<憑依>変わらない現実②~人気者~

クラスの人気者の、晴美を
乗っ取った昭夫ー。

容姿もー
人気もー
何もかも奪った昭夫は、
晴美として人生を満喫する…。

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「おはよ~~~!」
晴美は、嬉しそうに挨拶をするー。

もう、自分は昭夫ではないー
昭夫自身の身体はこん睡状態のまま
病院送りになった。
だが、そんなことはどうでもいいー

今の自分は、晴美なのだからー

「あ、晴美おはよ~!」
友達の真生子をはじめとする
女子たちが、晴美を輪の中に入れてくれるー

女子とこんなに密着して
お話できるなんて…

晴美になった昭夫はそんな風に思いながら
ニヤニヤする。

女の身体でいることに、
すごくドキドキするし、
今でも晴美のー
いいや”自分の”胸に手が触れるだけで「あっ!ごめん!」と
たまに叫んでしまうー
着替えるときは、つい目を瞑ってしまうし、
お風呂のときは、申し訳ない気持ちになってしまう。

でも、もうそんなことを考えなくてもいい。
自分は、晴美なんだから。

「--晴美~!なんか今日、寝坊した?」
真生子が苦笑いする。

「え?」
晴美が返事をするー

真生子以外の友達も苦笑いするー

メイクしてないし、
髪の手入れが出来てないし、
服が乱れているのだと言う。

「え~?そうかな~
 細かいことは、どうでもいいじゃん~!」

晴美になったからかー
美貌、人気、頭脳ー
全てを手に入れた昭夫は、
積極的…とまでは行かないものの
周囲のクラスメイトにも溶け込めるようになっていたー

”やっぱさ、自分の性格が悪くなるのも
 容姿のせいなんだよ”
昭夫はそんな風に思い始めていたー。

「細かいことって~?
 女子には日ごろの積み重ねが大事でしょー!」

真生子が苦笑いしながら言う。

他の友達も”サボってると、可愛くなくなっちゃうよ~”と
苦笑いしている。

「--あ~!みんな、わたしが可愛いからって
 負け惜しみ言ってるんでしょ?」
晴美は、ポーズを決めながら、そう言い放つー

本来の晴美はそんなことは言わないー
だがー
今の晴美は、見た目と記憶をついでいても
”こういうとき、晴美が何て反応するのかー”
心の部分までは、分からない。

だからー
昭夫らしい反応をしてしまうー

「----自分で言う~?」
苦笑いする周囲ー

晴美は、人気者だー
友達も多いー
優しくて、気遣いもできるー

今までの”積み重ね”がそこにはあるー

だがー
晴美になった昭夫は気づいていないー

晴美が1年以上かけて積み上げてきた
高校での”人間関係”に
少しずつヒビを入れていることにー。

「--ないしょだからね!」
真生子が、好きな男子がいる、と晴美に
話をしてきた。

相談を終えた真生子は、そう呟くー

だがー
元々八方美人タイプの昭夫は、
晴美になってから、さらにその癖が強まっていたー

面白い話を聞くと
”他の子がそれを知った時の反応”が
どうしても気になってしまうのだー。

昭夫自身には、友達もほとんどいなかったから、
告げ口する相手もいなかったがー
晴美になった今ー
告げ口する相手がたくさんいるー

「ねぇねぇ聞いてよ~!」
晴美は嬉しそうに他の友達に
真生子の”好きな男子”の話をバラしてしまう。

「え~!?ほんとに~!?
 意外~!」
晴美から告げ口された友達が
真生子の恋愛事情に驚くー

「でしょ~!意外意外~!」
友達がいなかった昭夫にとって
友達だらけの晴美の環境は新鮮で、
有頂天になっていたー

”やっぱ容姿が恵まれてるって最高”

そんな風に思う晴美ー

しかし、昭夫に友達ができなかった理由は
”容姿”が一番の原因ではないー。
その理由は”性格”にあるー。

そのことを、昭夫は全く自覚していないー

「--ねぇ!晴美!ひどいよ!」

数日後ー
真生子が怒りながら晴美に近づいてきた。

「え~?なにが~?」
晴美は、スマホをいじりながら笑うー
友達とLINEを交換するのも、新鮮だったー
LINEスタンプをたくさん買ったり、
晴美の貯金を使って、いろいろ買ったりして
毎日を楽しんでいるー

「--言わないでって言ったよね!?
 晴美だから、信用していったのに!」
真生子が、”恋愛話”を周囲に言いふらされたことに
気付いて、叫ぶ。

「--だって~!おもしろいんだもん!」
悪気無く言う晴美ー。

「--は?」
真生子の表情が歪むー

「--他にも面白い話あったら、聞かせてね!」
”自分が悪い”などと、夢にも思っていない晴美ー

「--あんた、最低」
真生子は舌打ちしてからそう言うと、
そのまま不機嫌そうに立ち去って行ってしまったー

昼休みになると、
晴美は友達と一緒に、真生子のことを”逆切れ”と
笑い物にしていたー

「真生子、逆切れしてて笑えるよね~!」
晴美がニヤニヤしながら言う。

だが、他の友達の反応は薄めだ。

「---は、、晴美…あれはちょっと良くないと思うよ?」

「最近、晴美…なんか変じゃない?」

友達が口々に言う。

「え~~?みんなまでどうしたの~~~?
 ふふ、人気者ってつらいなぁ~!」
晴美は笑いながら
髪を掻きむしるー

髪の手入れも十分にしておらず、
深夜アニメをコーラを飲みながら楽しんでいる最近の晴美ー

寝不足かー
お手入れ不足かー
晴美の綺麗な髪は、既に傷み始めていたー

・・・・・・・・・・・・・・・

「-たっだいま~!」
制服を脱ぎ捨てると、
洗濯機の方に畳もせずに放り投げる晴美ー

「--ちょっと~!お姉ちゃん!最近適当すぎだよ~!」
妹の智恵があきれ顔で言う。

「-いいじゃん!いいじゃん~!」
晴美は、下着姿のまま部屋に駆け込むー

「ふ~~~!」
冷蔵庫から持ってきたコーラを下着姿のまま
飲みながら、スマホをいじる晴美。

「あ~!このLINEスタンプも買っちゃお~!」
”浪費癖”のある昭夫は、
晴美を乗っ取って、晴美に貯金があると知るや否や
”お小遣いがこんなにある”と大喜びして
どんどん欲しいものを購入しまくっていたー

そのせいで、晴美が一生懸命貯めた貯金は
既に底をつきつつあったー

「--ん~~」
鏡を見る晴美。

「ちょっと太った?」
晴美が首をかしげるー
ポテトチップスの袋から
ポテトチップスを取り出してそれを口に運ぶー

「ま、気のせいか~」
晴美は笑いながら適当に服を着ると、
胸を少しだけ触ってから、
昨日、本屋で買ってきた漫画を読みながら
ゲラゲラ笑い始めたー

途中で母からお使いを頼まれたが
晴美は”面倒くさいからパス~”と笑いながら答えて
そのまま漫画を読み続けたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

間近に迫った社会科見学の
グループ分けー

晴美は満面の笑みを浮かべていたー

晴美はいつも、たくさんの友達から
声がかかっているー
男子からもー

昭夫は、こういうグループ分けが苦手だった。

どうせ、誰からも声がかからないからだ。
別に、それはそれで構わない。

こんな”愚民”たちと一緒に行動したくないし、
一人で行動してもいいぐらいだ。

でも、先生は”誰か一緒にならないとだめ”と言うし、
先生が憐みの目で、どこかのグループに昭夫を入れて、
昭夫が入ったグループは”余りモノ”グループだ。

だが、今は違うー

”愚民”どもは、晴美になった僕に、いいや、わたしに
声をかけるー。
頭を下げてでも、晴美にグループに
入ってほしいと言うだろうー。

「晴美~!」
友達の一人が近づいてくるー

「いっしょのグループになろ~?」
笑う友達ー

晴美はにっこりしながら、
「グループになってください~!でしょ?」と
返事をしたー

冗談のつもりだー。
だがーー
相手の気分を害してしまった。

「え…??あ、じゃあいいや」
その友達が立ち去ってしまうー

「え~?損するよ~?」
晴美は、笑いながらその友達に声をかけるー

だが、その友達は別の子を誘って
グループになってしまったー

晴美は余裕をかましていたー
だがーー

高飛車な態度を取っているうちに、
ついに残りのグループが少なくなっていくー

「あ~、ちょっとやりすぎたかな」
晴美は苦笑いしながら真生子に声をかける。

「真生子~!いっしょになろ~!」
晴美が言うと、
真生子は、「あ、ごめん。わたし、約束があるから」と
足早に別のグループに入っていくー

”あ…あれ?”
そう思っているうちにー
晴美はいつの間にか”余りモノ”になってしまっていたー

幸い、”大人しい女子グループ”の枠が
余っていて、そこに入ることはできたのだが、
晴美はプライドを傷つけられた気分になったー。

次第にー”風向き”が変わるー
人気者だったはずの晴美はー
だんだんと教室で一人になるようになり、
晴美の周りに集まる友達の数が減ってきたー

「----」

さらにー

”晴美の頭脳を手に入れた”
と調子に乗っていた昭夫は、
今まで通り”まったく勉強をしなかった”

だからー

「---”55点”」

昭夫からすれば、まだ”高い”点数なのだが
高い成績を誇っていた晴美からすれば
”絶望的”な点数だったー

「--あの先生、テスト難しすぎ~!」
笑う晴美。

だがー

「-ーーー」
他のクラスメイトたちはそこそこの点数を取っているー

「--いつもより、簡単だったよ?」
友達の一人が言う。

確かに、平均点もいつもより高いー。

「--あれ…?おかしいな…」
晴美が苦笑いするー

”え?なんで?”
晴美に憑依した昭夫は戸惑う。

それもそのはずー
”憑依した時点までの学力”は確かに高かった。

でもー
晴美を乗っ取ってからの昭夫は、
全く勉強していないー

だから”乗っ取るまでに晴美が学んだこと”以外は
ほとんど何も覚えていない状態だった。

テストの点数が下がるのは、当たり前なのだ。

「--あはっ!まぐれ~!」
他の友達のことを”まぐれ”と言い放つ晴美。

「--わたしの方が頭いいもんね~!
 みんなもそう思うでしょ!?あはっ!」
悔しいという気持ちから、晴美は負け惜しみを口にするー

周囲にイヤな雰囲気が流れる。

「--晴美…最近、なんか、イヤな感じになったよね」
友達の一人が言う。

「え?嫌な感じ?どこが!?わたし、人気モノだし?かわいいし!」
自分のことをかわいいと言い放つ晴美ー

晴美の孤立はさらに深まっていくー

さらにー
家族間でも晴美は孤立し始めていたー

「--今、話しかけないで~!」
晴美は、スマホでゲームをやりながら
家族のことを無視するー

妹の智恵がご飯だよ!と何度も晴美を呼ぶ。

「--うるさい!お前のせいでミスったじゃん!」
声を荒げる晴美ー。

つい、昭夫としての素が出てしまうー

「--お前…?」
智恵が戸惑いながら叫ぶ。

「最近のお姉ちゃん、変だよ!
 ずっとゲームしてればいいじゃん!」
智恵は怒って、そう言い放つと、そのまま晴美の部屋の扉を閉めたー

「--ふん!うるさい妹だなぁ!」
晴美はそう叫ぶと、
そのままコーラを飲みながら
スマホのゲームを続けるのだったー

不規則な生活ー

晴美の肌や髪は傷みー
体重も増えて、少しぽっちゃりしてしまったー

「---あれ…」

1か月ちょっと経過したころにはーー

晴美は、何もかも失っていたー

友達もー
家族の絆もー
可愛さもー
頭の良さもー

「---え…?」
晴美は、
晴美に憑依している昭夫は、
ようやく、全てを失ったことに気づいたー

晴美の身体を
人生を手に入れてもー

結局ー
”行きつく先”は、同じー

何も、変わらなかったー

「---なんで…?」
それでも、晴美を乗っ取った昭夫には
理解できなかったー

”自分の性格の問題”だなんて、
納得できなかったー。

「---は?どいつもこいつもクズばっかり!」

全てを周囲のせいにしてー
全てを憎んでー
晴美はそう叫んだー

②へ続く

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あっという間に奪ったモノを失ってしまった昭夫くん…!
そんな彼の運命は…?
続きは明日デス~

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