<入れ替わり>一番おかしなプロポーズ②~混乱~

プロポーズの瞬間に入れ替わってしまった…!

しかも、相手の様子もおかしい…!?

世界で一番おかしなプロポーズを体験した二人の物語…!

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「………」
家族での晩御飯を終えて、
リビングでくつろいでいる夫の幸久を見つめながら
加里奈は、食器を片付け終えたー。

結婚してからも、幸久はとても優しいー
家事にも積極的に参加してくれるー。

優しい性格は、
結婚する前も、結婚した後も、変わらないー

幸久は、幸久のままだー。

娘の美鈴は、晩御飯を終えて
自分の部屋へと戻った。
美鈴も、良い子に育っているし、
何不自由のない、幸せな家族ー

でもー

時々、思ってしまうー

自分の部屋に戻って、
写真を見つめる加里奈ー

大学時代の幸久と加里奈の笑顔の写真を見つめるー

忘れることなどできないー
この時の、笑顔をー

もうーー
永遠に、”この笑顔”は戻ってこないのだからー

”あの日”のことは、忘れられないー
そして、あのあと、起こったこともー

・・・・・・・・・・・・

遊園地から帰る途中ー

「-----」
加里奈になってしまった幸久は、
幸久(幸久?)の様子を観察していたー

”誰なんだこいつは”
加里奈(幸久)はそう思わずにはいられなかったー

スカートの感触やー
自分の髪の感触ー
そして”胸がある”という状態と
”股間にアレがない”という状態ー
強い違和感を感じながら加里奈(幸久)は、歩くー

”くそっ、落ち着かないし、なんだかドキドキする”

そんな風に思ってはいけないー
そうは思いながらも、やはり落ち着かないー
幸久は特別下心が強いほうではなかったが、
やっぱり、大好きな人に自分自身がなっている、
という状況では、なかなか平常心を保つことは
難しいー。

「--……大丈夫か?」
一緒に歩いていた幸久(幸久?)が心配そうに言う。

「え…あ、、、、、あぁ…だいじょうぶ」
加里奈(幸久)が返事をするー

自分の口から加里奈の声が出るー
というのにも、ドキドキしてしまうー

「---……なんか、さっきから様子が変だけど…」
幸久(幸久?)は、かなり戸惑った様子だったー

いったいーー…
いったい、どういうことなのか。

訳が分からないー

「---送ってくよ」
幸久(幸久?)が当たり前のように幸久の車の
運転席に座るー

(おいおい、俺の車だぞ)
加里奈(幸久)は戸惑うー

しかしー
ここで、一つの疑問が浮かぶー

”加里奈は運転免許を持っていないー”

「---ちょ…!ちょっと待て、、いや、待って!」
加里奈(幸久)は思わず叫んでしまうー

身体は幸久だし、免許も幸久だから
確かに法律上問題はないのかもしれないー

だが、自分が加里奈になっているということは、
幸久の身体の中身は加里奈のはずなのだー

幸久になった加里奈が車を運転することは
違法ではないがー、
やばい。
事故を起こしてこのまま家に送るどころか
地獄に送られてしまう可能性もあるー

「ど、どうしたんだよ…?」
幸久(幸久?)が心配そうに加里奈(幸久)の方を見るー。

「--ど、、どうしたって…ほ、、ほら、免許は!?」
加里奈(幸久)が言うー。

「-免許?」
幸久(幸久?)は表情を歪めたー。

そして、当たり前のように幸久自身の免許証を見せてきたー

「……」
加里奈(幸久)は少し困り果てた様子で綺麗な黒髪を
掻きむしると深呼吸してから言ったー

「なぁ…加里奈なんだろ??
 なんで俺のふりするんだ?」
加里奈(幸久)が言うー

もう、正直に言うことにしたー
自分が加里奈の身体になっているということは
目の前にいる幸久は、中身加里奈のはずなのだー。
それ以外に、考えられないー

「--は…はぁ?」
幸久(幸久?)が戸惑うー

「な、、何言ってるんだよ…?加里奈」
幸久(幸久?)が戸惑いながら、
加里奈(幸久)の方を見るー

「--た、頼むよ…いい加減にもう、やめてくれよ!
 入れ替わったんだろ、俺たち?」
加里奈(幸久)が可愛い声で、幸久の言葉を口にすると、
幸久(幸久?)が、真顔で加里奈(幸久)の方を見つめたー

そしてー
突然、笑い始めたー

「あはははははっ!あははははははっ!」
笑い始めた幸久(加里奈?)を見て、
加里奈(幸久)はホッとしたー

やっぱりー
自分の身体の中にいたのは、加里奈だったんだー

とー

「---は~~、加里奈…びびらせないでくれよ~」
加里奈(幸久)がそう言うと、
「あははははは、あ~~~、それは俺のセリフだよ~」と
幸久(加里奈?)は、笑うのをやめて、加里奈(幸久)の方を見たー

「--入れ替わりなんて、あるわけないだろ~?
 加里奈は、急にそういうドッキリするからな~

 真顔で言うからおかしくなっちゃったよ」
と、幸久(加里奈?)は、続けたー。

「--え」
加里奈(幸久)は戸惑うー

笑ったのはー
”ドッキリでした~!”な、笑いではなくー
”入れ替わりなんて言い出した加里奈(幸久)に対する笑い”-
だったー。

「---急にそんなこと言ってー
 我の名は。でも見たのか~?」
笑う幸久(加里奈?)ー

「え…ほ、、ホントに…ほんとに、、幸久なの?」
加里奈のふりをしながら加里奈(幸久)が言うと、
幸久(加里奈?)は、真剣な表情で答えたー

「もちろん。俺は俺だ。
 俺は幸久、加里奈は加里奈、だろ?」

「う、、うん…?」
加里奈(幸久)は戸惑ってしまうー

目の前にいるのは幸久(加里奈)ではなく、
幸久(幸久)なのかー?

意味が分からないー
”俺が分裂したってのか?”
そんな風に思いながら、加里奈(幸久)は
幸久(幸久?)を見つめていると
当たり前のように車を走らせ始めたー

とても
”無免許の運転”ではないー
中身が加里奈なら、加里奈は免許を持っていないから
こんな風に普通に運転できるはずないのだー

しかもー

”おいおい…”
加里奈(幸久)は戸惑うー

幸久(幸久?)の運転はー
”幸久そのもの”だったー

加里奈になった幸久には分かるー
”自分の運転のクセ”だー、と。

幸久(幸久?)の運転は、
幸久の運転そのものだったのだー

”まじかよ…”
加里奈(幸久)は戸惑うー

”俺は加里奈の身体になったはずなのに
 俺の身体にも、俺がいるー?”

さっぱり意味が分からないー

いよいよ、俺が俺ではない気がしてきたー
加里奈(幸久)はそんな風に思い始めてしまうー

間違いなく自分は幸久で、
プロポーズの瞬間に、加里奈と入れ替わったのだと思っていたがー
幸久の身体にも幸久がいるー?

と、なれば自分は”自分を幸久だと思い込んでいる加里奈の別人格なのではないか”
そんな風に、思ってしまうー

「-------いや」
加里奈(幸久)は呟くー

「絶対、俺が幸久だー」
とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅してからも、加里奈になった幸久は、
なるべく加里奈の部屋のものを見ないようにしていたー

必要なものは見るが、
それ以上は見ないー

身体は加里奈だけど、
中身は加里奈じゃないからー
勝手に加里奈の家の中のものを見る、
なんてことはしてはいけないー

そんな、気がしたー

「ごめん!」
服を着替えるー

「ごめん!!」
トイレに行くー

「ごめんごめん!!!」
お風呂を済ませるー

なるべく、加里奈の身体を勝手に見ないようにするー

彼女彼氏の間柄だし、
服を着替えるぐらいは、仕方ない、とは思うが
それでも、申し訳ない気持ちになるー

しかもー
トイレもちょっと失敗したー

色々、難しいー

「-----!」
スマホを手にして加里奈(幸久)は戸惑うー
幸久(幸久?)からLINEが届いているー

幸久のスマホの暗証番号を、加里奈は知らないー
だが、LINEを送ってきたということは
暗証番号を普通に理解しているー

「どうなってるんだ…」
加里奈(幸久)は”加里奈のスマホが指紋認証だけでよかった”と
思いながら、とりあえず自分に返事をしたー

「--ったく、自分とLINEするって、どういう状況だよ…」
加里奈(幸久)はうんざりした様子で呟いたー

幸久(幸久?)と
会話をしてみるー
会話をしている感じー
まさに”俺”という感じだー。

加里奈(幸久)は、あぐらをかきながら思うー。

おかしいー
”誰かが幸久を演じている”のではなく、
”幸久そのもの”

つまり、自分とLINEをしているような感じがする。

色々な雑談を送って様子を探ってみたがー
”自分だったらこう返事をする”と加里奈(幸久)が思う通りに
幸久(幸久?)から返事が戻って来るー

思考が同じなのだー

「--おいおい、こりゃ本当に、俺の身体のほうにも俺がいるんじゃないか?」
加里奈(幸久)はスマホをいじりながら呟くー

こうなってくるとー
色々面倒くさいことになるー

自分が加里奈の身体になったということは
幸久の身体には加里奈がいる、そう思っていたが
どうも違う気がするー
暗証番号まで知っていて、返事も加里奈(幸久)の予想通りとなると
中身は幸久そのものな気がするー

だが、今、加里奈の中にいるのは、幸久自身だー
少なくとも加里奈(幸久)はそう思っているー

そうなるとー

”幸久の中には、加里奈か、あるいは別人がいて、完璧に幸久になりきっている”
”何らかの理由で、幸久自身が分裂して、片方が、加里奈の身体に入った”
”自分は、幸久ではなく、加里奈の中に生まれた幸久そっくりの人格”

このぐらいしか浮かばないー

自分は絶対に幸久だと思うから、
最後の可能性はないと思いたいが、なんとも言えないー

「---寝れば、治ったりしてな」
加里奈(幸久)はそう呟くと、
そのまま眠りについたー

せっかくだからエッチなことをー…
とも、一瞬思ったものの、
”加里奈が大切”だからこそー
何もしなかったー

眠りにつく加里奈(幸久)

そして翌日の朝が来るー

「---!!!」
鏡を見つめる幸久ーーー

でもーー
身体は加里奈のままだったー

「くそっ!!!どうすりゃいいんだ!」
頭を抱える加里奈(幸久)--

プロポーズどころじゃなくなってしまったー

いやー
むしろ、今、自分が加里奈になっていて、
幸久(幸久?)からプロポーズを受けている状態ー

自分が、自分からプロポーズを受けている状態だー。

「--くそっ!どうすりゃいいんだよ」

加里奈(幸久)は、
とりあえず、加里奈を演じながら
幸久(幸久?)が誰なのかを探ることにしたー

だが、一緒にいれば一緒にいるほど、
幸久(幸久?)は、幸久そのものだったー

他人が成りきるには無理があるー。

”加里奈の意識はどこに行っちまったんだ?”
加里奈(幸久)は不安に思うー

そもそも、あまりにも幸久(幸久?)が、
幸久すぎるため、
自分が幸久なのか不安に思えてきたー

やがてー

「返事を、聞かせてくれないか?」
幸久(幸久?)が言うー

プロポーズの返事をする日がやってきてしまったー

散々迷った挙句ー
ここで”No”と言えば
”自分の身体”との関係が無くなってしまうことを恐れてー

”Yes”と返事をしたー

自分からのプロポーズを、
加里奈(幸久)は受けたのだったー

幸久(幸久?)と一緒にいるためにはー
そうするしかないからーー

”もし、元に戻れて加里奈が嫌がったらー
 その時は…別れるなりして…って感じかな”

加里奈(幸久)は
”まさか自分が加里奈として結婚することになるなんて…”と
苦笑いすることしかできなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あれからーー
18年が経過したーーー

「---不思議な人生だよなー」
加里奈は呟いたー

まさかー
自分の好きな人として、
自分からプロポーズを受けてー

自分の好きな人として
娘を出産することになるなんてー

そしてーー
18年が経過した今でもー
幸久は、加里奈の身体で生きているー

「-----」
18年前の幸久と加里奈の写真を見つめる、加里奈(幸久)-

あのあとー
長い時間、幸久は加里奈として
幸久(幸久?)と一緒に過ごしていたー
夫婦としてー

そして、今もー

今も、幸久は加里奈として、
”自分”と生活を送っているー

でもー
今は、既に知っているー

幸久(幸久?)の正体をーーー

そして、加里奈がどうなってしまったのかをー

写真を見つめながら加里奈(幸久)は、
”あの日のこと”を思い出し始めたーー

③へ続く

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コメント

幸久の身体の中にいるのは、幸久自身?それとも別人?
恋人の加里奈本人の意識は、どこに?

明日の最終回で明らかになりますよ~☆

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