<憑依>頭に咲いた花②~成長~

頭に咲く花ー。

その正体が分からないまま、
彼女が”完全支配”に向けて
乗っ取られていくー

--------------------

「----えへへへ♡」

夜ー
佳織は、鏡の前でポーズを決めては
笑みを浮かべていたー

佳織が絶対にしないような色っぽいポーズをしてみたりー
甘い言葉をささやいてみたりー

「--わたしのこと…好きにしてい・い・よ♡」
わざと甘い声を出して佳織はにっこりとほほ笑むー

あぁ、こんなに甘い声が出るなんて…

美貌を持っているのに、それを使わないなんて
勿体ないー

大胆に生足を晒した格好で、
佳織は、さらにポーズを決めていくー

「あとはーー
 ”成熟”すればー」

佳織は、頭の花を撫でながら笑うー

この花が”完全に”成熟すれば、
全てはおわりだー
佳織を、完全に支配することができるー

もうすぐー

あと、少しなんだー。

それまでの辛抱だー
佳織が、手に入るまでー

あと、少しー

佳織は、挑発的なポーズを決めて
「身体、貰うから」と、鏡に向かって言い放ったー

・・・・・・・・・・・・

翌日ー

佳織は、大学に向かう準備をしながら、
普段通りに行動していたー

鏡を見つめると、
頭には、相変わらず花が咲いているー

「--綺麗…」
佳織はうっとりとするー

何故だろうー
昨日の夜ぐらいから、
花に対する恐怖が薄れてきている気がするー。

慣れたからだろうかー。

だんだんと、これでもいいや、と思うようになってきている気がするー

”佳織は大丈夫?”
母親からLINEが送られてきたー

佳織はそれを見て
”わたしは、元気になったよ”と返事をする。

先日、実家との電話で、佳織は調子が悪くなっちゃって~、と
伝えている。
その心配を母親がしてきたのだー

弟の勝は昨日から高熱が続いているのだと言うー。
風邪がまだ治っていないのだろうか。

佳織は、”わたしには頭に花が咲いて、
勝は高熱かぁ…”と頭の中で考えるー

姉弟揃って、何かに呪われているのかな…?
などとー
少しだけ考えた。

先週、実家に帰宅した際には、お互い、元気だったのにー

「---なんかの病原体だったりして」
佳織はそう呟きながらも
昨日までの不安は消えて、自分の頭に咲いてしまった花のことも
前向きに考えるようになっていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

大学にやってくると、
周囲がざわついているー

友人の志乃舞が声を掛けて来るー

「か、佳織…頭の花…」
志乃舞は戸惑っているー

「あ~?うん!綺麗でしょ?」
佳織は笑顔で答えるー

「--ちょ、、ちょ、さすがにそれは奇抜すぎるよ~」
志乃舞は、佳織がファッション感覚で
頭に花を咲かせているのかと勘違いしているー

何か、そういうアクセサリーをつけているのだと。

「---とったほうがいいよ」
志乃舞が言うと、
佳織は「やだ~!とらな~い!」と笑いながら答えたー

”いい…”
”いいぞ”

花を通じて、佳織の感情を読み取った
”内に潜むもの”は、笑みを浮かべたー

だんだんとー
成長しているー

次第に、花が、佳織自身の思考にも影響を与えているー

”この花は、大事なものだ”
とー。

花が、花を好きになるように、
佳織に変化をもたらしているー

この花をどうにかしないと、
自分が完全に乗っ取られてしまうことも知らずにー。

「---おいおい…」
昼休みー
彼氏の節也が笑う。

「--綺麗でしょ?」
佳織が花を触りながら言うと、
節也は「まぁ、綺麗って言えば綺麗だけどさ」と
苦笑いしたー

「---んふっ♡」
佳織がぴくっと震えるー

”あぁ…いい”

佳織は、口の中に昼食のデザートを運びながら
それをペロペロと舐めているー

”いいー”

佳織は、乗っ取られてしまったー

”いいーー
 だんだんと、、”アクセス”できる時間が増えてるー
 もうすぐー
 もうすぐだ”

佳織はニヤリと笑みを浮かべるー

寝ている間だけだったのが、
入浴中もー

そして、ついに、睡眠・入浴以外でも、
佳織を乗っ取ることができたー

節也は、「じゃ、俺はこれで」と、
用事があるのか、足早に立ち去っていくー

一人になった佳織は、自分の指をペロリと舐めると、
食べていたヨーグルトが付着した指で、
イヤらしく太ももをなぞり始めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「-----…!」
夜ー
佳織は正気を取り戻したー

家の椅子に座っていた佳織は、
いつの間にか、高校時代の制服を身に着けていたー

「あ…あれ!?
 えっ!?!?!?」
佳織が飛び上がるー

「な、なんで、わたし高校の制服着てるの!?!?」
戸惑う佳織ー

佳織は、お昼の時間から今まで、ずっと
乗っ取られていたのだー

しかもー
制服は少し乱れているー
身体の感じから、佳織は
自分が何をしていたのか、
なんとなく理解してしまったー

「--ー…む、、夢遊病…?」
佳織は戸惑うー

寝ている間に勝手にー
っていうのは、聞いたことがある。
夢遊病というやつだー

まさか、わたしはそれに?

佳織はそんな風に心配そうにしながら
制服姿のまま、考え込むー。

「---…………」
だが、答えは見つからないー

そもそも、大学のお昼休みでデザートを
食べているときまでの記憶しかないー

あのあと、自分はいったい…?

佳織は戸惑うことしかできず、
「あ~もう、とにかく制服、着替えよ!」と、
高校時代の制服を脱いでー
そのまま私服に着替えるー

頭を抱える佳織ー

また、病院に行くべきだろうかー
急に意識を失ってー
気付いたら時間が経過していたー

普通じゃない気がするー

佳織は、そう呟きながらも
自分の”異変”に気づいていなかったー

それはー
”花”のことが、不思議と、ほとんど
気にならなくなっていることー

花に対する恐怖も、
何もかも、無くなっていたー

それどころかーーー

佳織は、笑顔で台所に向かうと
コップに水を入れてー
自分の頭から、水を浴びたー

「--お水だよ~」
佳織が濡れながら笑っているー

花は”自分を守るため”に、
佳織の思考を汚染しているー

抜かれたり、
切られたりしないように、
佳織に”シグナル”を送り続けているのだー

花の、自己防衛の本能が、
佳織を侵食しているー

「--…あぁ…」
佳織は、”自分が濡れてしまった”ことに
首を傾げながらも、タオルで拭くと、
そのままいつものように、スマホで友達の志乃舞や
彼氏の節也と連絡を取り始めた。

佳織は、”まだ”乗っ取られていないー

だが、その日は、近いー

頭の花が、完全に成長しようとしているー
完全に成長してしまったその時ー
花を通じて佳織を乗っ取っている人物は、
佳織を完全に支配することに成功するー

そしたらーーー

「---ひひひひひひひひっ♡♡」
佳織は、夜な夜な、机の角で自分の身体を
刺激して、狂った笑い声を上げていたー

その姿は、もはや佳織のものとは思えないほどにー
妖艶だった。

佳織は、クスクスと笑いながら甘い声を出して
やがて、激しくイクー。

佳織は幸せそうな表情で、床に寝ころんでー
「もうすぐー
 もうすぐだよー
 わたしのからだ、ぜんぶ、あげるからねぇ♡」と
嬉しそうに呟くー

乗っ取られて、言わされているー

”花”をどうにかしないといけないー
それなのにー
佳織の思考は、花を守る方向に傾いているー

このままでは、
佳織は、完全に乗っ取られてしまう。

それなのに、佳織は、花を大切にし始めていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

志乃舞は、佳織の異変を気にしていたー

大学でも既に話題になっているー

一番気になるのは、昨日のことー。
佳織が、教授に注意されたときのことだ。
頭に花をつけていれば、当然注意されるー。

だがー
あの真面目で優しい佳織が”逆ギレ”したのだ。

恐ろしい形相で、教授に反論し、
花を守るような発言を繰り返したー

まるで、佳織が、佳織じゃないようだー

佳織が、花に支配されているようなー
そんな”違和感”すら感じる。

だが、同時に志乃舞は、佳織のことを
”怖い”と感じていた。

そこでー
志乃舞は佳織の彼氏である節也に相談する。

「---……確かに、最近、変なんだよな」
節也が呟く。

「--あの頭の花…何なの?」
志乃舞が言うと、節也は考え込む仕草をして
あえて間を作った。

「--わからない」
節也はそう呟くと、
佳織の”頭に咲いた花”を思い浮かべるー

「-----」
節也は”このままにしておくのは確かに良くないか”と、
そう考えると呟く。

「--わかった。俺が話してみるよ。
 彼女の異変は、俺だって放っておけないからな」

節也の言葉に、志乃舞は少し安心した表情を浮かべて頷いたー

・・・・・・・・・・・・・・・

その日の夕方ー

節也は、佳織を呼び出した。

佳織の頭には花が咲いたまま。

佳織の顔や服が少し濡れているのに気づいて
節也は戸惑う。

「--どうしたんだ…?」
節也が思わず聞くと、
佳織はペットボトルの水を手に、
「お水あげたの!」と嬉しそうに言う。

「か、、佳織…」
思わず戸惑ってしまう節也。

”自分の頭に咲いた花に水をあげる”
おかしな行動に感じるー

だが、佳織は、最近、花を怖がるようなそぶりも
見せなくなったし、
むしろ、嬉しそうにしている。

「なぁ、佳織。怒らないで聞いてくれよ」
節也がそう言いながら、近くのテーブルに座るように促す。

「--なぁに?」
佳織がほほ笑むー

「その頭の花……
 いったい何なんだ?」
節也は単刀直入に聞いたー

「--とっても綺麗でしょ?」
佳織が嬉しそうに言うー

「--…あぁ、綺麗だよ。
 でもさ、普通、頭に花咲かせてる学生なんかいないだろ?
 それ、取った方がいいんじゃないか?」

節也の言葉に
佳織の表情から笑顔が消えるー

節也は”やばい”と判断して、佳織を怒らせないように
必死に言葉を考えるー

「--綺麗ですごくかわいいと思うよ。
 でもさ、佳織、最近、急に怒り出したり、ちょっと変なところが
 目立つようになってるんだ。

 自分では気づいてないかもしれないけどさ、
 俺も志乃舞ちゃんも心配してるんだ。」

節也がそう言うと、
佳織はぼーっと、何かを考えている仕草をしているー

そして、急にビクンと佳織が震える。

「--あ、急用思い出しちゃった~♡」
佳織が笑うー

「-え?」
節也の言葉に、佳織は「じゃあね~!うふふふふふっ」と
わざとらしく笑いながら立ち去って行ったー

戸惑う節也ー

「--ふふふふっ♡ ふふふふふふふ」
佳織は笑っていたー

「-危ない危ない”完全に支配できる前”に余計なこと
 言わないでくれよぉ~」

佳織はそう呟くと、
自分の髪をサラッと触ってほほ笑んだー

あと、少しー

”支配”できるタイミングは確実に増えているー

花が完全に成長し終わるまで、あと少しー

その時にはー
この身体は、俺のものだーーー。

佳織は不気味な笑みを浮かべながらー
頭に咲いた花をゆっくりと撫でまわしたー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

次回が最終回デス~!

皆様の頭にも花が咲く日が来るかも?(笑)

PR
憑依<頭に咲いた花>

コメント