<憑依>何があってもきみを愛す③~愛の行方~(完)

優吾・月美ー。

二人の仲を引き裂こうと、月美に憑依して
色々やっているのに、一向に優吾は、月美に幻滅しないー。

月美に憑依している龍之介は、さらに過激な行動に出始めたー。

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「----」
優吾は、月美に指定された場所に向かうー

するとー、
男たちの笑い声が聞こえてきたー

そしてー

「んあぁっ♡ ふぁっ♡ さいこうぅぅぅ♡♡」

月美の声ー

今まで聞いたこともないような、月美の
喘ぐような声が聞こえてきて、
優吾は「月美!」と、足を速めて、
その場に駆け付けたー。

するとー
何かのプレイでもするかのような
エッチな恰好の月美が、4人の男子学生に
胸を揉まれたり、抱き着かれたり、
あそこを触られたり、おしりを触られたり
やりたい放題されていたー

「---お前らぁ!」
優吾が叫ぶー。

優吾は、素行不良の4人の男子学生が、
月美を拉致したのだと誤解したー。

「---あ~~~?」
4人組の一人が、優吾の方を見るー。

他の3人は、月美の胸を交互に触っていて、
月美はとても気持ちよさそうにしているー。

「---俺の彼女に何をしてるんだ?」
優吾が、怒りを無理やり抑え込みながら、
やっとの思いでそう呟いたー。

「----は~?あぁ、長峰さんの彼氏か~」
優吾の方を見つめながら、男子学生がそう呟くー

「へへ!勘違いすんなよ。この女から
 俺たちを誘ってきたんだぜ」
男子学生が優吾の肩をポン、と叩く。

優吾は「ふざけるな」と、言い返すー。

「--ははは、お前じゃ、満足できねぇってさ。
 お前の彼女、欲求不満なんだってよ」

男子学生が笑うー

優吾は、「月美!」と、月美の方を見て叫ぶー。

月美がクスッと笑うー。

「--ほんとうよ。わたしがみんなを誘ったの。
 エッチしよ?ってね」

月美が立ち上がるー
見たこともないような、月美のエッチな姿ー。

「---ねぇ、優吾。これが本当のわたしなの。
 わたしってね、性欲がと~~~~ってもつよいの。
 毎日でもエッチしたいぐらいにね?

 知らないおじさんとだって、寝ちゃうぐらいに…
 うふふふふふふふ」

月美が顔を真っ赤にしながら笑うー

”どうだ… 
 これでさすがのお前も幻滅だろ????”

月美に憑依している龍之介はゾクゾクしながらつぶやくー
月美の身体が激しく興奮するのを感じるー
興奮させるのまで、思いのままー
憑依は、とんでもない力だー。

「--ふふふふ、わたしは、、欲に飢えたメスなの!」
叫ぶ月美ー

「---つ、、、きみ…」
優吾が、とても悲しそうな表情を浮かべるー

「あはははっ!?嫌いになったでしょ?わたしのこと!?」
月美が愉快そうに笑うー

”そうだー!
 このビッチ女を振れ!”

龍之介が内心で叫ぶー

彼氏に振られて傷心中の月美ちゃんに
俺が接近して、俺がこの月美ちゃんのハートを
ゲットだぜ、してやるぜ!
だからお前はー
安心して、この女を振れ。
な????

内心で龍之介はそう思いながら、
月美の身体で笑みを浮かべたー。

「----……ごめん」
優吾が突然頭を下げたー

「---は?」
月美が思わず不満そうな声を上げるー
表情からも笑みが消えるー

4人の素行不良の男子生徒たちは、
ニヤニヤしながら優吾・月美カップルのやり取りを見ている。

他人の不幸を喜ぶかのようにー。

「---月美が、、そんなに我慢してたなんて、知らなかったー」
優吾も、月美も比較的、そういう性欲は少なく、
一緒に入れるだけで幸せで楽しかったー
優吾も、月美も、エッチなことよりも一緒にいること、
そういうタイプだったーーー

とーーー
少なくとも、優吾はそう思っていた。
だが、それは優吾が勝手に思い込んでいただけ…
ということなのだろうか。

「----本当にごめん。
 月美がそうしたいなら、俺も頑張るから。
 月美が我慢してるなら、俺に言ってくれれば、俺…なんでもするから」

優吾はーー
月美に幻滅することをしなかったー。

「---はぁ?彼氏がいるのに、他の男とエッチしてるわたしに
 文句とかねぇの!?」

月美が、口調を女子口調にするのも忘れて叫ぶー。

「--そりゃもちろん、そんなことしてほしくないよ!」
優吾は叫ぶー

「--でも…月美だって、いろいろ悩んだんだと思うし、
 俺が…俺が気づいてやれなかったから…
 本当に、ごめん」

優吾は、なおもお詫びの言葉を口にしたー

月美は舌打ちを何度も何度もするー

”くそっ!なんだこいつは、なんで…???
 なんで、幻滅しねぇんだよ!”

月美に憑依している龍之介は、激しく怒りを感じたー

「あ~~~~~!もう!!!!!!!!
 わたしのこと、嫌いになりやがれ!!!!!」
月美が怒りの形相で叫ぶー

そして、月美は信じられない行動に出たー。

「---おらぁあああああああ!!!
 わたしはこういう女だぞ!!!!!!!」
怒りの形相で叫びながらー
月美は、その場で突然、放尿し始めたーーー

「うぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」
素行不良の男子4人組が、嬉しそうな声をあげているー

「ひゃははははははは!!!きったねぇだろわたし!?!?
 わたしはさぁ、こういうところで、立ちションもできちゃう女なのぉ!!
 あっはははははははは!」

月美の下着から尿があふれだして、ボタボタと
床に零れ落ちるー。

あっという間に水たまりが出来て、
月美がげらげらと笑い続けているー

優吾は黙って月美の方に向かって歩き始めたー

”くく、いいぞ!!”

女子として漏らす感覚にゾクゾクしながら
龍之介は内心で叫ぶー

さすがの優吾も切れたー。

”そうだ!殴れ!幻滅しろ!この女を振れぇええええええええええええ!!”

「振れええええええええええええええええええ!!!!」
悪魔のような形相で、内心で考えていたことを
口にして叫んでしまう月美ー。

だがーーー

「---!」
月美は、唖然としたーーー
ぽたぽたと液体を垂らしながらーー
優吾の方を見るー

優吾はーー
月美を抱きしめていたー

「--!?!?!?!?」
月美は驚いて言葉を失うー

他の男とエッチしていてー
馬鹿にするような発言をしてー
挙句の果て、この場でお漏らしをしてみせたー

それでもーー??

それでもーーーー???

「月美ーーーごめん…
 月美の悩みに気づけなくてー

 困ってることがあるなら、悩んでることがあるならー
 なんでも、力になるからーーー

 本当に、、、ごめん」

月美を優しく抱きしめる優吾ー

下心すら、優吾からは感じないー
あるのは、心からのやさしさーー

「---あ…」
月美が思わず顔を赤らめてしまうー。

”お、、、、、って、、、ち、、ちがっ!”

あまりのやさしさに、月美に憑依している
龍之介まで、一瞬優吾に惚れそうになってしまったー

「あ…うあ…」

しばらくすると、優吾は、月美から離れてー
「俺と一緒にいるのが苦痛だって言うなら…
 ……俺…月美と離れるからー」

優吾の目には涙が浮かんでいるー

「俺が…月美を苦しめてるなら…俺…別れるから」

そこまで言うと、優吾は、「だからーーそんなこと、しないでくれ…」と、
とても悲しそうに呟いて、そのままその場から立ち去って行ったー

”別れるー”
月美に憑依している龍之介は
ついに目的を達したー

あとは、”あんたのせいでわたしが苦しんでる”と叫べばいいだけー

けれどー

叫べなかったー

優吾の優しさ
優吾の温もりー
そして、優吾のとても悲しそうな涙ー

月美は、その場で、唖然とした表情で立ち尽くしたー

4人の素行不良の男子たちは、戸惑いながら月美を置いて
その場から立ち去って行ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

「----」
月美の様子が、数日前からおかしいー。
優吾にも、それは分かっているー。

でもー

「----」
優吾は、思い出す。
自分が高校生になったばかりのころー。

妹の楓(かえで)の様子がおかしくなり始めたのだー。

楓は当時、中学生だった。
急におかしな行動をし始めたり、
急に泣き始めたり、
とにかく”違和感”がある行動を繰り返したー

そして、ある日、楓は急に兄である優吾に抱き着いてきて、
優吾をまるで誘惑するかのように、身体を押し付けてきたのだったー

”ちょ、、、最近の楓、なんだか変だぞ!?
 やめろよそういうの!”

優吾は、当時、そう言い放ったー

楓は、「そっか。そうだよね…うん。わたし、変だよね」と、
苦笑いしながら、自分の部屋へと戻っていった。

そしてー
楓は、翌日、自殺したー。

優吾は、唖然としたー。
楓は、受験勉強がうまくいかず、一人、悩み続けていた。
そんな最中、学校でも、あるトラブルを抱え、
さらには思春期の複雑な感情からー、
ついに衝動的に自ら命を絶ってしまったのだったー

楓の様子がおかしくなっていたのは、
楓が、ギリギリの状況で発していた、不器用な信号(シグナル)-。

優吾は、兄として悔やんだー。
楓の”助けて”のサインに気づいてやれなかったことー

楓のおかしな行動を笑ったり、
怒ったりー
拒絶してしまったことー

もしあの時、楓の話をしっかり聞いて、
楓と向き合っていればーー
楓は、死なずに済んだのかもしれないー。

だからー
もう、二度と同じ失敗を繰り返したくないー

月美の様子がおかしいのがー
月美の何らかのシグナルなのであればー、
優吾は、絶対に、今度こそ
手放したくない。

大切なものをー

それが、月美がどんな行動を取っても、
優吾が月美と向き合い続ける理由ー。

今度こそ絶対に、大切なものを失いたくないからー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「月美ーーーごめん…
 月美の悩みに気づけなくてー

 困ってることがあるなら、悩んでることがあるならー
 なんでも、力になるからーーー

 本当に、、、ごめん」

優吾の言葉を思い出す月美ー

「ケッ!」
だらしなくイスに座りながら、帰宅した月美は呟くー

「--お前は、俺のスイッチを押したぜ。
 後悔するなよー」

そう呟くと、月美の身体がぶるぶると震え始めたー。
白目を剥いて、泡を口から吹き出す月美ー

やがて、月美はその場で、意識を失ってしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

優吾は月美に呼び出されていたー。

不安な表情で、空き教室に向かう優吾ー。

”別れ”を告げられるのだろうかー。

そう思って、空き教室にたどり着くと、
月美が「ごめん」と頭を下げたー。

「---わたし……どうかしてた」
とー。

「---え」
優吾が言う。

「--わたし…なんだか、自分が自分じゃないみたいな…
 何をしてるかは分かってたんだけど…
 身体が勝手に動いて…っていうか…
 自分の意思では何もできない状態で…」

月美は、正気を取り戻していたー
憑依されていた自覚はないものの、
憑依されていた間、”何かに操られているかのように”
自分の意思では行動できなかった、と、優吾に語った。

月美の精神自体にも影響はなく、
既に月美の中には龍之介はいないー。
月美は、無事に解放されたのだったー

「----」
優吾は優しく月美の手を握ったー

「--!」
月美が、優吾の方を申し訳なさそうに見つめるー

「いいよ。月美が元に戻ってくれただけで、十分だからー」

優吾は、真相を知ろうとしなかったー。
月美が元に戻ってくれただけで、それで、十分ー。

「優吾…ごめんね」
月美は、安心した様子で、優吾の方に寄り掛かったー。

優吾の月美に対する、一途な思いが、
龍之介の心をも、動かしたーーー

いやーー

動かしすぎたー

その日の放課後ー

優吾は、龍之介に呼び出されたー。
月美の様子がおかしかった間、龍之介は学校を休んでいたー
そのことが少し引っかかっていた優吾は、
龍之介に話を聞こうとも思っていたー

だがー

龍之介は、衝撃の言葉を発した。

「---お前の愛は、俺のハートに火をつけたぜ」
龍之介が言う。

「は?」
優吾が思わず表情を歪める。

「---月美なんてやめて、俺と付き合ってくれー」
龍之介が叫んだー

「---------あ?」

新たな愛が芽生えたー。

優吾は、しばらくの間、
何が起きたのか理解できずに、立ち尽くしていたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

無事に月美ちゃんは解放されました!
絆も元通りデス!

でも…
三角関係(?)が始まりそうですネ!

お読み下さりありがとうございました~!

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