<他者変身>ごみ箱の精霊

とある女子大生は、
”ごみ箱に宿る精霊”を怒らせてしまったー

ごみ箱の精霊の怒りによってー
彼女は、ごみ箱にされてしまうー

---------------—

「---あ~~…」
女子大生の、宝田 弥穂(たからだ やほ)が、
少しイライラしながらごみ箱を見つめるー。

センサー式のごみ箱なのだが、
最近は調子が悪いー

「も~!ぽんこつ!」
弥穂がごみ箱を蹴りつけるー

見た目、可愛らしくて穏やかな雰囲気の
弥穂なのだが、
”モノ”に対してだけはとても厳しく、
よく、八つ当たりでモノを壊してしまうことも
あるほどー。

高校時代からの友人は
”弥穂って、モノにだけは厳しいよね~”などと
いつも言われているー

ごみ箱にごみがたまっていくー
弥穂は、ごみ箱を乱暴に掴むと、
ごみ袋を取り出したー

「--は~!ゴミ出しゴミ出し」
ごみ箱を乱暴に放り投げるようにしておくと、
ごみ袋を縛って、それをごみ置き場に出しに行くー。

だがー
弥穂は知らないー

このごみ箱にはー
”ごみ箱の精霊”が
宿っていることをー。

そしてー
ごみ箱の精霊の怒りはー
”爆発寸前”にまでたまっていたことをー。

・・・・・・・・・・・・

ある日、弥穂は、ごみ箱のセンサーが
上手く反応しないことに腹を立てて、
ごみ箱を蹴り飛ばし、放り投げたー

「あ~!むかつく!
 ごみ箱のクセに生意気よ!」
弥穂が叫ぶー

”人”には優しく、
穏やかな性格なのだが、
モノにはとても厳しいー

異常なぐらいにー

”ぶつん”

ごみ箱の精霊が”キレた”

「あんた、絶対バラバラにして捨ててやるから!」
弥穂がごみ箱に向かって叫ぶー

弥穂はまだ知らないー

ついにー
”ごみ箱の精霊”が
”キレて”しまったことをー。

・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

弥穂が目を覚ますとー
違和感を覚えたー

「あ…あれ…?」
弥穂が、目を開くー

そこはー
”いつも自分がごみ箱を置いている場所”だったー。

違和感を感じる弥穂。
なんで自分がここにいるのだろうか。
こんなところで眠ってしまったのだろうか。

そんな風に思いながら周囲を見渡すとー

ーーー!?!?!?

見渡すことができなかったー
視線が動かないー。

何もーーー…

「えっ……!?」
言葉を発することはできるー
だが、身体が動かないー

コンビニの前にたむろしている若者のような
なんとも言えないポーズのまま
固まってしまっている弥穂ー。

これは、いったいー?

そんな風に思っているとーー
誰かの足音がしたー。

弥穂は一人暮らしだ。
誰も、他にはいないはずー

じゃあ、これはー!?

「だ、、誰なの!?」
弥穂が叫ぶー

もしかしてー
誰か…強盗か何かが入ってきて
自分は縛られてしまったのだろうかー?

そんな風に思いながら弥穂は叫ぶー

「け、、警察に通報しますよ!」

とー。

だがーー
反応はない。
キッチンの方で何かをしているような感じだが、
視線も身体も動かせない弥穂は、
”誰がいるのか”を確認することができないー

不安に思いながら弥穂が叫ぶー

「誰!?!?ねぇ、返事ぐらいしてよ!」

その叫び声に
ため息が聞こえたー

そのため息は女のため息だったー

”女の人ー?”

弥穂は、友達の誰かかな?と思いながら
「ちょ、、た、、助けてよ!」と呟くー

するとー

「---!!」
弥穂は、思わず目を見開いたー

目の前にーーー”自分”がいるー

「--え…」
変な態勢のまま動くことができない弥穂が驚きの声を
上げるとー
もう一人の弥穂が笑みを浮かべたー

「--今日からわたしが、宝田 弥穂ー」
偽物の弥穂は笑みを浮かべるー

「え……」
弥穂は戸惑うー

なんで、目の前に自分がーーー。

「---お前に呪いをかけたーー。」
弥穂が笑みを浮かべながらーーー
姿を変えていくー

そして、偽物の弥穂は”センサー式のごみ箱”になったー

「--!?!?!?」
弥穂が驚くー

すぐに、センサー式のごみ箱が
弥穂の姿に戻るー。

「---お前は今日から、ごみ箱だ」
偽物の弥穂が呟くー

「そして、わたしが、弥穂」
偽物はニヤニヤしながら、
自分の身体をべたべたと触るー

ごみ箱の精霊の溢れ出る怒りー
その怒りのエネルギーが
通常ではありえないことを
引き起こした。

ごみ箱が意志を持ち、
弥穂の姿に変身ー…

そして、弥穂に呪いをかけて、
弥穂をごみ箱に仕立て上げたー

「--あ…あんたの…仕業なの!?」
弥穂が叫ぶー

弥穂は奇妙なしゃがんだ格好のまま、
動くことができないー

「---…
 ごみ箱の怒り…思い知るがいい」
偽物の弥穂は冷たい声でそう呟くと、
そのまま立ち去って行ったー

そして、しばらくすると
ティッシュを持って近づいてきたー。

「----」
偽物の弥穂が本物の弥穂の足を踏むー

「いたっ!?」
本物の弥穂がそう叫んだ直後ー
口が勝手に開いたー

「あ…あが…な、、ど、、どうなってるの…」
本物の弥穂が目に涙を浮かべながら
大口を開いているー

顎が痛くなりそうなぐらいの大口ー

「言ったでしょ?」
弥穂の口調を真似て
偽物の弥穂がほほ笑むー

「あなたはごみ箱だって」

ティッシュを本物の弥穂の口に放り込むー

「むぐっ!?」
本物の弥穂が驚くー
弥穂の口が勝手に動きー
ティッシュを噛んで、
やがて、飲み込んだー

「ひ…や、、やめて…!」
本物の弥穂が慌てて悲鳴を上げるー

「--も~!ぽんこつ!」

本物の弥穂がかつて言ったセリフを
偽物は言いながら、弥穂を蹴り飛ばすー

それでも弥穂の身体は動かなかったー

ごみ箱の精霊に完全に支配されているー

「--お前はこれから
 永遠にごみ箱として生きるんだ…
 
 ”ごみ箱の怒り”思い知るがいい」

偽物の弥穂は、低い声で
脅すようにして言うと、
笑いながら、剥いていたりんごの皮を
弥穂の口に放り込んだー

「うぅぅぅぅぅ…」
口が勝手に動くーー
弥穂は、リンゴの皮をそのまま飲み込むー

「こ、、、こんなことして……
 ゆるさない…!」

弥穂は怒りを込めて叫ぶー

「---まだ、そんなこと言うんだ~?」
偽の弥穂は勝ち誇った表情で
そう言うと、部屋の奥に歩いて行ったー

動けない弥穂は、
偽物が何をしているか、
確認することもできなかったーーー

そのまま夜になるー

”どうすればいいの…?
 誰か助けて…!”

本物の弥穂は戸惑っていたー
ずっと変な態勢のまま、
ごみを口に投げられて、それを食べるーーー…

このままじゃ、死んでしまうー

偽の弥穂は、ミニスカート姿で足を組んで
”これが人間の開放感か~”などと言いながら
本を読んでいるー。

弥穂は思うー
明日、彼氏の芳次郎(よしじろう)が遊びに来ることになっているー
芳次郎がこの状況に気づけばーーー

「---!」
弥穂は表情を歪めたー

トイレに行きたい…
尿意を催してきたー

「--あ、、あの…!」
弥穂が叫ぶ。

偽物が笑いながら本を読んで
時々、自分の太ももを触って
ニヤニヤしているー
ごみ箱の精霊とやらにも性欲が
あるのだろうか。

「ーーーねぇ!?聞いてる!?」
弥穂が叫ぶー

だが、偽物の弥穂は反応しない

「と、、トイレに行きたいんだけど!!」
弥穂が必死に叫んだー

「----」
偽物の弥穂が弥穂の方を見ると
弥穂の方に近づいてきてー
にっこりとほほ笑んだー

そして、手を出すー

「---え」

手からは、
丸めた紙ー。

それが口に放りこまれるー

「むぐっ…む、、と、、といれ…行かせてぇ…」
弥穂が紙を口の中で噛みながら言うと
偽物の弥穂は呟いたー

「---ごみ箱は、トイレになんて、いかないよ」

とー。

「--そ、、そんな…」
弥穂は涙目になりながら叫ぶー

なんで、なんで自分がこんな目に
遭わないといけないのかー。
ごみ箱を乱暴に扱う人間なんてー
いくらでもいるはず。

「うあ…ああああ…
 うああああああああ…」

弥穂は我慢できなくなって
その場でお漏らしをしてしまうー

「うあああああああああああ!!!!」
悔しさと恐怖と悲しさ…
色々な感情が入り乱れて声を上げるー

「--あれぇ?ごみ箱が床を汚すなんて…。
 綺麗にしなさい」
偽物の弥穂が呟くー

弥穂の身体が勝手に動き出してー
自分の口で床を掃除していくー

「ううぅぅぅぅうう…
 ごめんなさい…許してぇ…」

乱暴に扱ったことなど、いくらでも謝るー
だから、もう、解放してほしいー

弥穂は、泣きながら床を舐めて…
またもとのポーズでその場に
ごみ箱として立ち尽くすのだったー

・・・・・・・・・・・

翌日ー

彼氏の洋二郎がやってくるー。

だがーーー

「なんだか今日の弥穂は元気だなぁ~!」
洋二郎は笑いながら、
ごみを本物の弥穂の口に放り込むー

「洋二郎!!…う…わ、、わたし…わたしだよ!」
弥穂が叫ぶー

だが、洋二郎は反応を示さない。
平然と、ごみを弥穂の口に放り込むー

「なんで……」
弥穂が呟くと、
偽物の弥穂が笑みを浮かべたー

”わたし以外には、あなたは”ごみ箱”にしか見えないー”

偽物の弥穂は小声でそう呟いたー

「うそ…」
弥穂は唖然とするー
弥穂のことを弥穂と認識できるのは、
弥穂に変身した”ごみ箱の精霊”だけー

「--わたしは、あなたの代わりに
 洋二郎と楽しい時間を過ごしてあげるー」

笑みを浮かべる偽物の弥穂ー。

弥穂は、泣き叫ぶー。
だが、その言葉は洋二郎には届かないー

しかもーー
弥穂はお腹が痛くなってきてしまったー

・・・・・・・・・・・

洋二郎が帰宅したー

「---うぅ…う…う…」
動かない身体ー

泣きじゃくる弥穂ー。

そんな弥穂を偽物の弥穂は、冷たい眼差しで見つめるー

「トイレ…行きたいよぉ…」
弥穂が泣きじゃくっているー

「---」
偽物は笑みを浮かべたー
そして、足を踏むー

「---あぅぅぅ」
弥穂が口を開くー

そこにー
ごみを放り込むー

弥穂が泣きながらごみを食べるー

「---ごみ箱の気持ち、
 少しはわかった?」
偽物の弥穂が言うー。

「これからは、わたしが弥穂
 あんたが、ごみ箱ー」

冷たく言い放つ偽物ー

弥穂は、その言葉に絶望するー

お腹が痛いー

情けなくて
悔しくて
怖くてー

弥穂は泣きながら
我慢の限界を迎えてーーー

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

「-----------!!!!」
弥穂が、飛び起きたー

「え…」
弥穂が周囲を見渡すー。

いつもの部屋ー

いつものベットー

「え……夢…?」
弥穂は戸惑うー。

ごみ箱が弥穂に変身して、
弥穂がごみ箱のように扱われてしまったあの光景はーー

「夢だったの…?」
弥穂は戸惑いながら立ち上がるー

センサー式のごみ箱の方を見つめる弥穂ー

「----」
カレンダーを見つめる弥穂ー

日付が何日か経過しているー

そして、台所には、
りんごの皮が少し残っているー

「ゆ、、夢じゃない…」
弥穂は戸惑いながら、机の上を見たー

そこにはーーー

”少しは、ごみ箱の気持ち、分かってくれたかな”
と、書かれたメモ用紙が置かれていたー

「---え…」
センサー式のごみ箱の方を見るー

ごみ箱の精霊はー
弥穂にとって代わるつもりはなかったー

モノをぞんざいに扱い過ぎる、弥穂に
ちょっとしたお仕置きをしただけー。

「--ごめんね…」
弥穂はセンサー式のごみ箱に向かってそう呟くと、
今までよりもちょっとだけ優しく、ごみ箱を使い始めたーー

ごみ箱の精霊は、それ以降、
姿を現さなかったー
また、別のごみ箱に宿ったのかー
それとも、弥穂が少し変わったことに満足したのかー。

いずれにせよ、この出来事をきっかけに、
弥穂は、モノに対する扱いが
少しだけ優しくなったのだというー

おわり

・・・・・・・・・・・・・

コメント

まさかのごみ箱?の他者変身のお話でした~!

入れ替わりにするのか、憑依にするのか
色々迷ったのですが
最終的には他者変身に落ち着きました!!

小説
憑依空間NEO

コメント

  1. 龍禍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    他の人になるのも、人から無機物になるのも好きだから楽しめた
    終わり方も丸く収まった感じだし
    私も無機物になってあたりに紛れてみたいなぁ

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!
    最後はハッピーエンド(?)になりましたネ~!

    周りに紛れて…
    それも楽しそうデス!

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