幸せな大学生カップルー
将来は結婚も考えていたふたりー。
だが、ある日、突然、彼は彼女の身体を奪ったー…
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男子大学生の田宮 通泰(たみや みちやす)は、
病院を訪れていたー
「-----本当ですか?」
通泰が表情を歪める。
「ええ。本当です」
担当医は、無情にも、そう答えたー。
「-----ー」
通泰は、言葉を失うー。
「---……」
しばらくの沈黙のあと、通泰は口を開いたー
「--……叔父さん…
まだ、誰にも言わないでおいて貰えますか」
通泰がやっとの思いで絞り出したその言葉-
担当医である、通泰の叔父さんは、複雑そうな表情で頷いたー
通泰には、小さいころから持病があったー。
その持病の薬を貰い、病院を出る通泰ー
通泰はため息をつくー
”もってあと、半年ですー”
無情な宣告ー
通泰は、震えたー。
通泰が考えるべきことは、この日、変わったー
”これから”ではなく
”残された時間をどう過ごすか”
と、いうことにー。
誰だって、死にたくはないー
通泰もそうだー。
「----………俺は」
悲しそうにそう呟くと、
ふと、スマホが光っていることに気付くー
LINEが届いていたー
”通泰~!どうだった~?”
同じ大学に通う彼女の冬川 佐奈美(ふゆかわ さなみ)ー
いつも元気で明るく、真面目に頑張っている子だー。
知り合ったのは、大学に入ってからだが、
意気投合して、
通泰が初めて”運命の人”と感じたのが
佐奈美だったー。
高校時代には生徒会長も務めたことが
あったのだとか。
小さいころから、真面目にコツコツと努力するタイプで、
性格もとても優しいー。
”--問題なかったよ”
嘘をついたー。
通泰は、彼女に、嘘をついたー
問題はあったー。
それどころかー
余命まで宣告されたのだー
もう、きみといられる時間は、あとわずかしかないー
そうは分かっていながらも、
通泰は、それを伝えることはできなかったー
「--ーー!」
通泰が振り返るー
だが、そこには誰もいなかったー
”気のせいか”
確かに人の気配がした気がするんだがー
そんな風に思いながら
通泰は立ち去って行ったー
「-----」
通泰が感じた気配は気のせいなどではなかったー
怪しげな風貌の老婆が、通泰を見つめていたのだー
老婆は姿を再び現わすと、不気味な笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「---」
翌日ー
通泰は、彼女の佐奈美の家に遊びに来ていたー
お互いに、一人暮らしで、よくお互いの家を行き来しているー
「ーーじゃあ、今日はそろそろ帰るよ」
通泰が、持病の薬を飲みながら咳き込むー
「--大丈夫?最近なんだか調子悪そうだけど?」
佐奈美が心配そうに尋ねると、
通泰は、表情を少しだけ歪めて
すぐに笑みを浮かべたー
「はは、大丈夫大丈夫!こんなの小さいころからだし、
全く問題ないさ」
通泰の言葉に、佐奈美は「でもよかった~」と呟くー
”よかった”のは、検査の結果だー
”なんともなかった”という言葉を聞いて、佐奈美は
心底安心していたー。
「---あぁ」
通泰は、表情を暗くするー
”なんともなかった”のは、嘘だー
本当はーー
”持ってあと半年ー”
親戚のおじさんでもある担当医の言葉が
身に染みったー
「---あ、そうだ!これ見て~!」
佐奈美が嬉しそうに何かを見せて来る。
「今年のクリスマス!ここ行ってみようよ~!」
スマホの画面を見せてくる佐奈美ー
通泰はその画面を見つめるー
今年は、大規模なイルミネーションイベントが
行われるようだー
綺麗なもの、可愛い物ーそういうのが大好きな佐奈美は
毎年イルミネーション見に行きたがるー
付き合って1か月で迎えた最初のクリスマスもー
去年のクリスマスもそうだったー。
今年もー
いやーーー
今年のクリスマスは”もう、ないー”
「---ははは……って、まだ4月だけど!気が早すぎ!」
通泰がそう言うと、佐奈美は「半年なんてあっという間だよ~!」と笑いながら答えたー
半年ー
”持って、あと半年ー”
4月の半年後は、純粋に考えれば10月だー。
12月まで、持たないー
「-----…いきたいな~!いきたいな~!」
佐奈美が駄々をこねているー
いつも穏やかで優しい性格なのだが、
彼氏である通泰の前でだけは、子供っぽい一面を見せるー
通泰は考え抜いた結果ー
頷いたー
「---あぁ、約束するよー」
とー
”果たすことが出来ない約束”を
してしまったー。
通泰は、心を痛めながら、佐奈美の家を出て
自分の家へ向かうー
その時だったー
「----ーーそこのお兄さん」
「--!?」
通泰が振り返ると、そこには、老婆がいたー
「--俺…ですか?」
通泰が警戒しながら、自分を指さすと、老婆は頷いたー
「---そう。あんただ。
あんた………もうすぐ死ぬんだろう?」
老婆が言うー
通泰は表情を歪めるー
「---わたしには分かる」
老婆の質問に、通泰は返事をせずに、
「俺に何の用ですか?」と、冷静に答えたー
「--ふふふ、いやなに、あんたを助けてあげようと思ってね」
老婆がにっこりとほほ笑んだー。
「---…助ける?」
首を傾げる通泰ー。
老婆は不気味な笑みを浮かべながら呟くー
「--余命半年のあんたが、
もし、、もしも、これから何十年も生きることのできるチャンスがあるとしたらー?」
老婆の言葉に、通泰は”驚く”
”このおばあさん…何を言って・・・?”
「---…あるんだよ」
老婆は笑みを浮かべながら怪しげな光を取り出したー
”入れ替わりって知ってるかい?”
老婆の言葉は、通泰の想像を絶するものだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
大学の食堂で、カレーライスを食べながら、通泰は
考え事をしていたー
「--ねぇ…?通泰?」
一緒に昼休みを過ごしている彼女の佐奈美が、
首を傾げるー。
通泰は”昨日”のことを思い出すー
”入れ替わり”
老婆は言ったー
彼女の身体を奪えば、あんたはこれから先もずっと生きていくことができるー
とー。
通泰が聞き返すと、老婆は答えたのだー
”あんたの彼女と、身体を入れ替える方法がある”
とー。
「---通泰!!」
佐奈美の言葉に、ようやく我に返った通泰は
「あ、ごめん」と呟くー
「ごめんじゃなくて!朝からずっと考え事してるけど、
大丈夫!?」
と、佐奈美が心配そうに聞いてきたー
大丈夫ー
大丈夫だけど、大丈夫じゃない
そんな風に思いながらも、通泰は「大丈夫だよ」と答えるー
佐奈美が、「ならいいけど~!」と、ほほ笑む。
この笑顔をもうすぐ見ることができなくなるー
どんなに、
どんなに愛していても
”死んでしまったら”それで終わりだー。
通泰は考えるー
”彼女の身体を奪えば、あんたはこの先も生きていけるよ”
老婆の言葉ー。
どうするべきかー
通泰は、揺らいでいたー
老婆は
”通泰と佐奈美の身体を入れ替えることができる”
そう、言ったのだー
身体を入れ替えればー
確かに、この先も生きることが出来るー
大学を終えると、
通泰は再び老婆と会っていたー。
「--俺を助けようとする目的はなんだ?」
通泰が問いかける。
老婆は頷くー
”わたしゃ、悪い人間じゃないよ”
とー。
「-ーーまぁ、信じるも信じないも、あんた次第さ」
老婆の言葉に、
通泰は、表情を少し険しくしながらも続けたー
「--その薬を飲めば、俺と佐奈美が入れ替わるってことだな」
「あぁ、そうさ」
老婆は笑ったー
「---」
入れ替われば、助かるー
「ーージュースにでも混ぜれば、簡単さ」
老婆は入れ替わり薬の使い方に関して、アドバイスをするー
老婆が言うには入れ替わることのできる組み合わせは
”相手のことをお互いに想っている”組み合わせに限る、とのことだったー
そうしないと、入れ替わりの際に身体が魂に対して拒絶反応を起こしてしまい、
入れ替わりに失敗する可能性がある、とー。
だから、通泰が助かるためには、佐奈美と入れ替わって、
通泰が佐奈美に、佐奈美が通泰にー
という状態を作り出すしかないー
”余命宣告”を受けても、
身体が入れ替われば、
余命宣告から、逃れることができるー
余命宣告を受けたのは
”魂”ではなく、”身体”のほうなのだからー
「---わかった。信じる」
通泰が言うと、
老婆は笑みを浮かべるー
「--いくらだ?」
入れ替わり薬の値段を聞く通泰。
だがー
老婆は首を振ったー
「--わたしの目的にも通じることだからねぇ。
お代はいらないよー」
とー。
「-----」
通泰はさらに表情を険しくするー
正直
”超”怪しいー。
なんだこのばあさんは?という感じだ。
だがー
それでも通泰はそれに縋ったー。
これがあれば、”死”の運命を変えることができるー
”どうせ死ぬなら”
そんな思いが、通泰にはあったのかもしれないー
いかにも怪しい老婆から
入れ替わり薬を手にした通泰は、
決意したー
・・・・・・・・・・・・・・・
通泰は、考え込んでいたー
ここ数日、ずっと険しい表情ー
佐奈美も、そんな通泰のことを心配していたー
何かー
何か抱え込んでいる様子は、
佐奈美にもよく伝わってくるー
だが、通泰が何を抱え込んでいるのかー。
それは、分からなかったー
「ねぇ、大丈夫…?」
佐奈美の言葉に、通泰は少しだけ笑顔を浮かべて
「大丈夫だよ…」と呟いたー
通泰は、迷っていたー
”入れ替わり薬”を使うべきか、否かー。
「---……」
だがー
佐奈美の笑顔を見てー
通泰は、決断したー
「明日…」
通泰が口を開く。
「え?」
佐奈美が不思議そうな表情を浮かべる。
「明日、俺の家に来れるかな…?
大事な話があるんだ」
通泰の言葉に、
佐奈美は”え…?”と、不安に思いながらも
「う、、うん…いいよ」
と、頷いたー
何かに悩んでいる様子からの
”明日、大事な話がある”
これは、ただ事ではない、と覚悟しながらー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
通泰の家にやってきた佐奈美ー
”もしかしたらー
別れを告げられるのかもしれないー”
”もしかしたらー
プロポーズ…?”
良い方向と悪い方向に
色々考えを巡らせながら、
部屋の中に入るー
通泰は、飲み物を用意するー
「----------」
「ーージュースにでも混ぜれば、簡単さ」
老婆の言葉を思い出すー
通泰は、悲しそうに目を瞑ると、
深呼吸して、医師から余命宣告を告げられた時のことを思い出すー。
”きみはきっと俺を許さないー”
でも、それでもー
通泰は、ジュースに”入れ替わり薬”を混ぜたー
そしてー
「----はい、どうぞ」
通泰がジュースを差し出すー
まずは自分が飲むー。
佐奈美は”入れ替わり薬”が入っていることも知らずー
それを飲むー
ぐらっ
「-!?」
佐奈美が、今まで感じたことのないような
”違和感”を感じるー
これまでに感じたことのないような、
異様な感じのめまいー。
「---え…」
佐奈美が、驚いて通泰の方を見ると、
通泰は、笑みを浮かべていたー
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「う…」
しばらくして、通泰が目を覚ましたー
通泰の部屋ー
そこに、佐奈美の姿がないー
通泰は驚きながら
「あれ!?通泰!?」と叫びー
驚きの表情を浮かべたー
”今…通泰の声が!?”
青ざめた表情で、洗面台の前に向かう通泰ー
そこにはー
当然、通泰の姿がー
だがー
通泰本人は、口に手を当てて、心底驚いていたー
何故ならー
中身が”入れ替わって”いたからー
「---わ、、わたしが…通泰に!?」
通泰(佐奈美)が、口に手を当てながら驚くー
慌てて部屋に戻ると、
そこには、置手紙が置かれていたー
”佐奈美へ”
そう書かれた手紙を見て、通泰(佐奈美)は、
震えることしかできなかったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
今日は入れ替わりのスタートまで!
最終回の③まで、読んだあとに
もう一度①を見て見ると、いろいろ気づきがあるかもしれませんネ~!
②と③もぜひお楽しみください!
※明日が②、明後日が③デス!
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