心優しい彼女が、
戦時中の鬼教官に憑依されて、
鬼彼女になってしまったー
いったい、どうすれば…?
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「--今日も終わった~!」
男子高校生の神埼 茂(かんざき しげる)が、
伸びをしながら呟くー
「おつかれさま~!」
茂の彼女・皆原 真希(みなはら まき)が、
茂の方を見ながら優しく微笑むー
美化委員として活動する二人は、
一緒に仕事をしているうちに
意気投合して、半年前から付き合い始めているー。
真希も茂も、今まで恋愛経験がなく、
恋愛に積極的なタイプでもなかったものの、
二人とも大人しく、控えめなタイプであることから
なんとなく意気投合して、
こうして付き合いを始めるに至っていた。
「--それにしても、まさか僕に彼女ができるなんて」
下校しながら、茂が照れ臭そうに笑う。
正直、茂は
”僕は恋愛になんて一生縁がないだろうな”と
ずっと思っていた。
事実、高校2年になるまで、一度も恋愛をしたことが
なかったし、
本人も別にそれでもいいかな、などと思っていたからだ。
真希も同じような感じで
”わたしにはそういうのは無理だよ~”などと
友達といつも話しているような感じだった。
”なるようにしかならないし”と、積極的に
恋愛するような気配もなく、
そういった”控えめな共通点”が意気投合する
きっかけだったのかもしれない。
「わたしも、彼氏とか、絶対できないと思ってたなぁ…」
真希が恥ずかしそうに笑う。
「--はは、だよね」
茂も笑う。
大人しいふたりは、付き合い始めても
エッチなことをしたりだとか、
そういうことも今のところはない。
二人とも、そういうことには疎かったし、
進んでやろう、という感じでもない。
むしろ、こうして一緒にいることができれば
そういうことも特には必要ないかな?などと
茂は思っていたー。
もちろん、喧嘩もしたことがない。
何か意見が分かれると、お互い引いてしまうような
感じだから、衝突するようなこともないのだ。
「--じゃあ、また明日~!」
真希が、家への道の分かれ道で手を振る。
「うん!また明日~」
茂も嬉しそうに手を振り返す。
大人しい二人の関係は、良好だったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
いつものように学校に登校する茂。
真希といつものように登校して、
教室の座席につくー。
2時間目は歴史の授業。
先生が、戦時中の話をしているー
今はちょうど、第2次世界大戦あたりの部分を
やっていて、
茂は”そんなこともあったんだなぁ…”と思いながら
授業を受けているー。
第2次世界大戦ー
茂からすれば”戦争”などというものは、
教科書の中の話でしかない。
既に、身の回りにも実際に経験した人はいなかったし、
実感することはないのだ。
”こんな時代に僕が生まれてたら
絶対無理だろうなぁ”と
茂は苦笑いするー。
「---!」
真希が、教科書の写真のひとつを見つめながら
とある”違和感”に気づいた。
教科書の写真が、少し光ったような気がしたのだー
「----…??」
真希は、首をかしげる。
だがー
よく見直してみると、光は特に見当たらなかった。
”気のせいかな”
そんな風に思いながら、真希は、黒板に書かれたことを
ノートに写し始めたー。
放課後ー
「今日は、何の勉強する~?」
真希が、茂の家に向かいながら、茂と楽しそうに会話をしているー
来週に中間テストを控えていることもあって、
一緒に勉強しよう、という話になったのだ。
テスト前には、最近はこうして一緒に勉強
することが多い。
茂も真希も、成績はある程度良くて
一生に勉強することによって
本当に勉強がスムーズに進むのだ。
もちろん、真面目で大人しいふたりだから、
どちらかの家で二人きりになっても
保健体育の授業が始まることはなく、
真面目にしっかりテスト勉強をしているー。
1時間ぐらい会話が無くなって
黙々と二人で勉強することもあるぐらいだ。
「お邪魔しま~す」
真希が、茂の母親に頭を下げる。
茂の母親が「あら~!いらっしゃい!」と
嬉しそうに真希を見る。
まさか、自分の息子に彼女ができるなんて
想像もしていなかった茂の母親は、
真希という彼女ができたことを、心の底から
喜んでいた。
「--あ~、またイチャイチャか~?」
弟の幸喜(こうき)が、茂を茶化す。
「--そ、そんなんじゃないよ
勉強勉強」
茂が幸喜を見ながら言うと、
「兄貴は平和だなぁ~」と笑いながら言う。
中学3年生の幸喜は、茂とは違い、
活発な性格だ。
茂の大人しいふるまいには、
”自分では考えられない”と思いつつも
”それが兄貴のいいところだからな”と
茂のことを認めていた。
「----こんにちは~」
真希が茂の弟・幸喜に声をかける。
幸喜は少し顔を赤らめながら
「-兄貴が勉強サボらないように、見張っててくださいね」と
苦笑いしながら呟いたー
「-さ、さぼらないよ!」
茂が声をあげるー
真希がそんなやり取りを見ながら、
茂の部屋の方に向かったー。
茂の部屋に入ると、
二人は”まず理科の勉強しようか”と、
理科の勉強を始めたー。
初日に理科のテストがあるためだ。
「あ、そういえば~」
真希が思い出したかのように
鞄から歴史の教科書を取り出す。
「ん?どうかした?」
茂が不思議そうに真希の方を見ると
真希が苦笑いしながら
”さっき、このページのこの写真が光ってたような気がするんだけど”と、
授業中に不思議な光を発していた
戦時中の写真を見せたー。
「ん~~?気のせいじゃない?」
茂が苦笑いする。
「僕には、何も光って見えないけど?」
茂の言葉に
真希も頷く。
「確かに今は…なんともないね」
とー。
”でも、さっき、本当に光ってた気がするんだけどなぁ…”
疲れてるのかな?などと思いながら
真希が歴史の教科書を閉じようとしたその時だったー
「--!」
「--!」
真希も茂も気が付いたー
”教科書の写真が、光を発している”ことにー
「--え??」
「あ…!こ、、これ…!さっきもこの写真が!」
真希が”授業中に光った写真と同じ写真が光ってる”
と、呟くーー
その光がさらに強くなるーー
「えっ…!?!?な、、なにこれ!?」
戸惑う真希ー
「ちょ!?1回教科書閉じて!」
茂がとっさに叫ぶー
教科書の写真が光るー。
どう考えてもおかしいー
とりあえずまず、教科書を閉じて、
身の安全をーーー
・・・・・・・・・・・・・
「--死んで……たまるか……」
とある戦場に赴いていた軍人が、
血を流しながら部下と共に歩いていた。
”鬼教官”
部下からそう恐れられている彼は、
部下に向かって呟くー
「俺は、もうだめだ……
貴様は、先に行け…」
とー。
「--しかし!?」
部下が叫ぶ。
「--馬鹿者!
俺と御国、どっちが大事なんだ!?
貴様は、貴様の役割を果たせ」
鬼教官が大声で叫ぶと、
部下は少し迷った末に頷き、
血を流す鬼教官を置いて
敵の方に向かって行くー
「くそっ……俺は…まだ…死ねない…
敵国をやっつけるまで……
死ねない…
死ねない…」
世界にはー
時に人智を超えた現象が起きることがあるー
「--!」
鬼教官の前に、光の扉のようなものが現れたー
鬼教官の”生への強い執念”が
それを呼んだのだろうかー
苦しみながら彼は、光の扉に手を伸ばしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「---ひっ!?」
光っていた写真から、光が飛び出すー
そして、それが真希の身体に直撃して、
真希がビクンと震えたー
「--だ、、大丈夫!?」
歴史の教科書を落とした真希を見て
茂が慌てて真希に駆け寄るー
真希は痙攣しながら虚空を見つめているー
「----……」
やがて、痙攣が収まると、真希は
虚ろな目で周囲を見渡し始めた。
「み、、皆原さん…?」
茂は、付き合い始めてからも
下の名前で呼ぶのは恥ずかしいので、
さん付けで呼んでいる。
「--敵はどこだ?」
真希が茂を睨む。
「---俺は敵兵を一人でも多く葬らねばならぬ!」
真希が唾を飛ばしながら大声で叫ぶと、
隠れながら窓の外を見つめる。
「--み、皆原さん…!?」
茂は戸惑う。
一体何を言っているのか?
わけが分からない。
「--くそっ…!陛下のために俺は…」
真希がわけのわからないことを呟いている。
その表情は真剣そのもの。
茂は首を傾げながら、「皆原さん!」と叫ぶ。
「--ええい!静かにしろ!敵に見つかりたいのか!」
大声で叫ぶ真希。
その怒鳴り声に茂は思わず「ひっ!?」と声を上げてしまうー
「なんだ貴様!
この腰抜けが!
臆したのか!?」
真希が大声で叫びながら茂の方を見る。
「ひ、、み、、皆原さん…!?い、、いったい…!?」
茂が涙目になりそうになりながら
真希の方を見る。
真希は茂の方に寄ってくると、
茂の胸倉を乱暴に掴んだ。
「なんだその面は!
貴様、どこの所属だ!?」
真希が大声で叫ぶ。
普段、真希が絶対に出さないような迫力に満ちた大声に
茂は思わずびっくりしてしまう。
「しょ、、所属!?なんのこと!?」
茂が戸惑う。
「貴様…!その服装は…?」
真希が怒りの形相で叫ぶー
その表情にいつも浮かべている
穏やかな雰囲気は完全に失われて、
怒りに支配されているー。
「--ひ…み、、皆原さん…落ち着いて…」
茂の目が潤みだすー。
恐怖で涙が出てきたー
「貴様…!
それでも日本男子か!」
真希が大声で叫んで、茂をグーで殴りつけるー
「うわぁ!」
茂が、壁際に突き飛ばされて、
真希の方を見ながら泣きながら、「や、、やめて!」と
叫ぶ。
「--ーーーん」
真希がふと、自分の身体を見つめる。
膨らんだ胸に
長い黒髪に
スカート
「ん???おぉ??」
敵兵との戦いに命がけだった”真希に憑依した人物”は
自分が女子高生の身体になっていることに
今まで気づかなかった。
可愛い声が出ていることにもー。
「--ん???あ????
な、、なんだこれは!?!??」
真希が鏡の方を見ながら叫ぶ。
「な、、、なんだこれはぁあああああああああ!」
真希が、この世のものとは思えない
恐怖の悲鳴を上げながら
手にした鏡を放り投げたー
「---??? ????」
茂も混乱している。
「あ、、、あの…皆原さん…?」
「---皆原ではない!!!!」
真希が大声で叫んだ。
「き、貴様!ここはどこだ!?おい!説明しろ!貴様!」
真希が茂の胸倉を掴んで乱暴に揺さぶるー
「ま、、待って!ひ、、ひぃぃぃぃ!」
茂は泣きながら真希をなんとか
落ち着かせようと必死に叫んだー。
・・・・・・・・・・・・・・
「---え…」
茂が唖然とする。
「--俺は、戦場で戦っていたのだ。
敵の不意打ちに遭って、撃たれて
倒れていたはずなのだが…
気づいたらこうなってた」
真希が、偉そうに座りながら
そう呟く。
「---……ここは、どこだ?
貴様は?」
真希が茂を睨むようにして言う。
”教科書が光っていた”ことを思い出す茂ー
そんなことあるはずがないと思いながらも、
茂は、真希に戦時中の誰かの魂が
入ってしまったのではないかと考える。
「----」
茂は戸惑いながら
カレンダーを指さした。
「あの…え、、っと…
今は2020年で…ここは、日本の東京…です」
茂が言うと、
「2020!?!?!?!?!?!?」と
真希が大声で叫んだー
「ひっ!?!?」
急に大声を出した真希に驚いてしまう茂。
真希に憑依した戦時中の鬼教官と、
状況が飲み込めない茂は、
二人揃ってびっくりするのだったー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・
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戦時中の教官に憑依されてしまうお話デス~!
続きはまた明日書きます!
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