頭に咲く花ー。
その正体が分からないまま、
彼女が”完全支配”に向けて
乗っ取られていくー
--------------------
「----えへへへ♡」
夜ー
佳織は、鏡の前でポーズを決めては
笑みを浮かべていたー
佳織が絶対にしないような色っぽいポーズをしてみたりー
甘い言葉をささやいてみたりー
「--わたしのこと…好きにしてい・い・よ♡」
わざと甘い声を出して佳織はにっこりとほほ笑むー
あぁ、こんなに甘い声が出るなんて…
美貌を持っているのに、それを使わないなんて
勿体ないー
大胆に生足を晒した格好で、
佳織は、さらにポーズを決めていくー
「あとはーー
”成熟”すればー」
佳織は、頭の花を撫でながら笑うー
この花が”完全に”成熟すれば、
全てはおわりだー
佳織を、完全に支配することができるー
もうすぐー
あと、少しなんだー。
それまでの辛抱だー
佳織が、手に入るまでー
あと、少しー
佳織は、挑発的なポーズを決めて
「身体、貰うから」と、鏡に向かって言い放ったー
・・・・・・・・・・・・
翌日ー
佳織は、大学に向かう準備をしながら、
普段通りに行動していたー
鏡を見つめると、
頭には、相変わらず花が咲いているー
「--綺麗…」
佳織はうっとりとするー
何故だろうー
昨日の夜ぐらいから、
花に対する恐怖が薄れてきている気がするー。
慣れたからだろうかー。
だんだんと、これでもいいや、と思うようになってきている気がするー
”佳織は大丈夫?”
母親からLINEが送られてきたー
佳織はそれを見て
”わたしは、元気になったよ”と返事をする。
先日、実家との電話で、佳織は調子が悪くなっちゃって~、と
伝えている。
その心配を母親がしてきたのだー
弟の勝は昨日から高熱が続いているのだと言うー。
風邪がまだ治っていないのだろうか。
佳織は、”わたしには頭に花が咲いて、
勝は高熱かぁ…”と頭の中で考えるー
姉弟揃って、何かに呪われているのかな…?
などとー
少しだけ考えた。
先週、実家に帰宅した際には、お互い、元気だったのにー
「---なんかの病原体だったりして」
佳織はそう呟きながらも
昨日までの不安は消えて、自分の頭に咲いてしまった花のことも
前向きに考えるようになっていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
大学にやってくると、
周囲がざわついているー
友人の志乃舞が声を掛けて来るー
「か、佳織…頭の花…」
志乃舞は戸惑っているー
「あ~?うん!綺麗でしょ?」
佳織は笑顔で答えるー
「--ちょ、、ちょ、さすがにそれは奇抜すぎるよ~」
志乃舞は、佳織がファッション感覚で
頭に花を咲かせているのかと勘違いしているー
何か、そういうアクセサリーをつけているのだと。
「---とったほうがいいよ」
志乃舞が言うと、
佳織は「やだ~!とらな~い!」と笑いながら答えたー
”いい…”
”いいぞ”
花を通じて、佳織の感情を読み取った
”内に潜むもの”は、笑みを浮かべたー
だんだんとー
成長しているー
次第に、花が、佳織自身の思考にも影響を与えているー
”この花は、大事なものだ”
とー。
花が、花を好きになるように、
佳織に変化をもたらしているー
この花をどうにかしないと、
自分が完全に乗っ取られてしまうことも知らずにー。
「---おいおい…」
昼休みー
彼氏の節也が笑う。
「--綺麗でしょ?」
佳織が花を触りながら言うと、
節也は「まぁ、綺麗って言えば綺麗だけどさ」と
苦笑いしたー
「---んふっ♡」
佳織がぴくっと震えるー
”あぁ…いい”
佳織は、口の中に昼食のデザートを運びながら
それをペロペロと舐めているー
”いいー”
佳織は、乗っ取られてしまったー
”いいーー
だんだんと、、”アクセス”できる時間が増えてるー
もうすぐー
もうすぐだ”
佳織はニヤリと笑みを浮かべるー
寝ている間だけだったのが、
入浴中もー
そして、ついに、睡眠・入浴以外でも、
佳織を乗っ取ることができたー
節也は、「じゃ、俺はこれで」と、
用事があるのか、足早に立ち去っていくー
一人になった佳織は、自分の指をペロリと舐めると、
食べていたヨーグルトが付着した指で、
イヤらしく太ももをなぞり始めたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「-----…!」
夜ー
佳織は正気を取り戻したー
家の椅子に座っていた佳織は、
いつの間にか、高校時代の制服を身に着けていたー
「あ…あれ!?
えっ!?!?!?」
佳織が飛び上がるー
「な、なんで、わたし高校の制服着てるの!?!?」
戸惑う佳織ー
佳織は、お昼の時間から今まで、ずっと
乗っ取られていたのだー
しかもー
制服は少し乱れているー
身体の感じから、佳織は
自分が何をしていたのか、
なんとなく理解してしまったー
「--ー…む、、夢遊病…?」
佳織は戸惑うー
寝ている間に勝手にー
っていうのは、聞いたことがある。
夢遊病というやつだー
まさか、わたしはそれに?
佳織はそんな風に心配そうにしながら
制服姿のまま、考え込むー。
「---…………」
だが、答えは見つからないー
そもそも、大学のお昼休みでデザートを
食べているときまでの記憶しかないー
あのあと、自分はいったい…?
佳織は戸惑うことしかできず、
「あ~もう、とにかく制服、着替えよ!」と、
高校時代の制服を脱いでー
そのまま私服に着替えるー
頭を抱える佳織ー
また、病院に行くべきだろうかー
急に意識を失ってー
気付いたら時間が経過していたー
普通じゃない気がするー
佳織は、そう呟きながらも
自分の”異変”に気づいていなかったー
それはー
”花”のことが、不思議と、ほとんど
気にならなくなっていることー
花に対する恐怖も、
何もかも、無くなっていたー
それどころかーーー
佳織は、笑顔で台所に向かうと
コップに水を入れてー
自分の頭から、水を浴びたー
「--お水だよ~」
佳織が濡れながら笑っているー
花は”自分を守るため”に、
佳織の思考を汚染しているー
抜かれたり、
切られたりしないように、
佳織に”シグナル”を送り続けているのだー
花の、自己防衛の本能が、
佳織を侵食しているー
「--…あぁ…」
佳織は、”自分が濡れてしまった”ことに
首を傾げながらも、タオルで拭くと、
そのままいつものように、スマホで友達の志乃舞や
彼氏の節也と連絡を取り始めた。
佳織は、”まだ”乗っ取られていないー
だが、その日は、近いー
頭の花が、完全に成長しようとしているー
完全に成長してしまったその時ー
花を通じて佳織を乗っ取っている人物は、
佳織を完全に支配することに成功するー
そしたらーーー
「---ひひひひひひひひっ♡♡」
佳織は、夜な夜な、机の角で自分の身体を
刺激して、狂った笑い声を上げていたー
その姿は、もはや佳織のものとは思えないほどにー
妖艶だった。
佳織は、クスクスと笑いながら甘い声を出して
やがて、激しくイクー。
佳織は幸せそうな表情で、床に寝ころんでー
「もうすぐー
もうすぐだよー
わたしのからだ、ぜんぶ、あげるからねぇ♡」と
嬉しそうに呟くー
乗っ取られて、言わされているー
”花”をどうにかしないといけないー
それなのにー
佳織の思考は、花を守る方向に傾いているー
このままでは、
佳織は、完全に乗っ取られてしまう。
それなのに、佳織は、花を大切にし始めていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
志乃舞は、佳織の異変を気にしていたー
大学でも既に話題になっているー
一番気になるのは、昨日のことー。
佳織が、教授に注意されたときのことだ。
頭に花をつけていれば、当然注意されるー。
だがー
あの真面目で優しい佳織が”逆ギレ”したのだ。
恐ろしい形相で、教授に反論し、
花を守るような発言を繰り返したー
まるで、佳織が、佳織じゃないようだー
佳織が、花に支配されているようなー
そんな”違和感”すら感じる。
だが、同時に志乃舞は、佳織のことを
”怖い”と感じていた。
そこでー
志乃舞は佳織の彼氏である節也に相談する。
「---……確かに、最近、変なんだよな」
節也が呟く。
「--あの頭の花…何なの?」
志乃舞が言うと、節也は考え込む仕草をして
あえて間を作った。
「--わからない」
節也はそう呟くと、
佳織の”頭に咲いた花”を思い浮かべるー
「-----」
節也は”このままにしておくのは確かに良くないか”と、
そう考えると呟く。
「--わかった。俺が話してみるよ。
彼女の異変は、俺だって放っておけないからな」
節也の言葉に、志乃舞は少し安心した表情を浮かべて頷いたー
・・・・・・・・・・・・・・・
その日の夕方ー
節也は、佳織を呼び出した。
佳織の頭には花が咲いたまま。
佳織の顔や服が少し濡れているのに気づいて
節也は戸惑う。
「--どうしたんだ…?」
節也が思わず聞くと、
佳織はペットボトルの水を手に、
「お水あげたの!」と嬉しそうに言う。
「か、、佳織…」
思わず戸惑ってしまう節也。
”自分の頭に咲いた花に水をあげる”
おかしな行動に感じるー
だが、佳織は、最近、花を怖がるようなそぶりも
見せなくなったし、
むしろ、嬉しそうにしている。
「なぁ、佳織。怒らないで聞いてくれよ」
節也がそう言いながら、近くのテーブルに座るように促す。
「--なぁに?」
佳織がほほ笑むー
「その頭の花……
いったい何なんだ?」
節也は単刀直入に聞いたー
「--とっても綺麗でしょ?」
佳織が嬉しそうに言うー
「--…あぁ、綺麗だよ。
でもさ、普通、頭に花咲かせてる学生なんかいないだろ?
それ、取った方がいいんじゃないか?」
節也の言葉に
佳織の表情から笑顔が消えるー
節也は”やばい”と判断して、佳織を怒らせないように
必死に言葉を考えるー
「--綺麗ですごくかわいいと思うよ。
でもさ、佳織、最近、急に怒り出したり、ちょっと変なところが
目立つようになってるんだ。
自分では気づいてないかもしれないけどさ、
俺も志乃舞ちゃんも心配してるんだ。」
節也がそう言うと、
佳織はぼーっと、何かを考えている仕草をしているー
そして、急にビクンと佳織が震える。
「--あ、急用思い出しちゃった~♡」
佳織が笑うー
「-え?」
節也の言葉に、佳織は「じゃあね~!うふふふふふっ」と
わざとらしく笑いながら立ち去って行ったー
戸惑う節也ー
「--ふふふふっ♡ ふふふふふふふ」
佳織は笑っていたー
「-危ない危ない”完全に支配できる前”に余計なこと
言わないでくれよぉ~」
佳織はそう呟くと、
自分の髪をサラッと触ってほほ笑んだー
あと、少しー
”支配”できるタイミングは確実に増えているー
花が完全に成長し終わるまで、あと少しー
その時にはー
この身体は、俺のものだーーー。
佳織は不気味な笑みを浮かべながらー
頭に咲いた花をゆっくりと撫でまわしたー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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次回が最終回デス~!
皆様の頭にも花が咲く日が来るかも?(笑)
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