<入れ替わり>大食いと小食①~食~

大食い男子と
小食女子が入れ替わってしまった…!

二人の運命は…!?

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男子高校生の
笠山 茂(かさやま しげる)は、
超がつくほど大食いだったー。
牛丼屋に入れば、牛丼の特盛と豚丼の特盛、カレーを食べるぐらいの勢いで、
ハンバーガー屋に入ればがっつりハンバーガーとポテトを食べ、
チキンナゲットに、デザートのアップルパイまで食べるー。

当然ー
外見もふっくらしている男子だー。

一方、同じクラスメイトの女子高生ー
華奢な、平川 葵(ひらがわ あおい)はー
小食で、”それしか食べないの!?”と友達から
言われてしまうぐらいだったー。
細身な眼鏡の少女で、
守ってあげたくなるような可愛さがある女子だー。

そんな二人がー

「-え?」

「-あ?」

廊下の曲がり角で激突してー
入れ替わってしまったー

「---どうしよう…」
茂(葵)が呟くー
ふっくらした茂の身体の肉をつまみながらー

「---どうしようって……」
葵になった茂が、
自分のスカートを落ち着かない様子で
気にしながら、戸惑った様子を見せるー

「---…」
頭を悩ませる二人ー

そして、葵になった茂が口を開いたー

”元に戻る方法を、試してみよう”
とー。

男女が入れ替わってしまうアニメ、漫画、映画ー
茂はいくつか見たことがあったー

まさか現実で自分がそれを体験することになるなんて
思わなかったけれどー

こういう時に”経験”が役立ってくるかもしれないー

葵になった茂はー
お互いにぶつかってみることー
頭をぶつけてみることー
強く願うことー
階段から転がり落ちてみることー
キスをしてみることー

色々提案したー

キスと階段は茂になった葵に却下されたがー
他は茂(葵)も協力してくれたー

だが、身体は元に戻らずー
休み時間が終わりそうになってしまったためー
とりあえず、入れ替わったまま
教室へと戻ったー

教室の戻った葵(茂)は、
スカートの感触にドキドキしてしまうと、同時に
葵の細くてスタイルの良い脚や
綺麗な手に驚いてしまったー

「-----すげぇ…

 ……ほそっ」

茂は太っているー
だから手も足も太いー。

そんな茂からしてみれば、
葵の身体は”細”の一言だったー

茂は、あんまり女子に興味がないー
高校生にしては珍しく
エッチなことにもあまり興味はないー

興味があるのは、
ただ”食べること”のみー。

それは、葵にとって、幸せなことだったのかもしれないー
エッチな男子に入れ替わられていたら、
今頃、胸を揉まれていただろうー。

「---あ…」
茂になった葵は戸惑っていたー

シャーペンを手に持とうとしても、
上手く持てないのだー

”手が大きすぎる”

「--え…ちょ、、どうすれば…?」
茂(葵)が戸惑っているー
手の力加減ー
モノの掴み方ー

そういうモノが、手のサイズが違うだけで
全然違うー
感覚が全く違うー

”ぐるるるるるる”

ー!?

茂(葵)は表情を歪めるー

”おなかすいた”
葵がめったに感じない感情を、茂になった葵は抱いたー

茂の身体が、空腹のシグナルを送っているのだー

「---え…」
茂(葵)が顔を赤らめて周囲を見渡す。
お腹の音が、絶対に周囲に聞こえた…

そう、思ったからだー
だが、周囲は特に反応していなかった。

茂がお腹の虫の音を鳴らしているのは
”日常茶飯事”であり、クラスメイトは
それにいちいち反応しなくなっていたー

葵がぐるぐるお腹を鳴らしていたら
周囲は騒ぐだろうー
けれど、今の葵は、茂の身体だからー
誰も反応しなかった。

”そういえば、お腹空かねぇな…”
葵になった茂は、
興奮しながら数学の計算式を
黒板に書き込む先生の説明をよそに、
そう考えていたー

いつもなら4時間目の今、
お腹が空いて空いて仕方がない時間だー
なのに、今日は空かないー

へこんだお腹を見つめるー

「---やべぇなこのお腹…」
葵(茂)が呟くー

自分のお肉たっぷりのお腹とは違って
超が付くほどスリムに見えるー

「こんなんで…よくもまぁ…」
逆に”あるべき肉”がない気がして
気持ち悪くなってきた。

こんな骨と皮のような身体で
大丈夫なのだろうかー。

実際には、葵は、”不健康そうなやせ型”ではなく
”健康的な感じのやせ型”なのだが、
お肉たっぷりの茂から見れば
葵の身体は骨と皮にしか見えなかったー

4時間目が終わるー

葵(茂)が、茂(葵)を呼び出してー
あまり人の立ち入りがない空き教室へと向かうー

「--なんか、こう、いろいろすげぇな」

「---うん…」

茂と葵が会話を交わすー

そして、お昼を食べながら、
元に戻る方法を話し合うことにしたー

弁当箱を開くふたりー

「すくな!」

「おおすぎ!!」

二人は同時に叫んだー

葵になった茂は、
葵の弁当の少なさに驚いたー
と、いうかほぼ野菜だー
しかも量は少ないー

「--え…?これだけ?
 犬のエサ?」
葵(茂)が可愛い声でそう聞いてくるー

「え???…う、、うん、そうだけど?」
茂(葵)がそう返事をして、
弁当箱を見つめるー

”多すぎる”
絶対に食べられないー

そう思った茂(葵)は、
葵(茂)の方を見たー

そして、二人は同時に叫んだ。
”交換しよう”

とー

弁当を交換したふたりー
茂(葵)は、美味しそうに野菜を食べ終えて
早々にお昼ごはんを終えたー

「--ふ~~」
茂(葵)が満足そうにペットボトルのお茶を飲んでいるー

「----」
肉たっぷりの弁当を食べながら葵(茂)が戸惑っているー

「--どうしたの?やっぱ多すぎるんじゃない?」
茂(葵)がそう尋ねると、
葵(茂)がお腹のあたりを触りながら呟いたー

「おかしいな…いつも足りないぐらいなのに…」
茂の弁当を食べながら
葵になった茂は戸惑いの表情を浮かべているー

ぐるるるるるる…

「-?」
茂になった葵が、
茂のお腹が音を立てていることに気づくー

”あれ?お弁当食べたのに?”
茂(葵)が首をかしげていると、
葵(茂)が「あっ!」と声を上げたー

「-!?」
茂(葵)が驚いていると、
葵(茂)が言ったー

「そっか!俺は今、平川さんの身体だから、
 お腹空かないし、食べられないのか…!」
とー

「--あ、、確かにそうだね… 
 だからわたし、さっきからお腹がすくんだね…」
茂(葵)はそう呟くー

中身は葵でも、身体は茂ー
だから、茂の身体は”食事”を求めているし
胃袋も大きいー

中身は茂でも、身体は葵ー
だから、茂の意識的には「食べたい!」と思っても
葵の身体が付いてこないー

「---…へ~~~…平川さんって
 こんなにすぐにお腹いっぱいに…

 不思議だなぁ…」

葵(茂)は自分のお腹のあたりを
触りながら不思議そうに呟いたー

「---そ、、それ、、ちょうだい」
顔を赤らめながら茂になった葵は、
葵になった茂が残した茂の弁当を
欲しそうに見つめたー

放課後になっても、
二人は元に戻れないままー

「とりあえず、どうする?」
葵(茂)が言うと、
茂(葵)は「どうしよう…?」と呟いたー

色々話し合った末に
”お互いの家に行くしかない”ということになったー

葵も茂も高校生だから実家暮らしだが、
とりあえず、相手のフリをするための情報交換をして、
なんとか”寝れば元に戻るかもしれないし”という
結論に達したー。

「ーーーあ、、あのさ」
茂(葵)が別れ際に恥ずかしそうに口を開いたー

「--わたしの身体で、変なコト…
 その…エッチなこととかー」

「--しないよ」
葵(茂)は即答したー

「-え」
あまりに即答されたので、茂(葵)は唖然としたー

「--俺、喰うことにしか興味ないからー」
清々しいまでに言い放つ葵(茂)-

嘘ではなくー
心からの言葉ー

「あ、、え、、うん…」
茂(葵)は、あまりにもあっさり即答されたので
逆に”わたし、魅力ないのかな?”と内心で少し落ち込んだー

その様子に気づいたのか葵(茂)は言ったー

「あ!別に平川さんだからとかじゃないからな!
 俺は花より団子派だからさ!
 女子より飯ってことだよ!

 エロイ話したって、お腹は膨れないだろ?」

「そ、、そうだね」
茂(葵)は苦笑いしながら、
堂々と言い放つ葵(茂)にそう答えたー

「あ、でも」
葵(茂)が立ち止るー

「着替えとか、お風呂とか、トイレとかは
 勘弁してくれよな

 ずっと同じ服はまずいし
 お風呂に入らず明日の学校もまずいし、
 トイレ垂れ流しもまずいしー

 あ、大丈夫ー
 身体とか俺興味ないから何もしないよ!

 飯が食えればそれでよし!」

葵(茂)はそう言うと、
満面の笑みで立ち去って行ったー

「--ほんと、食べることしか興味ないのね」
苦笑いする茂(葵)も、茂の家へと向かったー

・・・・・・・・・・・・・・

お互いの家へと到着した二人ー

「え~~~~~」
葵(茂)は唖然とした
冷蔵庫に、最低限の食べ物しか入っていないー

「--どうしたの?葵?」
葵の母親が首をかしげる。

「あ、、いや、な、なんでもありません!」
つい”他人の母親”に接する口調でしゃべってしまうー

「え???急に、、なになに??」
母親が娘の敬語に気味悪そうな表情を浮かべているー

「--あ、、あ、、いえ、、いや、失礼しましたぁ~!」
訳の分からないことを言って葵の部屋に飛び込む茂ー。

「---ふ~~~……というか、お腹空かね~」
葵(茂)が、可愛らしいベッドの上に胡坐をかきながら座るー

「---何を楽しみに生きてるんだ?」
葵(茂)が真顔で考えるー

部屋には可愛らしい小物類や、
アイドルのポスターらしきもの、
少女漫画などが置かれているー

少女漫画を試しに開いてみるー

「--うぇぇ~俺はダメだこういうの」
イケメンの笑顔のページを開いて
鳥肌が立ってきた葵(茂)は漫画を閉じるー

「---腹減らね~」
葵(茂)が呟くー

いつもなら、食欲に溢れるのに、
食欲がわいてこないー

身体が違うだけでも、こんなに違うのか、と思いながら
葵(茂)は、口の寂しさを覚えるー。

”何か味わいたい”という感覚は
身体とは関係なく、茂の感情的な問題だったために
身体が変わっても同じだったー。

「--ーーう~ん…落ち着かない」
葵(茂)は、意味なく口をくちゃくちゃさせながら、
食べたいけどお腹が空かない、という不気味な
感覚を味わっていたー

・・・・・・・・・・・・・・・

晩御飯の時間ー

「え~~~!おいしい~~!」
茂になった葵は、
晩御飯を口にしていたー

今日の晩御飯は
母親が仕事帰りに買ってきた牛丼の特盛2つだったー

最初”え?”と唖然とした茂(葵)だったが、
面白いように食事が進むー

”おいしい”
茂になった葵は、そんなこと、久しぶりに感じたー、と
思いながら牛丼をどんどん食べていくー

”牛丼なんて、あんまり美味しくなさそう~”と
思っていた葵だったが
食べ始めたら止まらないー

”食べることが楽しい”
初めてそんな風に思ったー

「--あぅ!?もうない!」
茂(葵)が叫ぶー

目の前には2つ目の牛丼ー

最初は”2つなんて絶対無理”と思っていた牛丼を
軽く平らげてー
茂(葵)は満足そうに微笑んだー。

「--う~ん、身体が重いぃぃぃ」

食後ー
いつもあまり食べない葵は、茂の身体の
満腹感を味わって、身体が重い感覚を
味わっていたー

「ふ~~…重く感じるのは…
 笠山くんの体重のせいかな…?
 それとも食べ過ぎたから…?」

茂の身体は、葵の体重とかなりの差があるー
見た目から太っているー

”毎日、こんなに食べるんじゃ、太るよね”
葵はそう思いながらも、
食べることの楽しさに目覚めつつあったー

葵は、正直
何を食べてもあまり”美味しい”とは思わないタイプで、
小食であることから、”食べたい”とも思わない。
栄養にだけ気を付けて最低限の食事しか食べないー

だからー
大食いの茂の身体になって、こんな風に食べるのは、新鮮だったー

「案外…こういうのも悪くないかも…!」

この時はまだー
”明日朝起きるころには元に戻っているはずー”

そのぐらいにしか、考えていなかったー

②へ続く

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コメント

大食い男子と小食女子の入れ替わりデス~!
2話構成なので、入れ替わりまではサクッ!と進めました~!

続きは明日デス~!

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