<皮>闇に潜む狼③~深淵~(完)

他人を皮にして
”世間への復讐”を語る凶悪犯罪者ー

他人の身体を乗っ取り、踏みにじりー
そして、廃棄するー
凶悪な”狼”の行きつく先はー?

---------------—-

「--また配信されます!」
刑事が叫ぶー

刑事・義明は、困り果てた表情で、
配信の始まった”ウルフチャンネル”の動画を確認するー。

”ウルフチャンネル”は、本来、配信停止になる内容だがー
”狼”の唯一の手掛かりになるとして、
そのままにされているー。

「--皆さんこんばんはー
 生配信のお時間です」

いつもの女が、足を組んだ状態で、笑うー
今日は”死”と書かれた覆面を被っているー

ラバースーツ姿だからかー
スタイルの良さだけがはっきりと分かるー

「ーー今日は久しぶりに、人間が皮になる瞬間を
 お見せしましょうー

 今日はーーー」

刑事たちとは別の場所ー
自宅で、男子高校生の隆司はその配信を見つめていたー

自分の好きだったアイドル・りんごが皮にされた挙句、
皮を着こまれて乗っ取られてしまい、
侮辱するような行動をさせられていたことで、
隆司は、この”狼”を名乗る凶悪犯罪者・湯田和夫に
激しい怒りを覚えていたー

それと同時に年頃の男子高校生らしく、
なんとなく他人事で”面白い”と思いながらも
見つめていたー。

「--今日のゲストは、こちらー!」
女は嬉しそうに叫んだ。

「--やめろ!離せって!」

映像に出てきたのはー

「え…!」
動画を見ていた隆司は唖然とした。
そして、叫んだー

親友の信吾ー

「–信吾!!!!」

え???
隆司は混乱するー

今日も、学校で普通に信吾と話をしたー
そのあとに、この犯罪者に捕まったって言うのか…?

「は、、はははは、そんなわけない…」
隆司はそう呟くと、動揺しながらスマホに手をかけたー

今までの犠牲者はー
アイドルのりんごも含めー
”身近な人間”ではなかったー
だから、あまり実感がなかったー

でもー
今、生配信されているのはーーー

「うあああああああああ…」
信吾が悲鳴を上げるー

”死”と書かれた覆面をしている女が、
狂ったように笑っているー

「皆さん!私のことを倒す!とか、豪語していた
 男子高校生もこのざまです!
 ご覧ください!!
 年ごろの男子が、悲鳴をあげて、泣きわめている!」
女が笑うー。

信吾の後頭部が開いていくー

「いやいやいや、う、、嘘だ…!」
その動画を見ながら、隆司は慌てて信吾にLINEを送るー

すぐに既読がつくー

「な、、なぁんだぁ…」
隆司は安堵したー

信吾に送ったLINEにすぐに既読がついたということはー
この生配信に写っている信吾は
本人じゃないー

本物の信吾は、どこかで、今、隆司が送ったLINEを見ているー

「ってか、このウルフチャンネルっての、やらせじゃね?」
隆司はそんな風に思いながら動画を見つめたー

人間を皮にするなんて、あり得ない。
リアリティが無さ過ぎるー。

「-----ふふ いいですねぇ」
女が笑うー

そして、”信吾のスマホ”を手に、
カメラにそれを向けたー

「彼を心配するお友達からLINEがたった今、届きました。
 
 ”信吾、大丈夫か!?返事をくれー!”

 くく…素晴らしい友情です」

”死”の覆面を被った女ー
凶悪犯罪者に着られている女が、
おかしそうに笑うー

「--!」
動画を見ている隆司は凍り付いたー

今、自分が送ったLINEのメッセージー
それが、生配信に写っているー

「あぁあああああ…!!!あぁあああああ…」
信吾が赤ん坊のように泣いているー

いつも笑っていてー
お調子者でー
いざというときには頼りになる親友の信吾がー
情けない姿で泣いているー

「ーーほらぁ、お友達が心配してますよぉ?」
女が、信吾に顔を近づけてクスクス笑うー

「あぁあああ…やめてくれ…助けてくれぇ!」
信吾が泣き叫ぶー

「--だめです」
女は冷徹に、冷たく言い放ったー

そしてーー

「ぎゃああああああああああ!」
信吾の後頭部のチャックを思いっきり引き下げるー

「いてえええええええええええ……いてぇよぉ…」
その言葉と共に、信吾は、脱がれた着ぐるみのようになってしまったー

「信吾おおおおお!」
動画を見ながら隆司は叫んだー

え?これ?本物ー?
夢ー?

「くく…」
女が笑いながら信吾の皮を着ると、
女は慎吾になったー

そして、カメラの方にスマホを見せつけると、
隆司からのLINEに返信してみせたー

”俺、皮にされちまったよ!じゃあな!へへ”

とー。

♪~~
動画を見ていた隆司にLINEが届くー

今、乗っ取られた信吾が送ったメッセージだー

「--信吾…」
隆司の目からは涙がこぼれていたー

「--くくくくく…
 友情もー
 愛情もー
 何も、かもー
 私が、あなたたちから、奪いますー

 これは、世間への復讐ー
 いいえ、私の正当防衛ー」

信吾の姿のまま”狼”を名乗る湯田和夫は笑うー

「--そして、今日もーーー」
信吾が指をさすー

そこには、皮にされた大量の人間ーー
小さな子供たちがいたー

「今日は、保育園が1カ所、
 全員、皮になりました。

 将来、誰かを攻撃するかもしれない
 無邪気な子供たちを
 先に摘み取ったのですー。

 毒を持つ植物は、
 花を咲かす前に摘み取ってしまえば、いい。
 それだけのことです」

穏やかな笑みを浮かべた信吾がカメラの前で話すー

乗っ取られているとは言え、
敬語を喋る信吾は、気味が悪いー

隆司は、その動画を見ながら、
この上ない怒りに震えていたー

あり得ないー
あり得ないー
許せないー

身体が爆発しそうなほどの怒りを感じながらー
隆司は壁に拳を叩きつけたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「--あれ?」
幼馴染の千穂が首をかしげるー

いつも、朝早くに登校して、
騒いでいる信吾がいないことに、
違和感を覚えたようだー

「---…」
隆司は答えないー

「---信吾は?」
千穂の不思議そうな言葉に、
隆司は首を振ったー

千穂は、”ウルフチャンネル”を見ていないのだろうかー。

隆司はそんな風に思いながら
暗い表情で「もう、いないよ」と答えたー。

手を震わせて、目に涙を浮かべる隆司ー

「え…」
千穂は戸惑っているー

「--俺は、アイツを…
 あの狼とかいう、人殺しを絶対に許さない…!」

りんごのときは、半分、おふざけだったかもしれないー
でも、今は違うー
隆司は、激しい怒りに震えていたー

許すことなどできないー
絶対にー
あいつを許すことなど、絶対にできないー

「---あいつは、信吾を殺したー
 何が狼だー
 何が世の中への復讐だー

 俺はあのクソ野郎を絶対に許さない…!」

隆司が机を思いっきり叩くー

「隆司…」
千穂が心配そうに呟くー

「ど、どうしたの!?」
隆司が思いっきり机を叩いたことにー
クラスメイトで生徒会書記の江子が反応するー

「……」
隆司は答えなかった。

千穂が代わりに「あ、ちょ、ちょっとね」と、
江子に対して苦笑いしているー

信吾はもう、戻ってこないー

永遠にー

昼休みー
隆司は歩き出すー

職員室を見つめるー。

”数学の真愛美先生が不在”

真愛美先生が消えたのは、
狼が動画で宣戦布告したころに近いー

”狼”は最近、
女の姿で動画に登場しているー
覆面を被ったりしていて顔は見えないが
スタイル的に、いつも同じ女の皮を着て
その身体で行動しているように見えるー

「皆さん!私のことを倒す!とか、豪語していた
 男子高校生もこのざまです!
 ご覧ください!!
 年ごろの男子が、悲鳴をあげて、泣きわめている!」

昨日の、信吾が殺された配信を思い出すー

”私のことを倒すー”

信吾は、”狼”に乗っ取られている女と
遭遇したのかー?

あの女はー
信吾も知る女で、信吾がそれを助けようとして
返り討ちにー?

「はっ…!」
隆司は気づくー

狼に、真愛美先生は既に皮にされていてー
狼が今、着ている女はー
真愛美先生なのではないかー?
とー。

真愛美先生がずっと学校に来ていないのもー
どことなく声に聞き覚えがあるのもー
信吾が、助けようとしたっぽいのもー
真愛美先生が皮にされて乗っ取られているからー?

隆司はそう思い立って、歩き出すー

教室に戻ると、隆司の机の中に紙が入っていたー
♡が書かれた封筒ー
その中に入っていたのはーー

”放課後 西地区の建設現場で待つー  狼”

そう書かれている紙がー

「---!!!!!」
隆司は、驚いて目を見開くー

その姿を、生徒会書記の江子が
笑みを浮かべながら見つめていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後ー

「-----出てこい!」
隆司は怒りの形相で叫んだー

指定された建設が中止されて無人の
建設現場にたどり着いた隆司は
”狼”に向かって叫ぶー

「----ようこそ」
背後から声がするー

隆司が振り返ると、そこにはー
ラバースーツ姿の女がいたー

ヘルメットをかぶっていて顔が見えないー

「---!」
隆司はとっさに距離を取ったー

りんごや、信吾が皮にされた動画を
この目で見ているー

”こいつに近づくのは危険”

そう、判断したからだー

「君みたいな、半端な正義感を持つガキは
 好きですよ…くくくくく」

女が笑うー

「--……真愛美先生?」
隆司がふいに、その言葉を口にしたー

「まなみせんせい?」
女が不思議そうな声で聞くー

「--はははははははははは!」
笑い出す女ー

笑いながら、女は、建設現場の端の方を指さしたー

そこにはー
”皮”にされた真愛美先生がつるされていたー

「その女教師は、とっくに”皮”にしてしまいましたよ。
 数週間前だったかな?
 ふっふふふふふふふ」

笑うヘルメットの女ー

「-先生!」
隆司が、真愛美先生の”皮”に駆け寄るー
恐怖を顔に浮かべたまま、先生は皮になっていたー

先生が学校に来なくなっていたのはー
既に”皮”にされているからー
だったのだー。

「---そ、、そんな… はっ!?」
隆司が気配を感じて振り返ると、
ヘルメットの女が、隆司に襲い掛かってきたー

「さぁ、お前も皮になるんだ!」

「やめろぉぉ!」
隆司は、必死に抵抗して、暴れるー

女が、隆司を皮にしようと
狂ったような笑い声を出すー

そしてー

「--!!」
隆司が必死に暴れているうちにー
女のヘルメットが吹き飛んだー

音を立てて転がるヘルメットー

「---え……」
隆司は唖然としたーー

「---ふふ…わたし、乗っ取られちゃった♡」
笑う女ー

その女はーー
隆司の幼馴染の千穂だったー

「--千穂!」
隆司が泣きそうになりながら言うー

「この女、私の妹に似てたんですよぉ。
 だから、気に入ったんです。
 ふふふ…
 昼間の学校にいる間の演技、
 うまかったでしょう?」

千穂は笑うー

宣戦布告した翌日には、千穂を見つけて
皮にして乗っ取りー
それ以降はずっと、千穂の身体で過ごし、
他の人間を皮にして回っていたのだと言うー

信吾はそれに気づいて、千穂を問い詰めたために
始末されたー

「---動画配信してたのも、この女だ
 はは、声で気づきませんでしたかぁ~?」
千穂が笑うー

「--ふ、、ふざけ…千穂を返せぇぇぇぇ!」

色っぽくしゃべっていたためー
千穂とも気づかなかったー

そのことにも怒りを感じながら、隆司は
千穂に襲い掛かるー。

しかし、

「おっと!」
千穂が隆司を押さえるー

そしてー

「ああああああ…」
もがく隆司ー

”学校で、”狼”の生配信を見た日もあったはずー”
隆司はその日のことを思い出すー
その日も、乗っ取られた女が配信していたー
あれも、千穂だったのかー?
とー。
だがーーー
そういえばその日、”千穂は風邪で休んでいたー”
千穂はあの場にいなかったー。

千穂は、狼が宣戦布告した翌日からー
ずっと乗っ取られ続けていたー
そのことに、気付けなかったー

隆司は、悔し涙を流すー

「--ふふふ、ばいばい、隆司♡」
いつもの千穂のような口調ー

「そうだー
 この女、君のこと、好きだったみたいですよ」
千穂が笑うー

「--え…」
隆司はドキッとしたー

「でも、もう、遅いですけどね。
 おやすみ。」

千穂は冷徹にそう言い放つとー
隆司を皮にしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

千穂は、いつものように学校に登校していたー

昼間は普通に女子高生をしながらー
夜は、ラバースーツ姿で人々を皮にして回っているー
みつかりそうになれば、他の人間の皮を被ることもできるし、
千穂の身体を破棄することもできるー

「ありがとう」
千穂が、生徒会書記の江子に言うー。

「あ、うん、全然、告白、上手くいった?」
江子が返事をするー

隆司の机に”建設現場に来い”と書かれた手紙を
入れたのは、生徒会書記の江子ー
千穂から頼まれて、江子が入れたのだー
もっとも江子は、その内容を知らない。
ハートが描かれた封筒に、手紙が入っていたから、
千穂が隆司に告白するのだと、江子は思っていたし、
今も思っているー

「告白?」
千穂がクスっと笑うー

”うまくいったよー”

そう呟いて、千穂は立ち去るー

”わたしが皮にされて乗っ取られているって、告白をね…”

”狼”は、暗躍し続けるー
闇に潜みながらー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

皮にする能力を悪用されたら、
どうにもならないですネ~!

お読み下さりありがとうございました!

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皮<闇に潜む狼>

コメント

  1. 柊菜緒 より:

    SECRET: 0
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    やっぱり幼馴染だったか……

  2. 無名 より:

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    コメントありがとうございます~!

    私のお話の流れを読み取って…笑
    さすが奈緒様デス…!

  3. 匂いフェチくん より:

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    お疲れ様です。いいですね。
    もっと皮モノは見たいです。特に皮モノとフェッチ(匂いとか足とか汗とか脇とかブルセラとか)見たいです。(*・∀・*)

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    皮モノは今後もいろいろ考えているので、
    楽しみにしていてください~☆!

  5. saikoku44 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    素晴らしいです!
    ありがとうございました!

  6. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!
    お楽しみ頂けて何よりデス!!!

    こちらこそありがとうございました!!