頭のに咲いた花は、成長を続ける。
その花が、完全に成長したときー
佳織の運命は…
--------------------------
「---ふふん♡」
佳織は、部屋で、鮮やかなドレスを着て、
太ももを晒しー
挑発的な表情でポーズを決めていたー
佳織は、乗っ取られているー
もはや、”佳織本人の意識”が表に出ている時間の方が
少なくなっているー
「きれい…」
佳織は、自分の姿をうっとりとした表情で見つめる。
普段の佳織は、自分の姿を見て興奮したりすることはない。
けれど、今の佳織は違うー
「---」
色々なポーズを決めー
髪をかき上げてー
表情を色々変えたりー
モデルのように歩いたりして、
激しくゾクゾクしているー
乗っ取られている佳織ー
だが、その表情はとても幸せそうでー、
身体も興奮し続けているー
佳織の身体は
乗っ取っている”何か”の意志に従って
激しく興奮し続けているのだー
「–あ…ぅ」
佳織がふいに、ふらっとするー
「--はぁ…はぁ…まだ、、まだダメか」
佳織は汗をぬぐいながら呟いたー
”まだ”
支配が完全ではないー
もうすぐー
もうすぐ、完全に支配することができるー
もうすぐだー
このー
”憑依花”の力で、佳織を完全に支配することができるー
この花は、言わば”アンテナ”の役割を果たすー
この花を通じて、徐々に自分の精神を佳織に
流し込んでいきー
そしてー
佳織の精神を花の側に吸い上げー
完全に”乗っ取る”
「佳織は、俺のものだー」
低い声で笑う佳織ー
佳織も、こんな声が出せるー。
佳織本人ですら、知らないかもしれない事実ー
悪い笑みを浮かべながら
佳織は笑うー。
適当に普段着に着替えて、
佳織は、そのまま、その場に眠るようにして
気を失ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「------あ…」
涎を垂らした状態で眠っていた佳織が目を覚ますー。
「---……」
ぼーっとして、何も考えられないー
そういえばー
志乃舞も、彼氏の節也も、
なんだか、わたしのことを心配してくれていたような…
佳織はそんな風に思いながらも、
”なんか喉が渇いた…”とーー
そのまま水を頭にかけてー
花の部分に水を与えていくー
佳織の精神はー
既に”花”に吸い上げられつつあったー
だからー
”喉が渇いた”と感じる感覚も
ズレ始めているー
何もかもに、無気力になっていく。
花のことしか、考えられない。
でも、花は大事だし、
花に対する恐怖心も無くなったー
「わたし…」
ブツブツと呟く佳織ー
表情に生気がないー。
虚ろな表情。
まるで、催眠術にかけられているかのような。
花による支配は進み、
佳織が佳織でいられる”ギリギリのライン”が今だったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”憑依花”
「----」
友人の志乃舞は、”それ”にたどり着いたー
佳織の頭に咲いた花と、それがよく似ているー
ネットで怪しいサイトもなりふり構わず
歩き回った結果ー、
ようやくたどり着いたのが”憑依花”
”他人を乗っ取ることができる花の種、あります”
そのサイトには、そう書かれていたー
そんなこと、あるはずがないー
志乃舞はそう思いながらも、
最近の香織の様子を頭に思い浮かべると
”これ”のような気がしてならなかった。
”駆除方法”
サイトには、”憑依花”の駆除方法も書かれていた。
”完全に成長する前であれば、下記の手順で
憑依花を駆除することができます”
そう書かれているー。
「---!」
その方法を見つめる志乃舞ー
こんなもの、イタズラだと思うし、
佳織の頭に咲いている花が憑依花である確証は
全くない。
でも、それでもー
親友である佳織のことを心から心配している志乃舞は、
それを試してみようと思ったー。
今日は、ちょうど休日ー
”--佳織、今から時間、あるかな?”
志乃舞は、LINEを送ったー
佳織を、助けるためにー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「----」
彼氏の節也は、部屋でクラシック音楽を聴いていたー
心が乱れた時に、彼はクラシック音楽を聴くー。
歴史の重みを感じるメロディに想いを馳せてー
心を落ち着かせるー
今まで、このメロディをいったい何人もの人間が
聴き、そして想いを馳せて、感動したのだろうか。
「--------」
節也は静かに目を開くー。
メロディに身を委ね、心を落ち着かせながらー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
友人、志乃舞のLINEメッセージが届く直前ー
佳織は”別の人間”からのLINEメッセージを見ていたー
”勝が大変なの!”
母親からのLINE。
風邪で寝込んでいた弟・勝が急変したのだというー
花に支配されかけていた佳織も、
この急なお知らせを聞いて、一気に正気を取り戻したー
「--!!!!」
佳織は、慌てて勝が入院したという病院に向かうー
スマホも忘れてー
家に置き去りにされたスマホにー
志乃舞からのLINEが届くー
だが、それを佳織が確認することはなかったー
志乃舞が、あと数分早く、このメッセージを送っていればー
”運命”は変わっていたのかもしれないー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「勝…!」
病院に向かう佳織ー
スマホを忘れたことに気づいたが、引き返す余裕もなかったー
”急変して、危篤”なのだというー
佳織は、頭に花を咲かせたまま、
そのことも忘れて、病院を目指すー
だがーー
”あぁ…間もなく”満開”だー”
花に潜む意識は、笑ったー
意識が今まで以上に明確だー
間もなくー
間もなく、花は完全に咲くー
そしてその時ー
佳織の身体を、完全に支配することができるー
「勝!!!」
病室に駆け込む佳織ー
勝は、既に心停止の状態だったー
「そんな…」
佳織が、病室に駆け付けた時には、
弟の勝は、医師から必死の蘇生術を受けていたー
泣きじゃくっている母親ー
そして、弟の勝は、帰って来なかったー。
そのまま、息を引き取ってしまったのだー
佳織も、涙を流すー
佳織の母・篠子は、涙をぬぐうと、
隅っこのベンチで泣いている佳織に声をかけたー
「--……大丈夫?」
大丈夫ではないー
弟が死んだのだー。
母にとっても、姉にとっても、それは辛いことー。
「-----クスッ」
だがーー
佳織は、泣いている間に”完全に成長した花”に
完全に乗っ取られていたー
「---わたしなら大丈夫」
佳織は歪んだ笑みを浮かべるー
そして、母・篠子の方を振り返ると、
「--わたしなら、大丈夫よ」
と、嬉しそうにほほ笑んだー
佳織は、母・篠子に別れを告げると、
病院の敷地内から外に出たー
両手を広げて、大きく空気を吸うー
「この身体は、これで、”完全に”俺のものー」
憑依花は、完全に咲いたー
憑依花に徐々に送り込んでいた自分の意識が
完全に佳織の身体を掌握しー
そして、佳織の意識が、花の中に追いやられたー
「---くふっ♡」
ぶちっ!と、音を立てて、
花が頭から引き抜かれるー
もう、この花に用はないー
佳織は、花を地面に放り投げるとー
それを踏みつぶしたー
「ばいばいー」
佳織本人の意識が追いやられた花を踏みつぶしー
凶悪な笑みを浮かべる佳織ー
「---」
唾を花に吐き捨てると、
佳織は「これからはお前の身体、俺が有意義に使ってやるよ」
と、静かに呟き、
そして、付け加えたー
「姉さんー」
とー。
最近は、佳織、と呼び捨てにしていたが
最後に、そう呼んでやったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
勝は、姉の佳織が嫌いだったー
容姿に恵まれなかった勝とは違い、
佳織は容姿に恵まれ、頭も、容姿も、性格も、
何もかもがよかったー
そんな姉・佳織に勝は激しく嫉妬しー
”奪いたい”とすら思っていたー
そんなある日に、ネットで見つけた”憑依花”
勝は、それを試してみたいと思ったー
ちょうど、憑依花を手に入れたちょっと後に、
姉の佳織が実家に遊びに来たー。
勝は、チャンスだと思ったー
姉の佳織が、母親との話に集中しているタイミングを見計らってー
さりげなくー”憑依花”の種を佳織に植え付けたー
「あ、頭にごみついてるけど?」
勝は、そう言いながらー
姉の頭をさりげなく触りー
種を植え付けたのだったー
「--ありがと~!」
佳織は、何も気づいていなかったー
あの日からー
佳織の頭で、憑依花の種は育ちー、
そして、花が咲いたー。
勝が体調を崩していたのは
風邪でもなんでもないー
佳織の中に自分の精神を徐々に移動させていたためー。
アンテナの役割を果たす憑依花を通じて
自分が徐々に、佳織を乗っ取っていたためー。
”中身”が徐々に佳織の方に移動していたからー
勝の身体は徐々に衰弱しー
そして、”身体”は死んだー。
「--ふふ…もう俺の身体なんて必要ない」
完全に乗っ取られた佳織は呟くー
「俺はーー佳織…
いいや、わたしは佳織だもん♡」
クスッと笑うと、佳織はそのまま立ち去って行ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー
「--それにしてもよかったよ~」
彼氏の節也が言う。
「--え?」
佳織が節也の方を見る。
「--いやぁ、だって、最近の佳織、変だっただろ?
頭に花なんて咲かせちゃって、みんなも心配してたし」
節也が言うと、
佳織は「ふふふ、ごめんごめん、もう大丈夫だから~」と
笑みを浮かべたー。
節也は、佳織のことをとても心配していた。
心配すぎて、大好きなクラシック音楽を聴かずには
落ち着かないぐらいまでになってしまっていたー
そんな節也は、心から安堵したー。
佳織の頭の花はなくなったし、
佳織の様子はいつも通りー、
いいや、むしろ”それ以上”に元気になったように見えるー
「志乃舞ちゃんも心配してたからな~」
節也が言う。
佳織の親友・志乃舞も「元の佳織に戻ってよかった!」
と、ほほ笑むー
佳織は「心配かけてごめんね!」とほほ笑んだー
”最高だー”
佳織は笑みを浮かべるー
ザ・女子大生って感じの充実したJDライフじゃないか。
今までずっと、こんな風に楽しんでいたのかー。
佳織ばっかりずるい。
俺だって、人生楽しむ権利はあるー。
嫌いなー
けれども、容姿は好きなお前の身体を乗っ取って
こうして、人生をエンジョイしているー
あぁ…興奮ではち切れてしまいそうだ。
佳織は、笑みを浮かべながら
節也、志乃舞の前から立ち去っていくー
「----------」
志乃舞は、頭の中で”憑依花”のことを考えるー
憑依花が成長し終わったときのことも、
そこには、書かれていたー
それが、本当ならー
「---…そんなこと、あるわけないよね」
志乃舞は、不安を無理やり打ち消そうとしたー
憑依花が満開を迎えたときー
その身体を完全に支配し、元の意識を花が吸い上げるー。
「---佳織は佳織…うん。きっとそう」
志乃舞は、憑依花のことを無理に忘れ去ろうとして
そう呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--記憶も全部、俺のものだー」
バニーガールの姿で、佳織が一人、ほほ笑むー
部屋で鏡を見つめる佳織ー
「くくくく…わたし、生まれ変わっちゃいましたぁ~♡
な~んてな…ははははははは!」
乗っ取られた香織の笑い声が、
夜の部屋に響き渡ったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
花が完全に咲いてしまいましたネ~!
お読み下さり、ありがとうございました!!
コメント
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うわ~、これはあまりに佳織が救われない結末。容姿だけでなく、性格もいい弟思いないい子だったのに、逆恨みみたいな一方的な妬みから弟に体を奪われた上、自分の精神が宿った花を踏み潰されるなんて酷すぎ。
人格があまりに腐ってるから、いくら容姿のいい姉の体を手に入れても、あんまり勝の思い通りにはならないんじゃないだろうか?
見てるとこは見てる佳織の周囲の人達がやがてみんな離れていく気がします。
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コメントありがとうございます~!
以前別のお話で、性格悪い人が、人気者に憑依して、
結局みんな離れて行ってしまう…というお話も書いたことがありますが、
勝くんもそうなってしまいそうですネ~!!
それにしても、勝くんは歪んでいますネ汗
お読み下さりありがとうございました~!