女子高生に成り代わり、生きていくー。
そう決意した男を待ち受ける運命はー?
”もしもわたしが偽物だったら?”最終回!
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「---ふふふふふふふ」
顔面が激しく変形した一見すると”化け物”のような女が
杖をつきながら、里美と昌平の方に近づいてくるー
「な…何か用ですか?」
昌平が、里美をうしろに下げて、かばうようにして前に立ち、
その女を見つめるー。
「---昌平…久しぶり…」
化け物のような女は、唇が裂けそうな不気味な笑みを浮かべたー。
「---え…」
昌平が戸惑うー。
「-……………」
女が、里美の方を見たー。
「---……!」
里美が表情を歪めるー。
「----”本物の”篠村 里美 です」
化け物のような女は、そう口にしたー
「---!!!!!」
里美が驚くー。
「--な、、、」
昌平は戸惑った表情を浮かべるー
顔がボロボロで、身体もボロボロだがー
確かにーー
顔の原型は、里美のようにも見えるー。
「ーー」
”偽物”の里美は、あの日のことを思い出すー
制服を本物の里美から奪った彼は
里美を鉄パイプで殴打したー。
必死に抵抗する里美を何度も何度も殴りつけて
ボロボロになるまで蹴り飛ばしたー
里美の姿で、本物の里美を徹底的に痛めつけたー。
やがてー
本物の里美がぐったりして動かなくなったのを
確認した彼は、用意していた袋に詰めて
里美を湾内の海に投げ捨てたー。
確実に死んだーー
そう思っていたーー
現に”女性の遺体発見”という
ニュースも出ていたー。
それが、里美だったはずだー
なぜー?
「---…わたしは、助かったの。
今までずーっと、動けなかったけど
ようやく動けるようになったのぉぉぉぉ…
あのあとねぇ、、
路上生活してるおじさんが、わたしを助けてくれたの
ふふ、、ふふふ
それでぇぇ
ずっとずっと安静にしててぇぇぇ
よーやく、こうして、、、動けるようになったのぉぉ…」
里美がボロボロになった自分の顔を触りながら言うー
「---こ・ん・な風になっちゃったけどねぇえええええ!!!
あんたのせいでぇぇ!!!」
鬼のような形相で叫ぶ里美ー
「----」
偽物の里美は答えないー
「--ちょ、ちょ、待ってくれ」
昌平が割って入るー
本物の里美が「昌平ぃ…」と呟くー。
ボロボロになった里美は
以前のような優しく穏やかな性格では
なくなってしまっていたー
「ど、、どういうことなんだ…?」
昌平が本物と偽物の里美を見るー。
「そ、、それは…」
偽物の里美が戸惑うー
「-どういうこと???
こいつが、偽物なのよ!
わかるでしょ?ねぇ??昌平!?わかるでしょ!!
わたしが、わたしなの!」
感情的に叫ぶ本物の里美ー
昌平が、二人の里美の方を見つめるー
”本物”は本当にボロボロの状態だー。
外見だけで言うのであれば”醜悪”と言ってもいいー。
目のあたりも変形していて、とても痛々しい状態だー。
「---…本当に、里美なのか?」
本物の方に向かって言う昌平。
「---……そうよ…
ふふ……こんな風になっちゃったけど!」
本物が偽物の方を睨むー。
「---……」
偽物の里美がうつむくー。
「---どういうことなんだ?」
昌平が、偽物の里美の方を見つめるー
里美に変身して、成り代わって生きるつもりだったー。
最初は、好き放題やるつもりで、
里美を俺色に変えるつもりだったー
けどー
家族や友達、昌平と接しているうちに、
気持ちに変化が生じてー
自分が里美として生きて行こうと、そう決意したー
俺はどうなっても構わないー
けどー
みんなの苦しむ顔、悲しむ顔を見たくないー
そう決意したー
だが、それは”本物が死んでいる”と、そう思ったからーー。
「---…」
黙り込む偽物の里美ー
里美に変身している男の中には
色々な感情が巻き起こっていたー
このままー
このまま、自分は里美としてーーー
”決めた”
里美に変身している男は、決意したー。
自分の生き方をーーー
「---わたし、知らない」
偽物の里美は顔を上げるー
「--!?」
昌平と本物の里美が驚くー
「昌平、そんな人、知らないよ!」
偽物の里美が叫ぶー
「-!?」
昌平が驚いて本物の里美の方を見るー
「--よく見てよ昌平!
わたしはわたしだよ!!
どこからどうみたって、わたしが里美でしょ!
そんな女…!わたし、知らない!」
偽物の里美の言葉に、
本物の里美が「なんですってええええええええ!」と
狂ったように叫ぶー
「--…お、、お、、、じゃあ、お前は誰なんだ!?」
昌平が、”本物の里美”の方を見て呟くー。
無理もないー
”偽物”は完璧に里美の姿だー。
”本物”はボロボロで面影もないー
”本物”を”偽物”と思ってしまっても無理はないー
「だからぁ…わたしが里美だってば!
昌平ぃぃぃぃ、信じてよぉぉぉぉぉ」
泣き笑いを浮かべながら呟く本物の里美ー
「---う、、嘘だ!里美に近づくな!」
昌平が偽物を守ろうとするー
本物の里美が、悲しそうな表情を浮かべるー。
「----」
偽物の里美が、本物を見つめるー
”きっと、きっとうまくいくー”
「--し、、昌平!逃げようよ!」
偽物の里美が昌平の手を引っ張る。
「あ…あぁ!」
戸惑いながら昌平も走り出す。
まるで幽霊のようによたよたと歩きながら
二人を追いかける”本物”の里美ー
「くそっ!どこ!?どこ!?」
だがー、足もボロボロで、二人を逃がしてしまうー
「どこ…!?
わたしが…わたしが…里美なのに…」
本物の里美はその場で膝をつくー
「わたしがさとみなのにぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい!」
怒りの形相で泣き叫ぶ本物の里美ー。
頭をガリガリと掻きむしりながら”許さない 許さない”と
本物は何度も呟き続けたー
・・・・・・・・・・・・・・
「---はぁはぁ…なんだったんだあの女…」
逃げ切った昌平が呟くー。
「--わからない…」
偽物の里美はとぼけたー。
そう、これでいいー。
「--…ねぇ」
偽物の里美が、昌平の方を見つめるー
「もしも、もしも、あっちが”本物”だったら、
昌平はどっちを選んだ?」
「え?」
昌平が戸惑うー
「--あ、例え話だよ~!
でも、ほら、もしもわたしが偽物で、
あっちが本物だったら、
昌平はどうしたのかな~?って」
その言葉に、
昌平は迷うことなく答えたー。
「---はは…
そしたらどんな姿だったとしても
俺は”本物の里美”の方を選ぶよ」
昌平の迷いない言葉ー
昌平は、
例え醜悪な姿になってしまった里美でも、
本物を選ぶー
そこに、迷いはなかったー。
「---…そう」
わずかに寂しそうな表情を浮かべる偽物の里美ー
「で、偽物だったほうには、たーっぷりお仕置きして、
そのあとは…
ま、本当の姿と友達にでもなるかな?」
笑いながら言う昌平。
「--友達?」
偽物の里美が聞き返す。
「はは、まぁ、たとえ話だよ。
でも、とにかくー
もし、里美に本物と偽物がいるなら
俺は、本物を大事にするー」
その言葉にー
”里美って子は、こんなに愛されて幸せだな”と
内心で呟くー
”--俺には、まぶしすぎるー”
「---ありがと」
偽物の里美はにっこりとほほ笑み、
”まださっきの変な女、うろついてるかもだし、
送って行こうか?”と心配する昌平の誘い出を断り、
そのまま昌平と別れたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜の湾内の倉庫ー
そこに、偽物の里美がやってきたー
”本物の里美”を呼び出したのだー
あの時ー
”見つかった水死体”は
偽物の里美がスマホで細かく調べた結果ー
別件で見つかった女性であることがわかったー
てっきり、自分が沈めた里美だと思っていたが
たまたま関係ない女性が見つかっていただけだったー
「ゆるさない…ゆるさない…!」
本物の里美が鬼のような形相で叫ぶー。
偽物の里美が、本物の里美を見つめる。
「----…すまなかった」
偽物の里美が、頭を下げるー。
「……はぁ?」
本物の里美が、首をゴキゴキ言わせながら傾げるー。
「わたしをこんなにして、、、わたしの人生を奪って…
すみませんでした で済むと思ってんの!?!?!?」
本物の里美の怒りの形相ーーー。
偽物の里美はー
「思ってなんかいない…」
と、悲しそうに呟いたー。
そしてー
「---」
偽物の里美が鞄から何かを取り出したー。
それはー
”他者に変身する薬”
それを、本物の里美に注射するー。
「な、、何をするの!?」
叫ぶ本物の里美ー
「いいから…俺の方を見ろ!
俺の姿になりたいと思え!」
偽物の里美が叫ぶー。
「-!?」
本物の里美が表情を歪めるー。
戸惑いながらも、言われたとおりにするー。
するとー
自分の姿が、”ボロボロではない里美”の姿に
変わっていくー。
偽物の里美と同じ姿になっていくー
「わ、、わたしの身体が治ったー?」
本物の里美が戸惑う。
「治ったんじゃない…」
偽物の里美は持ってきた鞄を本物に渡す。
「--…変身したんだ…この姿に」
偽物が呟くー。
里美に変身した男の姿に、
本物の里美が変身したー
”ボロボロの身体になる前の里美”に
本物が変身することによってー
強引に、沈められてボロボロになってしまった里美を
元に戻したのだー。
「---これは…」
渡された鞄を開くと、そこには
綺麗にクリーニングされた制服と、私物が入っていた。
「--…もう…いいよ」
もう一つ持っていた”他者変身の薬”を自分に注射する男ー
男が、元に姿に戻るー。
「--え」
里美が戸惑っていると、
男は呟いたー
「--最初は、お前の人生を奪ってやるつもりだったー
でも…相手を間違えた…
家族、友達、彼氏…
お前の周りにいるやつらは、
俺にはまぶしすぎて…耐えられなかった」
男がそう言うと、
里美が、男の方を睨みながら呟くー
「---…い、、今更、そんなこと言われても…」
里美の言葉に、
男は呟くー
「わかってる…
許してくれとは言わないし
許してもらえるとも思ってないー
俺のことをずっとずっと憎んでくれて構わないー
でも…
俺に今できるのはこれだけだ…
お前に、元の生活を返すことー」
男はそこまで言うと、
里美に渡した鞄を指さしたー。
「その中にー
俺が覚えてる限りの、
俺がお前になってる間の出来事を
書いておいた…
…安心しろよ…
他の人から変な風に思われることはしてないから」
男はそう呟いたー。
一人でエッチとかはしたがー
特に見られてないから、里美の人生には影響はないだろうー。
「----」
元の姿を取り戻したことで、
精神的にも少し落ち着いた里美が呟くー
「---絶対、許さないから」
とー。
里美からすれば、男のことを許すことなどできないー
男も、里美に許してもらえるなどとは、思っていないー。
里美が、戸惑いの表情を浮かべながら立ち去っていくー
「---……ーー
クソみたいな人生の最後にー…
楽しかったよ…
ありがとう」
男は呟いたー
里美から返事はないー
里美はそのまま立ち去って行ったー。
「---ふぅ」
ため息をつくと、男は呟いたー
「人にしたことは、自分に、跳ね返ってくる…か」
男は煙草に火をつけると、
少しの間、煙を噴かせてー
最後に少しだけほほ笑むと、自ら湾の海の中に飛び込んだー
その表情は、
不思議と穏やかな表情だったー
・・・・・・・・・・・・・・・・
里美は、日常に復帰したー
元の姿を取り戻したことで、
穏やかな性格を取り戻した里美ー
昌平に「おかえり」と言われたー
昌平はそれ以上何も言わなかったが
偽物のことの気づいていたのかもしれないー
「って…」
自分の部屋で里美は叫ぶー
「なによこれ~~~!」
自分の部屋の奥に
メイド服やチャイナドレスー
色々な服がしまい込まれていたー
「--最悪っ!」
里美はそう叫びながら、
男が里美に変身している間にネットで購入して
飽きてしまいこんでいた服を前に、
”どうすればいいの…”と戸惑うのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・
コメント
久しぶりの他者変身モノ完結編でした~!
他者変身を書く時は
”変身される側”の人が、自由に動ける状態なのか、
自由を奪われているのか、それとも死んでしまっているのか、に
よっても色々変わってくるので、最初にどうするか考えています~!
まだまだ変身モノは執筆数が少ないので、
不慣れな部分もありますが
また機会があれば新作を書いてみたいと思います!
ありがとうございました~!
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