彼女が、戦時中の鬼教官に憑依されてしまった!
戸惑う彼氏の運命は…?
そして、時を超えて女子高生に憑依してしまった教官の運命は…?
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「----…2020…年…?」
真希が戸惑った表情を浮かべているー。
「--…そ、、そ、、、、そ、、そうです」
茂はびくびくしながら答えるー
「---……」
真希は言葉すら失っているようだったー
確かに、今の真希が、本当に戦時中の人に
憑依されているのなら、
驚くのも無理はないかもしれない。
急にJKになってしまっただけではなく、
50年以上の時を超えたことになるのだからー
「--…日本と言ったな?」
窓の外を見つめる真希。
窓の外には平和な光景が広がっている。
「……ははははははっ…!
やはり、やはり!我々は勝ったのだ!」
真希が嬉しそうに叫ぶ。
大声で窓の外を見つめて笑う真希。
「---敵国どもめ!思い知ったか!」
可愛い声で叫ぶ真希。
「--ちょ、、!ちょ!外に聞こえますから!」
茂が慌てて叫ぶ。
だが、真希は嬉しそうだったー
”敗北は、死”
もし、戦争に負けているのなら
植民地のようになって、こんなに豊かな光景が
広がっているはずがない、と真希に憑依している教官は
思ったー。
「大日本帝国の力を思い知ったか!
わはははははははは!」
喉が切れてしまいそうなぐらいな大声で叫ぶ真希。
「ちょ!!ちょ!!落ち着いてください!」
茂が慌てて真希を止めるー。
真希は「ここは未来だと言ったな?」と
振り返りながら茂を見つめる。
茂はびくびくしながら「は、、はい…」と呟く。
「…我らはどのようにして戦争に勝ったのか?」
真希の言葉に、茂はビクッとするー。
この人ーーー。
真希に憑依したこの人は、
”戦争に勝った”と思っているー。
だが、違うー
日本は戦争に負けている。
学校の授業で誰でも習う事実、だ。
茂も含めて、今を生きる人のほとんどは、
戦争を知らない。
教科書はテレビの中の世界でしかないー。
「--え、、、え…」
茂は戸惑ってしまう。
”日本は負けた”
その事実を伝えるべきか、否かー。
だがー
茂は、すぐに答えたー
「日本は…降伏して、あの戦争には負けたんです。」
とー。
茂は、深く考えていなかったー
あの戦争で負けたおかげで、今の平和があるー。
今、平和な世の中になっていることを伝えれば
この人も喜ぶだろう、と
そのぐらいにしか考えていなかったー
だがー
それは”現在基準”の考え方ー
戦時中の人間はーー
そうではない。
「まけ……た?」
真希が、この世の終わりのような表情を浮かべるー
「---はい。負けました。
でも、そのおかげで、戦争は無くなって
平和な世界になったんです」
茂は、当然のことを答えるかのように、そう言い放った。
「う、、うああああああああああああああああああ!!!!」
真希が頭を抱えて大声で叫び出した。
「負けた…?負けた…
うっうあああああああああああああああああ!!!!」
発狂したかのように叫ぶ真希。
「ちょ、ちょ、、落ち着いてください!
今、とっても平和ですから!!
戦争に負けたおかげで、今、こうして穏やかな」
「--貴様ああああああ!」
真希が怒りの形相で、茂をグーで殴りつけた。
「うわぁっ!?」
茂が吹き飛ばされる。
倒れた茂に、真希が蟹股で歩み寄ってきて
何度も何度も殴りつけてくるー。
「ひっ、、いた、、、うわ、、やめて!」
茂の顔を思いきり殴り続ける真希。
真希は泣き叫んで何かを口にしているー
茂の唇から血が飛び散り、
真希の手が赤く染まるー
「貴様!!!負けてよかっただと!?!?
ふざけるな!!非国民が!!」
真希が怒りの形相で何度も何度も茂を
殴り続けるー。
「--うわっ…わ…やめ…やめて…!」
茂が必死に泣き叫ぶと、
真希は茂の頭を突き飛ばして、
そのまま壁を蹴り飛ばした。
「うああああああ!!ああああ!!!!」
真希が髪を振り乱して叫んでいる。
「--そ、、そ、、そ、、そんなに怒らないでください」
茂が慌ててそう叫ぶー
現代人の茂からすれば
真希に憑依した教官が、怒る理由が理解できない。
だが、真希に憑依した教官からすれば
負けてヘラヘラしていられる茂が理解できないー
「--くそっ!こうなったら、敵と刺し違えてでも」
真希が部屋の外に出ようとする。
「わぁぁ…!やめて!やめてくださいってば!」
茂が叫ぶ。
真希の身体を変なことに使わないで欲しいー。
そうだー…
茂は、”当時の天皇の言葉なら…”と考える。
確か、あの戦争で負けた際に
玉音放送というものがあったはず。
それを、真希に憑依している人に聞かせればー。
そう思った茂は、スマホで玉音放送を探すー
スマホを見ながら真希が「なんだそれは?」と呟く。
「---ス、スマートフォンというもので、
色々調べたり、電話したり、メッセージを送ったりできるんです」
茂が説明すると
真希は不思議そうな顔でそれを睨む。
「--こ、これ…
戦争が終わった時の、放送です」
茂がスマホで、玉音放送の動画を見つけると、
それを再生したー
当時の天皇の言葉が流れるー
「---」
真希が難しい表情でそれを聞いているー。
”これで落ち着いてくれれば…!”
茂はそんな風に思ったー
やがてーー
真希の目から涙がこぼれたー
「--!?」
茂が戸惑うー
”え?これって、泣くもの?”
茂からすれば、そんな感じー。
しかし、真希に憑依している男からすればーー
「--う…うぅぅ…陛下…ぅぅうっぅぅぅ」
真希が嗚咽まじりで大泣きしているー
「--あ、、あの…」
茂は戸惑いを隠せない。
「うぅ…うう…」
ボタボタと涙をこぼす真希。
中身が別の人とは言え、
真希の泣いている姿に、茂はドキッとしてしまう。
「---はは、、、…そうかそうか」
泣きながら真希が呟く。
「--敵国に膝を折って
恥をさらして生き続けているのか」
真希が立ち上がった。
「--ーーーち、違いますよ…
そうじゃなくて」
茂が、どう説明していいか分からない、
という様子で戸惑っていると
「俺の戦いはなんだったんだ!」と
大声で真希が叫ぶー
髪をぐしゃぐしゃにして、
自暴自棄な言葉を叫ぶ真希ー
”え?逆効果ー?”
茂は戸惑う。
真希が落ち着いてくれると思って
放送を聴かせたのに、
自暴自棄になっている感じがするー
「--…こんな…こんな未来…
ふざけるな!!俺は認めん!
ふざけるな!!!!非国民どもが!」
真希が部屋の外に飛び出す。
「ま、、待って!
皆本さんの身体、返してください!」
茂が叫ぶー
「うるさい!」
真希は大声で怒鳴ると階段を駆け降りる。
「あれ?」
茂の弟・幸喜が真希に気づくー
「どけっ!」
真希は、大声で怒鳴って幸喜を突き飛ばして
そのまま外に出て行ってしまうー
「え…?」
戸惑う幸喜。
駆け降りてきた茂が「幸喜!」と慌てて駆け寄る。
「兄貴、喧嘩?」
幸喜が苦笑いする。
「あ、いや、そうじゃなくて…」
茂は”どう説明したらいいんだ?”と戸惑いを
隠せなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・
真希に必死にLINEを送るー
だが、返事はない。
真希はどうなってしまったのだろう?
乗っ取られたままだと、取返しのつかないことに
なってしまう気がするー。
真希は家にも帰らず、
真希の両親とも情報交換をしたが、
結局真希は発見できなかった。
翌日ー
学校にも真希はやってこないー
茂は、不安になってしまうー
「皆本さん…」
真希に憑依している人の想いは分からないー
でも、あれは真希の身体だー
茂にとっては、真希を助けることが最優先だー。
学校が終わると、茂は、
必死に真希のことを探して
街を走り回った。
真希の写真を持って
聞き込みをする茂。
”なんで僕がこんなこと…”
真希のためとは言えー
もともと大人しい茂にとっては
見ず知らずの通行人にこうして声をかけて
情報収集をするだけでも
ドキドキものだったー。
”日本男子がどうこう言ってる子を見かけませんでしたか?”
みたいな聞き方もしながら、
必死に真希の行方を捜す茂。
とにかく、真希を早く見つけなくてはならないー
あの様子だと、何をしでかすか分からないー。
そしてーー
見つけたー
「----え…」
”軍服を着た女がいる”という
情報を手に入れた茂は
その女がいるというバーにかけつけた。
すると、そこには
迷彩服のようなものを着た真希の姿があったー
「---ちょ……!」
茂は唖然としてしまう。
真希が酒を飲みながら
「貧弱なやつらめ!」とわめいている。
「---ははは、落ち着いて、お嬢さん」
バーの店主は、真希が未成年だと
気付いていないのだろうか。
わめく真希を、ただの酔っ払いだと思って相手をしているー。
”これ、まずいよ…”
茂は、騒ぎになる前に、なんとか真希を
連れ戻さないと、と、真希に声をかける。
「--み、、皆本さん…」
真希に声をかけると、
真希が振り返るー
「--貴様は…」
真希が呟く。
「--俺は一人になってでも陛下のために戦うぞ」
真希が酒を飲みながらへらへらと笑う。
酔っているからか、軍服姿だからかー。
それとも、乗っ取られているからか。
身体は同じなのに、全くの別人に見える。
「--この命、陛下のために捧げる覚悟だ!
憎き敵国に玉砕覚悟で攻撃を仕掛けてやる!」
真希が大声で叫ぶ。
バーの店主が笑っているー
「--ちょ…!お、、落ち着いて…!」
茂があたふたとしながら言う。
真希は急に万歳しながら真顔で叫ぶ。
「大日本帝国、万歳!」
とー。
茂は困った表情をしながらも
”皆本さんのために”と、覚悟するー
「--勝手に…」
「あ?」
真希が表情を歪める。
「--勝手に人の命をささげるな!!!!!」
茂が、真希の身体で勝手に玉砕しようとしている
鬼教官に対して、そう叫んだー。
「-----……」
真希が表情を歪める。
「---ぼ、、ぼ、、僕には、、僕には
あなたが生きていたころのことは分かりません…
で、、で、、でも、、
ここは、、ここは、2020年の日本なんだ!
勝手に、、勝手に皆本さんの身体を奪って
好き勝手するなんて、ぼ、、僕は、、僕は許さないぞ!」
茂が叫ぶ。
「---」
真希が茂を睨んでいるー。
「---な、、何が、、何が万歳だ!
なにが命を懸けるだ!
そ、、それは、皆本さんの身体だ!」
茂が叫ぶー。
「----貴様…」
真希が呟く。
「誰に向かって口をきいているんだ!」
真希が茂をグーで殴りつけると、
立ち上がるー。
「--この女も、陛下のために玉砕できるのなら
喜んで命をささげるだろう!
貴様…この非国民が!」
そう言うと、真希は茂を何度も何度も蹴り飛ばしたー
そして、
店の外に出て行こうとするー
茂が叫ぶー
「--もう、戦争はとっくに終わってるんだ!」
とー。
「---うるさいうるさいうるさい!」
真希は、そう叫ぶと、そのまま店から
外に出て行ってしまったー
「--は、、早く、早く、なんとかしないと!」
茂はバーの店主に謝りながら
慌てて外へと飛び出したー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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次回が最終回デス~!
今日もありがとうございました~!
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