<憑依>間違えて赤ちゃんに憑依しました①~誤算~

念願の憑依薬を手に入れた男は、
お目当ての子に憑依しようと、笑みを浮かべるー

しかし、彼は”とある失敗”をしてしまうー

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「へへへへへへ…ようやく手に入れたぜ」

一人暮らしのモノが散らかっている部屋で、
男は、たった今、到着したばかりの
ダンボールを開封したー

中には、男が待ち焦がれた”ソレ”が入っていたー

男が待ち焦がれていたのは”憑依薬”-

町原 宗司(まちはら そうじ)は、
”憑依”されて乗っ取られている女性を見たり、
乗っ取っているのを想像したりすると
興奮する性癖持ちだったー

原点は、はっきり覚えている。
小さいころ、まだ、純粋だった自分が見ていた
特撮ヒーロー番組で、
悪の怪人が、少女に憑依して
悪さをするお話があったー。

それが、原点だー。
それを見たとき純粋だった彼は、初めて”性的な興奮”というものを覚えたー

それ以降、宗司は”憑依”にのめり込んだー
高校時代は、クラスメイトの女子に憑依して好き放題する”妄想”で
毎日抜いていた。
ほぼ全同級生で1回は抜いている。
色々な乗っ取りシチュエーションを妄想したー

当然、憑依の場面が出て来るアニメや映画、ゲーム…
そういったものも、徹底的にチェックし、
漏れがないように、全てを確認したー。

彼は、憑依を心の底から愛していたー

大学時代、宗司には、人生初めての彼女が出来たのだが
”憑依のシチュエーション”でエッチをしたいと言ったところ
引かれてしまい、そのまま別れることになってしまったー

宗司も、憑依を理解してくれない女に興味は無かったし
今もその元カノに、妄想の中で憑依しているー。

だがー
やがて、宗司はそれでは満足できなくなったー

妄想や創作よりも、さらにその先に行きたくなったー

とは言え…
実際に誰かを襲ったりしても、意味はない。
それは犯罪でしかないし、
憑依でもない。
誰かを襲ったところで、憑依できないのだから、
宗司にとって、それは全く意味のない行為だ。

そんな宗司は、あらゆる手段を使い
”現実に憑依薬が存在するのではないか”と、
2年をかけて、徹底的にあらゆる都市伝説や情報を調査したー

その結果、
彼はたどり着いたのだー

26歳にして、
”本物の憑依薬”にー。

「へへへへ…」
ダンボールから出てきたのは、何とも言えない色合いの液体が入った容器ー

そこには”憑依薬”と書かれている。

確かに、偽物の可能性もあるし、
これまでにも、何度も偽物を掴まされてきた。
例え偽物であっても、0.01%でも可能性があるのであれば、
宗司は立ち上がる。
”リアルの憑依”を体感するために。

そして、宗司は、この憑依薬は、入手までの経緯から
”ほぼ95%本物である”という結論を叩きだしていた。

「---ようやく…俺も…」
今まで何度、妄想したことか。
乗っ取った身体で好き放題やるシチュエーションをー。

男は、既にターゲットを決めていたー
近所の高校に通っている女子高生・梨田 柚葉(なしだ ゆずは)
おしとやかそうで、とても可愛らしい眼鏡の少女だー

そんな柚葉を乗っ取り、
徹底的に悪女にしてやりたいー

優等生タイプの柚葉が、急に悪女になって、
学校では素行不良な態度を取り、
家ではエッチなことを繰り返すー
過激な衣装も着てみたい。

憑依薬は一度きりで、自分の身体を捨てることになる、と
説明を受けていたが、
それでも良かったー。

梨田 柚葉として、女を堪能するー
それが出来れば十分だし、
現役女子高生の柚葉を乗っ取れば
現在26の自分は、10年近く人生も得することになる。

何も、問題はないー

宗司は、”何人か”の候補がいたのだがー
まず、”すぐに楽しみたい”という理由から
女子高生以上、というルールを自分の中で設定したー

自分より年上も、除外した。
何故なら、人生を損するからだ。

そして、女子高生~26歳という範囲内で
総合的に考えた結果ー
彼は、梨田 柚葉に憑依することに決めたのだ

真面目で、優等生で、容姿もとても可愛らしくー
それでいて、ちょっと天然な部分もある。

それが、宗司の観察結果だった。

宗司は、憑依薬を手にするー

「さらば、俺の身体」
別に、自分の身体は嫌いではなかったのだが、
”憑依”という性癖を満たすためなら、仕方がない

「今日から俺は、梨田柚葉になる!」
そう叫ぶと、憑依薬を一気に飲み干したー

身体に”今まで感じたことのない”
おかしな衝撃が走るー

ドクンー
心臓が、跳ね上がるような、
魂を吐き出すかのようなー
言葉では言い表せぬ、異様な感覚ー

身体の底から、何かが突き上げて来るような、
そんな感覚ー

「うっ…うおおおおおおおおおおおおお!」
宗司は叫ぶー

身体の底からエネルギーが湧いてきて、
それが胃を逆流し、急激に上の方に
上がってきているような気がするー

「--ぐぼぉぉっ!?」
宗司の身体から、何かが飛び出し、
急速に身体の感覚が失われていくー

一瞬、宗司は”猛毒を飲まされたのではないか”と
思ってしまったが、
そうではなかったー

気付いた時にはー
自分は、自分の部屋の中で浮いていた。

目の前で倒れているのは、自分の身体。

そう、宗司は、幽体離脱に成功したのだー
宗司の身体が白目を剥いて、泡を吹き、
痙攣しているー
今にも死んでしまいそうだー。

この憑依薬の説明通りー
恐らく、宗司の身体は間もなく死んでしまうのだろう。

「--26年間、お疲れさん」
自分の身体に対して宗司の霊体はそう呟くと
未練を断ち切り、そのまま、自分の部屋の外へと飛び出したー

空を飛ぶ、とはこういう感覚か!
と、宗司は一気にハイテンションになる。

壁をすり抜けることもできる。
通行人には見えていないようだし、
今の彼なら、どこにだって、侵入することもできるし、
何だって見ることができる。

そういう状態だー。

「さてさて」
楽しんでいる場合じゃない。
霊体の状態で、1時間以上いると、安全を保障できない、と
書かれていた。
つまり、そのまま消滅してしまう可能性があるのだと言う。

霊体の状態とは、とても不安定な状態であり、
脆い状態なのだー

宗司は、ちゃんと、それも計算に入れていたー

梨田 柚葉の登校時間の直前に、憑依薬を飲んだー
梨田 柚葉を確実に乗っ取るためだー。

本当は、いきなり学校と言うのもハードルが高いから
下校時に乗っ取ろうとしたのだが、
調べた結果、下校時間は柚葉が所属している美術部の
活動時間によって前後があるため、”リスク”が高く、
また、学校内に入っても、確実に柚葉を見つけ出せずに
憑依できない、なんて可能性もあったため、
”毎日必ず同じ時間に同じ場所を通る”
登校時間を狙うのが、一番と言えたー

寝ている間も考えたのだが、
”就寝時の人間”を乗っ取るのは、定着率に影響が出るとかなんとか
説明があったため、控えることにした。

「--来た!」

梨田 柚葉が、いつものように、ゆっくりと登校しているー
友達の女子と一緒だー

乗っ取った瞬間に疑問に思われるかもしれないが、
どうせ自分が柚葉になるんだし、
憑依なんて誰も思わないだろうから、
なんとかなるだろう。

「梨田 柚葉」
宗司は呟くー

「---今日から俺が梨田柚葉だ!!!」
宗司の待ちに待った瞬間がやってきたー

美少女の身体を乗っ取りー
欲望に満ちた人生を謳歌するー

その、瞬間がーー

「--あっ!」
柚葉がーー
突然、尻餅をついたー

「--えっ!?」
何が起きたのかわからなかったー

柚葉の頭のあたり目掛けて霊体を突進させていた宗司はー
柚葉が転倒したことにより、そのまま、柚葉の居た位置を超えー

その先にー

「うわあああああああああ!!!」
宗司は叫ぶー

すぐ先を歩いていたーー
赤ん坊を抱いた、いかにもギャルな化粧まみれの女にーーー

”よけろ!!!!俺ぇええええええええええええ!”
宗司が心の中で叫んだー

憑依は一度きりー
こんな、ケバケバな化粧の女は、好みではないー

俺は、梨田柚葉になるんだ!!!!

しかしー
宗司はーーー
ギャル女をよけきれずー
その女が抱いていた赤ん坊にーーー
入ってしまったー

「-------!!!!!!!!!」
赤ん坊の身体になってしまった宗司ー

(う、、、嘘だろ…!?!?嘘だろ…!?!?!?
 あああああああああああ!!!!!)
宗司が叫ぶー

「おぎゃああ!!!」
泣き声しか出ないー

「-も~!ドジなんだから~」

宗司はハッとするー
転倒した柚葉に手を差し伸べる友達ー

宗司が乗っ取るはずの柚葉はー
道路に落ちていたバナナの皮を踏んでー
転倒していたのだったー

「--えへへへ 全然前見てなかった!」
柚葉が恥ずかしそうに笑いながら
乱れたスカートを払うー

”くそっ!俺がそのスカートを乱すはずだったのに!”
赤ん坊に憑依してしまった宗司が内心で叫ぶー

「おぎゃあ!おぎゃあ!」
内心では、叫ぶことができても、
まともに発音することができないー

”くそっ!くそっ!くそっ!
 ふざけるな!!ふざけるな!!”
宗司は大声で叫ぶ。

柚葉とその友達が、手を繋ぎながら楽しそうに
学校に向かっていくー

”その綺麗な手を、俺が支配するつもりだったのに…!”

そう叫びながらも、
”おぎゃあ”としか声が出なくなってしまった宗司ー。

柚葉と、その友達の姿が遠ざかっていくー
柚葉は、”身体を乗っ取られそうだった”などということなど
全く知らずに、そのまま、学校へと向かうー。

”自分が、バナナの皮で転ばなければ”
今頃、柚葉は身も心も完全に支配されて、
その人生を、終えていただろう。

だがー
そうは、ならなかった。

「--ねぇ~!うざいんだけどぉ???
 静かにできないの?」
赤ん坊の母親が言う。
ケバケバ化粧のギャル女が、
こっちを見ている。

”う、、うるせーー!!”
赤ん坊に憑依した宗司はそう叫んだ。

「--うるさい!黙れ!」
ギャル女が叫ぶー

赤ん坊に対して、ビンタを食らわせるギャル女ー

”い、、いてぇ~~~~~!”
宗司は叫ぶ。

おぎゃあ、おぎゃあ、と声が出るー

「--あんたなんか、産みたくなかったのに!
 ほんと、邪魔くさい!」
ギャル女が叫ぶー

”く、、、、ま、、まさか”
宗司は唖然とするー

赤ん坊に憑依してしまっただけでも、地獄なのにー
この雰囲気は…

「あ~~うざいうざい!健太郎との時間を邪魔するなんて!
 うざいうざいうざいうっぜぇ」
ギャル女が大声で叫ぶー。

”虐待ー”
宗司は凍り付いたー
この赤ん坊は、虐待されているー?

だとしたら、俺はー。

”抜け出せない憑依”
もし、赤ん坊の身体で虐待されたら、まずいー。

狙った相手への憑依に失敗した宗司に待ち受ける未来はー
”絶望”の2文字に包み込まれていたー

②へ続く

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コメント

柚葉ちゃんに憑依した場合を見せてほしいー!
という人もいそうな気も…笑

でも、今回は赤ん坊に憑依できちゃいました!笑

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    タイトル名から予想してたのとかなり違う展開。
    予想ではターゲット(柚葉)が実は妊娠していて、その赤ちゃんに憑依するのかと思ってました。

    ところで赤ちゃんの性別はどうなんでしょうね? 
    それにしても危うく体を奪われるとこだった柚葉は強運ですね。

    このお話、実は自分でも妄想したことのある話に近いので続きがとても楽しみです!

    あと作者さんのコメントにあるみたいに柚葉ちゃんに憑依成功した場合の話もすごく見てみたいですね。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    赤ちゃんの性別については②で話題が出て来るので、
    ①では、あえてぼかしました~!

    柚葉ちゃんは、助かりましたネ笑

    憑依成功の場合は…今はまだ、あえてノーコメントにしておきます!!