<他者変身>もしもわたしが偽物だったら?③~にせもの~(完)

女子高生に成り代わり、生きていくー。
そう決意した男を待ち受ける運命はー?

”もしもわたしが偽物だったら?”最終回!

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「---ふふふふふふふ」
顔面が激しく変形した一見すると”化け物”のような女が
杖をつきながら、里美と昌平の方に近づいてくるー

「な…何か用ですか?」
昌平が、里美をうしろに下げて、かばうようにして前に立ち、
その女を見つめるー。

「---昌平…久しぶり…」
化け物のような女は、唇が裂けそうな不気味な笑みを浮かべたー。

「---え…」
昌平が戸惑うー。

「-……………」
女が、里美の方を見たー。

「---……!」
里美が表情を歪めるー。

「----”本物の”篠村 里美 です」
化け物のような女は、そう口にしたー

「---!!!!!」
里美が驚くー。

「--な、、、」
昌平は戸惑った表情を浮かべるー

顔がボロボロで、身体もボロボロだがー
確かにーー
顔の原型は、里美のようにも見えるー。

「ーー」
”偽物”の里美は、あの日のことを思い出すー

制服を本物の里美から奪った彼は
里美を鉄パイプで殴打したー。
必死に抵抗する里美を何度も何度も殴りつけて
ボロボロになるまで蹴り飛ばしたー
里美の姿で、本物の里美を徹底的に痛めつけたー。

やがてー
本物の里美がぐったりして動かなくなったのを
確認した彼は、用意していた袋に詰めて
里美を湾内の海に投げ捨てたー。

確実に死んだーー

そう思っていたーー

現に”女性の遺体発見”という
ニュースも出ていたー。

それが、里美だったはずだー

なぜー?

「---…わたしは、助かったの。
 今までずーっと、動けなかったけど
 ようやく動けるようになったのぉぉぉぉ…

 あのあとねぇ、、
 路上生活してるおじさんが、わたしを助けてくれたの
 ふふ、、ふふふ
 
 それでぇぇ
 ずっとずっと安静にしててぇぇぇ
 よーやく、こうして、、、動けるようになったのぉぉ…」

里美がボロボロになった自分の顔を触りながら言うー

「---こ・ん・な風になっちゃったけどねぇえええええ!!!
 あんたのせいでぇぇ!!!」
鬼のような形相で叫ぶ里美ー

「----」
偽物の里美は答えないー

「--ちょ、ちょ、待ってくれ」
昌平が割って入るー

本物の里美が「昌平ぃ…」と呟くー。

ボロボロになった里美は
以前のような優しく穏やかな性格では
なくなってしまっていたー

「ど、、どういうことなんだ…?」
昌平が本物と偽物の里美を見るー。

「そ、、それは…」
偽物の里美が戸惑うー

「-どういうこと???
 こいつが、偽物なのよ!
 わかるでしょ?ねぇ??昌平!?わかるでしょ!!
 わたしが、わたしなの!」

感情的に叫ぶ本物の里美ー

昌平が、二人の里美の方を見つめるー

”本物”は本当にボロボロの状態だー。
外見だけで言うのであれば”醜悪”と言ってもいいー。
目のあたりも変形していて、とても痛々しい状態だー。

「---…本当に、里美なのか?」
本物の方に向かって言う昌平。

「---……そうよ…
 ふふ……こんな風になっちゃったけど!」
本物が偽物の方を睨むー。

「---……」
偽物の里美がうつむくー。

「---どういうことなんだ?」
昌平が、偽物の里美の方を見つめるー

里美に変身して、成り代わって生きるつもりだったー。
最初は、好き放題やるつもりで、
里美を俺色に変えるつもりだったー

けどー
家族や友達、昌平と接しているうちに、
気持ちに変化が生じてー
自分が里美として生きて行こうと、そう決意したー

俺はどうなっても構わないー
けどー
みんなの苦しむ顔、悲しむ顔を見たくないー

そう決意したー

だが、それは”本物が死んでいる”と、そう思ったからーー。

「---…」
黙り込む偽物の里美ー
里美に変身している男の中には
色々な感情が巻き起こっていたー

このままー

このまま、自分は里美としてーーー

”決めた”

里美に変身している男は、決意したー。
自分の生き方をーーー

「---わたし、知らない」
偽物の里美は顔を上げるー

「--!?」
昌平と本物の里美が驚くー

「昌平、そんな人、知らないよ!」
偽物の里美が叫ぶー

「-!?」
昌平が驚いて本物の里美の方を見るー

「--よく見てよ昌平!
 わたしはわたしだよ!!

 どこからどうみたって、わたしが里美でしょ!

 そんな女…!わたし、知らない!」

偽物の里美の言葉に、
本物の里美が「なんですってええええええええ!」と
狂ったように叫ぶー

「--…お、、お、、、じゃあ、お前は誰なんだ!?」
昌平が、”本物の里美”の方を見て呟くー。

無理もないー
”偽物”は完璧に里美の姿だー。

”本物”はボロボロで面影もないー

”本物”を”偽物”と思ってしまっても無理はないー

「だからぁ…わたしが里美だってば!
 昌平ぃぃぃぃ、信じてよぉぉぉぉぉ」
泣き笑いを浮かべながら呟く本物の里美ー

「---う、、嘘だ!里美に近づくな!」
昌平が偽物を守ろうとするー

本物の里美が、悲しそうな表情を浮かべるー。

「----」
偽物の里美が、本物を見つめるー

”きっと、きっとうまくいくー”

「--し、、昌平!逃げようよ!」
偽物の里美が昌平の手を引っ張る。

「あ…あぁ!」
戸惑いながら昌平も走り出す。

まるで幽霊のようによたよたと歩きながら
二人を追いかける”本物”の里美ー

「くそっ!どこ!?どこ!?」
だがー、足もボロボロで、二人を逃がしてしまうー

「どこ…!?
 わたしが…わたしが…里美なのに…」
本物の里美はその場で膝をつくー

「わたしがさとみなのにぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい!」
怒りの形相で泣き叫ぶ本物の里美ー。

頭をガリガリと掻きむしりながら”許さない 許さない”と
本物は何度も呟き続けたー

・・・・・・・・・・・・・・

「---はぁはぁ…なんだったんだあの女…」
逃げ切った昌平が呟くー。

「--わからない…」
偽物の里美はとぼけたー。

そう、これでいいー。

「--…ねぇ」
偽物の里美が、昌平の方を見つめるー

「もしも、もしも、あっちが”本物”だったら、
 昌平はどっちを選んだ?」

「え?」
昌平が戸惑うー

「--あ、例え話だよ~!
 でも、ほら、もしもわたしが偽物で、
 あっちが本物だったら、
 昌平はどうしたのかな~?って」

その言葉に、
昌平は迷うことなく答えたー。

「---はは…
 そしたらどんな姿だったとしても
 俺は”本物の里美”の方を選ぶよ」

昌平の迷いない言葉ー

昌平は、
例え醜悪な姿になってしまった里美でも、
本物を選ぶー
そこに、迷いはなかったー。

「---…そう」
わずかに寂しそうな表情を浮かべる偽物の里美ー

「で、偽物だったほうには、たーっぷりお仕置きして、
 そのあとは…
 ま、本当の姿と友達にでもなるかな?」

笑いながら言う昌平。

「--友達?」
偽物の里美が聞き返す。

「はは、まぁ、たとえ話だよ。
 
 でも、とにかくー
 もし、里美に本物と偽物がいるなら
 俺は、本物を大事にするー」

その言葉にー
”里美って子は、こんなに愛されて幸せだな”と
内心で呟くー

”--俺には、まぶしすぎるー”

「---ありがと」
偽物の里美はにっこりとほほ笑み、
”まださっきの変な女、うろついてるかもだし、
 送って行こうか?”と心配する昌平の誘い出を断り、
そのまま昌平と別れたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜の湾内の倉庫ー

そこに、偽物の里美がやってきたー
”本物の里美”を呼び出したのだー

あの時ー
”見つかった水死体”は
偽物の里美がスマホで細かく調べた結果ー
別件で見つかった女性であることがわかったー
てっきり、自分が沈めた里美だと思っていたが
たまたま関係ない女性が見つかっていただけだったー

「ゆるさない…ゆるさない…!」
本物の里美が鬼のような形相で叫ぶー。

偽物の里美が、本物の里美を見つめる。

「----…すまなかった」
偽物の里美が、頭を下げるー。

「……はぁ?」
本物の里美が、首をゴキゴキ言わせながら傾げるー。

「わたしをこんなにして、、、わたしの人生を奪って…
 すみませんでした で済むと思ってんの!?!?!?」
本物の里美の怒りの形相ーーー。

偽物の里美はー
「思ってなんかいない…」
と、悲しそうに呟いたー。

そしてー

「---」
偽物の里美が鞄から何かを取り出したー。

それはー
”他者に変身する薬”

それを、本物の里美に注射するー。

「な、、何をするの!?」
叫ぶ本物の里美ー

「いいから…俺の方を見ろ!
 俺の姿になりたいと思え!」
偽物の里美が叫ぶー。

「-!?」
本物の里美が表情を歪めるー。

戸惑いながらも、言われたとおりにするー。

するとー
自分の姿が、”ボロボロではない里美”の姿に
変わっていくー。

偽物の里美と同じ姿になっていくー

「わ、、わたしの身体が治ったー?」
本物の里美が戸惑う。

「治ったんじゃない…」
偽物の里美は持ってきた鞄を本物に渡す。

「--…変身したんだ…この姿に」
偽物が呟くー。

里美に変身した男の姿に、
本物の里美が変身したー

”ボロボロの身体になる前の里美”に
本物が変身することによってー
強引に、沈められてボロボロになってしまった里美を
元に戻したのだー。

「---これは…」
渡された鞄を開くと、そこには
綺麗にクリーニングされた制服と、私物が入っていた。

「--…もう…いいよ」

もう一つ持っていた”他者変身の薬”を自分に注射する男ー

男が、元に姿に戻るー。

「--え」
里美が戸惑っていると、
男は呟いたー

「--最初は、お前の人生を奪ってやるつもりだったー
 でも…相手を間違えた…

 家族、友達、彼氏…
 お前の周りにいるやつらは、
 俺にはまぶしすぎて…耐えられなかった」

男がそう言うと、
里美が、男の方を睨みながら呟くー

「---…い、、今更、そんなこと言われても…」

里美の言葉に、
男は呟くー

「わかってる…
 許してくれとは言わないし
 許してもらえるとも思ってないー
 俺のことをずっとずっと憎んでくれて構わないー

 でも…
 俺に今できるのはこれだけだ…
 
 お前に、元の生活を返すことー」

男はそこまで言うと、
里美に渡した鞄を指さしたー。

「その中にー
 俺が覚えてる限りの、
 俺がお前になってる間の出来事を
 書いておいた…

 …安心しろよ…
 他の人から変な風に思われることはしてないから」

男はそう呟いたー。

一人でエッチとかはしたがー
特に見られてないから、里美の人生には影響はないだろうー。

「----」
元の姿を取り戻したことで、
精神的にも少し落ち着いた里美が呟くー

「---絶対、許さないから」
とー。

里美からすれば、男のことを許すことなどできないー
男も、里美に許してもらえるなどとは、思っていないー。

里美が、戸惑いの表情を浮かべながら立ち去っていくー

「---……ーー
 クソみたいな人生の最後にー…
 楽しかったよ…

 ありがとう」

男は呟いたー
里美から返事はないー

里美はそのまま立ち去って行ったー。

「---ふぅ」
ため息をつくと、男は呟いたー

「人にしたことは、自分に、跳ね返ってくる…か」

男は煙草に火をつけると、
少しの間、煙を噴かせてー
最後に少しだけほほ笑むと、自ら湾の海の中に飛び込んだー

その表情は、
不思議と穏やかな表情だったー

・・・・・・・・・・・・・・・・

里美は、日常に復帰したー

元の姿を取り戻したことで、
穏やかな性格を取り戻した里美ー

昌平に「おかえり」と言われたー

昌平はそれ以上何も言わなかったが
偽物のことの気づいていたのかもしれないー

「って…」
自分の部屋で里美は叫ぶー

「なによこれ~~~!」

自分の部屋の奥に
メイド服やチャイナドレスー
色々な服がしまい込まれていたー

「--最悪っ!」
里美はそう叫びながら、
男が里美に変身している間にネットで購入して
飽きてしまいこんでいた服を前に、
”どうすればいいの…”と戸惑うのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・

コメント

久しぶりの他者変身モノ完結編でした~!

他者変身を書く時は
”変身される側”の人が、自由に動ける状態なのか、
自由を奪われているのか、それとも死んでしまっているのか、に
よっても色々変わってくるので、最初にどうするか考えています~!

まだまだ変身モノは執筆数が少ないので、
不慣れな部分もありますが
また機会があれば新作を書いてみたいと思います!

ありがとうございました~!

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