5年前に、家出したお姉ちゃんー
”お姉ちゃんは、5年前、何者かに憑依された”
その”真相”を知った妹は、
お姉ちゃんを探す旅に出たー。
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女子大生・村瀬 静香(むらせ しずか)には、
年上の姉がいたー。
姉の文香(ふみか)
とてもやさしくて、穏やかで、
癒されるような笑みをいつも浮かべているー
そんな感じの姉だったー
静香は、文香と大の仲良しで、
いつも一緒に過ごしているようなー、
そんな姉妹だったー
けれどー
5年前ー
静香が高校受験を控えていた頃ー
姉の文香は突然豹変したー。
当時、大学1年生だった姉・文香は
みるみる変わっていきー、
文香とは思えないような派手なおしゃれをしたり、
朝帰りをしたり、
暴力的になったり、
まるで”別人”のようになってしまったのだー
母の吉江(よしえ)は、
文香に彼氏が出来て
変わってしまったのだと、そう考えていたー
豹変した文香は、家に派手な格好の男を連れ込んで、
大声でげらげら笑ったりー
大音量で音楽を掛けたりー、
さらには、部屋の外からでもエッチをしていることが
分かってしまうぐらいに、大声で喘いで見せたりー
やりたい放題の日々を送っていたー
当時、中学3年生だった妹の静香は、
姉・文香の豹変に心を痛めたー
母・吉江が悲痛な表情で呟いた言葉を
静香は今でも忘れられないー
「文香はーーー
悪い男の人に、騙されてるの」
とー。
悪い彼氏が出来て
それに影響されて変わってしまったー。
よくある話と言えば
よくある話なのかもしれないー。
ほどなくして文香は、
家を飛び出しー
以降、実家に連絡してくることは、一度もなかったー。
「---お姉ちゃん!どうしちゃったの!?」
柄の悪い金髪の男や、
まるでロックバンドのようなスタイルの男たちと
家の中を歩く姉の文香に、
静香は、そう叫んだことがあるー
「---ふふふふ」
姉の文香は、甘い笑みを浮かべて近づいてきたー
身体は、紛れもなく文香ー
でもーー
もうー
それは、
”お姉ちゃん”には、見えなかったー
まるで、
別人だったー
「---これが、本当の、わ・た・し♡」
そう言い放つと、文香は、男たちとげらげら笑いながら
立ち去って行ったー
「お姉ちゃん…」
いつも、静かにやさしく接してくれていた
”お姉ちゃん”は、もう、そこにはいなかったー
変わり果てたー
欲望にまみれた、お姉ちゃんー。
そしてー
その3日後、姉・文香は家を飛び出して
2度と帰って来ることはなかったー。
妹・静香は、心を痛めながらも、
次第に時の流れが心の傷を癒し、
順調な高校生活を送りー
今では、大学生になっていたー。
あれから、もう5年ー
姉の文香は、今、どこで何をしているのだろうかー。
「---お母さん、ただいま」
大学から帰宅した静香は、
母の吉江に声を掛けるー
「あら…おかえりなさい」
”老婆”
そんな風にすら見える母親ー
だが、年齢はまだ50代だー。
知らない人が見たら、60代か、70代ぐらいに
勘違いされてしまうかもしれないー。
それほどまでに、母の吉江は”老い”てしまったー
長女であるお姉ちゃんー
文香が豹変して、家を飛び出してからー
吉江は、みるみる老けてしまったー。
心労が原因なのだろうー。
「-----」
静香は、机にずっと飾られている写真を見つめるー
机には、
静香と、姉の文香
母の光江、そして父親の諭吉(ゆきち)が写っているー
よく、小さいころは、
”お前のお父さんは1万円札”などと、揶揄われたこともあったー。
もちろん、父は福沢諭吉ではない。
村瀬諭吉なのだが、子供時代は、そういうことを
何かとネタにされやすいー。
でも、その父は、もういないー。
5年生の頃に、浮気をして、
離婚したのだー。
父・諭吉
姉・文香ー
静香は、家族を既に、二人失っているー
だからこそー。
静香は残された家族である
母・吉江のことを誰よりも気遣っていたー
そしてー
部屋に戻る静香。
浮気による離婚で、お金はある程度入ってきているし、
元々、母・吉江の実家の関係で、金銭的には今のところ
なんとかやっていける。
静香もバイトをしながら大学に通い、
なんとか少しでも、と考えていたー。
「---」
部屋に戻ると、静香は真剣な表情で、
部屋に置いてあったノートパソコンを起動したー
難しそうなファイルが並んでいるー
色々なサイトを開いたり、
アプリで、何か情報収集を行っているー
静香は今ー
”3つのこと”をこなしているー
”学生として大学に通うことー”
”バイトとして小物店で働くことー”
そしてーーーー
”妹として、姉を探すことー”
静香は、
”5年前”
姉が豹変した理由にたどり着いていたー
それはー
”憑依”
大学生になってから、静香は、
”姉が変わってしまった理由”をどうしても知りたくなったー
最初は”心理学的な変化”だと思い、
人間の心理だとか、そういったものを勉強していたのだがー
その最中
偶然”別のこと”を知ってしまったー
それは”憑依”
人間の豹変について調べていた静香は
”憑依”ということが、世の中の”裏側”には
存在していることを知ったー。
他人が、他人の身体を乗っ取るー
そういう、やつだー。
姉の文香の豹変は、本当に”異常”だったー。
当時も、感じたことだが、
まるで”別人”になってしまったかのようなー
そんな風に思えるぐらいの豹変だったー
いくら、悪い彼氏ができたからと言ってー
そんな…?
そう思った静香は、徹底的に姉・文香のことを調べたー
大学を終えると、
姉・文香が通っていた大学に足を運び、
当時から大学に在籍していた教授などに話を聞いたり、
姉・文香の友人だった人のうち、連絡が取れる人から
話を聞いたり、
なんでも、したー。
その結果ー
姉・文香は、
ガラの悪い”自称バンドグループ”の男たちに絡まれていたのだ言う。
文化祭で”一目ぼれ”したとかいう理由で、
姉・文香が豹変する直前に、
地元の路上で活動していたバンドグループ・
Romance Wave(ロマンス・ウェーブ)というグループに
絡まれていたのだとー。
当時、姉・文香の大学で同級生だった数名と、
当時、大学に在籍していた教授が、そう教えてくれたー
だがー
Romance Waveなるグループの情報はほとんどなく、
どうやら、地元のグレた不良たちが路上で結成した
グループだったようだー。
5年が経過した今、スマホで検索しても
Romance Waveとかいうグループの情報は
ほとんど出ていないことから、
少なくとも、メジャーデビューはしていない。
今は既に解散している可能性も高いー
そしてー
その”Romance Wave”が当時、
”憑依がどうこう”という話をしていた、ということが
静香に必死の調べで判明したのだー
姉の文香に絡んでいた男たち
”自称バンドグループのRomance Wave”-
人を乗っ取ることのできる
”憑依薬”
そしてーーー
姉・文香の”異様な豹変”
全てのピースがつながった、と
静香はそう思ったー
ロマンスウェーブとやらのメンバーが
姉の文香に目をつけて、
文香に接触、ナンパか何かをしてきたのかもしれないー
でも、真面目な文香は、きっとその誘いを断ったー。
それでもしつこく食い下がるロマンスウェーブ。
そして、ついに彼らが憑依薬を手に入れてしまい、
姉の文香にメンバーのうちの誰かが憑依ー
憑依された文香は、まるで別人のように豹変してしまいー…
と、いうことなのだと、
静香は、そう考えていたー。
もし、それが”事実”ならーー
「お姉ちゃんは今も、身体を乗っ取られたまま
好き放題されているのかもしれないー」
静香は、険しい表情で、そう呟いたー
大学ー
バイトー
そして、姉探しー。
静香は、この3つを毎日こなしていたー
母の吉江にはこのことは、伝えていないー
余計な心配をかけるだけだからだー。
吉江に伝えるのは、
姉・文香をもしも助けることができたらー
”その時”でいいー。
静香は姉・文香のことを思いながらー
今日も情報収集を続けていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
”わたしは、あんたのお姉ちゃんである前に、
ひとりの女なの ふふふふふ”
歪んだ文香の笑みー。
ガラの悪い男と抱き合い、キスをしながら
文香はそう言ったー。
恋愛関係に、積極的ではなく、
エッチなことも、苦手なタイプだった姉ー。
なのにー
ある時から、
本当にー
ある時から、気が付いたら
姉の文香は変わってしまったー
家に柄の悪い男を連れ込みー
妹の静香や、母親の吉江に対しても、
辛辣な接し方に変わった。
”ババア”
”おばさん”
そんな言葉を母の吉江に投げかけー
”ブス”
そんな言葉を、妹の静香に投げつけたー。
目の前で、男とぐちゅぐちゅ音を立てて
キスをしながら、
「--女ってホント最高!」と、
文香が、顔を赤らめながら言い放っていた様子が、
今でも静香に焼き付いているー。
色っぽい姿の文香が近づいてくるー
”--これが本当の、わたし”
静香は泣きながら文香のほうを見るー
”お姉ちゃんは、そんな人じゃない”
とー。
そう思いながらー
”元のお姉ちゃんにもどって!”と
叫びながらー
「--はぁ…はぁ…」
穏やかな朝日と
小鳥のさえずりに包まれながらー
静香は目を覚ます。
姉・文香が家出してから5年ー。
諦めかけていた姉のことー。
でもー
ようやく、消えた姉の手を掴みかけた。
姉は、”憑依”されているのかもしれないー。
変わり果ててしまった姉・文香のことを
諦めきれずに調べ続けて4年が経過した去年ー、
静香がたどり着いた”答え”-。
そして、5年が経過した今、
姉・文香にもう少しのところまで、近づいているー。
”Romance Wave”
たぶん、姉の文香が豹変してから
度々家に連れ込んでいた柄の悪い男4人組が
その、ロマンスウェーブなのだと思う。
そして、静香は当時、スマホで
そのロマンスウェーブたちを撮影しているー
たったー
たった1枚ー
ぼやけてる写真なのだが、
”手がかり”が、静香の手にはあったのだ。
それを使いー
ようやく、
”Romance Wave”のメンバーの一人の目撃情報を手に入れたー
”スナック・ナイトメア”というお店に
毎週金曜日の夜、出入りしているらしいー。
今も”Romance Wave”とかいうバンドが
活動しているのかどうかは分からない。
けれどー
当時の4人のメンバーのうちの一人に接触することができればー
姉の文香に近づくことができるかもしれないー。
静香は、そう思いー
スマホを握りしめたー
「お姉ちゃん…もう少しだけ待っててね」
”わたしが、お姉ちゃんを助ける”
静香は、女子大生一人でスナックに向かうことの
危険性を理解しながらも、
母の吉江に心労をかけまいと、
一人、金曜日の夜に、”スナック・ナイトメア”に
向かうのだったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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家出したお姉ちゃんとの再会…!
続きはまた明日デス~!
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