<憑依>家出したお姉ちゃん③~家出~(完)

5年前に家出したお姉ちゃんとついに再開を果たした妹の静香。

姉を無事に取り戻し、
家族の絆を取り戻すことは、できるのか!?

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「お姉ちゃんの身体を返して!!」
妹の静香が叫んだー。

暗黒街の入口で、
まるでキャバ嬢のような姿になった姉の文香は「アァ?」と
不満そうな声を出すー

「まぁまぁ、良いではありませんか」
Romance Waveのメンバーの一人・ジュンが
眼鏡をいじりながら言うー。

「---へへへ」
バンドグループのリーダー・アキラが
笑いながら目の前で、文香を抱き寄せて、
胸を揉みながらキスをするー。

文香が嬉しそうにー”女の顔”で、
アキラのほうを見つめるー。

文香の欲情した表情ー。

「お姉ちゃん…」
悲しそうに呟く静香ー。

乗っ取られている文香とアキラは、
”妹”の目の前で
わざと激しいキスを繰り広げてー
クチュクチュと音を立てながら、
舌を絡め合わせたー

アキラの手は、文香の胸を触ったり、
やりたい放題だー。

「--もうやめて!」
静香はたまらず叫んだー

アキラと文香はにやりと笑うー

「あ、そうだ。せっかくだから、あたしたちの音楽
 聞かせてやろうよ」
文香がそう言うと、
アキラは「へへ、いいねぇ。生まれ変わったお姉ちゃんを、見せてやるか」と
笑みを浮かべたー

「ついてきな」と呟くアキラー。

暗黒街の中に、静香を案内しようとするー。

”このまま奥に行ったら、帰って来れない気がするー”

そんな風に思った静香ー

しかしー
同時に
”このまま引き返したら、2度とお姉ちゃんを取り戻すことができない気がする”

とも、思ったー。

迷いに迷った挙句、
静香は頷いて、暗黒街の奥へと、
アキラの案内で進んでいくー

暗黒街の中では
荒れ果てたスラム街のような光景が広がっていたー

そして、その中のクラブのような場所に入っていくと
文香は「ここで待ってなさい」と呟いて、アキラと抱き合いながら
奥の方に進んでいったー

「---……」
静香が表情を曇らせるー。

そして、しばらくすると
”Romance Waveの世界へようこそ!”
という声と共に、
スポットライトと、派手な電飾が輝き始めたー。

メタル系なロック調の音が流れ始めるー

バンドグループのリーダー・アキラがギターを演奏するー
そして、インテリ風なバンドメンバー・ジュンがキーボードの音色を奏でるー。

新しく加入したメンバーだろうか。
5年前・姉に付きまとっていた頃にはいなかった男2人がいるー。

派手なリーゼント頭のベースギターを演奏する男ー
サングラスにスキンヘッドのいかついドラム担当の男ー

そしてーーー

いかにもロックバンドな雰囲気の
それでいて、エッチさを漂わせる服装で、
姉の文香が出てきて、
激しく身体を動かしながら歌を歌い始めたー

「お姉ちゃん…」
静香は唖然とするー

大人しくて優しい姉とは思えない
あまりの”豹変”ぶりに、もはや言葉が出ないー

憑依されているー
そう分かっていても、
それでも、あまりの違いに驚いてしまうー。

そんな、状態ー。

姉の文香が、文香とは思えないような声で
激しい口調の歌詞を歌うー。

「---おら!お前ら、暗黒街の歌姫の歌声に酔いしれな!」
観客に向かって叫ぶ文香ー

”こんなの、お姉ちゃんじゃないー”
静香は、目と耳をふさぎたくなったー。

激しく身体を動かしながら
アキラと途中で抱き合ったりー
見つめあったりー
キスをしたりしながら歌うー

「--盛り上がってきたぁ!」
文香が叫ぶー

身体もー
声もー
確かに”お姉ちゃんー”

でも、こんなー。

歌のサビと思われる部分になると、
姉の文香はさらに興奮した様子で歌い続けるー

静香は、目と耳をふさいだー

”こんなお姉ちゃん、見たくないよー”

そう、思いながらー

「--ふぅ~~~~♡!」
1曲終えた文香は、興奮しきった様子で、
アキラとハイタッチをするー。

身も心も、完全に”ユウヤ”に染まってしまっているー
そんな風に思えたーー。

「---うっ…」
静香は目から涙をこぼすー。

大好きなお姉ちゃんの
あまりにも変わり果てた姿を見てー
悲しみが溢れて、
耐えきれなくなってしまったー。

「-----」
Romance Waveのメンバーたちが
うすら笑みを浮かべながら、
静香のほうを見つめるー。

「---どうよ?あたしたちのバンドは?」
文香が近づいてくるー

身体がお姉ちゃんなだけで、
もう、これはお姉ちゃんじゃないー

静香はそんな風に思いながらー
「お願いですから、お姉ちゃんを返してください」と
泣きながら呟いたー

「---えへへへ、あたしの身体、
 今、すっごく燃え滾ってるんだよ!」

文香はそう言いながら、自分の身体を触るー

「音楽に興奮してるわけ!
 お姉ちゃんの身体がね!
 あははははは!!!

 今のあたしの生きる世界は、ここよ!」

文香はげらげら笑うー。
5年間も文香に憑依していたユウヤは
すっかり女になりきっていたー。

「---ーーお姉ちゃんを…返して…」
泣き崩れる静香ー

パチ パチ パチ パチ パチ パチ

拍手の音が響き渡るー

途端に、
文香も、アキラも、ジュンも、残りの二人の男も、
直立不動になって、気をつけをし、頭を下げたー。

「---プロデューサー!」
アキラが言う。

”プロデューサー”
憑依薬を、バンドに提供した男ー

派手なアフロヘアーの男が、
ムーンウォークをしながら、
ライブ会場の真ん中に歩み寄って来るー。

「----お姉ちゃんを迎えに来る妹ー。
 感動的だねぇ」

男は、静香の前に歩いてくると、
笑みを浮かべたー。

そしてーーー

「久しぶりぃ」
と、呟いたー

「---!!!!!」
静香は表情を歪めたー

ふざけた格好の、
そのプロデューサーはー

忘れもしないーーー

よく、小さいころは、
”お前のお父さんは1万円札”などと、揶揄われたこともあったー。
もちろん、父は福沢諭吉ではない。
村瀬諭吉なのだが、子供時代は、そういうことを
何かとネタにされやすいー。

あの、思い出のーーー

父親の…諭吉!

「--お、、お父さ…」
静香がそう言いかけると
プロデューサーこと諭吉は笑みを浮かべたー

「---はははははは!
 自慢の可愛い娘が、今じゃ俺がプロデュースする
 ロックバンドのボーカルだ!」
プロデューサー=諭吉は笑いながら言う。

笑みを浮かべる文香ー。

「---ど…どうして…お父さんが…」
静香が震えながら聞くと、
父・諭吉は笑ったー

諭吉は静香が5年生の頃に浮気により
母・吉江と離婚、それからは行方をくらましていたー。

諭吉は語るー。
浮気相手と駆け落ちした後にも、
女癖の悪い諭吉は、浮気を繰り返し、
どんどんどんどん裏社会に堕ちていった。

そして、ついに”女を支配したい”という欲望から
裏社会で、諭吉は手に入れてしまったー

”憑依薬”をー。

最初はただ単に憑依能力を使って遊んでいただけだったがー
やがてー
”憑依薬を仕入れて、高値で売りさばく”ことを覚え、
莫大な富を得たー

そして今は
この”暗黒街”の支配者のひとりだー。

暗黒街を支配した諭吉は、道楽で、
暗黒街に集まる若者たちを”プロデュース”し始めた。

Romance Waveもその一環で生まれた
バンドグループだ。

そしてー自分がプロデュースしている
ロマンスウェーブのメンバーが
娘の文香に一目ぼれして
言い寄っていることを知った諭吉は
あることを思いついたー

それがー
”元妻”への復讐ー。
つまりー静香と文香の母親に復讐しようと考えたー

離婚しー
親権を奪った妻・吉江への復讐ー。

浮気した自分が悪い、ということも忘れー
逆恨みした結果ー、
文香に言い寄っているバンドメンバーに憑依薬を提供しー
文香を乗っ取らせたー。

憎き元妻の娘が、
今や、自分のプロデュースするロックバンドのボーカルだー。

諭吉はそこまで説明すると、
文香を見つめながら笑ったー

「どうだ!俺の自慢の娘は!」

「--ふふふふふ」
文香は笑みを浮かべるー。

文香に憑依しているユウヤにとっては
”プロデューサーの復讐”はどうでもよかったが、
自分たちをプロデュースしてくれている諭吉の役に立っていることー
そして何よりー
このエッチなボディを自由にできることー

それに歓びを感じていたー

「---お姉ちゃん!お願い!目を覚まして」
静香が必死に叫ぶー

だがー
身も心も支配された文香が正気を取り戻す様子はないー。

そしてー

「--”お姉ちゃんだけじゃなくて”
 妹も家出しちゃったらーーー???」

諭吉が笑みを浮かべたー。

「--!」
静香が表情を歪めるー。

「---ふふふふふ わたしと一緒に
 楽しくバンドやろうよ? くくくく」
文香が静香を乱暴に押さえつけるー。

「--や、、やめて!」

”何を意味するか”
静香は理解したー

姉の文香に押さえつけられながら、
静香は必死にもがくー。

”自分も、姉のように憑依されてしまうーーー”

そう思った瞬間、静香は恐怖のあまり、悲鳴を上げて、
文香を突き飛ばしたー

すっかり変わり果ててしまった文香が吹き飛ばされるー。

ぼろい建物から逃げようとする静香ー

”わたしは、帰らないといけないの!”
と、母・吉江の顔を思い浮かべながらー。

父に浮気された挙句離婚ー、父を失いー
長女である文香は、憑依されて家出ー、長女を失いー

挙句ーーー

「--わたしまでいなくなっちゃったら…お母さんは…」
恐怖に押しつぶされそうになりながらー
静香は出口へと向かうー。

しかしー

「--おらぁ!」
Romance Waveのリーダー・アキラが静香に
追いついて、静香を押さえつけたー

「いや!!!やめて!たすけて!」
暴れる静香ー

「ふふふふふ 姉妹でバンドなんて、最高じゃない」
文香がたばこを吸いながら、笑みを浮かべて近づいてくるー

まるで、悪女のような雰囲気ー。

Romance Waveのメンバー・ジュンも笑みを浮かべながら見つめているー

「さ~~~~て」
プロデューサー=静香の父である諭吉は笑みを浮かべたー

「あの女から、娘を二人とも奪ってやる」
諭吉は笑みを浮かべたー

父・諭吉は、娘二人の親権を奪われたことを
逆恨みしていたー
自分が浮気して原因を作り上げたのにー。

「--おい!」
諭吉が叫ぶー。

ドラム担当のサングラスにスキンヘッドの男が立ち上がるー

「--お姉ちゃん!たすけて!!!お姉ちゃんってば!」
静香が叫ぶー

だが、文香は笑みを浮かべて足を組み、
そのまま余裕の表情で近くの台に座って、
静香を見つめているー

静香の言葉は、姉の文香には、届かないー

「---お前は今日から、静香になるんだ」
プロデューサー=諭吉がスキンヘッドの男にそう告げると
スキンヘッドの男は、笑みを浮かべながら、もがく静香にキスをしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1か月後ー。

母・吉江は、失意に包まれていたー。

長女の文香に続きー
次女の静香まで、いなくなってしまったー。

”家出”

「----」
吉江は目から涙をこぼすー

”わたしが、母親として足りなかったってことよね”

吉江は呟くー。
自分の育て方や接し方が悪かったー

二人も家出するなんて、そうとしか思えないー

”憑依”のことを知らない吉江は、
娘たちに嫌われていたと思い込みー失意のどん底に
突き落とされていたー

・・・・・・・・・・・・・・・

暗黒街ー。

ロック調の音楽が大音量で流れるー。

姉の文香が、
ロック風なスタイルで、客たちの前に姿を現すと、
大声で、激しい口調の歌を歌い始めるー。
文香がこんな大声を出したことは、
憑依される前はなかっただろうー。

そして、リーダーのアキラや、メンバーのジュンが
演奏する中ー

サングラスに金髪、ピアスという風貌の女が
ドラムをたたいていたー。

「へへへへへっ!」
ドラムを叩いていたのは、
スキンヘッドの男に乗っ取られてしまった静香ー。

もはや、静香の面影がないぐらいに派手な風貌になってしまった静香は、
姉と同じように、
憑依されて乗っ取られー
Romance Waveのメンバーになってしまったのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

「家出した姉妹」になってしまいましたネ~!
お読み下さりありがとうございました!!!

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ああ、ミイラ取りがミイラになっちゃったよ。

    いつまでも姉のことに囚われてなければこんな目に合わずにすんだのに。
    …いや、元凶の父親が最悪すぎるから、姉を探しに行かなくても、いつかは結局同じ結果になってた可能性も濃厚かな?

    それにしても、体を奪われた姉妹も悲惨だけど、ある意味、一人になった母親の方が一番かわいそう。絶望の余り、良からぬことになりそうです。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    そうは思っていても、なかなかお姉ちゃんのことは忘れられない
    ぐらい仲良し…!な状態だったので~☆

    お母さんは…
    大変なことにならないように、祈るばかりですネ…!汗