人気者のクラスメイトの身体を奪ったはずなのにー?
どうしてー?
”変わらない現実”が
そこには待っていたー。
---------------------
「------」
昼休みー
晴美は、教室の机で、顔を伏せて
寝ているふりをしながら
昼休みが終わるのを待っていたー
貧乏ゆすりをしながら机に伏している晴美を見て、
元親友の真生子も表情を歪めるー
「晴美…すっかり変わっちゃったよね?」
他の友達と話す真生子。
「うん。なんか別人みたい」
真生子と話している友達も頷く。
髪もぼさぼさになった晴美は
クラスで孤立していたー。
最初でこそ、晴美が積み上げてきた人間関係が
あったものの、晴美に憑依した昭夫は
一瞬でそれを壊してしまったー。
理科の実験でグループ分けをする際にも、
晴美は”余りモノ”になったー。
憑依する前と、何も変わらない。
「みんな、遠慮しなくてもいいのよ~?」
晴美が笑みを浮かべながら言う。
”人気者の晴美”
そんなポジションを手に入れた昭夫は、
元々の性格の悪さに加えて
高飛車な部分まで出てきて
さらに”最悪の性格”になってしまっていた。
「--あんたと組みたくないの」
友達だった女子の一人が言う。
「--ふ~ん、ま、わたしにはいくらでも友達いるし~!
わたし、かわいいし~!」
晴美が挑発的に言う。
だがー
晴美にはもう、友達なんていない。
晴美に憑依している昭夫にだって、
それは分かっていたー。
けれどー
それを認めることもできないー。
28点ー。
テストの点数も下落したー。
先生にも心配される始末。
「-わたし、勉強しなくても余裕なんで」
晴美が悪い雰囲気で、そう返事をする。
先生は「あのなぁ…」と、心配しているがー
晴美は聞く耳を持たず、成績はさらに落ちていくー
家庭内でも両親が晴美の異変に気付き、
心配してくれたが、
「ウザいんだけど!わたしの人生に口出ししないで!」と
反抗的な態度を取って、
家でも部屋に閉じこもるようになったー。
全てー
2か月もしないうちに、
晴美が積み重ねてきた全てを
昭夫は失ってしまったー
これでは、女子になっただけで、
何も変わらないー
晴美が、昭夫になっただけだー。
「--あ~~♡ きもちいいなぁ~~♡♡♡」
それでも”変わらない現実”を認めることができない晴美は、
次第に女体のエッチの快感に溺れて行ったー
毎日毎日帰宅すると
晴美の身体を弄びまくる日々ー。
しかしー
晴美自身の身体の可愛さも
失われていき、
やがて、別人のようになってしまうー。
まるで、昭夫の醜悪な心を
現わしているかのようにー…
体重も増えて、
表情にも覇気がないー
肌も髪も、ダメージだらけだ。
「---くそっ」
晴美は舌打ちする。
「お前はもう、僕のものなんだ!」
晴美の身体を叩く晴美ー。
この2か月で、
晴美を乗っ取った昭夫がこんな状態に
なってしまったのは、晴美のせいだと、
昭夫は責任転嫁した。
「-なんだよ!所詮お前の人気なんてこんなものか!」
鏡に映る晴美を殴りつける晴美ー。
昭夫は、あくまでも自分の性格の悪さには気づかない。
「クソ女!クソ女!騙された!詐欺だ!」
晴美が怒り狂った様子で叫ぶー
”晴美の人気は、実はたいしたことなかったんだ
騙された!
もっと人気ある女子に憑依すればよかった!”
そう思った昭夫ー。
誰に憑依しようと、
こうなることは、変わらないのにー。
やがて、晴美は学校で陰険な嫌がらせを受けるようになり、
不登校になった。
家でポテトチップスを食べまくり、
コーラを飲みまくりー
太り切った晴美ー
もはや、晴美の要素は何も残されていなかったー
「---くっそ…くそっ!くそっ!くそっ!」
晴美は怒り狂っているー。
使えねー身体だな!
そう思いながら、
昭夫は、日々、憎しみを募らせて行ったー。
そして、ある日思いつくー
”この身体にお仕置きしてー
また別の身体に憑依するかー”
とー。
昭夫の身体はこん睡状態に陥ったままー
晴美の身体は思った以上に”無能”だったー
友達はいなくなったし、
テストの点も取れないし、
太りやがった。
本当に使えない、ごみみたいな身体だ。
昭夫は晴美に憑依したあとは、
好きに幽体離脱できるような状態ではなく、
晴美から抜け出すことはできなかった。
だがー
だがもしも、この身体から抜け出すことができればー…
晴美は笑みを浮かべるー
役立たずの晴美の身体にはお仕置きが必要だし、
もう一度幽体離脱するには、この身体を壊す必要があるしー。
昭夫はそう考えるー
そしてーー
”自殺しちゃお”
晴美は、そう呟いて、笑みを浮かべたー
こんな思いをさせた晴美の身体に仕返ししないといけないし、
他の身体に憑依したいー
もしかしたら死ぬかもしれないけれどー
こんなクソみたいな人生なら、それでもいい。
ぶくぶくに太った晴美は、
適当な服を着ると、そのまま外に出て
近くの交差点に向かう。
「使えない身体だなぁ、本当に!罰ゲーム!」
一人でそう叫ぶと、
勝手に乗っ取って、勝手に孤立して、挙句の果てに逆恨みした昭夫は、
晴美を、交差点の真ん中に向かって走らせてー
そして、その身体を”破壊”したー
トラックにはねられた晴美は即死したー
晴美の身体から、光のようなものが
飛び散るー。
昭夫の霊体だー
”やった!”
昭夫は思うー
死ななかったー!
これは、この前と同じ状況だー。
晴美の身体は無能だったー
仕返しして壊してやったー
”誰がいいかな”
昭夫は、考えるー。
「--真生子ちゃんがいいか…ふふ」
晴美の親友・真生子もクラスでは人気が高いし、
成績も高いー
毎日がとても楽しそうな子だ。
晴美みたいに、人気が落ちることもなさそうだしー…
昭夫は、真生子への憑依を考えるー
真生子を乗っ取ったところで、
結果は”同じ”なのにー。
「・・・・・・・---」
昭夫は気づいていないー
晴美の身体が死んだときー
”もう1つ”
霊体が飛び散ったことにー
・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
真生子を乗っ取った昭夫は、
クラスメイトたちと談笑していたー
「晴美、死んじゃったんだってね~!
自業自得だよね!ウケる~!」
ゲラゲラ笑う真生子。
周囲の友達は、少し引いているー。
晴美の態度は、急に悪くなったし
みんなも憑依されたあとの晴美とは
距離を置いていたが
真生子のあまりにも無神経な発言に
周囲は呆れていた。
「ま、わたしの方がかわいいし~!」
ゲラゲラ笑う真生子。
同じことを、昭夫はまた繰り返そうとしているー
真生子の身体を乗っ取って
その可愛さや人気を手に入れたのにー
また、それを”壊そうと”しているー
「--みんな」
担任が入って来るー。
「--え?」
真生子が表情を歪めた。
「--下田が目を覚ました」
下田ー?
真生子は首を傾げた。
下田 昭夫ー
つまり、自分が目を覚ましたのだ。
「---は?」
真生子は思わず声をあげてしまう。
”僕”は、真生子に憑依している
なのに、目を覚ましたとは?
しかも、昭夫は学校に近いうちに復帰するというー。
”キモイ昭夫が帰ってくる”
クラスメイトたちはそんな風に話していた。
元々の昭夫は、既に孤立しているー
だがー
復帰した昭夫は、とてもさわやかな感じだったー
最初でこそ、周囲から避けられていたものの、
だんだんと昭夫を嫌がる者はいなくなり、
容姿も清潔感が増し、
いつの間にかー
昭夫はクラスの人気者になっていたー
「----は???」
真生子に憑依している昭夫本人は
舌打ちせずにはいられなかったー
いったい-
どういうことなのか?
真生子に憑依して1か月ー
真生子は既に友達を失っていたー
晴美に憑依したときと、同じー
人気者になった昭夫。
「--なんで???」
真生子は舌打ちをする。
昭夫の周りには、男女問わずクラスメイトが
集まっている。
自分が昭夫であるときには
誰も集まらなかったのにー。
そもそも、昭夫は僕だ。
僕は今、真生子を乗っ取っている。
なのに、何故??
何故、昭夫の身体が動いているのか。
「---……チッ」
真生子は舌打ちをした。
その日以降、真生子は昭夫に
執拗な嫌がらせをし始めた。
まだわずかに残っていた友達を利用して
昭夫を徹底的に追い詰めていくー
いつしかー
穏やかな感じだった真生子の顔つきは、
いじわるそうな顔つきに豹変してしまっていたー
友達も離れー
昭夫をいじめるどころか、逆に自分の
孤立が深まってしまうー。
「--くそっ!くそっ!くそっ!」
髪の毛を、鬼婆のように乱しながら
狂ったように、一人呟く真生子ー。
「----ーーーいい加減、認めたら?」
背後から声がしたー
振り返ると、そこにはー
自分…昭夫がいた。
「--な、、なんなのよあんた!」
真生子として叫ぶー
すると、昭夫が呟いたー。
「--わたしは…晴美」
ーーー!?
真生子に憑依している昭夫は驚く。
「--えっ!?」
昭夫が言うー
「…わたしの身体が死んだとき…
わたしに憑依していた下田くんだけじゃなく、
わたしの魂も、下田くんと同じように、
宙に放り出されたの」
昭夫が、晴美の身体で車に魅かれて
晴美の身体が死んだとき、
昭夫だけではなく、晴美の魂も
宙に放り出されたのだという。
「--憑依されてる間の記憶は全部
あったから…わたしは自分に何が
起きたか全部わかった」
昭夫が言う。
「だからー
わたしの身体は無くなっちゃったから…
代わりに、下田くんの身体を貰ったの」
身体を失った晴美は、
昭夫に憑依して、昭夫の身体を奪ったー
誰かの身体を奪うつもりは晴美にはなかった。
だから、本当は嫌だったけれど、
自分の身体を奪った昭夫の身体を奪った。
晴美を乗っ取った昭夫が、晴美の身体を死なせたことで、
逆に乗っ取られて自由を失っていた晴美の意識を
自由にさせてしまう結果になったー
「---わかったでしょ?」
昭夫の姿をした晴美が言う。
「--下田くんが孤立していたのは
身体のせいじゃないー。」
昭夫が言うー
確かに、今の昭夫は人気者だー。
”昭夫の身体”でも、人気者になれるのだー。
「---くそっ!黙れ!」
真生子に憑依している昭夫が叫ぶ。
「---いいえ。黙らない。
わたしの身体を乗っ取ってー
真生子の身体を乗っ取ってー
結果、どうなったの?
ちゃんと、現実を受け入れなさいよ!」
昭夫が叫ぶー。
晴美の身体を乗っ取った昭夫ー
でも、数か月で晴美としての人望を全て失ったー
可愛さも、頭脳もー
真生子の身体を乗っ取った昭夫ー
真生子の身体でも、昭夫は同じことを繰り返そうとしている。
「--うっ…ううううううう」
真生子はそのままその場に蹲る。
「----……」
昭夫になった晴美は、
悲しそうな表情を浮かべるー
昭夫の身体を奪ったとは言え、
もう、自分は晴美としての人生を送ることはできないー
家族にもー
友達にもー
”自分が晴美”なんて、言えないー
それでも、晴美は悲しみを無理やり乗り越えてー
明るく生きていくと決めたー
「---真生子のこと…絶対助けて見せるから」
昭夫はそう呟くと、そのまま立ち去って行ったー
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
夕暮れ時ー
砂浜で、一人、真生子が立っていたー
僕はーー
僕はーーーー
昭夫としても
晴美としても
真生子としても
誰になってもー
結局、何も変わらなかった
クラスで孤立してー
家族間の関係も悪化してー
勉強もできないし、
何もできないー
「ははは…何も…」
真生子が泣き笑いの表情を浮かべながら呟く
「僕は…誰になっても、変わらないんだな…」
”変わらない現実”
その現実をやっと受け入れた昭夫は、
真生子の身体で海を見つめながら
一人、涙を流し続けたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最初からここで終わる予定でしたが、
書いてみたら、なんとなく
後日談が書けそうな雰囲気…?
(書くかどうかはまだ決まってません!)
お読み下さりありがとうございました~!
コメント
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カラダを使いこなせなかったギニュ○隊長を思い出しました。
素材は良くても素材の良さを引き出すのも自分自身ってことですよね。
そう分かってるけど
可愛くて美人でスタイル娘に憑依して好き放題したいです笑
3日間でいいから笑
SECRET: 0
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コメントありがとうございます~!☆
素材の良さを生かすのは大変デス~
でも、
3日間なら…
何をしても大丈夫そうですネ!!