<憑依>リアルデュエリストVol30~人間~(完)

”リアルの力”

カードを現実化させる力により、
憑依、洗脳、破壊…
やりたい放題の人間たちー

過ぎたる力は、滅びを招くー。

リアルデュエリスト、最終章。

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「---ふふふふふふ…
 人間は愚かだー。
 己の”欲”には、勝てないー」

緑色の生命体は勝ちを確信して、そう呟いたー…。

研究施設の屋上ー
ペンギンナイトメアに変身した緑色の生命体が、
増殖のカードで増やした大量のペンギンナイトメアを、
対戦相手の莉緒に襲わせているー

下心満載のペンギンナイトメアが
莉緒の身体をあちらこちらを触っていくー。
莉緒は顔を真っ赤にして喘ぎ、嬉しそうに身体を動かしているー

「人間はー」
緑色の生命体が、屋上から遠くを見つめるー

街から上がる火の手ー

「愚かだー」
”力”を手に入れた人間は
必ず、どのような形であるにせよ”暴走”するー。

その暴走を食い止めることは、できない。
人間は、愚かなのだからー。

「--この力を、有効的に活用することができれば、
 貴様ら人間は、飛躍的に発展することができただろう。」

ペンギンナイトメアの姿のまま、緑色の生命体は呟く。

「だが、結果はどうだー?」

緑色の生命体は、今まで見てきた光景を思い出すー

そう、最終的に私利私欲に走るものばかり。

行き過ぎた力で、家庭を守ろうと暴走したものー
医療行為に使おうとして、最終的に暴走したもの-
自分の理想のために、力を使おうとしたものー
性欲を満たすためだけに、力を使うものー
鎖関係のカードで相手を縛り付けたものー
洗脳して、何の罪もない子をおもちゃのように扱ったものー

「---力は、貴様ら人間を蝕むー

 人間は、愚かだー」

緑色の生命体が笑うー。

空に”終焉のカウントダウン”というカードによる
渦が出現する。

「--くくく、どこかの愚かな人間が発動したのかー」

終焉のカウントダウンー
このままこの効果が続けば、この世界は消滅する。

「んあああああああああああっ!!!」
喘いでいた莉緒が大声で叫ぶー。

「--!」
ペンギンナイトメアの姿をした緑色の生命体が莉緒の方を見つめるー。

莉緒がーー
自分のポケットにしまっていた
”憑依するブラッドソウル”のカードを破り捨てたー

その効果が失われるー

莉緒に憑依していた男が、
莉緒から弾き飛ばされるー。

「あ…」
莉緒は気を失ってその場に倒れたー

「----はぁ…はぁ…もう喘がねぇ!」
莉緒から飛び出た男が叫ぶー。

「--男の身体は、そこまで気持ちよくないんでな!」
男の言葉に、
増殖したペンギンナイトメアたちが身構えるー。

「-サンダーボルト!」
男が、サンダーボルトのカードを発動する。

増殖したペンギンナイトメアが一気に炎上して消滅するー

「ぐおおおおっ!」
緑色の生命体は、苦しみながら、ペンギンナイトメアのカードを
破り捨てて元の姿に戻ったー。

「---貴様…」
緑色の生命体が呟くー

「お前の言う通り、人間は愚かだ」
男は呟くー

醜い争いは続きー
貧困に苦しむ人がいる一方で、
ロクでもない言い争いでをするモノもいるー

この世は、愚かだー。

「--でも…」
男は呟くー。

リアルの力があればー
それを”正しく”使うことができればー
人間は”1歩先”に進むことが、できたのかもしれないー

でもー
人間には、それはできなかったー

自分も、結局は莉緒の身体を乗っ取り、
私利私欲を果たしていたー

「こんなクソみたいな世界でも、
 一生懸命生きているやつもいるんだ…!」

男はそう呟くと、
緑色の生命体に対して
”火の粉”のカードを発動したー。

緑色の生命体が笑うー。

「愚かな人間ーーーー」

”我々”は、”神ー”

緑色の生命体が笑うと、
巨大な怪物のようなシルエットに変形していくー

「人間は、愚かだー
 故に我々は、全次元の人間を消去してー
 また新しく生命体を作り上げるー。」

「-----」
男は、怪物のような姿になった緑色の生命体を見つめるー

「お前は、何者だー」
男が問うー。

怪物と化した緑色の生命体は笑う。

そして、答えたー

「---”宇宙を創りし者”---」

何を言っているのか、さっぱり分からないー
人類には、まだ知らないことがこの世にはたくさんあるー

これ以上追求しても、
自分には理解できそうにないー

「--我々は試行錯誤してきたー
 ”恐竜”が滅んだのは何故だ?
 ”地球”だけに生命体がいるのは何故だ?

 全て、我々の意志によるものー

 恐竜は、”知性”が足りなかった。
 だから”リセット”したー
 そして、お前ら人間もそうー
 ”知性”が足りないー
 だから”リセット”するー

 理知的に”力”を使える存在を生み出すまで
 我々は試行錯誤を続けるー。

 ”地球”以外にも生命体が存在する星はあるー
 だがーーー
 お互い干渉されては困る。

 だからー”距離”を離しているのだー」

「--ごちゃごちゃうるせぇよ」
男は叫んだー

こいつが何だって、どうでもいいー
だがー

街の方を見つめるー
オベリスクの巨神兵に変身した何者かが
街を破壊しているー

人間に”リアルの力”は扱えないー
必ず、暴走するー

悲しいけれどー
それが、人間ー

「---俺はお前を倒して、
 この力を全部、持ち帰らせる!」

そう叫ぶと、男はカードを2枚セットしたー。

そして、カードを発動するー

”オシリスの天空竜”
神のカードと呼ばれる強力なモンスター

それに変身して、
男は、怪物と化した緑色の生命体に向かって行くー

「愚かな人間!!」
緑色の生命体が激しい光を放つー

「う……」
乗っ取られていた莉緒が目を覚ますー

莉緒が目にしたのはー
上空で激突するオシリスと緑色の巨大昆虫のような怪物ー。

そしてーーー

グサァ…

緑色の生命体が、放った巨大な毒針がオシリスを貫くー

「グおおおおおおお!」
攻撃を受けて、身体が一気に腐食していくー

神のカードに変身しても、
相手も”神”-

オシリスの姿から、人間の姿に戻る男ー

莉緒が戸惑いながら
「な、、なにこれ!?」と叫んでいるー。

ずっと乗っ取られていた莉緒には状況が
理解できないー

「---ふふふ」

男は、オシリスになる前にセットしておいた
カードを2枚、オープンしたー

「--!」
緑色の生命体が表情を歪めるー。

そのカードは…
”道連れ”

シンプルな効果を持つカード。

「---道連れだ…」
男はボロボロになりながら呟き、
そして、倒れたー

「---!」
緑色の生命体が周囲を見渡すー

不気味な手のようなものが大量に出現しー
巨大昆虫のような姿になった
緑色の生命体を襲ったー

「-ま、、まさかこいつ、、自分の命を懸けて…
 我を道連れに…」

緑色の生命体は油断していたー。
その”油断”が命取りになったー

「ぐわああああああああああ!」

男は、緑色の生命体が砕け散るのを見上げながら
笑みを浮かべたー

男がもう1つ、発動したカードはーーー

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

穏やかな日常が戻ってきた。

少年少女たちが、カードショップで
カードのパックを購入して、
その中身を見ているー

「よ~し!」
絆創膏を頬に貼っている元気そうな少年が
嬉しそうにカードを見つめるー

カードショップの大会が始まるー。

対戦相手の可愛らしいツインテールの少女が
カードを引くー

今日も、平和な日常ー

この世界で、カードは”現実化”しないー。

「---……」
緑色の生命体は、呟くー

”約束は、果たしたぞ”

人間は、愚かだー。
だが、命を懸けて、自分に挑み、
そして、命を懸けて自分を道連れにしようとした
あの男ー

そういう、命知らずのバカも
人間の中には、いるー。

緑色の生命体は手を光らせるー

”この世界”は、好きにさせてやろうー。

緑色の生命体は、”リアル・デュエリスト”誕生の
きっかけとなった力を、この世界から
全て吸収したー。

これでもう、
この世界に”リアルデュエリスト”は現れないー。

あのときー
あの男は”時の機械タイムマシーン”という
カードを道連れと一緒に発動していたー

恐らくはー
道連れにより、緑色の生命体を倒しー
時の機械タイムマシーンで
”リアルの力がやってくる前”に
世界を巻き戻そうとしたのだろうー

「くくく…愚かな」

”時の機械タイムマシーン”に
そんな力はない。
あれは、個人が時代を行き来するレベルの効果しかないー

だがーー

「あまりに愚かだー」

リアルの力から世界を救おうと、
人智を超えた存在にバトルを挑み、
挙句の果てに自分の命を犠牲にしてまで
世界を元通りにしようとしたー

あの男のあまりの愚かさにあきれて、
緑色の生命体は、自ら特殊なカードを発動して、
時間を、戻したー。

リアルの力が、この世界にやってくる前にー。

「--愚かな人間どもよー。」
緑色の生命体は呟く。

「貴様らは、何も知らず、
 ただ、カードで遊んでいろー」

緑色の生命体は笑うー。
”カードに封じ込められた力”など
知る必要はない。

どうせ、その力を使いこなすことなどできないのだからー。

「---待っていても、いずれは、滅びるー」

”神”である自分たちが手を下さなくても
人間は、いずれ必ず滅びるー。
人間は、愚かなのだからー。

争いー
疫病ー
災害ー

何が決め手になるのかはまだ分からないー

”もう、ここには用はないー”
リアルの力を全て回収した緑色の生命体は
”この世界”に興味を失くし、
そのまま”別次元”へと旅立ったー

・・・・・・・・・・・・・

「----……」
スラム街で、その日暮らしをする男は、
ふと、カードを拾った。

「はぁ…人気のカードゲームのカードだな」
男はそう呟くと、
そのカードを見つめる。

だが、どう考えても何の価値もない
ノーマルカードだ。

”憑依するブラッドソウル”というカード。

今、このカードをデッキに入れて
積極的にデュエルをしている子は
少ないだろう。

当然、カードショップに持って行っても
このカードが高額で買い取られることはないー

「----」
だがー
彼はなんとなく”違和感”を感じたー

”憑依”---

何かを思い出しそうになるー

何かー
壮大な、
非日常的な”何か”をー。

だが、彼が、そのことを思い出すことはなかったー

「--他人に憑依なんて、できるわけないもんな」
男は、そう呟くと、
憑依するブラッドソウルのカードを
なんとなくポケットにしまって、
そのまま歩き出したー

・・・・・・・・・・

”力”は、人を狂気へと走らせるー。

力を正しく扱える人間は少ないー
たとえ、正しく力を扱える人間が存在したとしても、
大勢がその力を手に入れれば、
必ず、そこには”混沌”が生まれるー。

秩序は壊れ、
人は力に溺れ、
欲望と恐怖が支配する、暗黒の時代が到来するー。

だからこそー

力を夢見るー
そんな、世界のほうが、
人間にとっては、平和なのかもしれないー

おわり

・・・・・・・・・・・・

コメント

月に1回あるかないかぐらいの
リアルデュエリストのお話の
完結編でした!

カード系のお話は、そろそろ同じような展開も増えてきたし
一旦この辺りで区切りを…ということでの
最終回でした~!

また機会があればカード系のお話も
書くこともあるかもしれません!

ありがとうございました!!

コメント

  1. 龍禍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    もう終わっちゃったねぇ
    最終回に相応しく三幻神とか出てきた

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    番外編とかはあるかもしれませんネ~☆!
    ここまでお読み下さってありがとうございましたー!

  3. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    憑依するブラッドソウルって複数カードに影響するから、複数憑依の能力として使うシーンがいつかくると思ってたんだけど、そうでもなかったな…
    「名前しか見てません」という感じに見えました

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    カードを知らない方もたくさんいると思うので、
    なるべくシンプルな部分しか出さないようにした
    結果、そうなってしまいました…汗