＜入れ替わり＞体調不良のからだ③～自暴自棄～（完）

体調不良の彼女の身体になってしまった彼氏ー

彼氏の身体になってしまった体調不良の彼女ー

二人の愛の行方は…？

---------------–

「ちょ…ちょっと…？」
順一郎（佳恵）は、佳恵（順一郎）の部屋の中に
入りながら、佳恵（順一郎）の姿を見て呟くー

マジックで身体中に「仮病女」だとか
「怠け女」だとか「仮病女参上！」だとか
文字が刻まれているー

しかも、酒臭いー。

「あっははははは…佳恵～！俺を見捨てていい気分か～？」
佳恵（順一郎）はだらしない格好でソファーに座ると
そのままビールを飲み始めた。

「ちょ…ちょっと…？」
順一郎（佳恵）は戸惑っているー

佳恵は、一時的に順一郎を突き放すことで、
体調不良の身体を味わってもらい、
”仮病”という考えを改めてもらうとともに、
横暴な態度が最近目立つ、順一郎に
少しでも反省してもらいたい、と
そう願っていたー

そして、そうしてもらえると思っていたー

だが、順一郎には逆効果だったー
”健康な身体を持ち逃げされた”だとか
”見捨てられた”だとか
マイナスの方面ばかりに考えて
佳恵への憎しみを募らせていったー

「さ～～！元に戻る方法を探すかぁ！」
胸を揉みながら笑う佳恵（順一郎）

ビールの横に置かれている
コーラを一気飲みすると
ポテトチップスを口に放り込んで
ゲラゲラと笑うー

完全に自暴自棄になっている佳恵（順一郎）－

大きなげっぷをしながら
ヘラヘラして順一郎（佳恵）の方を見つめるー。

「－－ねぇ…」
順一郎（佳恵）が呟いた。

「ねぇ！これは何なの！？」
順一郎（佳恵）は叫びながらスマホを見せるー

この家に戻って来る直前、佳恵の友人・樹奈子から
ＬＩＮＥが届いたー

そこにはー
”大変なことになってる！”という言葉と共に
写真が送られてきていたー

佳恵になった順一郎が、
ツイッターやネット上に佳恵の卑猥な姿や
”仮病女でーす！”と、身体中に”仮病”と刻んだ姿の自撮りなどなど
大量のエッチな写真や卑猥な写真を公開してしまっていたー

「－－なにって？お前へのお仕置きだよ！佳恵」
佳恵（順一郎）が、ニヤニヤしながら立ち上がるー
髪もぼさぼさで、佳恵の身体なのに、別人に見える。

「－－…なんでこんなひどいことするの…？」
順一郎（佳恵）が涙を流しながら言う。
ボタボタと涙を流す順一郎の姿を周囲が
見たら、驚くだろうー。

「－－酷いのは、お前だろ！この仮病女！」
大声で怒鳴る佳恵（順一郎）。

「仮病じゃないって何度言えばわかってくれるの！？
　それに、今だって、耳鳴りとかめまいとかしてるでしょ！」
順一郎（佳恵）が叫ぶー

「－－－」
佳恵（順一郎）は、耳鳴りとめまい、頭痛を感じながらも叫ぶー

「うっ…うるせぇ！」
自分が間違っているのは分かってはいながらも、
プライドが高い順一郎は、それを認められなかったー

「－－仮病で俺をだまして
　その上、勝手に家出しやがって！
　お前なんか、顔と身体以外、なんのとりえもねぇくせに
　調子に乗るんじゃねぇ！」
佳恵（順一郎）が叫ぶー。

「－－ーーーひ、、ひどい」
順一郎（佳恵）が悲しそうに呟くー

「－－ネットに載せた写真はお前へのお仕置きだ！
　佳恵はこういう最低な女だって、みんなに教えてやるんだ！」

動画サイトには、エッチな姿で土下座して謝罪する
佳恵（順一郎）の自撮り動画まで投稿されていた。

「はははっ！お前の人生、滅茶苦茶だな！」
佳恵（順一郎）が叫ぶ

「－－さぁ、元に戻る方法を見つけようぜ佳恵！」
佳恵（順一郎）が笑いながら順一郎（佳恵）の手を掴んだー

パシッ！

「－！？」
佳恵（順一郎）が驚くー

「－－ほんと、最低」
順一郎（佳恵）はそう呟くと、荷物を手に玄関の方に向かう。

「－－あ？おい！どこにいくんだよ！」
佳恵（順一郎）の言葉に、
順一郎（佳恵）は振り返ったー

「仮病女で悪かったわね！
　もう、あんたには愛想つきた！
　さよなら！」
順一郎（佳恵）はそう呟くと、
そのまま玄関の扉を力強く閉めて
出て行ってしまったー

「え…」
佳恵（順一郎）は唖然とするー

”元に戻れる”

そう思い込んでいた佳恵（順一郎）は唖然とするー

「お、、おい！待ってくれ！佳恵！」
慌てて玄関からエッチな姿のまま飛び出す佳恵（順一郎）

ネット中に自分の痴態を晒してしまったー
この身体で生きていくことなんてできないー

「－－こ、こんな体調の悪い身体、返すよ！
　俺が悪かった！だ、、だから許してくれよ！な」
酒に酔って顔を赤らめた状態で、
アパートから立ち去ろうとする順一郎（佳恵）に
呼びかけるー

「ったく、仮病もいい加減にしてくれよ」
順一郎（佳恵）はそう呟いたー

以前、順一郎に言われた言葉を
そのまま返したー

「－－－！」
佳恵（順一郎）が表情を歪める。

「ま、、待ってくれ！身体、返してくれ！
　待ってくれ！！なぁ！」
佳恵（順一郎）の言葉に、
順一郎（佳恵）は「さよなら」と呟いて
そのまま足早に立ち去ったー

「うああああああああああああ！！！」
佳恵（順一郎）は大声で叫んだー

・・・・・・・・・・・・・・・

「－－元気出しなよ」
友人・樹奈子が、
順一郎（佳恵）のことを慰めるー。

「－－うん」
順一郎（佳恵）は落ち込んでいたー

順一郎と別れたこともそうだし、
自分の身体に戻れないことも落ち込んでいたー

「－－－－－－…
　そう簡単に、元気出せるわけないよね」
樹奈子は悲しそうに呟くー。

なんとなく、佳恵は、身体が男だから、と
樹奈子は気を遣って着替えを別の部屋で
したりしながら、順一郎（佳恵）と同居を
続けたー

「－－－」
ふさぎ込んだ状態のままの順一郎（佳恵）

身体もー
恋人も失ったのだー

いいやー
順一郎の身体で生きていくこということはー

友達もー
家族もー
何もかも失ったのかもしれない。

樹奈子のように、中身が佳恵だと
理解してくれる人は、少ないだろう。

「－－大丈夫？」
樹奈子が問いかけると、
順一郎（佳恵）は「うん」と頷いた。

近いうちに大学に復帰するつもりなのだという。

そしてー

「ほら、めまいもないし、頭痛もしないし
　耳鳴りもない！
　この身体、超快適だよ！」

笑いながら順一郎（佳恵）は身体をぶんぶんと動かして見せたー

”無理やり元気にふるまっている”
順一郎（佳恵）のそんな姿を見て、
友人の樹奈子は、悲しい気持ちでいっぱいになったー

「－－－」
樹奈子は決意するー

翌日ー
用事があると告げて家を順一郎（佳恵）に任せて
樹奈子は佳恵（順一郎）の家に向かったー

樹奈子は順一郎ともある程度親しいー

玄関をノックしても返事がなかったために
強引に家の中に入る樹奈子。

そこには、めまいが悪化して
寝込む佳恵（順一郎）の姿があったー

「－－き、、樹奈子…」
佳恵（順一郎）が、声を上げるー。

「－－あんた本当に最低。
　佳恵、すっごく悲しんでるよ。

　仮病女とか言ったみたいだけど、
　仮病じゃないってわかったでしょ？」

樹奈子が友人として、苦言を口にするー

「……」
佳恵（順一郎）は頭を押さえながら
不貞腐れた態度を取る。

「もう、俺は、終わりだ」
とー。

「－－はぁ」
樹奈子はため息をついて、
佳恵（順一郎）の方を睨む。

「－－あんたがいけないんでしょ！
　でもね、あんたみたいな最低な男でも
　佳恵はまだ、あんたのこと思ってる！

　わたしだったら絶対、もう、連絡も何もかも絶ちたいぐらいだけどさ、
　佳恵はホント、馬鹿みたいにあんたのこと思い続けてる！

　それなのに、あんたは…！」

樹奈子の言葉に
佳恵（順一郎）は呟く

「俺に謝れってのか？」
とー。

「そう」
樹奈子は即答した。

「俺が悪いってのか？」

「－－当たり前でしょ！」

樹奈子の言葉に、
佳恵（順一郎）は、ふらふらしながらその場に座り込む。

「－－……でもさ、、俺…」
佳恵（順一郎）はなおも、煮え切らない態度を見せるー

「－－もう、ダメだ…佳恵の動画も画像も
　ネットに出回っちゃったし、
　もうダメだ、どうにもできない…

　俺はこのまま変態女として…
　体調不良の身体で生きていくんだ…」

不貞腐れて自暴自棄になっている佳恵（順一郎）。

「だ～か～ら、それは自業自得でしょ！
　後悔したって、もう動画とか写真は
　どうにもならないんだから、
　とにかく、それを受け入れて生きるしかないでしょ！」

樹奈子の言葉に
佳恵（順一郎）は反論したー

「大体、佳恵がいけないんだ！
　入れ替わったあとに、家出なんかするから！」
佳恵（順一郎）は、なおも佳恵のせいにしようとして叫ぶ。

「あんたまだそんなこと言ってるの！？」
樹奈子があきれて佳恵（順一郎）の腕をつかむ。

「謝りなさい」

「－－俺は悪くねぇ！」
佳恵（順一郎）が、腕を振り払おうとした
その時ーー

「あっ！？」
「うわっ！」

二人は、バランスを崩して、
そのまま転倒してしまったーー

・・・・・・・・・・・・・

順一郎（佳恵）が、
樹奈子の家で、部屋の掃除をしていると
樹奈子が帰宅したー

「あ、おかえり～！」
順一郎（佳恵）が樹奈子を出迎えるー

「ただいま～！」
樹奈子がにこにこしながらそう答えたー。

「－－－あ、そうだ！樹奈子～！
　部屋、掃除しておいたよ～！」
順一郎（佳恵）が
とても楽しそうに、
満面の笑みで言うー

”こんな、笑顔、見たことないー”

樹奈子はそう思ったー

いいやー
”入れ替わって”樹奈子になった
順一郎はそう思ったー

”そうか　そうか　俺の前で見せなかった笑顔を
　友達の前では　見せるんだな”

卑屈になっていた順一郎はそう思ったー

「－－楽しそうだな？」
樹奈子（順一郎）が呟くー。

「－－え？」
順一郎（佳恵）が首をかしげると、
樹奈子（順一郎）が、突然大声を出した。

「－－俺から逃げられると思うんじゃねぇぞ！
　この仮病女！」
樹奈子（順一郎）が、順一郎（佳恵）の胸倉を掴むー。

「－－－ひっ！？！？え、、、き、、樹奈子！？」
怯える順一郎（佳恵）－

「へっへへへへ…今日から俺が樹奈子だ。
　仲良くしようね。　よ・し・え！」

順一郎（佳恵）を睨みながら、呟く樹奈子（順一郎）－

樹奈子の中身が順一郎になってしまったことに
戸惑いながら、順一郎（佳恵）は
震えることしかできなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2週間後ー

佳恵になってしまった樹奈子は、
頭を強く打ったため
病院で入院していたが、
ようやく退院して、
街に出てきていたー

（わたしは別に佳恵の身体でもいいんだけど…）

そうは思いながら
樹奈子になった順一郎が
佳恵に何かしていないか心配になった
佳恵（樹奈子）は、自分の家に向かうー

しかしー

樹奈子の家の前では
樹奈子の姿をした順一郎が、
順一郎の姿をした樹奈子に説教されていたー

「え？」
佳恵（樹奈子）は戸惑うー

「－－もうさ、わたし、健康な男子の身体なんだよ？
　今まで見たいにはいかないから！」
順一郎（佳恵）が言う。

壁ドンされている状態の樹奈子（順一郎）が悲鳴をあげながら
「ご、、ごめん、、ごめんってば」と
叫んでいるー

いつの間にか立場が逆転しているー。

佳恵になった樹奈子は、そんな二人を見ながら
笑いながら二人に声をかけたー

樹奈子になった順一郎は、
樹奈子の身体では、力が出ないので、
次第に大人しくなって、
順一郎になった佳恵に、ビシバシと叩かれるような
そんな関係になったー。

やがて、中身が佳恵の順一郎と
中身が順一郎の樹奈子は結婚ー

中身が樹奈子の佳恵は、二人の友人として
そのまま接し続けるのだったー

そしてー
細かいことを気にしないタイプの樹奈子は
佳恵の身体のめまいや片頭痛も
あまり気にせず、ふらふらしたら　ま、いっか
みたいな考えで体調不良ながらもうまく病気と
付き合い、次第に積極的に外出するようになっていったー。
中身が順一郎の時に佳恵の写真や動画がネットに流れて
しまっているが、樹奈子はそれもあまり気にしていなかったー。

結果的に3人はー
上手くバランスよく回る身体
を手に入れたのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

なんだか、変な感じに
うまく収まってしまった3人でした～☆！

めまいって怖いですよネ…
私もめまいでダウンしちゃうときがたまにあります…