<入れ替わり>体調不良のからだ①~調子の悪い彼女~

同棲中の大学生カップル。

いつも体調不良な彼女のことを
彼氏は”仮病”だと、切り捨てていたもののー…?

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「うぅぅぅ…」

女子大生の福森 佳恵(ふくもり よしえ)は、
体調不良に苦しんでいた。

慢性的なめまいや頭痛、耳鳴りー。
そういったものに苦しんでいて、
寝込んでいることも多くなりがちな佳恵に対して
同居中の彼氏である男子大学生、緒方 順一郎(おがた じゅんいちろう)は
ため息をついた。

「--またかよ」
順一郎が言うと、寝込んでいた佳恵が「ごめんね」と呟くー

元々佳恵はバイトをしていて、家賃は
半分ずつ支払っていたのだが、
最近は佳恵の調子が悪いため
ずっと順一郎が家賃を払ったり、
生活費を払ったりしている。

佳恵も、体調の許す限りで、仕事をしたり
両親からの仕送りだったり、貯金を崩したりしながら
出来る限りのお金を出しているものの、
順一郎の不安は募るばかりだった。

「ったく、仮病もいい加減にしてくれよ」
順一郎の言葉に、
佳恵は「ご、、ごめん…でも、、本当に調子悪いの」と
悲しそうに呟く。

「--はぁ…いいよな。そうやって
 調子悪いフリしてればいいんだから」
順一郎が首を振りながら言う。

元々、順一郎と佳恵は、高校時代からの知り合いで
仲も良かったのだが、
佳恵が体調を崩しがちになってしまってからは
その関係性は悪化しているー

最初は、佳恵のことを心配して
必死に佳恵を支えようとしていた順一郎も
今では佳恵を突き放すような感じになってしまっているー

「はぁ…」
佳恵が立ち上がってめまいの薬を飲むー

「ごめん……今日はもう休むね」
佳恵が、ふらふらしながらベットの方に向かう。

「そっか。じゃあ、ずっと休んでろよ」
順一郎が嫌味を言い放つ。

「--ごめん」
佳恵は悲しそうに呟いて、そのままベットに寝ころんだー。

順一郎が、佳恵に対してきつくあたるのは
”佳恵が仮病”だと決めつけているからー…
そして、もう一つは、佳恵のためにバイトの量を増やして
疲れているからー
と、いう理由からだった。

体調を崩しがちになってから、
佳恵は、病院で色々な検査をした。

だが、結局、悪いところは見つからなかったー。

そのため、順一郎は佳恵を仮病だと
思い込んでしまったのだった。

”怠け癖”
”調子悪いって言えば許されると思ってる”
”精神的におかしくなったんじゃないか”

そんな風に周囲にも言いふらしている始末。

だがー
佳恵は本当に体調不良だったー

激しいめまいや、頭痛、
ふらつきなど、辛い症状が続いているー

体調の良いときもあるものの、
こうして、急に体調が悪くなることもあるー。

「--……仮病女!」
順一郎が捨て台詞を吐いて、自分のベットの方に向かう。

「…違うんだってば…」
佳恵は辛そうにそう呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

佳恵のめまいは、内耳の異常等から、来る症状ー
命に関わる症状ではないものの、
めまいや耳鳴りなどの原因となり、
場合によっては慢性的に苦しみ続けることになることもある病気ー。
しかし、検査では明確に異常が示されることはなく、
悩まされているひとも多いー。

頭痛は、片頭痛ー。
佳恵の場合、命に関わるものではないものの、
定期的な激しい頭痛は、佳恵を苦しめていた。
こちらも、脳の検査を行ったとしても、明確な異常を
目視することは、できないー

彼女は、決して仮病ではなかったー

だが、順一郎からしてみれば
”検査に異常がない”=”健康”という考えであり、
佳恵が”仮病”にしか見えないのだー。

病院でも”異常はありませんね”と診断されただけで
具体的な病名を診断されず、
それが、さらに”仮病”と思い込む原因になっていたー。

「ーー」
大学でも暗くなりがちになった佳恵。

”早く直さなくちゃ”という焦り、
”順一郎との関係”
それらがー、
佳恵を焦らせ、
今度は精神的な部分や自律神経の部分で
体調を崩すー
という”悪循環”に陥っていたー

ある日ーーー

「いい加減にしてくれよ!」
順一郎が、声を荒げたー
普段穏やかな順一郎は、ここ最近、
変わってしまったー

仮病だと思い込んでいるからかー。
それとも、佳恵を救ってあげられないことに対する苛立ちかー。

「この仮病女!
 もう、我慢できねぇ!
 そんなに寝込んでたいなら、実家で寝てろよ!」

順一郎が叫ぶ。

「--ご、、ごめん…
 で、、でも…仮病じゃないんだってば!」
佳恵が叫ぶ。

「--はぁ?検査しても異常なかっただろ!?
 気のせいなんだよ!
 頭おかしくなっちゃったんじゃないのか?」
順一郎が叫ぶ。

「ひどい…!こんなに辛いのに…!
 順一郎にはごめんって思ってるけど、
 そんな言い方しなくたって…!」

順一郎と佳恵が激しい言い争いをするー

「--はは!めまい?頭痛?笑わせんなよ。
 どこも異常ないのに、そんなもので寝込むように
 なるわけないだろ?

 もうさ、出てけよ。
 付き合いももう終わりだ」

順一郎の言葉に、佳恵は目に涙を浮かべながら言う。

「--が、、頑張るから…
 もっと、、もっと頑張るから!」
佳恵は、無理してそう叫ぶ。

ふらっとめまいがして、頭を押さえると、
その仕草を見て、順一郎が笑った。

「お?都合が悪くなったからまためまいが来たのか?
 ずいぶん都合の良いめまいだな!」
順一郎の言葉に、
佳恵は「ちがう…ちがうのに…!」と泣きながら言う。

「--おら!立てよ!」
順一郎が、佳恵を無理やり立たせようとするー。

佳恵が嫌がってもがくー。

その時だったーーー

「あっ…!」
佳恵がバランスを崩して、順一郎もそれにつられて
勢いよく、二人揃って転倒してしまうー

音を立てて床に倒れるふたりー。

「い、、、、、、い、、、いててててて…」
佳恵が頭を押さえながら、起き上がるー
頭痛とめまいが、激しいー。

「--うぅぅぅ……」
順一郎も頭を押さえながら起き上がるー。

そして、”佳恵”は異変に気付いたー

”あれー?”

あれだけ痛かった頭痛がー
あれだけ気持ち悪かっためまいがー
一瞬にして”消えた”-?

今まで経験したことのない
”不思議な感覚”に佳恵は首をかしげる。

「--あれ?急に頭痛がなお、、、

 ---!?!?」

そこまで口にして驚くー

自分の声がーー
”男の声”--

佳恵が戸惑っていると、
目の前に”自分”がいたー

「--あ…れ…なんか…きつい」
目の前の佳恵が呟くー

そして、目の前の佳恵も
”声の変化”に気づいた。

「あ、、あれ…?おれ…?
 え…」

佳恵と順一郎が目を見合わせて叫ぶー

「--俺が目の前に」
「わたしがもう一人ーー!!」

ふたりは、入れ替わってしまったー

「----(なんだ、これは)」
佳恵になってしまった順一郎は内心で呟くー

吐きそうなぐらいのめまいー
乗り物酔いを強化したかのような、そんな感じー

そして、ずきずきとした頭痛ー
ピーンという耳鳴りー

頭がおかしくなりそうだ。

「---……まさか、こんなことになるなんて」
順一郎(佳恵)が、暗い表情で呟く。

「---…」
頭を押さえる佳恵(順一郎)-

女の身体になったことに、新鮮味を感じたりする余裕もないぐらい、
佳恵になった順一郎は
”体調不良のからだ”に戸惑っていたー。

「ねぇ、聞いてる…?」
順一郎(佳恵)が言う。

「--…え…えっと…」
佳恵の身体になった順一郎は
初めて”仮病じゃない”ことを体感で味わうことになったー

今まで、自分が佳恵に浴びせてきた
数々の嫌味や暴言、
そして嫌味な態度ー
それらが”間違い”であったことを順一郎は
知ってしまったー

だが、変にプライドの高い順一郎は呟いた。

「ん?あ、、ぁあ…聞いてるよ」
冷や汗をかきながら立ち上がる佳恵(順一郎)。

入れ替わってしまったことについて
話し合うふたりー

その最中も、ふらふらして、
今にでも寝込みたい気分だったー

”佳恵のやつ…本当にこんな状態で…”

順一郎は、そう思いながらも、
今まで散々”仮病だ”ときつく当たってきた手前、
調子が悪いとは言い出せなかったー

「---体調、大丈夫?」
順一郎(佳恵)が不安そうに聞く。

「あ??え、うん…全然、全然元気だぜ!
 やっぱ仮病じゃん!」
佳恵(順一郎)が元気そうに身体を振りながら笑う。

冷や汗が額に出て来るー
今にもふらふらして倒れそうな感じだ。
頭も痛い。

「------」
順一郎(佳恵)は、”そんなはずないのに”と
内心で思いながら、不機嫌になって「あっそ」と
呟いたー

「---……俺は仮病なんて使わないからさ~!」
佳恵(順一郎)が嫌味を言う。

素直になれなかったー

ここでー
”ごめんなさい”と謝ることが出来ていれば
よかったのかもしれないー

だが、佳恵(順一郎)は、そのまま
無理やり頭痛を抑えて、
普段通りに行動しようとしたー

「あ、そうだ~!佳恵の身体でちょっと遊んじゃおうかな~」
佳恵(順一郎)がニヤニヤしながら笑う。

「ちょっと!やめてよ!そういうの!」
順一郎(佳恵)が顔を赤らめながら言う。

「うそうそ!冗談冗談!」
佳恵(順一郎)はニヤニヤしながらそう答えたー。

冗談はここまでにして…、と佳恵(順一郎)が
入れ替わってしまったことで、
どうするべきか、真剣に話を始める。

とりあえず、さっきと同じような状況を
意図的に作り出して転倒してみたりもしたが
やはり、元に戻ることはできなかった。

幸いにも、ふたりは同居しているから、
家の中では問題ないのだが、
外出と大学は問題だー。

二人は、話し合った結果
”お互いのふりをして、戻れるまで過ごすしかないか”という
結論にたどり着いた。

「---…ねぇ、本当に調子悪くないの?」
順一郎になった佳恵がもう一度尋ねる。

「あ?しつこいなぁ!」
めまいや耳鳴りの感じにイライラしながら佳恵(順一郎)が言う。

「俺は、仮病女とは違うんだよ!」

佳恵(順一郎)は強い口調でそう言い放った。

「そう。そっか。ごめん。ごめんね。
 全部、わたしの仮病だったんだね。気のせいだったんだね」

順一郎になった佳恵は不貞腐れたような様子で
そう言うと、足早に自分の部屋に入って行ってしまったー

「・・・・・・・」

佳恵(順一郎)が少しだけ戸惑いの表情を浮かべるー。

エッチなこともしてみたかったが
体調も良くないし、
変なところだけ真面目な順一郎は、
”許可なく勝手に身体で遊ぶなんてことはだめだ”と
着替えのときも出来るだけ目をつぶるようにしながら
1日を終えたー

”やっぱ、悪かったかな…
 佳恵のやつ、こんなに体調が悪かったんだな…

 明日…謝るか…”

佳恵(順一郎)は素直に謝ることを決意するー。

そして、”今日はなんだか疲れたなぁ”と
思いながら頭痛薬を服用して、そのまま眠りについたー

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

朝、起きると、
そこに順一郎になった佳恵の姿はなかったー

「え…」
唖然とする佳恵(順一郎)。

机の上には
”仮病女でごめんね。ばいばい”と
書かれたメモが置かれていたー

②へ続く

・・・・・・・・・・・

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体調不良の彼女と入れ替わってしまうお話デス~!
続きはまた明日デス!

入れ替わり<体調不良のからだ>
憑依空間NEO

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