<憑依>潜ム者③~僕は、ここだよ~(完)

幼馴染ー

親友ー

後輩ー

”男”が潜むのはー?
地獄のかくれんぼ、最終章ー。

---------------------

2日目ー。

真桜たちは、必死に家の中の探索を、午前中をかけて
続けていたが、結局、何も見つからず
家の中の探索は限界だと判断したー

少なくとも”男”が何かをしてくるつもりはなさそうだ。

「--隠し扉とか、あるんじゃない?」
親友の由紀菜が言う。

由紀菜は、ここに来てから、妙に冴えているような
そんな気もするー。
色々な提案をするし、”妙に”頼りになる気がするー。

真桜は、一瞬そんな風に思ったものの、
由紀菜のことを信じなくちゃ、と、
「確かにそれもあるかも」と、”今、見つかっている部屋以外”に
この家に部屋がないかどうかを、4人で探したー

そして、見つけたー。

「-----」
床下ー
床に隠されていた扉から、
地下室のような場所に進む4人ー

そこにはーーー
謎の祭壇のような場所があったー

「--ここに、犯人さんいるんじゃないですかぁ~?」
後輩の茜がツインテールを揺らしながら言うー。

だが、そこにも、”男”はいなかったー。

「---これは?」
由紀菜が、ホコリの被った何かを見つけるー。

”日記”のようなものー。

内容を読み進めていく限り、日記は、
”この家”の父親の日記のように見えるー。

”息子”のことが毎日のように書かれていて、
”息子はかくれんぼが大好きだった”
とも、書かれていたー。

そして”娘”が欲しかったー
と、何度も何度も、この日記の主は書いていたー。

「かくれんぼ…」
真桜は呟くー

やはりー
今、真桜たちに語り掛けてきているのは、
”この家”の息子なのだろうかー。

最初に真桜が、ルールを説明された際に、
真桜は、子供部屋らしき場所に足を踏み入れているー。
そして、かくれんぼー。
真桜は、”男”が、この家の”息子”であることを確信するー

「----」
由紀菜は、日記を読み終えると、
それを置いた。

「---時間の無駄ね 戻りましょう」
地下室には、何もなかったー。
あったのは、日記ぐらい。

他に、役に立ちそうなものも、情報もないー

午前中は終わり、
2日目の午後になるー。

真桜は、玄関の扉を開けて、
扉の外の宇宙空間を眺めていたー。

「---真桜」
幼馴染の彩智が、真桜に声を掛けて来る。

「---彩智」
真桜は振り返って、不安そうな彩智を見つめるー

いつも臆病な性格の彩智は、
ここに来た時から、常に泣きそうな感じだったー

彩智は、玄関の扉の外の宇宙空間のようなものを
見つめるー

真桜は呟いた。

「--ここから出れないかなって、いろいろ考えてたの」

家の中を探索しても、ヒントは見つからないー

いやー
”ヒント”はすぐそばにあるのかもしれないー

真桜たち4人は、意図的にー
”現実”から目を背けていたー

それは、誰かが憑依されているかもしれないー
ということ。

真桜は、最初に確かにそう説明された。

男の言葉に、今のところ、嘘はない。

だから、
親友の由紀菜ー
幼馴染の彩智ー
後輩の茜ー

誰かが憑依されていて、
憑依されている一人を殺さないと、
外には出れないのかもしれないー

合理的に考えるのなら、その”誰か”を見つけ出して
その命を奪って、残った3人でこの空間から脱出するのが、
正しい道なのかもしれないー

けれどー
真桜は、”4人”で脱出したかったー

”だいじょうぶだよ…
 ここで死んだ人間は”元の世界”では
 存在が消えるー
 君たちが人殺しになる心配はないー”

男は、最初に真桜にそう説明したー

憑依されている子を殺し、
ここから脱出すればー
たぶん、脱出した3人も、その子の記憶を失うのだろうー

だから、苦しむことはないのかもしれないー

けれどー
それでもー

このまま時間を無駄に経過させた結果ー
4人全員が”GAME OVER”になってしまうかもしれないー。

「---……」
真桜は”憑依されている子を見つけるべきなのかもしれない”と
頭の中で考えるー

でもー…
どうしても、どうしても、それはできない。

親友
幼馴染
後輩ー

そこに、順位をつけることなんて、できないー

憑依された子は、記憶も何もかも受け継いでいるように思えるー

これまで、他の3人に怪しいところは、何もない。

見つけ出すのは困難ー
現実的に言えばー
”勘”で殺していくしかないーーー

「---」
彩智は、考え込む真桜を見て、呟くー。

「何かを投げてみたら?」
とー。

「--!」
真桜は、玄関の外の宇宙空間の方に目をやるー。

正直、自分の身体で、宇宙空間に飛び出す勇気はないー
この家にすら戻れなくなる可能性もあるー。

逆にー
実はここが出口で元の世界に戻れる可能性もあるー。

だがー
出た瞬間にーー
何かが起きる可能性もあるー

「そうね」
真桜はそう言うと、リビングに戻り、
リビングに置かれていたペンを手にするー

そしてー
由紀菜と茜も呼んで、
4人で玄関の前に立ったー

「投げるよ」
真桜が言う。

真桜が、ペンを玄関の外に向かって投げるー

するとー
投げた瞬間、宇宙空間に飛び出したペンが一瞬で消えたー

「------!」
真桜たちが表情を歪めるー

「ーー消えた…?」
真桜は戸惑うー

これじゃ、何も判断できないー

ここから飛び出すと”消えて”しまうのかー
それとも”元の世界”にペンは戻ることができたのかー

「--」
由紀菜が時計を見る。

「-まだ、その時じゃないわね」
とー。

”その時”
それは、つまり、最後の手段ー。
時間切れが迫った時ー
GAME OVERになった時、
どうにもならなければ、
ここから賭けで飛び出すしかないかもしれないー

夜になりー
4人は、再びお風呂に入って、
眠りにつくー

そしてーー
最終日がやってきたー

”むか~し、むかし、あるところに、ひとりの少年がいました”

朝ー
突然、男は語りだす。

”その少年は、かくれんぼが好きだったり、
 宇宙が大好きだったりー
 ごく普通の少年でしたー

 でも、少年はー
 父親から、虐待を受けていました。

 父親はーー
 そう、父は、”娘”が欲しかったのですー

 でも、生まれてきたのは、この僕ー
 息子だった。

 僕は、父さんに認めてほしかったー
 僕だって、好きで”息子”に生まれてきたわけじゃない。

 それなのに、僕は虐待されてー
 高校にも行かせてもらえずー
 ついに、僕は引きこもりになりましたー。

 引きこもりになった僕を、父は、ずっとずっと罵倒
 してきましたー

 すっかり自信を無くした僕は、何もできずー
 気づいたときには、40歳を超えていましたー

 そしてー
 僕は、ついに、キレたー”

真桜たちが、男の響き渡る声を聞きながら戸惑うー

悲鳴と炎のような音が聞こえて来るー。

”僕は、ガソリンを被って、家に火をつけてー
 両親共々ー
 この世を去ったのですー

 めでたし めでたしー”

笑いながら言う男ー

「---…そ、、それがわたしたちと何の関係があるの!」
真桜が叫ぶー

やっぱりー
この男は、
”この家”の息子ー

しかも、今の話が本当ならー
この男は、既に、死んでいるー

”僕はただ、普通の生活がしたかっただけなんだ。
 
 僕は生きている間、何もいいことがなかった。

 だからね、僕は成仏も出来なかったんだ。
 この家ごと、ずっと、あの世とこの世の狭間で
 彷徨い続けていたんだー

 でもーー
 ある日、僕は気づいたんだ。
 君たちの世界に”干渉”できることにー”

男は笑うー

現世とあの世の狭間を彷徨っていた男は、
強い未練から、現世に干渉できることに気づいたー

そして、身体を奪い、現世に帰ることができることにもー

”父さんは、娘が欲しかったんだー

 だからさぁ、僕が君たちのような可愛い子の身体を奪って、
 生き返れば、きっと、父さんは認めてくれるぅ”

男が笑うー

「--狂ってる」
真桜は呟いたー

さっきの男の話が確かなら
既に男の両親は、男が家に火をつけたときに死んでるはずー
仮に真桜たち誰かの身体を奪って生き返れるのだとしてもー
そこに、”父”はいないはずだー。

「--わたしたちは、負けない」
真桜は宣言するー

”ふふ、かくれんぼ、楽しいなぁ~
 最後の1日、僕を見つけられるかなぁ”

そう言うと、男の声は響かなくなったー

「---」
真桜たちは、必死に手掛かりを探すー。

だが、男は見つからないー。
夜になりー
9時が過ぎるー。

武器だらけの部屋に足を運ぶ
真桜と由紀菜ー。

3日目は、二人一組の組み合わせを
真桜と親友の由紀菜、
幼馴染の彩智と、真桜の後輩・茜に変えていたー

剣を持つ甲冑に表示された時間はー
”2:58:22”になっているー

残り3時間を切った。

「どうするの?」
戸惑う由紀菜。

「----」
真桜が甲冑を叩いてみるー

「この中に、いないかなって」
真桜が言うと、
由紀菜も甲冑を見つめるー

確かに、その可能性もーーー

「きゃああああああああああああ!!!」

ーーー!?!?!?

悲鳴が聞こえたー

リビングの方からー

リビングには、真桜の幼馴染・彩智と、
真桜の後輩・茜がいるー

慌てて部屋に戻ると、
そこにはー
ナイフを持った彩智が、茜を襲う姿があったー

彩智は、武器だらけの部屋から、先日、
ナイフを持ち出していたー

「---彩智!」
真桜が叫ぶー

「--死んで!お願い!!死んで!」
彩智が叫ぶー。

茜がツインテールを乱しながら
腕から血を流して悲鳴を上げるー

「彩智!!!」
真桜が慌てて彩智を止めようとする。

掴まれた彩智が、もがきながら叫ぶー

「このままじゃ、みんな死んじゃうよぉ!!!」
とー。

彩智が泣きながら叫ぶー

真桜の幼馴染・彩智は、真桜の後輩・茜とあまり面識がないー
だから、彩智は、”自分に関係ない順”に殺して男を見つけ出そうとしていたー

「--おちついて!!!」
真桜が叫ぶー

それでも、彩智はもがいているー

「離して!わたし、、わたし、、死にたくないよぉぉぉぉお!!」
彩智がパニックを起こしてしまったーー

腕を刺された茜も、
さっきまでの無邪気な雰囲気が無くなって
ガクガク震えて、頭を抱え込んでいるー

茜もパニックを起こしてしまったー

「---おちつきなさい!」
真桜も、不安だったー
真桜もパニックになりかけて、思わず彩智を叩いてしまうー

「--真桜!」
親友の由紀菜が、真桜を止めるー。

「---ごめん」
ようやく落ち着いた真桜は、謝罪の言葉を口にしたー。

彩智を落ち着かせ、ナイフを取り上げるー

後輩・茜は髪を乱して、錯乱したまま何かを呟いているー
茜を襲った彩智は、ずっと泣きじゃくっているー

真桜と由紀菜は、テーブルに座って話し合いを続けているー

「このままじゃ、みんな死ぬだけだよ」
由紀菜が言う。

「ーーーうん…でも」
真桜が呟くー

”--ふふふ、あと1時間だねぇ”
男の声がしたー

”僕は、約束を破らない。
 僕が憑依している子が、死んだらー
 君たちの勝ちだ。
 残りの3人は、全員、元の世界に無事に戻すよ

 もちろん、何もせず、健康で自由な状態でだ、
 約束する
 ふふふふふ”

男の言葉に、
真桜は、他の3人を見つめるー。

「--やるしかないよ」
由紀菜が言うー

「ーーー」
真桜は、それでも戸惑っていたー

でもーーー

選択肢はーー
”4人全員死ぬ”
”乗っ取られた子を殺して、3人が助かる”
”ミスをして、2人、あるいは1人だけ助かる”

しか、ないのも事実だったー

4人全員助かるルートは、存在しないー

ならーー

「--でも、誰が」
真桜が、ついに意を決して”誰かを殺す”決意をするー

「---…」
由紀菜は表情を曇らせるー。

「-ーーわからない」
”外す”わけにはいかないー

外せば、生存者は最大の3人から、2人になってしまうー

真桜も由紀菜も冷静さを失っていたー

”ギリギリまで考えよう”

ふたりは、そう結論づけて、
彩智と茜の様子を見つめるー。

彩智は、泣きじゃくっていて
茜は、精神が崩壊してしまったのか、ブツブツ呟いているー

今までの行動を、よく思い出さないとー。

真桜は、
由紀菜、彩智、茜の行動を振り返るー。

本当は、誰も殺したくないー
でもーーー

でも、やらないと”みんな”死ぬー

だったらーーー

「---」
真桜も怖かったー
もう、真桜としての正常な判断が出来なくなりつつあったー

普段の真桜なら絶対に
”誰かを殺す”選択はしないー

でもー
今は、もうーーー

「---茜」
真桜が呟いた。

「…どうして?」
親友の由紀菜が返事をしたー。

「---茜ちゃんが…怪しい」
真桜が言う。

真桜は、理由を説明したー

いくら無邪気な性格とは言え、
ここに来てから”妙に楽しそう”なことー

お風呂で、真桜の身体を妙に見ていたことー

そして、今の状況ー

さらにはーー
3日間の間”脱出”に消極的に見えたのも、茜だ。

茜は今の状況を楽しんでいるー

真桜と由紀菜はギリギリまで、誰が憑依されているのかを
必死に考えるー

武器だらけの部屋に向かう真桜。

「---ごめん…」
真桜は、刀のようなものを手にするー。

甲冑には、あと”10分”の時間が表示されているー。

「----…」
真桜は刀を握りながら戸惑うー。

誰か一人を殺さないといけないなんてー

真桜は震えていたー

死にたくないー
死にたくないー

泣きじゃくる彩智と、
彩智に刺されてパニックを起こしている茜ー

ふたりとは違い、一見”普段通り”に見える
真桜と由紀菜ー

けれど、二人ももう限界だったー。

あと3分ー。
真桜は走り出すー

彩智に刺されてパニックを起こしている”ふり”をしてるだけー

最初から、
ずっとずっと楽しそうだった後輩の茜ー

茜しかいないー

真桜は、そう思ったー
いやー”強引に”そう思ったー

何か理由をつけて、自分を正当化してー

そしてー

「茜ちゃん……許してぇぇぇぇ!」
泣きながらそう叫ぶと、真桜は、茜に刀を突きさした。

「---あぅっ…」
茜が、びっくりした表情で、真桜の方を見る。

「せ…せんぱ…」
茜が口から血を吐いて、そのままよろよろと倒れるー

”ぶっぷ~~~~!”

男の声が響くー

「え…」
真桜が、信じられないという表情で、茜を見つめるー

”ざ~~んね~ん!はずれ~~~~~!”

時間が、もう、ないーー

「いやあああああああああああ!!!」
”間違えた”

真桜は錯乱して、
その場で泣き崩れるー

茜が、苦しそうに「せんぱい…いたいです…」と
虚ろな目で呟いているー

”時間切れぇぇぇ~~!あははははっ”

時間切れーー
武器だらけの部屋にいた甲冑が”0”の表示と共に、
刀を持ったまま動き出したー

”殺されるー”

真桜はそう思ったー

「--貸して!」
親友・由紀菜が、真桜が茜を斬った刀を拾って、
動き出した甲冑に向かっていくー

「--わたしはこんなところで死ぬわけにはいかないの!」
由紀菜が叫ぶー

「-あ…あ…」

真桜は、泣き崩れたままー
真桜に斬られた後輩・茜は、もう動かないー
目から涙をこぼして、茜は死んでいたー

楽しそうに見えたのはー
単純に、茜の性格ー。
お風呂で真桜を見つめていたのも、
単純に、先輩に対するあこがれからー

「--ぐぼぉぉぉ!」
由紀菜が刀を持つ甲冑に串刺しにされて、
ごみのように、放り投げられるー

リビングに、無残な由紀菜の身体が、
横たわるー

由紀菜も、もう死んでいるー

「いやああああああああああああ!!!!」
幼馴染・彩智が、悲鳴をあげながら
玄関の扉を開いて、宇宙空間のような場所に飛び込むー

その瞬間ー

彩智の身体は、まるで、パズルのように分解されてー
泡のようになって消えてしまったー

た   す   け

と、言い残してー

「-----あ…ああああ」
一人になってしまった真桜ー

”正解は~~~”

男の声が響くーーー

「--ぼくは、ここだよ」
真桜の口から声が出るー

「--!?!?!?!?」
真桜が驚くー

”驚いたかい?
 僕はずっと、君に憑依してたんだ。
 君の意識と自由は、そのままにした状態でね。

 だから、君たちが助かる方法は、
 君が、死ぬことだったんだよぉ!

 へへへへへ

 まさか自分が憑依されているとは
 思わなかったよねぇ~

 ざんねんざんねんー!

 このかくれんぼは、僕の勝ちだー!”

「--そ、、そ…そんな…」
真桜が呟くー

”じゃ、この身体は貰うよ!
 僕は、真桜として、現実世界に戻って
 楽しい女子高生ライフを送ることにするよ!

 じゃあね、真桜ちゃん!

 おやすみー
 良い夢をー”

ブチッー

真桜の意識は、途絶えたー

もう、何も感じないー

身体も、心も、全部、乗っ取られてしまったからー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依されていたのは…!
予想通りの人も、予想外の人も、
お読み下さりありがとうございました~~!!

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憑依<潜ム者>

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