死神は、現世へと降り立ったー
犠牲になった少女の遺体に憑依して、
彼はいじめっ子たちを追うー
”掟”を破ってまで、
他人の恨みを晴らす、彼の真意はー?
--------------------–
真希子の遺体に憑依した死神ー
死神の力で、遺体であっても、
最低限の行動は出来るー。
「----っと…」
真希子が棺から飛び出すと、
そのまま周囲を見渡すー
真希子は目を赤く光らせながら両手を広げて
不気味な煙のようなものを放つー
”幻覚作用”のある煙ー。
棺の中に真希子が眠っているように
周囲の人間に見せ、混乱を招かないようにするためのものだー
「--」
ぎこちない足取りで歩く真希子ー。
遺体であるがゆえに、
死神の力を持って動かしても、
どこかぎこちなさがあるー
「---…」
鏡を見つめる真希子ー
「-…可哀そうに…」
真希子はそう呟いたー
もう、2度と発されることのなかったはずの
真希子の声が、現世に響き渡るー。
”かわいそう”
死神はそう思ったー
この、真希子という少女は、
”いじめ”を受けることがなければー
死んだりすることはなかっただろうー。
いじめは、人生を大きく狂わせるー。
真希子をいじめたのは、
陰険な女子3人ー
そして、この子が助けたはずの幼馴染ー
合計4名だー。
目を赤く光らせる真希子ー。
真希子の恨みと、
死神の恨みが混じり合いー
真希子から、紫色のオーラが放出されるー。
死神は、いじめに対して
”激しい怒り”を覚えていたー
これまでにも、数々の恨みを晴らしてきたが
その中でも、この死神は、無意識のうちに
”いじめ”に関係する恨みを、特に重点的に晴らしてきたー
”いじめられる辛さ”-
それを、彼はーーー
「--------!」
死神は一瞬ハッとしたー
死神が乗っ取っている真希子の表情も、一瞬、歪むー
”なにかーーー”
大事なことを思い出しそうになった気がするー
「---」
真希子はしばらくの間、表情を歪めていたが、
やがて首を振ったー。
そんなことを考えても、仕方がないー
今はただ、
この真希子という子を自殺にまで
追いやったいじめっ子たちをーー
葬り去ろうー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人間の世界とは、理不尽なものだー
他人の命を奪ったとしてもー
その奪った本人は、のうのうと
ヘラヘラしながら生きているー
命を奪われた側ー
命を奪われた者の家族、友達ー
それらが、どんなに怒り狂ったところでー
のうのうと、暮らしているやつらは、いるー。
真希子をいじめたやつらもそうー。
真希子が死んでから数日ー
既に、いじめっ子たちは、ごく普通に生活を送っていたー。
”人間界のルール”では、
こいつらは裁かれないー
このままずっと、普通に生きて、
高校時代にクラスメイトを自殺に追いやったことなど、
すっかり忘れ、幸せに暮らすのかもしれないー
「--ひ、、やめて…!」
だがー
そうはいかないー。
真希子に憑依した死神は、
怒りの形相で、一人の少女を路地裏に追い詰めていたー
「--や、、やめてってば…!謝るからー!」
裏路地に追い込まれていた少女は悲鳴を上げるー。
彼女はー
真希子をいじめていた3人組のひとりー
栗山 芹香(くりやま せりか)-
活発そうな、表裏のなさそうな少女だがー
その中身は陰険で、平気で人を陥れる性格の持ち主ー
「許さない…」
真希子が歯ぎしりしながら呟くー
死神は、許せなかったー
たとえ、こいつらが、法律的に犯罪者でなかったとしてもー
仕返しをすれば憎しみの連鎖を生むのだとしてもー
この芹香が死ねば、また別の悲しむ人間が生まれてしまうのだとしてもー
殺られたら、殺りかえすことがー
正しいこと…
では、ないとは思うー
でも、それでも、死神には許せなかったー
正解かー
不正解かー
そんなことは、どうでもよかったー
ただ、許せないー
「わたし…あんたたちを殺すために、地獄から戻って来たの」
真希子が言うー
真希子の記憶を探る死神ー
死んだ直後の人間には”記憶の残り火”が残っているー
栗山 芹香ー
彼女のいじめは”シンプル”だったー
真希子に暴力を振るいー、
そして、悪口を投げかけていたー
表では、明るく活発で、人気もあるために、
その人望も利用して、真希子をさらに追い詰めていたー
暴力・暴言・脅しー。
芹香は、直接的な方法で、
真希子をイジメ続けていたー
「---や、、やめて」
芹香が悲鳴を上げるー
真希子は、芹香に”暴力”を振るっていたー
振るわれた暴力を、
振るい返していたー
「ーーーわたしが、どれだけ痛い思いをしたか、
苦しい思いをしたか、思い知れ!」
真希子が怒り狂った表情で叫ぶー
真希子の手は、冷たいー
もう、”熱”はないからー。
「--あ…ぅ…」
ボコボコにされた芹香が苦しそうに真希子の方を見るー
「---幽霊…おばけ…???何なの…?」
ーーと。
真希子が自殺したー
そのことは、芹香も知っているー
なのになぜ、真希子が目の前にー
「--地獄から、恨みを晴らしに戻ってきたの」
真希子が、芹香の血を舐めながら笑うー
真希子は生前、芹香に首を絞められて
死にかけたこともあったー
ギリギリのところで、芹香は首を絞めるのを
やめてくれたがー
その時、芹香は笑っていたー
「--ちょっと首絞めただけで、死にそうになるなんて、
根性足りなすぎ!
可愛い子ぶってて、マジできもいー!」
とー。
その記憶を探り出した真希子は、無意識のうちに
芹香の首を絞めていたー
「--あ…ぅ…く、、苦しい、、、たすけ…」
芹香が涙をこぼしながら言うー。
芹香の顔が赤くなっていくー
真希子は怒りの形相でさらに首を絞めたー
「-----ぁ…ぁ」
”恨みを晴らす”
この死神は、常軌を逸するほど、”いじめ”を憎んでいたー
何故だろうかー
それは、死神自身にもわからないー
「------たぅ… け…」
”たすけて”と発音できないほどに苦しむ芹香-
そんな芹香を見てー
真希子は笑みを浮かべたー
そしてーーー
芹香の首から手を離したー
激しく咳き込む芹香ー
呼吸が荒いー
「----」
真希子が芹香を見下すー
”命までは奪わない?”
ーー否。
真希子が不気味な笑みを浮かべるー
「--ちょっと首絞めただけで、死にそうになるなんて、
根性足りなすぎ!
可愛い子ぶってて、マジできもい!」
低い声で、脅すようにして、呟くー
かつて、生前の真希子が芹香に言われた言葉をーー
「---ひ……ゆ、、ゆるしーー」
そしてーー
真希子は再び芹香の首を絞めたー
”簡単には、殺さない”
それが、”恨みを晴らす”
ということー
悲鳴を上げる芹香ー
真希子は”5秒ずつ”首を絞める時間を
長くしていくー
”根性”があれば、首絞められても平気なんでしょ?と
笑いながらー
やがてーー
7回目で、芹香は動かなくなったー
「---まず、ひとりー」
真希子が呟くー
「-----」
”あの世”からその様子を見ていた
真希子の霊体が、悲しそうな表情を浮かべるー
恨みが、ひとつ晴らされたー。
「----」
でもー
恨みを晴らしたあとには、虚しさしか残らないー
真希子は、そんな風に思ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
”ネット使い 熊井 明日香(くまい あすか)”
いじめていた3人組のひとりだー
ネットを使いこなす女子で、
真希子のことを
ネット上で晒してネタにしていたー
真希子の恥ずかしい写真を撮って
ネットに上げたり、
真希子のフリをした成りすましアカウントを作って
問題行為を起こしたりー
真希子に、鬼のような数の
メールやLINEを送り付けたりー
デジタルいじめのデパートとも言える女ー
それがー
熊井明日香だー。
”社長令嬢の溝口 麗依菜(みぞぐち れいな)”-
いじめ3人組のリーダー格で
”パパ”
”ママ”に溺愛されて育った筋金入りのお嬢様ー。
気にいらないものは、徹底的に追い詰め、
そして、何か都合が悪くなると、パパとママに言いつけるから!と
両親の力を頼るー。
男子に対して甘えるスキルが高くー
多くの男子を虜にしているー
「---------」
真希子は、残り二人についての記憶を
真希子の脳から探ったー
そして、もう一人ー
当初、麗依菜たちにいじめられていたのを
真希子に助けてもらった”真希子の幼馴染”
その後、真希子を裏切り、麗依菜たちと仲良くなりー
”助けてもらった恩を仇で返した”悪魔のような幼馴染ー
”あんたなんか、死んじゃえ”
その言葉が、真希子の自殺の決定打となったー
眼鏡をかけたおとなしい雰囲気の裏に隠れた
歪んだ本性ー
真希子自殺の一番の”元凶”である幼馴染ー
里原 愛唯(さとはら めい)-
「-----」
時々、ガクガクと不気味に震えながら、真希子は歩くー
真希子の身体は既に死んでいるー
死神が憑依し、
死神の力によって、無理やり動かしているものの、
それでも、身体はまともに機能をしていないー。
「---”警告”だ」
「-!」
背後から、女の声がして、真希子が振り返るー
そこには、可愛らしいツインテールの少女がいたー。
その少女の目が赤く光るー
別の死神に憑依されているー
「---これ以上”掟”を破れば
貴様には”罰”が下る。
今すぐ戻れ」
ツインテールの少女が、可愛い声で目を赤く光らせながら”警告”するー
現世への干渉は、死神たちの掟破りー
永遠の闇へと、幽閉されることになるー
「---…」
真希子に憑依している死神は、迷うー
だがーー
真希子の身体からー
そして、自分の心からー
いじめに対する激しい怒りが湧いてくるー
真希子がいじめに対して怒るのは分かるー
けれど、自分はどうしてー?
そんな風に思いながら、
真希子は呟いたー
「----すぐに戻るー」
とー。
ツインテールの少女に憑依している死神は
その言葉に満足したのか、
少女はそのまま気絶したー
「----…”恨みを晴らしたら”な」
真希子はそう呟くと、
真希子を自殺に追いやったいじめっ子たちへの
復讐を継続するため、動き出した
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「----!な、、なにこれ…!」
”いじめ”のリーダー格であった
社長令嬢の麗依菜が声を上げるー
「うそっ…!
パパ…!ママ…!」
麗依菜の視線の先には、
”娘が悪い子でごめんなさい”と遺言を残して
自ら命を絶った両親の姿があったー
「そ、、そんな…!そんな…!」
麗依菜がパニックになるー
使用人たちの姿もないー
「き、救急車呼ばないとー」
麗依菜が慌ててスマホを手にするー
しかし、スマホを持つ手がガクガク震えて、
スマホを落としてしまうー
「誰か…!誰かー!」
麗依菜が悲鳴を上げるー
”ひとりじゃ、何もできないくせにー”
「--!」
麗依菜が振り返ると、
そこには、いじめで死んだはずの真希子がいたー
「ま、、、ま、、、真希子…?
なんで、、なんであんたが…!」
麗依菜が表情を歪めるー
すっかり怯えきってしまっていて、
いじめを主導していた麗依菜の面影は、まるでない。
「--何かあると、すぐに、パパ、ママ、パパ、ママ…
あんたが恵まれているのは、あんたの力じゃないのに
すぐにパパ、ママー。」
真希子が笑いながら言うー
「---…」
麗依菜が涙ぐみながら、真希子の方を見るー
「--あんたなんて、”パパ”と”ママ”がいなければ、
何もできないもんね????
ほら、いつもの威勢はどうしたの???」
真希子が目を赤く光らせながら言うー
麗依菜は、悔しそうに泣きながらも、
何もできずにに、怯えた表情を浮かべるー
そんな麗依菜を見つめながら、死神は思ったー
”自分には、直接関係のないことなのに、
なぜ自分は、こんなにいじめを憎むのかー”
数々の恨みを晴らしてきた死神ー
けれど、いつも”いじめ”にだけは激しい怒りを抱くー
まるで、”自分のこと”のようにー
違和感を感じながらも、”今は目の前のことを”
と、思い、真希子に憑依している死神は、麗依菜の方を
冷たい目つきで見つめたー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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次回が最終回デス~!
今日もとても暑いので、熱中症には
注意してくださいネ~!
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