同棲中の大学生カップル。
いつも体調不良な彼女のことを
彼氏は”仮病”だと、切り捨てていたもののー…?
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「うぅぅぅ…」
女子大生の福森 佳恵(ふくもり よしえ)は、
体調不良に苦しんでいた。
慢性的なめまいや頭痛、耳鳴りー。
そういったものに苦しんでいて、
寝込んでいることも多くなりがちな佳恵に対して
同居中の彼氏である男子大学生、緒方 順一郎(おがた じゅんいちろう)は
ため息をついた。
「--またかよ」
順一郎が言うと、寝込んでいた佳恵が「ごめんね」と呟くー
元々佳恵はバイトをしていて、家賃は
半分ずつ支払っていたのだが、
最近は佳恵の調子が悪いため
ずっと順一郎が家賃を払ったり、
生活費を払ったりしている。
佳恵も、体調の許す限りで、仕事をしたり
両親からの仕送りだったり、貯金を崩したりしながら
出来る限りのお金を出しているものの、
順一郎の不安は募るばかりだった。
「ったく、仮病もいい加減にしてくれよ」
順一郎の言葉に、
佳恵は「ご、、ごめん…でも、、本当に調子悪いの」と
悲しそうに呟く。
「--はぁ…いいよな。そうやって
調子悪いフリしてればいいんだから」
順一郎が首を振りながら言う。
元々、順一郎と佳恵は、高校時代からの知り合いで
仲も良かったのだが、
佳恵が体調を崩しがちになってしまってからは
その関係性は悪化しているー
最初は、佳恵のことを心配して
必死に佳恵を支えようとしていた順一郎も
今では佳恵を突き放すような感じになってしまっているー
「はぁ…」
佳恵が立ち上がってめまいの薬を飲むー
「ごめん……今日はもう休むね」
佳恵が、ふらふらしながらベットの方に向かう。
「そっか。じゃあ、ずっと休んでろよ」
順一郎が嫌味を言い放つ。
「--ごめん」
佳恵は悲しそうに呟いて、そのままベットに寝ころんだー。
順一郎が、佳恵に対してきつくあたるのは
”佳恵が仮病”だと決めつけているからー…
そして、もう一つは、佳恵のためにバイトの量を増やして
疲れているからー
と、いう理由からだった。
体調を崩しがちになってから、
佳恵は、病院で色々な検査をした。
だが、結局、悪いところは見つからなかったー。
そのため、順一郎は佳恵を仮病だと
思い込んでしまったのだった。
”怠け癖”
”調子悪いって言えば許されると思ってる”
”精神的におかしくなったんじゃないか”
そんな風に周囲にも言いふらしている始末。
だがー
佳恵は本当に体調不良だったー
激しいめまいや、頭痛、
ふらつきなど、辛い症状が続いているー
体調の良いときもあるものの、
こうして、急に体調が悪くなることもあるー。
「--……仮病女!」
順一郎が捨て台詞を吐いて、自分のベットの方に向かう。
「…違うんだってば…」
佳恵は辛そうにそう呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
佳恵のめまいは、内耳の異常等から、来る症状ー
命に関わる症状ではないものの、
めまいや耳鳴りなどの原因となり、
場合によっては慢性的に苦しみ続けることになることもある病気ー。
しかし、検査では明確に異常が示されることはなく、
悩まされているひとも多いー。
頭痛は、片頭痛ー。
佳恵の場合、命に関わるものではないものの、
定期的な激しい頭痛は、佳恵を苦しめていた。
こちらも、脳の検査を行ったとしても、明確な異常を
目視することは、できないー
彼女は、決して仮病ではなかったー
だが、順一郎からしてみれば
”検査に異常がない”=”健康”という考えであり、
佳恵が”仮病”にしか見えないのだー。
病院でも”異常はありませんね”と診断されただけで
具体的な病名を診断されず、
それが、さらに”仮病”と思い込む原因になっていたー。
「ーー」
大学でも暗くなりがちになった佳恵。
”早く直さなくちゃ”という焦り、
”順一郎との関係”
それらがー、
佳恵を焦らせ、
今度は精神的な部分や自律神経の部分で
体調を崩すー
という”悪循環”に陥っていたー
ある日ーーー
「いい加減にしてくれよ!」
順一郎が、声を荒げたー
普段穏やかな順一郎は、ここ最近、
変わってしまったー
仮病だと思い込んでいるからかー。
それとも、佳恵を救ってあげられないことに対する苛立ちかー。
「この仮病女!
もう、我慢できねぇ!
そんなに寝込んでたいなら、実家で寝てろよ!」
順一郎が叫ぶ。
「--ご、、ごめん…
で、、でも…仮病じゃないんだってば!」
佳恵が叫ぶ。
「--はぁ?検査しても異常なかっただろ!?
気のせいなんだよ!
頭おかしくなっちゃったんじゃないのか?」
順一郎が叫ぶ。
「ひどい…!こんなに辛いのに…!
順一郎にはごめんって思ってるけど、
そんな言い方しなくたって…!」
順一郎と佳恵が激しい言い争いをするー
「--はは!めまい?頭痛?笑わせんなよ。
どこも異常ないのに、そんなもので寝込むように
なるわけないだろ?
もうさ、出てけよ。
付き合いももう終わりだ」
順一郎の言葉に、佳恵は目に涙を浮かべながら言う。
「--が、、頑張るから…
もっと、、もっと頑張るから!」
佳恵は、無理してそう叫ぶ。
ふらっとめまいがして、頭を押さえると、
その仕草を見て、順一郎が笑った。
「お?都合が悪くなったからまためまいが来たのか?
ずいぶん都合の良いめまいだな!」
順一郎の言葉に、
佳恵は「ちがう…ちがうのに…!」と泣きながら言う。
「--おら!立てよ!」
順一郎が、佳恵を無理やり立たせようとするー。
佳恵が嫌がってもがくー。
その時だったーーー
「あっ…!」
佳恵がバランスを崩して、順一郎もそれにつられて
勢いよく、二人揃って転倒してしまうー
音を立てて床に倒れるふたりー。
「い、、、、、、い、、、いててててて…」
佳恵が頭を押さえながら、起き上がるー
頭痛とめまいが、激しいー。
「--うぅぅぅ……」
順一郎も頭を押さえながら起き上がるー。
そして、”佳恵”は異変に気付いたー
”あれー?”
あれだけ痛かった頭痛がー
あれだけ気持ち悪かっためまいがー
一瞬にして”消えた”-?
今まで経験したことのない
”不思議な感覚”に佳恵は首をかしげる。
「--あれ?急に頭痛がなお、、、
---!?!?」
そこまで口にして驚くー
自分の声がーー
”男の声”--
佳恵が戸惑っていると、
目の前に”自分”がいたー
「--あ…れ…なんか…きつい」
目の前の佳恵が呟くー
そして、目の前の佳恵も
”声の変化”に気づいた。
「あ、、あれ…?おれ…?
え…」
佳恵と順一郎が目を見合わせて叫ぶー
「--俺が目の前に」
「わたしがもう一人ーー!!」
ふたりは、入れ替わってしまったー
「----(なんだ、これは)」
佳恵になってしまった順一郎は内心で呟くー
吐きそうなぐらいのめまいー
乗り物酔いを強化したかのような、そんな感じー
そして、ずきずきとした頭痛ー
ピーンという耳鳴りー
頭がおかしくなりそうだ。
「---……まさか、こんなことになるなんて」
順一郎(佳恵)が、暗い表情で呟く。
「---…」
頭を押さえる佳恵(順一郎)-
女の身体になったことに、新鮮味を感じたりする余裕もないぐらい、
佳恵になった順一郎は
”体調不良のからだ”に戸惑っていたー。
「ねぇ、聞いてる…?」
順一郎(佳恵)が言う。
「--…え…えっと…」
佳恵の身体になった順一郎は
初めて”仮病じゃない”ことを体感で味わうことになったー
今まで、自分が佳恵に浴びせてきた
数々の嫌味や暴言、
そして嫌味な態度ー
それらが”間違い”であったことを順一郎は
知ってしまったー
だが、変にプライドの高い順一郎は呟いた。
「ん?あ、、ぁあ…聞いてるよ」
冷や汗をかきながら立ち上がる佳恵(順一郎)。
入れ替わってしまったことについて
話し合うふたりー
その最中も、ふらふらして、
今にでも寝込みたい気分だったー
”佳恵のやつ…本当にこんな状態で…”
順一郎は、そう思いながらも、
今まで散々”仮病だ”ときつく当たってきた手前、
調子が悪いとは言い出せなかったー
「---体調、大丈夫?」
順一郎(佳恵)が不安そうに聞く。
「あ??え、うん…全然、全然元気だぜ!
やっぱ仮病じゃん!」
佳恵(順一郎)が元気そうに身体を振りながら笑う。
冷や汗が額に出て来るー
今にもふらふらして倒れそうな感じだ。
頭も痛い。
「------」
順一郎(佳恵)は、”そんなはずないのに”と
内心で思いながら、不機嫌になって「あっそ」と
呟いたー
「---……俺は仮病なんて使わないからさ~!」
佳恵(順一郎)が嫌味を言う。
素直になれなかったー
ここでー
”ごめんなさい”と謝ることが出来ていれば
よかったのかもしれないー
だが、佳恵(順一郎)は、そのまま
無理やり頭痛を抑えて、
普段通りに行動しようとしたー
「あ、そうだ~!佳恵の身体でちょっと遊んじゃおうかな~」
佳恵(順一郎)がニヤニヤしながら笑う。
「ちょっと!やめてよ!そういうの!」
順一郎(佳恵)が顔を赤らめながら言う。
「うそうそ!冗談冗談!」
佳恵(順一郎)はニヤニヤしながらそう答えたー。
冗談はここまでにして…、と佳恵(順一郎)が
入れ替わってしまったことで、
どうするべきか、真剣に話を始める。
とりあえず、さっきと同じような状況を
意図的に作り出して転倒してみたりもしたが
やはり、元に戻ることはできなかった。
幸いにも、ふたりは同居しているから、
家の中では問題ないのだが、
外出と大学は問題だー。
二人は、話し合った結果
”お互いのふりをして、戻れるまで過ごすしかないか”という
結論にたどり着いた。
「---…ねぇ、本当に調子悪くないの?」
順一郎になった佳恵がもう一度尋ねる。
「あ?しつこいなぁ!」
めまいや耳鳴りの感じにイライラしながら佳恵(順一郎)が言う。
「俺は、仮病女とは違うんだよ!」
佳恵(順一郎)は強い口調でそう言い放った。
「そう。そっか。ごめん。ごめんね。
全部、わたしの仮病だったんだね。気のせいだったんだね」
順一郎になった佳恵は不貞腐れたような様子で
そう言うと、足早に自分の部屋に入って行ってしまったー
「・・・・・・・」
佳恵(順一郎)が少しだけ戸惑いの表情を浮かべるー。
エッチなこともしてみたかったが
体調も良くないし、
変なところだけ真面目な順一郎は、
”許可なく勝手に身体で遊ぶなんてことはだめだ”と
着替えのときも出来るだけ目をつぶるようにしながら
1日を終えたー
”やっぱ、悪かったかな…
佳恵のやつ、こんなに体調が悪かったんだな…
明日…謝るか…”
佳恵(順一郎)は素直に謝ることを決意するー。
そして、”今日はなんだか疲れたなぁ”と
思いながら頭痛薬を服用して、そのまま眠りについたー
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
朝、起きると、
そこに順一郎になった佳恵の姿はなかったー
「え…」
唖然とする佳恵(順一郎)。
机の上には
”仮病女でごめんね。ばいばい”と
書かれたメモが置かれていたー
②へ続く
・・・・・・・・・・・
コメント
体調不良の彼女と入れ替わってしまうお話デス~!
続きはまた明日デス!
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