<憑依>婚約者の豹変②~亀裂~

婚約者が豹変した!

豹変した彼女を前に、
彼氏は戸惑うばかりー。

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結婚式まで半月を切ったー

だが、彼氏の文康は戸惑っていた。
と、いうのも2週間ほど前から
彼女の紗友里の様子がおかしいのだー。

結婚に関する話題を振っても、
具体的な返事は帰って来ず、
紗友里から連絡が来ることもないー

こちらから連絡をすれば返事は来るのだが、
それ以上のことは、何もないー。

ここ2週間は、紗友里と一度も会っていないー

結婚式の具体的な話し合いも進まず、
文康は困惑していたー

「---……そりゃ、きっとあれだよ」
親友の卓夫が、お茶を飲みながら言う。

「--マリッジブルーってやつだな」
卓夫の言葉に、文康は、「そうなのかなぁ…」と呟く。

結婚を前にして、
強い不安を感じたり、
落ち込んでしまったり、といった
精神的な症状が出ることがあるー

卓夫はそれだろう、と言う。

「1度、月野さんのところに行ってやったらどうだ?」
卓夫が提案する。

「--でも、会いたくないって言ってるし」
文康の言葉に、
卓夫は「そういうのはな、遠まわしに会いに来てほしいって言ってるんだよ」と
笑いながら言う。

「そういうもんかなぁ」
「そういうもんさ」

卓夫は、自信満々にそう言った。

「--でも、彼女と3回別れたお前が言っても
 説得力ないよな」
文康が笑いながら言うと、
卓夫は「それ言われちゃ、なんも反論できねぇな ははは」と笑うー。

でもー
確かに卓夫の言う通りだ。
もし、紗友里がマリッジブルーなのだとしたらー
ここは、彼氏である自分がー
夫になる自分が、支えてあげなくてはいけない。

「--わかった。明日、会いに行ってみるよ」
文康がそう言うと、
卓夫は「おう!その意気だぜ!」と笑ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「--ゆーたんだよ♡!」

鏡の前でピースして、ウインクする紗友里ー。

アニメキャラ・ゆーたんのコスプレ衣装を身にまとい、
ゆーたんの登場ポーズを真似している紗友里ー

「あああああああああ!!!ゆーたん~~!」
紗友里は笑いながら、ゆーたんの抱き枕を
抱きしめて、床を転がりまわるー。

髪が乱れてー
服も乱れたままー
紗友里は仰向けの状態で、
胸を何度も何度も揉み続けるー

紗友里の落ち着いた雰囲気だった部屋は、
いつの間にか散らかり、
アニメグッズだらけになっているー

「はぁぁぁ…♡」
紗友里は、立ち上がると、
アニメを見ながら「好き…好き…好き…!」と
自分に言い聞かせるように呟いていくー

そしてーーーー

壁にはーー
隣人・尾崎の写真が貼り付けてあったー

「尾崎さん…だいすき…」
尾崎の写真を見つめながら呟く紗友里ー

「尾崎さん だいすき
 尾崎さん だいすき
 尾崎さん 愛してる…」

隣人の尾崎さんは、
オタクで、紗友里に一方的に好意を抱いていた男だー

紗友里自身も、尾崎さんのことを
気持ち悪がっていたし、むしろ怖がっていたー

だがー
その尾崎さんの写真が、壁一面に貼り付けてあるー

そして、その写真を見ながら
紗友里はうっとりとした表情を浮かべるー

「尾崎さんのためなら、わたし、なんでもしますぅ…」
興奮しきった声で呟く紗友里ー

「---結婚したい 結婚したい 結婚したい
 むひ、、ひひひひひひ」
紗友里は、よだれを垂らしながら、そう呟き始めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

文康が紗友里の家に向かうー

紗友里が結婚を前に結婚に対して
不安を抱いているのであれば、
文康が安心させてやらなくてはいけない。

もしも、マリッジブルーの症状が強ければ、
文康は、結婚式や入籍、同居を延期することも考えていたー

強引に推し進めるのは、紗友里にとっても
良いことではない。
紗友里と話し合いながら、
ゆっくり、紗友里が安心して、結婚できるように、
話を進めていきたいー

「----」
文康の”配慮”は確かに正しいのかもしれないー

だがー
それは相手が”マリッジブルーであれば”の話だー

紗友里は、マリッジブルーなどではないー
それを、文康は、まだ、知らないー

紗友里の住むアパートに到着した文康は、
紗友里の部屋の前に向かうー

「--んっ♡ おぉぉぉ・・♡ んふぅぅ♡」

--!?

文康は表情を歪めたー

紗友里の部屋の中から、
変な声が聞こえてきたのだ。

「---んぁんあぁ♡ あぅぅぅ♡ はぁはぁはぁ…♡」

聞こえているのは、紗友里の甘い声ー

「---…え」
文康は、思わず凍り付いたー

紗友里のエッチな声がー
廊下にまで響き渡っているー

紗友里は元々、そういうことがあまり得意ではなく、
エッチに対しても消極的だった。
文康も、紗友里の身体目的ではないし、
そういうことはゆっくりでいい、という感じだったので、
それを無理強いすることもなかったー

「--ま…」
文康は、自分に言い聞かせるようにして呟くー

「ひとりですることは、誰だってあるだろうしな」
とー。

文康は”さすがに今、家に入ったらびっくりさせちゃうよな”と
思い、一度アパートから立ち去って
近くの喫茶店で時間でも潰そうと考えるー

「おざきさぁぁぁん♡♡ わたし、、わたしぃ♡ だいすきですぅぅ♡」

ーー!?

立ち去ろうとしていた文康が立ち止る。

尾崎さん!?

文康も知っているー
紗友里の隣人で、紗友里が嫌がっていた男だ。
紗友里の家に来た時、文康も何度か尾崎さんのことを
見たことがあるが、ちょっとヤバそうな感じの男だったー。

だが、紗友里は今、確かに
エッチな声で尾崎さんと叫んだ。

「--浮気?」
文康は、困惑するー

紗友里が浮気するとは思えないー
だが、今、確かに”尾崎さん”と聞こえたー

男の声は部屋の中からは聞こえてこないが、
文康は強い不安を感じたー

”尾崎さんに襲われるシチュでも妄想しているのか?”

そんな風に無理やり自分を納得させた文康ー
男の声が聞こえない以上、浮気ではないかもしれないー。

やはり一度喫茶店で…

「--んぁぁ・・♡ あ…♡♡ あんぁぁぁああああ♡
 出ちゃう♡ 出てるぅ♡ うふふふふふふ♡」

紗友里の、この上ない興奮しきった声に
文康は、強い不安を感じるー

だが、それでも文康は思いとどまって、
その場から立ち去ったー

生きた心地がしないー
そう思いながら
喫茶店で、姉や親友の卓夫とLINEを
しながら時間をつぶす。

”いやぁ、月野さんってホントにいい子だよな
 俺も結婚したかったぐらいだぜー
 お前が羨ましいよ、ほんと”

親友の卓夫と何気ない会話をしながら、
30分以上つぶした文康は、
コーヒーを飲み終えて喫茶店での会計を済ませるー

そして、再び紗友里の部屋に向かうー

もう、紗友里の喘ぎ声は聞こえてこないー

「---」
インターホンを鳴らす。

だが、返事はない。

「紗友里、俺だよ」
部屋の中に向かって呟くー

だがー
紗友里の返事はないー

「----入ってもいいか?」
文康が言う。

しかし、紗友里の返事はないー

さすがに少し心配になってきたー
尾崎さんとやらとエッチをして、
眠ってしまっているのだろうかー。

そんな風に思いながらー

「----入るよ」

ガチャー

扉を開く文康ー

するとー
散らかり切った部屋ー
エロゲーの箱の山ー
アニメグッズの山ー

紗友里の部屋は、変わり果てていたー

そしてー
部屋の中央に、エッチな黒い下着姿で
仰向けに寝転んだ紗友里の姿を見つけたー

「さ…ゆり…」
文康は言葉を失うー

紗友里は気持ちよさそうに「あ、、、ふみやすぅ…♡」と
呟いたー

紗友里は、しばらくすると、面倒臭そうに起き上がって、
胸と下の部分だけを隠したかのようなきわどい姿で、
文康の方を見たー

ガーターベルトがイヤらしさを増長しているー

「ど、、どうしたんだよ…紗友里…?」
文康はやっとの思いで言葉を振り絞ると、
「わたし、エッチ大好きな女だもん。忘れたの?」と笑ったー

そしてー
紗友里はアニメについて、熱心なオタクのように
興奮しながらべらべらと喋り始めた。

ゆーたんというアニメキャラについての話になると
紗友里は、おかしなぐらいにハイテンションになって
興奮しているー

まるで、好きなものについて話し始めて
止まらなくなったオタクみたいだー。

「---その写真は…?」
文康が戸惑いながら紗友里の背後にある壁を指さすー

その壁には
隣人”尾崎さん”の写真が大量に貼られているのだー

「----でもね、ゆーたんの魅力はこれだけじゃないの!
 第38話の途中なんだけどね~
 ゆーたんが、明人くんに想いを伝えるシーン!ほら見て!」
紗友里は、なおもべらべらとアニメのことを
話し続けているー。

「紗友里!!おい、紗友里!」
文康が戸惑いながら紗友里の名を呼ぶー

尾崎さんの写真だらけの壁を指さして、もう一度尋ねるー

「あの写真はいったい!?」

「--ゆーたんの気持ちを考えるとね、
 わたし、胸がぎゅーって、なって」

「紗友里!!!」
文康は大声で叫んだー

ようやく紗友里は、文康の方を見るー

「---」
ニヤニヤしたままで、不気味な表情の紗友里ー。

「--紗友里、アニメの話はあとにして」
文康は冷静にそう言うと、
最近、連絡がこなくて心配したこと、
約束をすっぽかした件について、
そして、壁に貼られている尾崎さんの写真について尋ねた

問い詰めるような口調ではなく、
穏やかに、単純に”気になる”という口調でー

「-----尾崎さん、わたしの話
 よーく聞いてくれるの!」
うっとりとした表情で紗友里が言う。

「ゆーたんのことも、アニメのことも、
 みーんなわかってくれる!

 文康とは違ってね」

紗友里の言葉に、
文康は唖然とするー

紗友里がアニメ好きなんて聞いたことはないー
今までずっと隠していたというのか?

いやー

「わたし、尾崎さんと結婚するもん!
 大好き!」
尾崎さんの写真にキスをする紗友里ー

「お、、おい…何言ってるんだ…?」
文康は戸惑いを隠せないー

浮気されていたのかー?
それともー?

文康の頭の中が混乱するー

「あ、それでね、第41話なんだけど~」
またアニメの話に戻る紗友里ー。

意味が分からないー

「--ちょ、、さ、、紗友里、俺との結婚は!?」
文康がそう言うと、
紗友里は、ぽかーんとした表情で、
考えるー

「なんだっけそれ~?あははははっ!」
笑う紗友里ー

「--…お、、、おい…さゆり…?」
戸惑うことしかできないー

「--あ、そろそろ第47話見るから、出てって 邪魔!」
紗友里はそう言うと、
コーラを冷蔵庫から取り出して
それを飲み始めたー

「さ、、さゆり…」

「出てって!邪魔!」
紗友里が声を荒げるー

「---わ、、わかったよ…」
文康が外に出るー。

紗友里の笑い声が部屋の中から
響いているー

「--紗友里…どうしちゃったんだよ…」
文康は混乱していたー。

隣の部屋の扉がちょうど開く。

出てきたのは、隣人・尾崎さん。

”ゆーたん♡愛してる”と書かれたシャツ姿で出てきた尾崎さんは
「あ、ども」と笑うー

紗友里の部屋の中からは、紗友里の笑い声がまだ聞こえているー

「---紗友里と、どういう関係なんだ?」
文康が敵意むき出しで言うと、
尾崎さんは「あ~~なんか、この前、急に告白されましてね~ぐへへへ」と
ニヤニヤしながら笑う。

「告白された!?」
文康はさらに衝撃を受ける。

「うひ…昨日も、ゆーたんのコスプレしてもらって、
 エッチなことしたんですよぉ はぁはぁはぁはぁ」
ズボンが引きちぎれそうなほどに勃起した状態の尾崎さんー

「--ふ、、ふざけるな!紗友里は俺の婚約者…!」
文康が言うと、
尾崎さんは笑った。

「知りませんよぉ~!僕は告白されただけですからぁ~」
尾崎さんの言葉に、
文康は怒りを抑えて、そのままその場から立ち去ったー

”どうしちゃったんだ、紗友里ー”

婚約者の突然の豹変に、
文康は戸惑うことしか、できなかったー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・

コメント

次回が最終回デス~!
今日もありがとうございました!!

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憑依<婚約者の豹変>

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