<憑依>婚約者の豹変①~変化~

結婚間近の婚約者の様子が最近、変だー。

だが、彼はまだ、深くは考えていなかった。

”これが、マリッジブルーというやつなのだろう”

ぐらいにしかー…。

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浅田 文康(あさだ ふみやす)は、
結婚を間近に控えていたー

高校時代からの付き合いで、
5年以上にわたる交際の末のゴールイン。

彼女の月野 紗友里(つきの さゆり)は
とても心優しい女性だー
高校時代はちょっといたずら好きなところも
あったけれど、大学生になってからは、
大人の女性としての魅力も持つ、
本当に素敵な女性になった。

大学は別々の大学だったけれど、
二人の距離は離れることなく、
大学卒業後に文康がプロポーズを行い、
紗友里は、泣きながら嬉しそうに、それを受けてくれた。

既に、互いの両親にも挨拶を済ませー
結婚の日は、近づきつつあったー。

来月に結婚式を行い、
そのまま入籍するつもりだー。

「でもさ~」
文康が言う。

現在、二人はまだ同居はしていない。

紗友里が、文康の家の方に来ることになっているのだが
紗友里にもいろいろな準備があるために
”結婚したら同居しよう”ということになっていた。

今日は、紗友里が、荷物を一部、
文康の家に移動していたー

「--狭くてごめんな~」
文康が言う。

祖父から譲り受けた一軒家なのだが、
それほど広くない。
”理想のマイホーム”とは言えない感じの広さだ。

「ううん~、文康のおじいさんがくれた大切な家だし、
 全然狭くなんてないよ~!」
紗友里が笑いながら言う。

狭いとは言え、ふたりで暮らすのであれば十分な
広さはある。

紗友里の部屋になる予定の部屋を
紗友里が嬉しそうに見回すー

「ここに机を置いて~、
 あ、でもあっちがいいかな?

 ねぇねぇ~どう思う?」

嬉しそうな紗友里を見て
文康もとても楽しそうに紗友里の相談に乗っているー

二人の指には婚約指輪がはめられているー

文康と紗友里なら、きっと幸せな家庭を築くー

文康の友人も
紗友里の友人も
お互いの家族も、
誰もが、そう信じて疑わないぐらい、
二人は仲良しだったし、
結婚する前から”円満夫婦”などと呼ぶ友達も
いるぐらいに、二人の絆は固かったー

「いっしょに暮らすの、楽しみだなぁ~」
紗友里が笑う。

「--でも、本当にごめんな。紗友里の職場まで少し遠くなっちゃって」
文康が言う。

文康の家に来ると、紗友里が今、住んでいるアパートよりも20分程度
紗友里の職場までの距離が増えてしまうのだ。

「ぜんぜん!
 文康と暮らせるなら、20分ぐらいどうってことないよ!」
紗友里が笑う。

当初、文康は”紗友里のアパートの方に引っ越そうか?”などと
提案していたが、紗友里が拒否したー
”二人で暮らすような場所じゃないよ!”と。

紗友里が言うには、隣人の尾崎さんという人が
ちょっとおかしな人で”尾崎さんと離れられるなら、
もう、今にでも飛び出したいぐらい”などと笑っていたー。

文康が、別の新居を見つける提案もしたが、
それも却下された。

”おじいさんの家、大事にしてね”と、
紗友里は笑いながら言った。

そんなこんなで、紗友里の通勤時間は
増えてしまうけれど、
この家に暮らすことになったのだったー

「--あ…じゃあ、今日はそろそろ帰るね!」
紗友里が部屋に荷物を運び終えるという。

このあと、友達との約束があるから、と
今日は元々紗友里は、荷物を運びこむだけ、という
話になっていた。

「ああ。じゃ、また」
文康が言うと、紗友里も「うん」と頷くー

間近に迫った結婚ー

文康は、小さいころ
”自分が結婚する”なんてイメージを持っていなかったー

いやー
高校時代もそうだった。

文康は、モテなかったのだー。
男子の友人は多かったが、
余計な一言が多いタイプだったために
女子とは持てず、
”俺は結婚なんてしない!彼女も作らない”などと
豪語しているタイプだったー

だが、高校時代、紗友里と出会って
彼は変わったー

生徒会活動で、別のクラスだった紗友里といっしょになった
文康は、生徒会活動の最中に、
紗友里に”余計な一言”を言って、紗友里を怒らせてしまったー。

”お互いの第1印象は最悪”

そこからのスタートだったー

”女子なんて、キャーキャー騒いでるだけで”
文康は、そんな風に思っていたー

文康がそういう考えに至った理由には、
”どうしようもない幼馴染の女のコ”がいたり、
”姉が、どうしようもない性格”だったりしたため
女子=適当でやる気もない
みたいな考えになってしまっていた

だがー、そんな文康の考えが、紗友里との出会いで変わった。

生徒会活動を、文康以上に熱心に頑張っている紗友里の姿を
日々、見ているうちに、文康は女子に対する考え方を次第に変えて行った。

「---ごめん」
文康は、紗友里にこれまでの比例を詫びた。

それまで、”他人に謝ること”をあまりしなかった
文康が、心から、紗友里に対して謝った。

紗友里は、笑いながら、文康のことを許してくれたー

それ以降、紗友里とは、気軽に話し合える仲になって
高校3年生の時に付き合い始めたー

そんなことを思い出しながら、文康は
自宅の紗友里の写真を見つめながらほほ笑むー。

「--まさか、あの時は、紗友里が俺の結婚相手なんて
 思わなかったなぁ…」

とー。

ダメ姉からのLINEを見て、
文康は苦笑いしながら返事をするー

ダメ姉は、今でも男と遊び歩いていて、
親にも迷惑をかけているー

文康は「姉さんは、本当になぁ…」と
一人、呟きながらLINEの返事を終えて
立ち上がったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---結婚するんですかぁ?」

紗友里がアパートに帰ってくると、
隣人の尾崎(おざき)が、紗友里に声をかけた。

小太りの眼鏡をかけた男だー。
アニメキャラがプリントされたシャツを着て
頭には”ゆーたん♡だいすき”と書かれた
鉢巻を巻いているー

「---…」
紗友里は、どう答えていいか分からず、困惑する。

隣人の尾崎さんに結婚のことは話していないー

「--あれ?誰から聞いたんですか?」
動揺を悟られないように言う紗友里。

「あぁ、他の人から聞いたんだよぉ~…
 
 紗友里ちゃん、僕のこと、好きだと思ってたのに
 どうして?」

尾崎さんが詰め寄ってくるー

以前、玄関の鍵を無くした尾崎さんのことを
手伝ったことがあるー

そして、厄介なことに、
その時から、尾崎さんは
”紗友里が自分に気がある”と勘違いしているのだー

「---…あの。以前も言いましたけど
 そういうのじゃないんで」
紗友里がうんざりした様子で言う。

最初はもっと丁寧に対応していたのだが、
流石に紗友里もうんざりしていたー

「---ははっ!」
尾崎さんが笑う。

「---隠さなくてもいいんだよ。
 紗友里ちゃんからは好き好きオーラが出てる。

 僕がちゃんと、白馬に乗って迎えに行くからね…
 ふひひ」

気持ち悪いー
紗友里は、そう思ったー

いや、いつも思っているー

「--紗友里ちゃんはさ、ゆーたんに似てるんだ!
 だから、紗友里ちゃんは僕と結婚するんだ!」
叫ぶ尾崎さん。

ゆーたん、とは、
尾崎さんが好きなアニメキャラだ。

そのゆーたんに紗友里が似ている、という理由だけで
尾崎さんは、紗友里に言い寄っているー

「--!」
尾崎さんが気付くと、紗友里はもう部屋の中に入っていたー

舌打ちする尾崎さんー

「--ゆーたんは僕のものだ」
尾崎さんはそう呟くと、そのまま部屋に入って行った

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「俺も、当日、いろいろ手伝うぜ」
文康の親友・足立 卓夫(あだち たくお)が、
部屋の掃除をしながら言う。

卓夫は、中学時代からの”親友”と呼べる存在だ。

今日は文康の家の掃除の手伝いに来ている。

「--わざわざ来てもらわなくても」
文康が苦笑いしながら言うと、
「いやいや、月野さんと同居するなら、
 これでもか!ぐらいに掃除しておいた方がいいぜ」と、
卓夫が言う。

文康の家が汚いわけではない。
卓夫が”超”がつくほど綺麗好きなだけで、
文康の家は、十分綺麗な部類だ。

少しあきれ顔になりながらも文康は、
卓夫の方を見て呟いた。

「色々ありがとな」
とー

「おう!気にすんなって!」
綺麗好きすぎるところはたまに傷だがー
卓夫は、文康にとって頼りになる親友であり、
紗友里にとっても、頼りになる友人だったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「----」
紗友里が、自分の部屋で
彼女の親友とLINEのやり取りをしていた。

おせっかいやきの親友が、
結婚を前に、あれこれアドバイスしてくるのだー

「--も~!心配しすぎ~!」
紗友里は小さくそう呟くと、
それでも”ありがとう”と思いながら
親友に返事を送るー

♪~~

部屋のインターホンが鳴るー

「-は~い!」
紗友里が、玄関の方を振り返るー。

もちろんー
何の確認もせずに出て行くほど、
紗友里は無警戒ではない。

最近の世の中は物騒だー。
しっかりとインターホン越しに相手を確認する紗友里。

”お届け物です”
宅配便の人ー。

紗友里は、受けとるための印鑑を持って
外に出るー

「---!?」
だがー
紗友里が玄関を開けると、
宅配便の男に違和感を感じたー

確かに、宅配便の格好をしているのだがー
まるで、”コスプレ”のようなーー

「--あの…」
そう言いかけたその時、
宅配便の男は、そのまま紗友里を玄関の中に
押し込みー

部屋の中に入ると、もがく紗友里にキスをしたーー

ぐちゅぐちゅと音を立てながらー

やがてーー
男の姿が、紗友里に吸い込まれるようにして消えー
紗友里は、ぶるぶる震えながら、
その場に崩れ落ちるようにして倒れたー

激しく咳き込み、痙攣する紗友里ー
苦しそうなうめき声をあげながらー
目を白くして、ぶるぶると震えているー

やがてー
紗友里の震えは落ち着き、
紗友里は、静かに立ち上がったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

そんなことも知らずに、
過ごす文康ー

1週間後ー

今日は、文康側の両親と一緒に食事をする約束をしていたー

文康の母が、言い始めたことで、
文康は紗友里に”嫌だったから断ってもいいからな”と
伝えていたが、紗友里側が「全然大丈夫だよ!」と言ったことで
食事が実現した。

だがーー

最近、少し気になることがある。
LINEの返事が、非常にそっけないのだ。

何か話しかけても

”うん”

”わかった”

”考えとく”

みたいなー
そんな、返事しか返ってこなくなった。

変化があったのは1週間ぐらい前からだろうか。

そしてー

「ごめん…ちょっと、紗友里、来れないみたいだ」
文康は、申し訳なさそうに両親にそう告げたー

紗友里が、
約束をすっぽかしたのだー
理由も、なくー。

紗友里にLINEで確認すると、
”深夜アニメみてたら寝坊しちゃった”
と、返事が返ってきたー

文康は、
”まぁ…そんなこともあるのかな…”と、
両親に申し訳なく思いながらも
紗友里を責めることはしなかったー

この時の文康は、まだ知らなかったー
婚約者の豹変をー。

・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

「---あ!ゆーたん!!!」

部屋でー
アニメを見ながら嬉しそうに興奮する紗友里ー

ポテトチップスを食べながら
アニメキャラ”ゆーたん”のコスプレ衣装を身にまとい、
目を輝かせて拍手するー

「あぁぁ…ゆーたんかわいいよぉ…
 はぁ…はぁはぁはぁ…♡」

鼻息を荒くした紗友里は、
婚約者である文康のことなどそっちのけで、
部屋中を散らかしたまま、笑みを浮かべたー

②へ続く

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今日は導入部分でした~!
婚約者の豹変は
明日からが本番ですネ~!

憑依<婚約者の豹変>
憑依空間NEO

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