<憑依>恨みを晴らします②~いじめ~

死神は、現世へと降り立ったー

犠牲になった少女の遺体に憑依して、
彼はいじめっ子たちを追うー

”掟”を破ってまで、
他人の恨みを晴らす、彼の真意はー?

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真希子の遺体に憑依した死神ー

死神の力で、遺体であっても、
最低限の行動は出来るー。

「----っと…」
真希子が棺から飛び出すと、
そのまま周囲を見渡すー

真希子は目を赤く光らせながら両手を広げて
不気味な煙のようなものを放つー

”幻覚作用”のある煙ー。
棺の中に真希子が眠っているように
周囲の人間に見せ、混乱を招かないようにするためのものだー

「--」
ぎこちない足取りで歩く真希子ー。

遺体であるがゆえに、
死神の力を持って動かしても、
どこかぎこちなさがあるー

「---…」
鏡を見つめる真希子ー

「-…可哀そうに…」
真希子はそう呟いたー

もう、2度と発されることのなかったはずの
真希子の声が、現世に響き渡るー。

”かわいそう”
死神はそう思ったー

この、真希子という少女は、
”いじめ”を受けることがなければー
死んだりすることはなかっただろうー。

いじめは、人生を大きく狂わせるー。

真希子をいじめたのは、
陰険な女子3人ー
そして、この子が助けたはずの幼馴染ー
合計4名だー。

目を赤く光らせる真希子ー。

真希子の恨みと、
死神の恨みが混じり合いー
真希子から、紫色のオーラが放出されるー。

死神は、いじめに対して
”激しい怒り”を覚えていたー

これまでにも、数々の恨みを晴らしてきたが
その中でも、この死神は、無意識のうちに
”いじめ”に関係する恨みを、特に重点的に晴らしてきたー

”いじめられる辛さ”-
それを、彼はーーー

「--------!」
死神は一瞬ハッとしたー

死神が乗っ取っている真希子の表情も、一瞬、歪むー

”なにかーーー”
大事なことを思い出しそうになった気がするー

「---」
真希子はしばらくの間、表情を歪めていたが、
やがて首を振ったー。

そんなことを考えても、仕方がないー

今はただ、
この真希子という子を自殺にまで
追いやったいじめっ子たちをーー

葬り去ろうー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

人間の世界とは、理不尽なものだー

他人の命を奪ったとしてもー
その奪った本人は、のうのうと
ヘラヘラしながら生きているー

命を奪われた側ー
命を奪われた者の家族、友達ー
それらが、どんなに怒り狂ったところでー

のうのうと、暮らしているやつらは、いるー。

真希子をいじめたやつらもそうー。

真希子が死んでから数日ー
既に、いじめっ子たちは、ごく普通に生活を送っていたー。

”人間界のルール”では、
こいつらは裁かれないー
このままずっと、普通に生きて、
高校時代にクラスメイトを自殺に追いやったことなど、
すっかり忘れ、幸せに暮らすのかもしれないー

「--ひ、、やめて…!」

だがー
そうはいかないー。

真希子に憑依した死神は、
怒りの形相で、一人の少女を路地裏に追い詰めていたー

「--や、、やめてってば…!謝るからー!」
裏路地に追い込まれていた少女は悲鳴を上げるー。

彼女はー
真希子をいじめていた3人組のひとりー
栗山 芹香(くりやま せりか)-
活発そうな、表裏のなさそうな少女だがー
その中身は陰険で、平気で人を陥れる性格の持ち主ー

「許さない…」
真希子が歯ぎしりしながら呟くー

死神は、許せなかったー

たとえ、こいつらが、法律的に犯罪者でなかったとしてもー
仕返しをすれば憎しみの連鎖を生むのだとしてもー
この芹香が死ねば、また別の悲しむ人間が生まれてしまうのだとしてもー

殺られたら、殺りかえすことがー
正しいこと…
では、ないとは思うー

でも、それでも、死神には許せなかったー

正解かー
不正解かー
そんなことは、どうでもよかったー

ただ、許せないー

「わたし…あんたたちを殺すために、地獄から戻って来たの」
真希子が言うー

真希子の記憶を探る死神ー

死んだ直後の人間には”記憶の残り火”が残っているー

栗山 芹香ー
彼女のいじめは”シンプル”だったー
真希子に暴力を振るいー、
そして、悪口を投げかけていたー
表では、明るく活発で、人気もあるために、
その人望も利用して、真希子をさらに追い詰めていたー

暴力・暴言・脅しー。
芹香は、直接的な方法で、
真希子をイジメ続けていたー

「---や、、やめて」
芹香が悲鳴を上げるー

真希子は、芹香に”暴力”を振るっていたー

振るわれた暴力を、
振るい返していたー

「ーーーわたしが、どれだけ痛い思いをしたか、
 苦しい思いをしたか、思い知れ!」
真希子が怒り狂った表情で叫ぶー

真希子の手は、冷たいー
もう、”熱”はないからー。

「--あ…ぅ…」
ボコボコにされた芹香が苦しそうに真希子の方を見るー

「---幽霊…おばけ…???何なの…?」
ーーと。

真希子が自殺したー

そのことは、芹香も知っているー

なのになぜ、真希子が目の前にー

「--地獄から、恨みを晴らしに戻ってきたの」
真希子が、芹香の血を舐めながら笑うー

真希子は生前、芹香に首を絞められて
死にかけたこともあったー

ギリギリのところで、芹香は首を絞めるのを
やめてくれたがー
その時、芹香は笑っていたー

「--ちょっと首絞めただけで、死にそうになるなんて、 
 根性足りなすぎ!
 可愛い子ぶってて、マジできもいー!」
とー。

その記憶を探り出した真希子は、無意識のうちに
芹香の首を絞めていたー

「--あ…ぅ…く、、苦しい、、、たすけ…」
芹香が涙をこぼしながら言うー。

芹香の顔が赤くなっていくー
真希子は怒りの形相でさらに首を絞めたー

「-----ぁ…ぁ」

”恨みを晴らす”

この死神は、常軌を逸するほど、”いじめ”を憎んでいたー
何故だろうかー
それは、死神自身にもわからないー

「------たぅ… け…」
”たすけて”と発音できないほどに苦しむ芹香-

そんな芹香を見てー
真希子は笑みを浮かべたー

そしてーーー

芹香の首から手を離したー

激しく咳き込む芹香ー
呼吸が荒いー

「----」
真希子が芹香を見下すー

”命までは奪わない?”

ーー否。

真希子が不気味な笑みを浮かべるー

「--ちょっと首絞めただけで、死にそうになるなんて、 
 根性足りなすぎ!
 可愛い子ぶってて、マジできもい!」
低い声で、脅すようにして、呟くー

かつて、生前の真希子が芹香に言われた言葉をーー

「---ひ……ゆ、、ゆるしーー」

そしてーー
真希子は再び芹香の首を絞めたー

”簡単には、殺さない”

それが、”恨みを晴らす”
ということー

悲鳴を上げる芹香ー

真希子は”5秒ずつ”首を絞める時間を
長くしていくー

”根性”があれば、首絞められても平気なんでしょ?と
笑いながらー

やがてーー
7回目で、芹香は動かなくなったー

「---まず、ひとりー」
真希子が呟くー

「-----」
”あの世”からその様子を見ていた
真希子の霊体が、悲しそうな表情を浮かべるー

恨みが、ひとつ晴らされたー。

「----」
でもー
恨みを晴らしたあとには、虚しさしか残らないー

真希子は、そんな風に思ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

”ネット使い 熊井 明日香(くまい あすか)”

いじめていた3人組のひとりだー
ネットを使いこなす女子で、
真希子のことを
ネット上で晒してネタにしていたー

真希子の恥ずかしい写真を撮って
ネットに上げたり、
真希子のフリをした成りすましアカウントを作って
問題行為を起こしたりー

真希子に、鬼のような数の
メールやLINEを送り付けたりー

デジタルいじめのデパートとも言える女ー

それがー
熊井明日香だー。

”社長令嬢の溝口 麗依菜(みぞぐち れいな)”-
いじめ3人組のリーダー格で
”パパ”
”ママ”に溺愛されて育った筋金入りのお嬢様ー。
気にいらないものは、徹底的に追い詰め、
そして、何か都合が悪くなると、パパとママに言いつけるから!と
両親の力を頼るー。

男子に対して甘えるスキルが高くー
多くの男子を虜にしているー

「---------」
真希子は、残り二人についての記憶を
真希子の脳から探ったー

そして、もう一人ー

当初、麗依菜たちにいじめられていたのを
真希子に助けてもらった”真希子の幼馴染”

その後、真希子を裏切り、麗依菜たちと仲良くなりー
”助けてもらった恩を仇で返した”悪魔のような幼馴染ー

”あんたなんか、死んじゃえ”

その言葉が、真希子の自殺の決定打となったー

眼鏡をかけたおとなしい雰囲気の裏に隠れた
歪んだ本性ー

真希子自殺の一番の”元凶”である幼馴染ー
里原 愛唯(さとはら めい)-

「-----」
時々、ガクガクと不気味に震えながら、真希子は歩くー

真希子の身体は既に死んでいるー
死神が憑依し、
死神の力によって、無理やり動かしているものの、
それでも、身体はまともに機能をしていないー。

「---”警告”だ」

「-!」

背後から、女の声がして、真希子が振り返るー

そこには、可愛らしいツインテールの少女がいたー。
その少女の目が赤く光るー

別の死神に憑依されているー

「---これ以上”掟”を破れば
 貴様には”罰”が下る。
 今すぐ戻れ」

ツインテールの少女が、可愛い声で目を赤く光らせながら”警告”するー

現世への干渉は、死神たちの掟破りー
永遠の闇へと、幽閉されることになるー

「---…」
真希子に憑依している死神は、迷うー

だがーー
真希子の身体からー
そして、自分の心からー
いじめに対する激しい怒りが湧いてくるー

真希子がいじめに対して怒るのは分かるー
けれど、自分はどうしてー?
そんな風に思いながら、
真希子は呟いたー

「----すぐに戻るー」
とー。

ツインテールの少女に憑依している死神は
その言葉に満足したのか、
少女はそのまま気絶したー

「----…”恨みを晴らしたら”な」
真希子はそう呟くと、
真希子を自殺に追いやったいじめっ子たちへの
復讐を継続するため、動き出した

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「----!な、、なにこれ…!」

”いじめ”のリーダー格であった
社長令嬢の麗依菜が声を上げるー

「うそっ…!
 パパ…!ママ…!」

麗依菜の視線の先には、
”娘が悪い子でごめんなさい”と遺言を残して
自ら命を絶った両親の姿があったー

「そ、、そんな…!そんな…!」
麗依菜がパニックになるー

使用人たちの姿もないー

「き、救急車呼ばないとー」
麗依菜が慌ててスマホを手にするー

しかし、スマホを持つ手がガクガク震えて、
スマホを落としてしまうー

「誰か…!誰かー!」
麗依菜が悲鳴を上げるー

”ひとりじゃ、何もできないくせにー”

「--!」
麗依菜が振り返ると、
そこには、いじめで死んだはずの真希子がいたー

「ま、、、ま、、、真希子…?
 なんで、、なんであんたが…!」
麗依菜が表情を歪めるー

すっかり怯えきってしまっていて、
いじめを主導していた麗依菜の面影は、まるでない。

「--何かあると、すぐに、パパ、ママ、パパ、ママ…
 あんたが恵まれているのは、あんたの力じゃないのに
 すぐにパパ、ママー。」

真希子が笑いながら言うー

「---…」
麗依菜が涙ぐみながら、真希子の方を見るー

「--あんたなんて、”パパ”と”ママ”がいなければ、
 何もできないもんね????
 ほら、いつもの威勢はどうしたの???」

真希子が目を赤く光らせながら言うー

麗依菜は、悔しそうに泣きながらも、
何もできずにに、怯えた表情を浮かべるー

そんな麗依菜を見つめながら、死神は思ったー

”自分には、直接関係のないことなのに、
 なぜ自分は、こんなにいじめを憎むのかー”

数々の恨みを晴らしてきた死神ー
けれど、いつも”いじめ”にだけは激しい怒りを抱くー

まるで、”自分のこと”のようにー

違和感を感じながらも、”今は目の前のことを”
と、思い、真希子に憑依している死神は、麗依菜の方を
冷たい目つきで見つめたー

③へ続く

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次回が最終回デス~!

今日もとても暑いので、熱中症には
注意してくださいネ~!

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