<憑依>あなたはわたしの中に③~略奪~(完)

幼馴染の彼女の身体で過ごし続けてきた
彼は、ある決断を下したー

彼女と彼氏が、最後にたどり着く運命は…?

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「---んあっ♡ あっ♡ あぁぁぁっ♡」

”ちょ、、何してんの!?!?ねぇ!?!?!?

奈緒美は、部屋で一人、高校時代の制服を着て
エッチなことをしていたー

”ちょっと!!!ねぇってば!!!”
奈緒美の意識は、幽閉されたままー

奈緒美の身体は、今、淳史が完全に主導権を握っているー

「はぁ…♡ はぁぁぁ…♡
 なにって…?エッチしてるんだよ…はぁ…♡」
髪を乱した奈緒美が顔を赤くして呟くー

淳史が、突然奈緒美の身体を乗っ取る宣言をして、
好き放題し始めたのだー

”-ちょっと!!!!最低!何てことするの!?!?”
奈緒美が怒りのあまり叫ぶー

「--へへ、もうこの身体は俺のものだ奈緒美!
 悪く思うなよ!」

奈緒美の身体を乗っ取ったまま、そう叫ぶ淳史ー

制服姿の奈緒美が立ち上がりー
ニヤニヤしながら胸を触り始めるー

”こらっ!淳史!!!こらっ!!!!”
奈緒美の意識が何度も何度も叫ぶー

「--もう人生半分半分なんてこりごりだ!
 俺が奈緒美として生きる!
 お前はどっかに消えろ!」

奈緒美の声で、激しい言葉を吐き捨てるー。

”そんな……”
奈緒美の意識が酷く落ち込んだ様子で呟くー

”ずっと…ずっとそう思ってたの!?
 わたしは、淳史といつまでも一緒でもー”

「--そうだよ」
奈緒美が冷たい声で呟いた。
スカートから覗く太ももをニヤニヤしながら
触っている奈緒美ー

「俺はずっと、お前を乗っ取るチャンスを伺ってたんだ!
 俺は、他の男と違って本当はいいやつなんかじゃない。
 悪い奴なんだよ!
 奈緒美と付き合ってたのも、奈緒美が可愛いからさ!ははっ!」

そう言うと、奈緒美を乗っ取った淳史は、
滅茶苦茶にエッチをし始めるー

激しく喘ぐ奈緒美の身体ー

”ふざけないで!!!やめてよ!!!!”
奈緒美の意識が叫ぶー

それを無視して、
エッチを繰り返し続ける淳史ー。

奈緒美は、完全に乗っ取られたー

その日から、奈緒美の身体でおしゃれをして
大学に通うようになり、
どんなタイミングであっても、奈緒美の身体の主導権を
淳史は独占したー

淳史の”強い意志”を前に、
奈緒美の意識はなすすべもなく、
心の奥底に幽閉されたー

「---へへへへっ」
ミニスカート姿で帰宅した奈緒美は、
「今日もエッチするか!」と笑うー

”……”
奈緒美はここ数日、口数も減ってきていたー
淳史に、心底失望してしまったー。

最初はー
淳史がふざけているのかと思ったが
どうやら、本気で淳史は奈緒美のことを
乗っ取るつもりのようだー。

信じていたのにー
こんな仕打ちを受けるなんてー、と
奈緒美は絶望のどん底に突き落とされた気分になるー

「--さ~て!」
奈緒美の身体を乗っ取ったまま、淳史は色っぽく座ると
スマホで、メイド服やらブルマやらナース服やら
エッチな衣装を注文し始めたー

”何してるの…”
落ち込んだ様子で奈緒美の意識が呟くー

「--へへ、夜のお楽しみをしようと思ってさ、
 あ、そうだ、俺、夜のバイト始めるから…
 くく、奈緒美のエッチな身体を
 有効活用しなくちゃなぁ!」

笑う奈緒美の身体ー

”酷い…!ひどいよ!淳史!”

「--ははは!騙されるお前が悪いんだ!
 お前が油断して、俺が完全に乗っ取ることのできる
 タイミングを、俺はずっとずっと待ってたんだ!」

奈緒美を乗っ取った淳史の笑い声ー
奈緒美の身体はゾクゾクしながら
さぞ愉快そうに笑っているー

自分の身体なのにー
自分じゃなくなってるー

奈緒美は、身体を取り戻そうと、
意識を強めるー

でもーー

「-うるせぇ!お前は引っ込んでろ!」
奈緒美の身体の主導権を握っている淳史が叫んだー

「--この身体は、俺のものだ!」

奈緒美の意識が、さらに心の憶測に追いやられるー

言葉で説明するのは難しい状況に
奈緒美は追い詰められるー

意識の身動きが取れないー
と、でも言うのだろうかー

「お前の家族も、人生も、身体も、全部全部俺のものだ」
奈緒美の姿をしたまま、淳史が叫ぶー

”--最低…!許さない!”
奈緒美の意識が叫ぶー

「--馬鹿な女だ!あははははは!
 俺なんか選ぶから!
 俺に夢中になんかなって、馬鹿なやつだ!」

そこまで言うと、
奈緒美を乗っ取った淳史が呟いたー

「---おやすみ」

とー
悪い笑みを浮かべながらー

ブチッー

まるで、テレビのコンセントを引っこ抜かれたかのようにー
奈緒美の意識は、そこで途切れたー

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

無ー

何も、感じないー
何も、聞こえないー
何も、見えない-

幽閉された精神の
行く末ー

奈緒美の意識は永遠に無を漂い続けー
そしてー

消えるのみー

奈緒美は、もう何も考えることはできないー
奈緒美にもう、自由は存在しないー

奈緒美にー

「----------!」
突然、いろいろな感覚が戻ってきたー

そしてーーー

「---奈緒美!」
声がしたー

「----え……」
奈緒美が目を開くとー

そこは、自分の家だったー

そして、心配そうに奈緒美を見つめるのは
大学の友人の一人・正彦ー
中学時代も一緒で、ある程度親しい男子だー

「----…わ、、、わたしは…?」
奈緒美が周囲を見渡すー

自分が、高校時代の制服を着ているー

「え……???え…」
奈緒美が周囲を見渡すと、
正彦が「無事でよかった」と呟いたー

「--奈緒美の様子が最近おかしかったからさ…
 俺、問い詰めたんだ」
正彦が言う。

奈緒美が「え…」と戸惑っていると、
正彦は「そしたら、淳史のやつが、奈緒美を乗っ取ってるって白状したんだー」

奈緒美が完全に乗っ取られたあとー
奈緒美の様子がおかしいと感じた正彦は
奈緒美を問い詰めたー

そして、しつこく問い詰めた結果、
奈緒美を乗っ取った淳史が、「俺が奈緒美を乗っ取った」と
白状したというのだー

奈緒美は、表情を歪めるー

確かに、淳史に乗っ取られたところまでは覚えているー
あれからー

「--い、、今、何月何日ー?」
奈緒美が恐る恐る聞くー。
正彦の容姿が変わってないことからー
何十年も経過したりとか、そういうことはなさそうだー

正彦が日付を答えるー

”3週間”が経過していたー。

「--淳史は?」
奈緒美が言うと、
正彦は首を振ったー

「---…何とか、追い払ったよ」
とー。

奈緒美は、「そう……」と寂しそうに呟いたー

淳史が、あんなことを考えていたなんてー
自分を乗っ取ろうとしていたなんてー

「-------」
奈緒美は少しだけ考えるような表情を浮かべると、
「--ありがとう…」と、正彦にお礼を述べたー

正彦は「いや…」と首を振る。

「それより…勝手に奈緒美の家に来ちゃってごめんな…
 奈緒美を乗っ取ってる淳史から誘われて、
 奈緒美を救うチャンスだって思ったからさ」

正彦の言葉に、奈緒美は「大丈夫」と呟いたー

「--あ、そうだ、、い、いつまでも女子高生の格好してないでさー…」
正彦が気まずそうに言うー

「---え」
奈緒美は、自分が高校時代の格好をしていることを思い出してー
顔を真っ赤にすると
「い、、今、着替えるから!」
と声を出したー

・・・・・・・・・・

奈緒美が着替え終わると、
正彦が部屋に戻ってきて、
奈緒美が淳史に乗っ取られている間のことを説明してくれたー

淳史はやりたい放題だったのだと言うー。

「--でもまぁ、、大丈夫。
 大学では一応、アイツ、普通に振舞ってたからー」
正彦は、”普通に日常生活には復帰できるはずだ”と付け加えたー

「---奈緒美はおもちゃだ、って最後まで言い張ってたな」
正彦が言うと、
奈緒美は悲しそうな表情を浮かべたー

「---…」
正彦が全てを説明し終えると、ため息をついてから
立ち上がったー

「--ま、無事でよかったー
 俺はそろそろ帰るよー

 あ、何かあったら、いつでも相談に乗るからな。
 じゃ」

立ち去っていく正彦ー

奈緒美は淳史が消えてしまったことに少し寂しさを感じながらー
机の上に飾ってあった高校時代の奈緒美と淳史の写真をー
淳史がまだ自分の身体を持って生きている頃の写真を見つめたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

正彦が、道を歩きながらー

”少し前”のことを思い出すー

淳史が、奈緒美を完全に乗っ取った直後の話ー

「---奈緒美…どうかしたのか?」

大学の敷地内の木々が揺れる場所ー
正彦は、奈緒美に呼び出されていたー。

「---……正彦、驚かずに聞いて」
奈緒美が言うー。

「---?」
正彦と奈緒美は中学時代の同級生ー
偶然、大学で再会したー
当然、奈緒美と幼馴染の淳史とも中学時代の
同級生だった人物だー。

「--わたし、いや……俺、淳史なんだ」

「---え」
正彦が唖然とするー。

「--信じてくれないかもしれないけど、
 最後まで聞いてくれるか?-」

奈緒美は悲しそうな表情を浮かべるとー
これまでのことを語りだしたー

高校に入って奈緒美と淳史は付き合い始めたことー
二人は仲良く過ごしていたことー
ある日、交通事故で、淳史が奈緒美を庇い、死んだことー
気が付いたら、自分が奈緒美の中にいたことー
それからは、奈緒美の身体を二人で使いながら生きてきたことー

最近になってー
自分が、”消える”ことを確信したことー

そしてー

「---奈緒美は、俺に依存してるー
 このまま、俺が消えるなんて言ったら、どうなるか分からないし、
 黙って消えたら、どうなるかわからない。

 だから俺は”悪役”になって奈緒美に嫌われてー
 消えて行こうと思うんだー。

 それでも奈緒美は悲しむかもしれないけれど、
 憎まれることで、少しでも奈緒美がー」

「---ははははははっ」
正彦が笑いだしたー

奈緒美は表情を歪めるー

「ま、信じてもらえるなんて、思ってないさ」

奈緒美を完全に乗っ取っている淳史は悲しそうに言う。

「いや、いいや。
 違うよ。お前らしいなって。
 自分を犠牲にしてまで、奈緒美ちゃんのことを考えてあげるなんて

 それにー
 奈緒美の身体で過ごしてるお前を想像したら
 笑っちまっただけだよ」

正彦が言う。

「--え…信じてくれるのか?」
奈緒美がそう言うと、
正彦は頷いたー

「話を聞いて確信したー
 中学の時のまんまじゃないか。お前。
 中学時代、親友だっただろ?
 そのぐらい、分かるさ。」

正彦はそう言いながら
「--まぁ…非現実的すぎて正直、びびるけど」
と、付け加えた。

「--ありがとう」
奈緒美が正彦の手を握るー

「--お、おい!やめろよ!ドキドキするだろ!」
正彦が顔を赤らめるー

今の奈緒美の中身は淳史だと思っていても、
ドキドキしてしまうー

「それでーーー
 お願いがあるんだー」

奈緒美が悲しそうな目で正彦を見るー

正彦は、ドキッとしながらも
「----なんだよ」
と、呟くー

どうせー

淳史のことだー

何を言い出すかは分かっているー

「---…奈緒美を完全に乗っ取ろうとした俺を
 お前が倒して、救い出したー

 そういう、話にしようと思うんだ」

奈緒美の身体のまま、淳史が言う。

「-----いいのか、それで」
正彦が言うと、
奈緒美は頷いたー

奈緒美の目から涙がこぼれているのに
正彦が気付くー

だが、正彦はそのことを指摘はしなかった。

「---………わかった」
正彦は、力強く、そう答えたー

そしてー

”最後の日”がやってきた。

今日ー
消える。

そう悟った淳史は、正彦を奈緒美の家に呼び出しー
奈緒美の高校時代の制服を着てー
”乗っ取って遊んでいたところ、正彦が助け出した”という
雰囲気を作り出したー

「---俺をドキドキさせないでくれぇ~」
正彦が苦笑いしているー

「--はは、悪い悪い。
 でも、この方が、俺が乗っ取っていたのを
 お前が助け出した!って感じがするだろ?」

その言葉に、正彦は「ま、まぁな~」と呟くー

淳史の感覚が消えていくー

少しずつー

正彦は待っている間も、
何気ない日常話ばかりしていたー

”わざと”
そうした。

しんみりしたのは、淳史も望んでいないだろうし、
淳史を余計に苦しめてしまうと思った正彦の配慮。

淳史もそれを感じ取って、
笑いながら”最後のひと時”を過ごしたー

ーーー!!!

今まで感じたことのない感覚ー

もう、消えるー

「----それでさ~!あの時のお前は、こう言ってたんだよ、俺は何があ、、」

正彦は雑談していた口を止めた。

「-----ありがとう」
奈緒美の表情には、
悲しみ、感謝、安心感、いろいろなものが出ていたー

「----行くのか?」
正彦は奈緒美の表情から、淳史が消える瞬間がやってきたことを
読み取るー。

「----」
奈緒美はにっこり微笑んで、頷いたー

”奈緒美を頼む”

奈緒美の身体からー
淳史の姿が一瞬だけ見えてー
正彦にそう告げた。

そして、そのまま奈緒美は、倒れたー

目覚めた奈緒美に対して
正彦は淳史との約束通りー
”奈緒美を完全に乗っ取った淳史を正彦が撃退した”
風を装ったー

「---奈緒美ちゃんは、強いよー
 お前が思ってたよりもー」

正彦は、悲しそうにそう呟いたー

・・・・・・・・・・・・

「----------」
部屋で奈緒美は、淳史と一緒の写真を見つめていたー

「---ごめんね…
 そして、ありがとうー」

奈緒美の手に涙がこぼれ落ちるー

奈緒美は、淳史の最後の優しさを
なんとなく察していたー

”淳史も、正彦も、芝居が下手だなぁ…”
苦笑いする奈緒美ー。

「----…わたしはーーー
 ちゃんと生きていくよー
 大丈夫ー」

奈緒美は、涙を拭いて写真を置くと、
立ち上がったー

いつになるかは分からないけれどー

いつか、
わたしもそっちに行くー

でもー
大丈夫。
わたしは、自殺したりしないし、
一生懸命、生きていくからー。

だって、
この命は淳史が助けてくれた命だからー

それを捨てることなんて、
絶対に、しないからー。

「---見ててね、淳史ー。」

淳史との別れを乗り越えてー
奈緒美は、未来に向かって歩き出した。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

精神同居している女子大生のお話でした~!
明るい未来に向かって
歩いていくことができそうですネ~!

お読み下さりありがとうございました!!

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