<憑依>わたしはドM女①~痛みは喜び~

痛みこそ、喜びー。

彼は、ドMだったー。
攻撃的な妹に毎日蹴られる日々を送っていたら
いつの間にか、そうなっていたー。

痛みこそ、喜びー。
そんな彼が、憑依薬を手に入れてしまうー

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「も~~~きもい!」
高校生の妹・彩智(さち)が乱暴に、兄を蹴り飛ばすー

「あ、いって~~~!」
笑いながら蹴られる兄・他喜男(たきお)ー。

「-また喜んでる!!この変態!」
彩智が叫ぶと、
他喜男はニヤニヤしながら「あいてててててて!」と
嬉しそうに飛び跳ねているー

妹の彩智は、兄の他喜男のことを嫌っていて
他喜男に暴力をふるっているー

最初は、他喜男も「やめてくれよ~」などと言っていたが
長年それが続いたことによって
他喜男は目覚めてしまったー。

”蹴られる喜び”にー。

いつしか他喜男はーーー
ドMになってしまったのだー。

「--は~~疲れた~~~!
 お~い!彩智~!」

大学から帰宅した他喜男が
鎖を持ちながら言うー。

「俺を縛ってくれよ~!」
ニヤニヤしながら言う他喜男。

「--はぁ?きもい!マジ最悪!」
彩智が嫌悪感を丸出しにして
部屋の扉を閉めるー。

「へへ~!そこまで言わなくたっていいだろ~?」
笑う他喜男。

他喜男は、”鎖で縛られていると妙に落ち着く”などと
大学から帰ってくると、椅子に自分を縛り付けて、
その状態で本を読んだりしているー

「--はぁぁぁ…♡」
他喜男は興奮していたー。
自分が縛られている状態にー。

他喜男は、元々はごく普通の男子だった。
だが、妹の彩智から暴力を振るわれ続けた結果が、これだー。

傷めつけられることに興奮して
最近は、そういうお店にまで出向いているー。

ゾクゾクが止まらないー
叩かれているだけで、よだれが垂れてくるー。

どうしてそうなったのかは、他喜男自身にも分からない。
けれどー
快感を感じてしまうものは仕方がないー

夜になると、他喜男は手錠で自らの手を拘束して
気持ちよさそうに眠りにつくのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

他喜男が、大学を歩いていると、
外のベンチに紙袋が置かれていることに気づいたー

「なんだこれ?」
周囲を見渡してみる。

だが、周囲に紙袋の持ち主らしき人はいない。

「---」
なんとなく興味を持って中身をのぞいてみると、
大きな紙袋の中には「憑依薬」と書かれた
謎の液体が入っていたー

「憑依…?」
他喜男は首をかしげる。

そして、もう一度周囲を見渡す。

だが、やはり紙袋の持ち主らしき人間は
見当たらない。
誰かが忘れて行ったのだろうか。

「---……憑依って、あれだよな」
他人の身体を乗っ取るー。
そんな話を見たことがある。

現実で、他人に憑依できる、などとは思わない。

だが、こうして目の前に
”憑依薬”と書かれた容器があるー。

「---……」

どうせイタズラか、
そんな感じだろう、と思いつつも、
他喜男はなんとなく、ウズウズして、
その憑依薬をそのままポケットにしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅すると、他喜男は
憑依薬と書かれた容器をじーっと見つめていた。

”どうせ憑依なんてできるわけないだろう”

そうは思いつつも、
なんとなく気になるー。

もしも、もしも他人に憑依することができたらー?

「---…」
ゴクリ、と唾を飲み込むー

自分の手をボールペンの先端で
チクチクと刺し続けながら
憑依薬の容器をじーっと見つめる他喜男。

”ただいま~”
妹の彩智の声がするー。

「---…」
彩智は、兄の自分が言うのもなんだか
結構かわいい。
兄に対しては辛辣だが、
見た目はなかなか…。

「---」
他喜男の頭の中に変な妄想が浮かんでくるー。

自分が彩智に憑依して、
自分のことを罵倒したら、どうだろうか。

ゾクゾクしながら、その光景を浮かべるー

罵倒され放題だー。

彩智になって、兄である自分を罵倒するー。

妹に罵倒される様子を浮かべてー
他喜男はニヤニヤしながら涎をこぼすー。

”バカ”
”きもい”

「--えへへへ…」
妹の彩智に罵倒されると
最近はゾクゾクしてしまうー。

彩智を乗っ取れば
1日中罵倒してもらうこともできるー。

「--……飲むか」

大学のベンチで拾った得体のしれない液体を
飲もうとしてしまう他喜男。

”実際に憑依できるわけなんてない”

そうは思いつつもー

”もしかしたら、憑依できるかもしれない”
という、期待が頭の中に浮かび上がるー

もしもこれが毒だったら?
腐った水か何かだったら?

「--ふひっ」
他喜男は笑みを浮かべる。

それならそれでいいじゃないかー。
毒だったら、苦しむことになるだろうー
だが、それはそれで興奮するー

毒を飲んで苦しむ自分を想像したら
ゾクゾクするし、
身体が張り裂けそうな苦しみを
味わうことになったら、自然と笑みが
こぼれてしまいそうだー。

「--へへへ…」

憑依薬の容器を持つ手が震えるー。

そして他喜男はついに、
それを飲み干したー。

・・・・・・・・

「--そういえばさ~!」
妹の彩智が、他喜男の部屋に入って来るー

「え…?」
彩智は驚くー

兄の他喜男が、机にぐったりと倒れているー

「…は?もう寝てんの?
 マジ使えない」

ため息をついて、彩智が部屋の扉を閉めようとしたその時だったー

「うっ」
彩智がビクンと震えるー

目の輝きが失われていくー…。

彩智がだらん…とその場に意思なく
立ち尽くすー

そしてー
「…ひ、、ひひ…ほ、、ほんとに…」
彩智が笑みを浮かべながら自分の両手を見つめるー

「ほ、、ほんとに…」
ニヤニヤしながら彩智の部屋に走っていくー

部屋の中にあった姿見を見つめると、彩智は
満面の笑みを浮かべたー

「本当に彩智になってる!!
 あはは…!はははは…!ふははははははは♡」

鏡の前で笑う彩智ー。

「へへ…悪いな彩智~!
 ちょっと借りるぜ~!」
笑いながら叫ぶ彩智。

彩智の身体を返したあとに
”彩智に罵倒されるのも”楽しみのひとつだー。

だが、今はー。

スカートがふわふわすることも気にせず、
自分の部屋に駆け込む彩智ー。

そこにはー
ぐったりしている他喜男の姿ー

「--……ふふふ…」
ニヤニヤと涎を垂らしながら笑う彩智。

まさか、憑依薬が本物だったなんてー

これで…たっぷりと妹に罵倒してもらうことができるー

「ばーか!」
彩智の声で、倒れている自分に罵声を浴びせる。

「まじきもい!」
「きもいんだよ!」
「他喜男菌」
「うわっ!きも~~!」
「童貞野郎!」

彩智の声で、罵倒の言葉を繰り返すー

だがー

「-----」
彩智は、すぐに罵倒をやめてしまったー

「--………」
彩智が拍子抜け、というような表情を浮かべている。

「--……だめだ」
彩智は呟いたー

興奮しないー
彩智に罵倒されているはずなのに、興奮しないー

何故だ…???

「--ばーか!」
もう一度、倒れている自分に向かって叫ぶ彩智ー

でもー
やはり、興奮しないー

何故ー?
彩智の身体になったから、
興奮するシチュエーションも変わったというのか?

彩智はMじゃないー。
だから、彩智の身体に入った俺もMじゃなくなったということか?

そんな風に首を傾げながら、
彩智は、部屋の中を歩き回るー。

「----」
なんだー?
求めていたものと違うー

彩智に憑依して、自分の身体を罵倒すれば
興奮すると思っていた。
だが、何も興奮しないーーー

どうしてーー?
首をかしげる彩智ー。

その時だったー

ふと、自分がいつも使っている手錠が目に入るー

なんとなく、彩智は自分の手に
手錠をかけてみたー

ゾクゥ…

彩智が思わず笑みを浮かべるー

「そうか…」
手錠をはめたままの彩智がポンと手を叩くー

そうだー
彩智を乗っ取った今、
自分を罵倒してもーー
興奮しないのは当たり前だー

今の自分は、彩智なのだから、
自分の身体を罵倒しても、
それは「M」要素ではないー

彩智として、自分を罵倒してるなら、
それは「S」だー

だから興奮しないのだー

と、いうことはーー

彩智はニヤニヤしながら鎖を自分の腕に巻きつけて、締め付けてみるー

「--ふひっ♡」

彩智の身体の内側からゾクゾクっと快感が駆け巡るー

「これだーーー」
ゾクゾクゾクゾクー。

彩智を乗っ取った他喜男はゾクゾクを覚えるー

そうだー
俺は”痛めつけられる側”じゃないとだめなんだー!

歪んだ笑みを浮かべながら彩智の身体は
他喜男の意志に従って、激しく興奮しているー

彩智の身体で自分を罵倒したときは
特に何も感じなかったー

”罵倒する側”じゃ興奮しないんだー。
彩智の身体を乗っ取っている今は
自分は彩智なんだー。
だから、彩智として自分の身体を罵倒しても
何も感じないー

「--へへへっ…」
彩智はニヤニヤと笑みを浮かべるー

彩智が椅子に縛り付けられた姿を想像するー

「うへぇぇ…」
ゾクゾクゾクゾクと、しながら彩智はニヤニヤと笑みを浮かべるー

この身体で拘束されてみたいー
鞭で叩かれたり、
鎖で縛られたりして
はぁはぁしてみたい。

「どうすっかな~?」
彩智はニヤニヤしながら椅子に座って
だらしない格好をしながら、他喜男のスマホを見つめ始めたー

クラスの誰かを呼ぶかー?
友人の中にはエロいやつもたくさんいる。
彩智の身体で誘惑すれば、彩智を傷めつけてくれるやつも
いるだろうー

だがー。
”憑依”のことを明かすのはリスクが高いー

「--う~ん…彩智をドMにするのは
 やめておくか」

そう呟くと、スマホを置いて、彩智の身体のまま
自分の部屋に戻るー。

あまり彩智の身体で変なことをすれば
自分の人生にも影響が出るー。

彩智の身体でいじめてもらいたかったが、
諦めようー。

そう呟きながら他喜男は彩智の身体から飛び出すー。

彩智は「ぁ…」と、声をあげながら
そのまま、その場に倒れたー。

・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

他喜男は学校で、クラスメイトたちを見回したー。

”誰にドM女になってもらおうかなぁ~”

とー。

彼氏がいるやつの方がいい。
デート中に彼氏を誘惑して、Mの趣味があることを明かして
彼氏に痛めつけてもらうー。

他喜男は教室の隅で、笑顔を浮かべている女子生徒に目をつけたー。

沖松 梅子(おきまつ うめこ)
クラスのアイドル的存在で、
勉強も、スポーツも、なんでもできるタイプ。
容姿もアイドルのように可愛らしいー。

「-----へへ」

他喜男は、梅子を見つめながら笑みを浮かべたー

だがー

他喜男はすぐに視線を逸らしたー。

”へへへ…
 普段大人しい子が、ドMってのは興奮するよなぁ~”

他喜男にとって梅子は眼中になかったー。

教室の隅っこで本を読んでいる
眼鏡の女子・松原 陽花里(まつばら ひかり)-

彼女に決めたー。

同じ図書委員の大人しい男子の彼氏がいるー

陽花里に憑依してー
ドM女になってやろうー。

穏やかな雰囲気で本を読む陽花里を見つめながら
女の子になっていじめられる妄想をした他喜男は
思わず涎を垂らしてしまうのだったー。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・

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ドM男が憑依薬を手に入れてしまったお話デス~!
続きはまた明日~!

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憑依<わたしはドM女>

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