”絶対に開けてはならない扉”
村人たちが恐れる”パンドラの扉”
その先に、あるものとはー??
-------------------------
「-----」
深夜ー
”彼女”は集会場に忍び込んで”災”と書かれた箱から
禍々しい雰囲気の鍵を手に入れたー
災厄が封印されていると言われる
”パンドラの扉”を開けるためにー
”可愛そう”
正義感の強い彼女は、そう思ったー
村の村長ー
集会場に集まって歓迎してくれた親切な村人たちー
伝承を話してくれた老人・佐古さんー
民宿のおばあさんー
みんなみんな、
この村の住人は”災厄”に怯えているー
あの”パンドラの扉”に怯えているー
頭の良い彼女は、あくまでも”現実主義”
呪いだとか、そういうものは一切信じていないー
パンドラの扉も、そう。
扉を開けたから村人が全員死ぬ、なんて
どう考えてもあり得ない。
たまたま、過去に扉を開けた時に
”何か”が起きて、その時期が重なっただけだと思うー
だから、”わたしが扉を開くこと”で、
パンドラの扉は、”災厄”なんかじゃない、ということを
証明できればー
村の人たちは、あの”古びた扉”に怯えなくて
済むようになるー
彼女は、そう思いながら
”パンドラの扉”の元に走ったー
・・・・・・・・・・・・
民宿で寝ていた冬子が目を覚ますー。
「あれ…」
周囲を見回す冬子ー
「どこ行ったんだろう…?」
優等生の美優紀も、オカルト好きの杏奈もいないー
「---まさか!」
冬子はハッとするー
”パンドラの扉”を開けに行ったんじゃー?
とーー。
活発な性格の冬子は、最初でこそ
パンドラの扉には興味があったし、
”開けちゃえばいいじゃん”ぐらいに思っていたが
この2日間、村人たちと接するうちに
考えが変わったー
”あんな風に封印されているのには、それなりの理由がある”
冬子は、そう思い始めていたー
”集会場の災の箱”を思い出す冬子ー
あそこに恐らく、”パンドラの扉”の鍵が入っているー
「--ちょ、、ちょっと!」
冬子が慌てて民宿から、外に飛び出そうとするとー
「--わっ!?!?」
廊下で、誰かとぶつかったー
「--いたたたたた」
尻餅をつく二人ー
冬子がハッとしてみると、オカルト好きの杏奈が
いたたたた…と呟いていたー
「杏奈!?」
冬子が言うと、杏奈は苦笑いしたー
「-びっくりした~~~…
トイレ帰りに、急に誰かとぶつかるなんて…」
杏奈の言葉に、
冬子は、少し一安心したー
オカルト好きの杏奈が、パンドラの扉を開けに行ったのかと思っていたからだー
そう説明すると、杏奈は笑ったー
「確かに気になるけど、
村の人たちがあんなに怖がってるんだから、
それを開けようとするなんて、
よくないじゃない?」
とー。
オカルト話が絡むと、興奮して我を失う杏奈が
思ったよりも常識的で、安堵する冬子ー
それと同時にー
「あれ…・美優紀は?」
優等生な美優紀がいないことに違和感を覚えるー
「え…?」
杏奈も美優紀が今、どこにいるか知らなそうな感じだったー
「--まさか!」
冬子が民宿から飛び出すー
杏奈もそれに続くー
”美優紀…だめだよ、そんなことしちゃ!”
冬子がそう心の中で叫びながら集会場の方に走るー
数分で集会場に到着し、
戸締りもされていない集会場に入るとー
”災”の箱が開けられていたー
「ば、、ばかっ!」
冬子が叫ぶー
美優紀はーー
”善意”から、パンドラの扉を開けようとしていたー
あまりにお人よしすぎて、正義感が強く、
おせっかいな美優紀は、
”パンドラの扉”を怖がる村人たちを見て
”助けてあげたい”とそう考えてしまったー
自分がパンドラの扉を開けることでー
何もないことを証明しーーー
村人たちを恐怖から助けたいーー
とー。
「杏奈!扉に行くよ!」
冬子が必死に叫ぶー
オカルト好きの杏奈が珍しく不安そうな表情を浮かべて
冬子と共に”パンドラの扉”の元に走ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「------…」
美優紀は、”パンドラの扉”の前に立っていたー
この扉を開けたら、全員死んだー
村の老人・佐古さんがそう言っていたー。
「-----”全員、死んだ”」
”我 命を懸けて、封印を成し遂げたー
二度と、扉を開いてはならぬ”
パンドラの扉を開けた直後に
全員死んだー
そんなこと、あるはずがないー
どう考えても、非現実的すぎるー。
生き残った村人がー
封印したという話も、怪しいー
命がけでその人物は、”災厄”を扉の中に封印しー
そして、血文字でその文章を書き残してー
息絶えたのだと言うー。
そんなこと、絶対にー
あるはずがーーー
美優紀は「大丈夫。村のみんなを安心させてあげなくちゃ」と
呟いて、いかにも優等生らしい顔に、
少しだけ恐怖を浮かべてー
扉の鍵を開いたー
”災厄”は解き放たれたー
・・・・・・・・・・・
「----!」
数分後ー
冬子と杏奈がパンドラの扉の前にやって来るー
「---え…うそ…」
冬子が絶望するー
”パンドラの扉”は、既に開いているー
「--ま、、マジ???や、、やっぱなんかドキドキしてきた!」
オカルト好きの杏奈は
やはり興奮し始めていたー
パンドラの扉の目の前にたどり着くと、
開いた扉の先は、
地下に続いていることに気づくー
美優紀の姿はないー
冬子と杏奈は顔を見合わせると、
中へと入って行った。
それほど長くない階段を下るとー
最後には、楕円形の少し広めの部屋にたどり着いたー
「-----!」
冬子が見た光景はーーーーー
”ミイラ化した遺体”
”刀”
そして”美優紀”
その3つだったー
他には、何もないー
美優紀は、入口に背を向けるようにして立っているー
「--ひぇっ…!?」
冬子がミイラ化した遺体を見て声を上げるー
「--う~ん、昔のお墓とかかなぁ…
刀もあるし…
確かに、迷信とかにはなりそうな感じだけど」
オカルト好きの杏奈が、冷静に分析するー
”オカルト系の話題”には、たいてい、答えがあるー
だから、こういう結末には、慣れていたー
ここは、昔の誰かが埋葬された墓で、
いかにもそういうオカルトな話題の出所になりそうな感じだー
だが、真相は
遺体と刀があるー
それだけだったー
怯える必要は、なさそうだー。
これからは、お墓としてー
「--------」
立っていた美優紀が、刀を手にするー
「--それにしても人騒がせだよね~!
美優紀ってば、急に扉を開けたりーーーー」
冬子が笑いながら美優紀に声を掛けるー
「---?」
だが、言葉が途中で途切れたー
部屋の壁を見つめていた杏奈が
「--どうしたの~?」と言いながら振り返るとーーー
「----------!」
信じられない光景がそこには広がっていたー
冬子の首がーー
落ちているー
床にーーー
「--え…」
杏奈の表情から笑みが消えるー
美優紀が、血のついた刀を持ってーー
目を赤く光らせているー
「----”いい身体”だー」
美優紀はそう言いながら自分の太もものあたりを撫でるとー
不気味な笑みを浮かべて、何が起きたかまだ理解できていない
杏奈に向かって刀を振るったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”目覚めてしまったかー”
彼は、自分の家で、そう感じたー。
”闇”を感じたー。
”ヤツ”が目覚めたのだー
ヤツはー
大昔に人を斬ることに快感を覚えた殺人鬼ー。
そいつは、剣客によって斬られて命を落としたがー
奴の握っていた刀にその邪念が、憑りついたー。
いつしか、その刀は、人を支配し、
人の身体を乗っ取り、
その者の身体で、虐殺をするようになったー
どうすることもできず斬られていく人々ー
だがーー
最後には、強靭な精神力を持った人間が、
”邪念の封じられた刀”を手に取り、
完全に肉体を乗っ取られる前に、
自ら自害してー
ヤツをその場に封印したー
それがーー
”パンドラの扉の奥にある封印の墓所”-。
だがー
いつの時にも”パンドラの扉”に興味を持ち、
開ける人間がいるー
数百年前ー
村娘が、パンドラの扉を開けてしまった際にーー
その村娘は、邪念刀に宿る邪念に乗っ取られ-
刀を振るい、村人たちの命を奪ったー
だがー
その時も、
最後にはー
”強靭な意志を持つ男”が、
乗っ取られた村娘を斬り捨てて、邪念刀を奪いー
それを持ったまま、”パンドラの扉の奥の封印の墓所”に向かいー
自ら命を絶ったー
その時にその男が、血文字で記したのがー
村に残っている伝承ー。
「-----」
彼は、外を見つめながら静かに立ち上がったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーど、、どこに行っちゃったのかしら…?」
民宿のおばあさんが、困り果てた表情で言うー
宿泊していた美優紀、冬子、杏奈がいないのだー
「---おばーちゃん♡」
「--!」
民宿のおばあさんが振り返ると、そこには
美優紀がいたー
目を赤く光らせてー
刀に宿っていた悪霊に憑依され、
乗っ取られてしまった美優紀がー
「---え…それは?」
おばあさんが、血のついた刀を見て不思議に思うー
そしてー
その先、おばあさんは、何も考えることはなかったー
「--あははははははっ♡ あははははははは!」
悪魔の形相でおばあさんを切裂いた美優紀はー
綺麗な手についた血を舐めながら村を徘徊するー
村人を次々と斬り捨てていくー
「あははははははっ♡ ひゃはははははははは!!!」
美優紀の普段は穏やかな声が
悪魔のような笑い声を響かせてー
完全に刀に乗っ取られたまま
村人たちを虐殺していくー
これがー
”災厄”
パンドラの扉の奥に封じられていたー、災いー。
乗っ取られた美優紀の手により、
外部との連絡網が整っていない村人たちは
あっという間に次々と命を奪われていくー
「--はぁぁぁぁあ…いひひひひひ…ひゃはははははは!」
美優紀が真っ赤に染まった手で自分の服も赤く染めながら
両手で胸を揉み始めるー
「--ぁあああああああ♡♡♡」
”前回”よりいい身体だぜ、と悪霊は思いながら
「この身体で斬って斬って斬って斬って斬りまくってやる!」と
大声で叫ぶー。
封印されていた殺人鬼の悪霊はー
例え美優紀が死んでも
すぐに”移動”することができるー
斬って斬って斬って斬って、斬りまくることができるー
「ひひひひ!あははははははは!」
村長を見つけると、美優紀は狂ったように笑いながら
村長を追いかけまわすー
整っていた髪もー
整っていた身なりもぐちゃぐちゃにしながら
美優紀が村長を捕まえて、
悲鳴を上げる村長を斬るー。
「--はははっ…はははは」
笑う美優紀の背後から、人影が迫るー
そしてーー
「ぐぶっ!」
美優紀が口から血を吐き出したーーー
「---……お前が何度でも蘇るならー
わしも何度でも蘇るー」
村の老人・佐古が、美優紀を背後から別の刀で刺したー
家に古くから封印されていた刀で、悪霊に完全に乗っ取られてしまった
美優紀を刺したのだー
「お前はぁ…」
美優紀が、血を流して膝をつきながら叫ぶー
「---久しぶりだな」
佐古はそう言いながら、美優紀を見つめたー
村の老人・佐古はー
最初に”殺人鬼となった男”を斬り捨てた人物ー
そして、彼の悪霊をパンドラの扉の奥に刀諸共封印した人物ー
パンドラの扉が開かれるたびに、
彼に乗っ取られた人間を斬り捨てて、
彼を自分に憑依させ、
その足でパンドラの扉の奥に向かいー
悪霊を封印してきた”強靭な精神力”の持ち主ー
そして、今回もー
「---あぁぁああ…」
美優紀が苦しそうに倒れるー
「--さぁ、わしのところに来い」
佐古がそう言うと、
美優紀が「くそおおおお!」と叫びながら息絶えるー
美優紀が死んだことで、悪霊が刀に戻るー。
佐古はその刀を手にすると、
悪霊に乗っ取られないよう、強靭な精神力で
冷や汗をかきながら歩き始めたー
また、悲劇が繰り返されたー
佐古ーと呼ばれている老人は”何度も転生して”
この村に住み続けているー
パンドラの扉の奥に封じた悪霊を見張るためにー
完全に消すことはできないー
だから、封印しておくしかないー
村人たちには、いつも説明しないー
”悪霊が封じられている”と過去に説明してみたこともあるが
それをすると、必ず誰かが興味を持って開けてしまうー
人間は、”未知の恐怖”を恐れるー
だから、いつも”パンドラの扉”の伝承だけを伝えー
誰にも、真実は話さないー
だがー
それでも”扉”を開ける人間は、何百年に1回、現れるー
「----」
佐古は、美優紀を斬り捨てた血で、
”伝承”を書き残すー
”災いの扉”を開けて、村人が全員死んだことを、
書き残すー
また、後世に”この扉は開けてはならぬ”と
伝えるためー。
佐古が、パンドラの扉の奥に入っていくー
扉の鍵を閉めてー
奥にやってくるとーー
佐古は、パンドラの扉の奥の部屋のミイラのようなものを見つめたー
これは”前の自分の身体”
悪霊を封印すべく、佐古はいつも、ここで自害しー
刀と、刀に潜む殺人鬼の悪霊を封印するー
杏奈たちも見かけた”この部屋に転がっていたミイラ”は、
前の佐古の身体だー
「----」
部屋には、前の自分の身体のミイラと
さっき斬られた杏奈、冬子の身体ー
そしてー
「--お前が何度蘇ろうとも、わしも何度でも蘇るー
お前を、何度でも封印してみせるー」
またーーー
この村には、いずれ人が集まって来るだろうー
佐古も、その時、また、新しい身体で転生するー
パンドラの扉を守るためー。
”結界を張ってある、このパンドラの扉の奥”でー、
自害し、乗っ取る身体を無くすことでー
”災厄”を封じ込めることができるー
「----」
佐古は、刀を手に、その場で自分を突き刺したー
災厄は、再び封印されたー
だがー
数百年の先ー
再びこの村に人が住むようになればー
誰かがまた、扉を開くかもしれないー
災厄により悲劇は、永遠に
繰り返されるのかもしれないー
人が、そこにいる限りー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
演出上、
ジャンル不明にしていましたが
結局「憑依」でした~!
お読み下さりありがとうございましたー!
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