばれちゃしかたねぇなぁ」と笑みを浮かべるー

「そう、俺はお前の妹の身体をーーー」

「---そう、思いこんでるだけだ」
兄は、真凛の言葉を遮ったー

真凛が表情を歪めるー。

「---真凛、お前はーー
 ”解離性同一性障害”と呼ばれる状態だー。
 憑依されたんじゃない。
 分かりやすく言えば、二重人格ー
 ”わたしに憑依している男”の人格を生み出してしまっただけだ」

兄の言葉に、
真凛が表情をさらに歪めるー。

兄は、現在、心理カウンセラーとして働いているー。
昔の不真面目な様子とは打って変わって、今は真面目なのだー。

「---…あ、、、???俺は…俺はお前の妹に憑依…」
真凛が言うと、
兄は首を振ったー

「違うー」

兄は説明したー。

「---じゃあ、お前は誰だ?」
兄が言う。

真凛は戸惑うー。

「あ、、お、、、俺は…!俺は…」
真凛を乗っ取っている男はー
”憑依薬で真凛に憑依した”以外、分からないことに
改めて気づくー。

自分が何者なのかー
自分がどんな人物なのかー

そういうことが、分からない。

ただ、”真凛を乗っ取った男”ということしかー
分からないー。

「--ち、、ちがう!俺は……俺は…!」

真凛の中に宿る男は戸惑うー。

真凛のスマホの暗証番号を当たり前のように入力したことも思い出すー
大学では、”自分の人生を壊さないような振る舞い”しかしてなかったことを思い出すー。

彼氏と亀裂が入るような行動をしたのは、
彼氏に対する不満が、真凛自身のどこかにあったためだろうー。

「うあああああああああ!!俺は俺だぁぁあああ!」
真凛が暴れ出すー

兄が慌てて真凛を抑えると、
「落ち着け!」と叫ぶー

「俺のせいだ!ごめんな」
兄が呟くー。

昔はー
いたずら好きで、不真面目だった兄ー。
真凛に無理やりエクソシスト映画や、憑依のアニメやAVを見せたことで
真凛にトラウマを植え付けてしまったー。

そして、その強すぎるトラウマがー
真凛を二重人格にしてしまった。

”憑依されるのが怖い”という強すぎる感情がー
”わたしに憑依した男”という設定の別人格を作り出し、
そして、真凛は乗っ取られかけているー。

「--病院に行こう。真凛。大丈夫。ちゃんと、治るから」

兄の言葉に、
真凛が泣き叫ぶようにして暴れる。

「俺は、、俺は、、、、、、、、、俺は…俺だぁ…!」
真凛の中に生まれた”別人格”は、
自分が”真凛から生まれた第2人格”であることを
受け入れられずに発狂したー

やがてー
真凛が疲れ果ててそのまま眠るとーー

主人格の真凛が姿を現したー

「---わたし…憑依されたんじゃなかったんだね」
と、呟く真凛。

兄は、真凛に小さい頃のことを詫びるー。
自分のせいで、真凛に変なトラウマを植え付けてしまったことをー。

「----……わたし、、元通りになれるかな…?」
真凛の言葉に、
兄は静かに頷いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数か月後ー

真凛の状態は安定していたー

”真凛を乗っ取った男”人格は、ほとんど現れなくなりー
”統合”が上手くいきつつあるー。

「----…だいぶ、よくなってきたな」

「--うん」

真凛と兄は、穏やかな表情で、会話を交わした。

「--じゃ、また来るよ」
兄が立ち去っていくー。

真凛も、自分の家へと向かうー。

通院しながら、何とか日常生活も送ることができているー。

”人格の統合”が完全に完了すればーーー

真凛は静かに微笑んだー

”この俺が、主人格だー”

とー。

俺が主人格じゃないのならーーー
俺が主人格になってしまえばいいー。

おわり

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コメント

憑依かと思ったら二重人格だった、というお話でした~!

本当はジャンル表記で<憑依>じゃなく<二重人格>と書かないと、なのですが、
それをやってしまうと、最初からネタバレになって
このお話が成り立たなくなってしまうので、今回は<憑依>にしておきました!
(普段は書いてある通りのジャンルなので、安心してくださいネ!)

お読み下さりありがとうございました~!

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