<二重人格>精神崩壊~あの日の約束~③(完)

元・二重人格者の優香ー。
そんな彼女の周辺で起きた”とある騒動”とは…?

※精神崩壊(https://hyouikuukan.blog.fc2.com/blog-category-169.html)の
 後日談デス!
 二重人格要素は既に解決してしまっていて、
 ジャンル違いになるので別サイトでこっそり公開していましたが
 こちらでも公開していきます!

※あくまで後日談なので、TSF要素や二重人格要素は、ほぼありません。

※本日の「ボーリングポゼッション②」はこのあと投稿します!

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僕は優香の様子が気になって、
後を追いかけていた。
辿り着いたのは空き教室。

中では
手芸部の上原真珠美さんと依田 雅彦君が
何やら言い争いをしているようだった。

それを見かねて、優香が中へと入って行く。

それを見て、僕も教室の目の前まで行く。
すると中から会話が聞こえてきた。

「上原さんーーー
 二重人格みたいなんです」

依田君が言う。

僕は事の成り行きを見守るー。

でも、僕には”分かってしまった”

もう一人の優香との壮絶な日々を
過ごした僕には分かるーー。

上原さんはーーーーー。

そして、もう一人の自分と
一番近くで過ごした優香も
”それに気づいているハズだー”

僕は、そう思いながら、中の様子を注視した…。

・・・・・・・・・・・・・

「断る?」
上原さんが笑う。
さもおかしい、と言った様子で…。

「そうよ…お断りするわ」
私は、冷静にそう告げた。

「せ、先輩!でも、それじゃあ、
 上原さんが…」
暴行を受けて、床に座り込んでいる依田君が言う。

「そうよ、アンタ、真珠美がどうなってもいいんだ??

 あたしは本気でやるよ?
 真珠美の名を語って、退学届を提出して、
 退学してやるわ!

 そうなっても良いの?」

上原さんのもう一つの人格が私を挑発する。
アキと名乗った彼女。

私が誠吾と別れなければ、真珠美に代わって、このアキが
退学届を提出し、真珠美を自ら退学に追い込むのだという。

でも、私は動じなかった。
何故なら、そんな事は絶対に”できない”からー。。

「依田君…大丈夫よ。
 上原さんは退学になんてならないから」
私は力強くそう言った。

しかし依田君は焦っている

「いや、でも先輩!
 アキが、退学届を出したら、上原さんは…!」

その言葉を聞き、上原さんは笑みを浮かべている。
勝ち誇った表情というのだろうか。

ーーーそろそろ終わりにしなくちゃ。。

私は意を決して言った。

「---もう止めにしましょう?上原さん」

私の言葉に教室が静まりかえる

「はぁ??アンタバカ?
 あたしは真珠美じゃないって
 言ってるでしょ!」

上原さんはなおも食い下がる

そして、私の方に近づいてきて、
私の制服を乱暴につかんだ

「ねぇ?
 アンタにとって、真珠美がどうなっても
 良いのかも知れないけどさぁ?
 それで良いの?アンタ部長でしょ?

 ホラ、早く!
 あたしに謝りなさいよ!
 でないと本当に退学届を…」

上原さんの声に焦りが見える。

「ひどい先輩ね!最低!
 アンタ、二重人格を甘く見てんでしょ?
 お遊びだと思ってんでしょ?
 ねぇ、なんとか言いなさいよ!」

「----ふざけないで!」
私が語気を強めて言った。

「……!」
目の前にいた上原さんが驚き、手を離す。

依田君も驚いている。

普段、怒らない私が怒ったことで
2人とも動揺している様子だった、

「ねぇ、上原さん、いい加減にしなさいよ!」
私が強い口調で言うと、
上原さんは言葉を失っている

私はーーあの時の事を思い出しながら言った。

「---私ね、2年の頃、、
 もう一人の自分が心の中にいたの。」

私が言うと、依田君が驚いて声をあげた

「え??どういうことなんですか?」

私は、依田君の方を見て言う。

「上原さんが今、言っている二重人格だったの。。
 もう一人の私は、誰に対しても攻撃的で、
 いつも刺々しくて、周囲にあたってばかりいた…。
 私とは本当に正反対だった」

私の言葉に依田君も上原さんも、言葉を失っている

「本当に大変だったー。
 でも、誠吾や、
 他のみんなが私を支えてくれたー。

 こうして今、私がここに居られるのは
 みんなのおかげー。」

そして私は続けた。

「だから私には分かるのーーー。
 上原さんーーー
 二重人格なんかじゃ、、、ないでしょ?」

私がそう言うと、上原さんに動揺の色が浮かぶ

「・・・・!!」

そう、上原真珠美さんは二重人格なんかじゃない。
どこかで二重人格の事を知り、
自分で二重人格者を演じているだけ。。

時として、解離性同一性障害を
”演じる”人がいるーー。

理由はそれぞれ…。

ただ、友達や恋人を振り回したいだけの人もいればーー
自分の変身願望を果たすため演じる人も居るーーー。

「…ごめんなさい」
上原さんが涙を流してその場に座り込む

「え??上原…さん?」
依田君が信じられないという表情で上原さんの名を呼ぶ

「…私…本当は二重人格なんかじゃない…
 ただ、二重人格のふりをしていただけ!」

上原さんが依田君の方を見て言う。

「…じゃあ、僕に暴力をふるったのも…
 僕に退学するように言ったのも、、
 全部上原さんが…」

依田君は、嘘だ!と言わんばかりの表情で
放心状態になっている

私は、上原さんの方に近づいて行って
優しく言った

「上原さん…
 どうして二重人格のふりなんかを…?
 聞かせて・・・?」

上原さんはしばらく私の方を見ていたが、
意を決したのか、語りだした

「実は私…依田君の事が好きだったんです」

「え?」
依田君が驚いて顔を上げる

「でも、私、、みんなからは明るい子って
 イメージを持たれてますけど、本当は
 臆病で人見知りなんです。。

 だから、なかなか依田君に想いを伝えることも
 できませんでした…」

上原さんは私の方を見て、真剣に語る

「でも、、ある時、私のクラスの子が言ってたんです。
 田内先輩が、昨年度、二重人格だったらしい って…」

…それを聞いて私は思う。
田辺君が後輩に私の事を話したと言っていた。
それで、1年生の子たちにも広がったのだと。

「…それを聞いて、どんなのだろう?って思って
 調べたんです。。解離性同一性障害のこと。。

 田内先輩が二重人格だった時、
 住崎先輩は必至に田内先輩の事を想って、
 一生懸命だった…って聞いて…

 私もそうすれば、依田君が振り向いてくれるかなって…」

そこまで言うと、上原さんは
本当にごめんなさい、と言って、俯いた。

「……二重人格を演じて依田君に接するうち、
 自分でも止め時が分からなくなっちゃって…
 それで…
 田内先輩、、本当に、、すみませんでした」

上原さんが深々と頭を下げる。

「上原さん…
 そんなことしなくても僕は…」

依田君が寂しそうな表情で言う。

そういえば、依田君は家庭科室で私に言っていた。

上原さんの事が気になる、、、と。

上原さんがこんなことをしなくても、
2人は通じ合っていたのに…。

「上原さん、、」
私が上原さんに言葉をかけようとすると、
教室の入り口の扉が開いた。

「誠吾?」
誠吾だった。。
どうやら私を心配して、来てくれたみたい。。。

「…上原さん、、」
誠吾が上原さんに語りかける

「住崎先輩…」
上原さんが誠吾の方を見る。

「…僕ね、もう一人の田内さんに色々な事を言われた。
 別れよう、だとか、
 アンタは失格だとか、、
 ウザいとか…。

 本当に悲しかったし、辛かった。。

 好きな田内さんに、そんなことをされて、
 本当にーーー。

 だから上原さん、、依田君も本当に辛かったと
 思うんだ。。。

 上原さんに殴られたり、罵倒されたりーー。

 大切な人に、そういうことされるのは、
 本当に辛い事だからーーー。。

 だから、、上原さん、もうそういう事、
 しないであげてよ…」

誠吾がそう上原さんに言った。

誠吾の表情は悲しげだった。

もう一人の私と統合したあと、
私は空白期間の全てを知った。

私は申し訳ない気持ちでいっぱいだったし、
何度も誠吾に謝った。

でも、誠吾は決して、私を責めなかったし、
恨み言も何も言わず、
ただ私に
「優香が戻ってきてくれて本当に良かった」
と、いつも、前向きな言葉をかけてくれていた。

でも、今の誠吾を見て思う。
誠吾は私が思っている以上に本当に辛かったのだろうと…。

私なんかよりもずっと、
大変な思いをしたんだよね 誠吾は。。。

「………はい、本当にごめんなさい…」
誠吾の言葉を聞いて、上原さんは今一度、
謝罪の言葉を口にした。

その言葉、心からの言葉に聞こえた。
誠吾の想いが伝わったみたい。。
 
その様子を見ていた依田君が口を開く

「上原さん・・・
 僕は大丈夫・・・。
 本当の事を知れて良かった」

依田君が上原さんの方に近づいていく

「実はね・・・僕も上原さんの事が
 好きだったんだけど…
 僕も勇気がないから、全然言いだせなかった」

依田君が言うと、上原さんが驚く

「えっ…?」

「でもちょうど良かった。
 きっかけを作ってくれてありがとう 上原さん

 上原さん、良ければ僕と付き合って・・・くれないかな?」

依田君の思わぬ告白に、上原さんは驚く

「----うん、本当にごめんね」
上原さんは涙を流しながら頷いた

「ありがとう、誠吾」
わざわざ心配してきてくれた誠吾に
私はお礼の言葉を述べた

「ううん、勝手についてきてごめんね」
謝らなくても良いのに、誠吾が
申し訳なさそうに謝る。

本当に優しいなぁ…誠吾は。

私は背後を振り返る、
背後では
上原さんと依田君が嬉しそうに笑い合っていた。

「なんか…とんでもないきっかけだけど、、
 あの二人も良かったね」

誠吾は笑って言う。

「そうね…何だか不思議な2人だけど」
私は二人の方を見て微笑んだ。。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日、いつものように登校すると、

クラスメイトの一人が
話しかけてきた

「あ、田内さん?
 なんか1年の子が田内さんに用があるって、
 さっきから待ってるんだけど?」

そう言われて、私が振り返ると、
そこには上原さんの姿があった。

「先輩ーー
 色々とご迷惑をおかけしました」

上原さんが頭を下げる

「いいのよ、誰にだって、間違えはあるから」
私が優しく言うと、上原さんも笑みを浮かべた

「それで…
 今度、依田君と映画を見に行くことになったんですけど、
 私、彼氏とか出来るの初めてで、どうしたかいいか分からなくて…

 田内先輩、良ければ何かアドバイスを頂けませんか?」

上原さんはそう言って、頭を下げた。

アドバイスと言っても、
私もそんなにアドバイスできる立場じゃないんだけどなぁ…

…でも、頑張ろうかな。

「うん、私で良ければ」

そう言うと、上原さんは嬉しそうに「ありがとうございます」と
私に言ったーー。

ーーーーーーーーーーーーーー

「なんか、もうずいぶん 昔の事な気がするなぁ…」

放課後。
一緒に帰っていた誠吾が呟く。

「そうね…まだ1年経ってないのにね…」

でも、もう一人の私が存在した時間は
遠い過去の事のように思える。。

「…僕さ、優香を悲しませたら、
 もう一人の優香にぶん殴られちゃうから」

そう言って 誠吾は笑う。

あの日、最後にもう一人の私は、
誠吾に何て言ったんだろう?

彼女が私と統合するとき、
彼女が過ごした記憶も全て私の中に流れ込んできた。

けれどもーーー
あの最後の日、図書室で誠吾と話したときの会話はだけはーー
私の中に流れ込んでこなかった。

私は、
きっと、もう一人の私が、この世に存在した想い出として
持っていったのだろうと思っている。

ーー彼女は確かに生きていた。
けれど、、どこにも彼女が生きていた記録は残らない。

だからこそ、せめて私だけは、
彼女の事を忘れずにしっかりと生きていこうと思う。

彼女の分もーーー。

「誠吾」
私が呼ぶと、誠吾がこちらを見る

「ん?どうしたの?」

「これからもよろしくね」
と、私が言うと、
誠吾は「何だよ改まって~~」と言って
微笑んだ

おわり

・・・・・・・・・・・・

コメント

「フリしてる人」を見破る、というお話でした~!

後日談までお読み下さりありがとうございました!!

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