陰険な復讐ー。
とある家庭の長女に憑依した男ー
復讐のために、彼が最初に取った行動はーー
”砂糖と塩をすり替える”ことだったー!
陰険すぎる男の、陰険な憑依劇ー
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宮城(みやしろ)家は、
ごく普通の幸せな家庭だったー。
父・和郎(かずろう)
母・久美(くみ)
長女・愛優香(あゆか)
長男・節義(せつよし)
の、4人家族だー。
今日も、いつも通り、
家族仲良く、休日を満喫していたー
和郎と久美が何か雑談しながら、笑いあっていてー
長女の愛優香が、弟の節義がやっているゲームを見つめながら
楽しそうに雑談しているー
いつも通りの光景ー。
だがー
その平和はもうすぐ壊されるー
宮城家の4人は、
そのことをまだ知らなかったー
宮城家の家の前に、フードを被った怪しげな男が立っているー
”復讐の時は整ったー
和郎よー、お前の人生、俺が滅茶苦茶にしてやるぜ”
鋭い眼光の男ー
彼は邪悪な笑みを浮かべて、
宮城家の父親である和郎の名を思い浮かべたー。
「俺の積年の恨みを晴らすときがついにやってきた…」
フードの男は呟くー
宮城和郎ー。
奴だけは、許してはおけぬ。
いや、いかしてはおけぬ。
彼はー
謎の液体が入った容器を手にすると、
笑みを浮かべたー
”大学時代のあの日”からずっとー。
男は和郎を憎み続けたー。
和郎が全てを奪ったー
だから、今度はー
「俺が、お前から全てを奪ってやる」
帰宅したフードの男は、そう呟くと、
部屋中に貼ってある和郎の写真ひとつひとつに
画鋲を刺し始めたー。
「ひゃはははははは!痛いか!?和郎よ!?」
そう叫ぶと、男は、一人、笑みを浮かべたー
「これからお前が味わう苦しみは、
こんなものじゃすまねぇぞ」
部屋の隅に、可愛らしい少女の写真が貼られているー
宮城家の長女で、和郎の娘の
愛優香ー。
現在高校2年生の少女だー。
「---かわいいかわいい娘の身体をー
この俺が奪ってー
お前を、闇に染めてやるぜ」
男はそう呟くと、
机の上に謎の液体の入った容器を置くー。
「ひゃはははは!憑依薬!!!」
10年以上ーずっとずっと探し続けた
裏社会の薬・”憑依薬”
これがあればー
憎き和郎の娘である愛優香を乗っ取り、
思いのままに操ることができる。
「さぁ、和郎よー。
お前の幸せな家庭はー
お前の大切な娘によって、壊されるんだ…
くくくく」
目をカッと見開くと、
男は憑依薬を一気に飲み干したー
「ひゃっは~!」
憑依薬の容器をご機嫌そうに投げ捨てる男ー
そしてー
男はすぐに意識が遠のき、そのまま部屋の中に倒れ込んだー
・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー。
「ごちそうさま~!」
愛優香が、微笑みながら、そう言うと、
自分の食器を片付けて、
そのまま自分の部屋へと向かうー。
「--あ、姉さん!あとであれ見せて!」
弟の節義が、2階に向かう愛優香にそう言うと、
「あ、うん~!あとでわたしの部屋に着て~!」
と、愛優香はそう返事をしたー。
高校1年生の弟・節義が、
テスト勉強のために、
愛優香が去年使っていた問題集を使いたい、と
お願いしていたのだったー。
それを取りに行く約束ー
「----お腹いっぱい~!」
体重を気にしている愛優香は、
”ちょっと食べすぎちゃったかな?”と苦笑いしながら
自分の部屋に戻るー
「--!?」
愛優香が部屋の扉を開けるとー
そこにーーー
”男”の霊体が、腕組みして、仁王立ちしていたー。
「---え」
愛優香が、驚くー。
”知らない男が、自分の部屋に立っている”
そんな光景を見たら、
誰だって驚いて当然だ。
例外なく、愛優香も驚き、そして、恐怖から
声も出ず、身体を震わせたー。
「--俺の名は、工藤 陣(くどう じん)」
男はそう宣言したー。
和郎を憎む男ー。
自宅で憑依薬を飲み、
そして、霊体になって
ここまでやってきたのだー
愛優香の身体を乗っ取る為に。
「---え…え…ど、、、、、どうやってわたしの部屋に…?」
愛優香は震えながらそう呟くと、
陣は答えた。
「--風に乗って」
霊体だったから、嘘ではないが、
愛優香には、当然、その意味は通じなかったー。
「---お前の父・和郎に復讐するためー
お前に力を貸してほしい」
堂々とした口調で言う。
「-ーーー!」
愛優香は「お、、お父さんに…?」と震えながら言う。
そして、すぐに答えた。
「そ、、そんなことに協力なんて、できません!」
とー。
当然の答えだー。
父親への復讐に加担する理由なんて、愛優香にはないー
「け、、警察を呼びますよ!」
愛優香が机の上に置いてあるスマホの方に手をやろうとするー。
「---くくく…
俺も”はい、そうですか”なんて言ってもらえると
思っちゃいねぇよ」
陣はそう呟くと、愛優香のほうを見つめて
歪んだ笑みを浮かべたー
「力を貸してくれないのならー
その身体を貰うしかないな!」
陣はそう宣言すると、愛優香の方に近づいてきたー
「--俺がお前の身体を使って
”お父さん”に復讐するんだー
黙ってその身体をよこせ!」
陣が笑いながら近づいてくるー
「ひ、、こ、、来ないで!」
愛優香が叫ぶー
陣は、笑みを浮かべながら愛優香に近づくー
「いやああああ!」
愛優香が机の教科書を投げつけるー
しかしー
「---!?!?」
愛優香は表情を歪めたー
教科書がー
陣の身体をすり抜けたのだー。
「---ふふふ、無駄だ。
俺は霊体ー。
お前に憑りついて、
お前の身体を思うがままに操ってー
和郎に復讐してやる」
陣が愛優香に近づくー
愛優香が逃げようとするー
しかし、陣は愛優香の身体に手を伸ばしー
そして、愛優香に吸い込まれていったー
「--あ…あああああ…」
愛優香がその場で胸のあたりを抑えて苦しみだすー。
そしてーーー
「---姉さん~!問題集~!」
弟の節義が、愛優香の部屋にやってきたー
「----あ?」
足を組んで、イスに座っていた愛優香が愛想のない返事をするー
「え…???あ、ほら、約束してた問題集」
「---っ」
愛優香は聞こえないように舌打ちすると、
「--どの問題集だっけ」と、淡々と答えるー。
「あぁ、うん、数学の」
節義が言うと、愛優香は「好きに持ってって」と、
不愛想に返事をしたー
節義と顔を合わせようとしないー。
節義は、そんな愛優香の態度に少し
違和感を感じながらも
「ありがと!明日には返すよ!」と
部屋から出て行ったー
「----」
部屋から節義が出て行ったのを確認すると、
愛優香は不気味な笑みを浮かべたー
「くくくくくく…」
愛優香は自分の手を眺めるー
そしてー
胸を両手で触るー
「この身体はー
俺のものだー」
低く不気味なー
けれどもかわいい声ー。
憑依されている故の”アンバランス”な声が部屋に響き渡るー
そして、鏡を鋭い目つきで見つめると、
愛優香は呟いたー
「わたしは愛優香ー
お父さんに、復讐するのー
くく…
俺から、全てを奪った和郎にーー
この女の身体で、復讐してやるー」
そう呟くと、愛優香は乱暴に部屋の扉を開けたー
愛優香の身体が高揚しているー
これから、ついに和郎に復讐することができるー
そう思っただけで、
この愛優香の身体も、興奮しているー
台所に向かう愛優香ー
「あれ?どうしたの?」
母親の久美が愛優香に話しかけるー
「別に」
愛優香はそれだけ答えると、
キッチンの方に向かったー
台所には、洗い終わった包丁が干されるようにして
置かれているー
「くく」
愛優香が口元を歪めるー
そしてー
”和郎…お前に地獄を見せてやるぜ”
そう、心の中で呟くとー
愛優香はその綺麗な手でー
”砂糖”と”塩”を
すり替えたーーーー!!
・・・・・・・・・・・・・・・
「---うわっ!なんかしょっぱいぞ!?」
和郎の声が聞こえてくるー。
コーヒーに砂糖を入れた和郎がー
憑依された愛優香が、砂糖と塩をすり替えていたことによって
塩入りのコーヒーを飲んで声をあげているー
少し離れた場所のソファーに座ってその様子を見ていた愛優香が笑うー
「ふっふっふっふっふ」
小声で笑う愛優香ー
愛優香は身体を震わせて、
和郎や、和郎の傍にいる母・久美にばれないように笑うー
「くくくくくく…くくくくく」
口を手で押さえながら、
さぞ愉快そうに笑う愛優香ー
せき込んでいる和郎を見て、
愛優香は、笑いが堪えられなくなり、
自分の部屋へと向かうー
自分の部屋に戻った愛優香はー
がに股のまま両手を広げて笑い始めるー。
「はははははっ!あははははははは!
は~~~はははははははははっ」
かわいい感じの声でー
下品に笑う愛優香ー
何がおかしいのか、目から涙がこぼれそうなほど笑うと、
愛優香は叫んだー
「どうだ!思い知ったか!和郎よ!」
愛優香に憑依した彼ー
工藤 陣は、”超”がつくほど陰険だったー。
「--これからお前に地獄を見せてやるからなぁ~!」
片手で顔の半分を覆い隠しながら、ケラケラと笑う愛優香ー。
陣は、和郎を憎んでいたー。
自分から全てを奪った和郎をー
10年以上、
ずっとずっと、恨んでいたー
そう、大学時代のあの日からー。
乗っ取られた愛優香はー
愛優香本人が知らないはずの”他人の過去”を頭に思い浮かべるー
大学時代のあの日ー。
「---ーーーきみのことが好きだ」
和郎が、そう言い放っているのを、
陣は見てしまったー
「-----え」
和郎が告白した相手は、和郎の妻となる久美ー。
大学時代、和郎は久美に告白したー
そしてー
しばらく二人は会話した後にー
「--わたしこそ、よろしくお願いしますー」
と、久美は嬉しそうに頭を下げたー
「-俺こそ」
和郎は、顔を赤くしながら、久美に向って
頭を下げー
そしてー
二人はカップルになったのだったー
「----!!!!」
陣は、全てを奪われた気持ちになったー
陣も、久美のことが好きだったのだー
告白したい、と考えながらも告白できない日々が
1年以上も続いたある日ー
和郎に先を越されてしまったのだー。
「--ふぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
陣は、その時からー
和郎を恨み続けているー
”久美ちゃんを奪った”和郎をー
そう、陣にとっては和郎は、
姫をさらった大魔王なのだー。
許しておくことはできないー
完全なる”逆恨み”-
陣は、久美と付き合っていたわけではないし、
大学当時、和郎とほぼ面識もなかったー。
だから、和郎は、陣が久美のことを好きだと知っていて
告白した、とかそう言うこともないー。
完全な逆恨みなのだー
いやー
そもそも、陣は久美とすらほとんど話したことがなかったー。
和郎も、久美も、恨まれるような理由は全くなかったー。
しかしー
「今日から俺が、お前の娘の身体で、
お前たちの幸せな生活を暗黒に染めてやるぜ」
顔を片手で半分隠したままクスクスと笑い出す愛優香ー。
「--はははははっ!
漆黒の影である俺が、全てを覆いつくしてやるぜ!
ひゃはははははははは!」
嬉しそうに笑う愛優香ー。
完全に乗っ取られている愛優香はー
とてもご機嫌そうだー。
「--あ、姉さん!」
偶然ー
部屋に弟の節義が入ってきたー
「あ」
「え」
がに股で、両手を広げて笑っていた愛優香を見て、
弟の節義が表情を歪めるー。
愛優香もまた、”見られた”と、
ヤバそうな表情を浮かべるー
「--あ、、、え、、、あ、、、」
愛優香は、少し戸惑ったあとに、やっとの思いで口を開いたー
「--え、、え、、、え、、演劇の練習ぅ…」
とー。
「--姉さん、演劇部じゃないだろ」
笑う節義ー
「--う、、う、、うん…で、、な、、何の用かな~?」
愛優香は必死に誤魔化そうとして、
引きつった笑みを浮かべたー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・
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陰険な男に憑依されてしまった娘の運命は…!?
続きはまた明日デス~!
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