<憑依>地球は植民地③~家畜~(完)

宇宙人の侵略により、植民地にされてしまった地球。

人類がまるで、モノのように扱われるその世界で、
抵抗を続ける人間たちの運命は…?

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ーーー未来の地球ー。
宇宙人によって完全に支配されたその地球では、
人間は”家畜”でしかない。

宇宙人たちの生活をよりよくするために生まれー
そして、死んでいくー

「---あ~あ…壊れちまった」
工場長の女が笑う。

ピクピクと痙攣しながら倒れている作業服姿の女を見つめるー。

工場長の女は、宇宙人に憑依された人間だー。
年齢は22だが、
生まれてすぐに憑依されたため
本人の人格はないに等しい。

「--あ…う…う」
過酷な労働により、身体の限界を迎えた
作業着姿の女。
彼女は洗脳されて、ずっと働かされ続けてきた。
だが、ずっと働いていれば、当然、消耗するー。

「--おい!」
工場長の女が叫ぶー。

「--こいつ壊れた!肉屋に売ってこい!」
工場長の女が叫ぶと、
洗脳された男性作業員たちが、
痙攣している女を運んでいくー

彼女はほどなくして息を引き取ったが
そのまま精肉店で肉にされて、宇宙人の食料となったー

・・・・・・・・・・・・・・・

レジスタンス本部ー

”宇宙人の支配”を逃れたわずかな人間たちは
宇宙人に対する抵抗を続けていたー

レジスタンスの中心的人物でもある
巫女服姿の女性・レナが言う。

「---辛いと思うけど、これが現実」
レナの言葉に、竜馬は悲しそうな表情を浮かべるー

生まれてからずっと宇宙人のために
働かされ続けてきた竜馬は、
レジスタンスの本部で、これまでの歴史について
説明されていた。

「じ、、じゃあ、、、俺たちは……これからもずっと」
竜馬が呟くー

宇宙人による支配はこれからもずっと
続くのだろうかー。

「---そうならないために、俺たちがいるんだ」
銃を持った男・弥吾が言う。

「わたしたちは、数は少ないけれど、
 宇宙人たちの支配から、地球を取り戻すために
 戦っているの。

 時間はかかるけど、
 それでも、諦めるわけにはいかないから」

リナの言葉に、竜馬は頷く。

人間を家畜のように扱う宇宙人に
このまま屈するわけにはいかない、と竜馬は思う。
ずっとずっと、宇宙人に自由を奪われてきたー

それが、悪いことなのかは、分からないー

かつて、人間が、動物園と称して
動物たちを閉じ込め、見世物にしていたー
宇宙人たちにとって、それと同じ感覚なのかもしれないー
食べて、ペットにして、見世物にしてーーー…

彼らにとって
大昔の人間が、動物にしていたことと
同じ感覚しかないのかもしれないー。

何が正しいかなんてわからない。

けどー

”人間から見たら、宇宙人は敵だ”
竜馬は、宇宙人による支配から逃れるために
レジスタンスに身をささげることを決意したー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コロシアムのような場所に
竜馬と弥吾がたどり着くー

”闘人”という競技が行われているー
人間たちで言う”闘牛”だ。

憑依された男女が、
激しくコロシアムの中心で争う。

「うおおおおおおおおおおおおお!」と
観客たちが叫ぶ。
観客たちは、宇宙人に憑依された人間だ。

コロシアムで戦う男女は
激しくお互いを傷つけあっているー

この二人は、兄と妹なのだが、
憑依されて、そんな感情は一切失っているー

真剣な表情で傷つけ合い、
苦しそうに息をしながら、
最後には、妹のほうが倒れてしまうー

「うおおおおおおおおおおおおお!
 殺せ!殺せ!」
観客が叫ぶー

人間の闘牛とは違い、
デスマッチのようなシステムが
採用されているー

「-ーーーへへへ…へへ」
兄の方が嬉しそうに笑いながら
実の妹に手をかけるー。

その直後ー
レジスタンスの竜馬と弥吾が飛びだした。

「そこまでだ!」
弥吾が叫ぶ。

闘人の勝者である兄と
周囲の観客が弥吾と竜馬を見つめるー

「--なんだぁ…人間!?」
観客たちがどよめいている。

”害虫が来たぞ”
”害虫が来たぞ”
”駆除しないと”
ぶつぶつと呟く観客の人間たち。

全員、憑依されているー

男も、女も、みんな武器を持って立ち上がりー
弥吾と竜馬に向かってくるー

”下がってろ”
弥吾が、竜馬に下がるように言うと、
まるで”ヒーロー”のように
弥吾が華麗な銃捌きで
憑依された人間たちを撃っていくー

玉切れー

しかし、弥吾は、銃を放り投げると別の銃で
さらに憑依された人間たちを倒しー
あっという間に全滅させたー。

まるでー
ヒーロー番組のような鮮やかさー。

「--すごい…」
竜馬が言うと、
弥吾は「本当は、殺さずに助けられればいいんだが…
それはできないからな」と呟いたー

憑依された人間は
始末するしかない。

やらなきゃ、
やられるー。

それが、この世界だ。

「----!」
カメラー。

やはり、監視されているー

竜馬は「あ!」と叫ぶー

女二人が、竜馬たちを盗撮していたー

「どうした!?」
弥吾が、竜馬が指さした方を見る。

しかし、宇宙人に憑依された女二人は
既に逃げたあとだったー

・・・・・・・・・・・・・・・

それからも、レジスタンスの一員として、
竜馬は各地に赴くー

巨大な籠の中に入れられた人間が、
薬を投与されているー

この世界の”治験”だー。
人間はモルモット替わりとして使用され、
実験中の薬で泡を噴いて死んでいる人間が
転がっているー

「うっふふふふふふ」
網タイツ姿の白衣の女性が笑う。

新薬研究所の代表ー。
当然、宇宙人に支配されているー

「---そこまでだ!」
レジスタンスの一員・神崎という男と、
竜馬が乗り込みー

新薬研究所の代表を始末するー。

「--やるな!新入り」
神崎が笑う。

「俺も負けてられませんから」
竜馬は、次第にレジスタンスの一員として
打ち解けていくー。

そしてー

宇宙人の幹部がいるクラブの制圧作戦が始まったー。

今日は、レジスタンスの中心人物でもあるレナも
一緒だ。

レナ、弥吾、神崎…
そして竜馬が、クラブの制圧をしようとするー

「ヒャッハー!」
クラブではセーラー服の女が笑いながら
自分の腕を切り落としているー。

拍手が会場に巻き起こる。

このクラブでは
”最後の美学”を競い合う見世物が
行われているー

憑依されている人間は、当然、死ぬー。

しかし、宇宙人にそんなことは関係ないことだ。

「---今だ!」
神崎が、クラブのブレーカーを落とすー

停電するクラブ。
どよめく観客たちー

いつものようにワインを飲みながら
その様子を見ていた妖艶な女が笑みを浮かべるー

”レジスタンスが来たー”

観客たちを鮮やかに片づけていく
弥吾と神崎。
竜馬も必死に戦うー

宇宙人に憑依された観客たちが
あらかた片付いた時点で、
クラブの非常電源が入り、
カラフルな光に照らされるー

「--あらあら」
妖艶な女が、立ちはだかる。
上流な階級に位置する宇宙人だ。

「--あなたたちをわたしは許さない」
レナが言う。

巫女服姿のレナを見て、
妖艶な女はバカにしたようにして笑う。

「--覚悟しなさい!」
レナが言う。

妖艶な女は「それはわたしのセリフよ」とほほ笑みながら
鉄線の入った扇子を広げて、襲い掛かってくるー。

「レナさん!」
竜馬も援護に入ろうとする。

だが、弥吾が竜馬を止めて首を振った。

「レナに任せるんだ」

とー。

レナと妖艶な女が激しい戦いを繰り広げるー
クラブの妖しげなライトが、二人を照らすー

激しい攻防の末に、妖艶な女の持っていた
扇子がはじけ飛ぶー

「終わりよ」
レナが叫び、杖を手にして、何かを唱えるー

激しい光が放たれてー
妖艶な女にその攻撃が直撃、
妖艶な女は派手に吹き飛ばされてー
そのままクラブの床に倒れ込んだー。

「---地球はわたしたち人間のもの!」
レナが倒れた妖艶な女に向かって叫ぶー。

竜馬はほっとするー
ナイトクラブに潜んでいた幹部クラスの女を
倒すことができた。
大きな前進と言えるだろう。

もちろん、完全に宇宙人に支配されてしまった
地球を取り戻すためには
相当な時間がかかるだろう。

けれどもー
それでも、少しずつー
少しずつ戦いを続けていけばー
いずれ、本の世界でしか知らない
”平和な世界”を取り戻すことができるのかもしれない。

人間が家畜として扱われるような
この世界を変えることができるのかもしれないー

パチ パチ パチ パチ

「え…?」
竜馬が振り返ると、
レジスタンスの神崎と弥吾が拍手を始めたー

パチ パチ パチ パチ
パチ パチ パチ パチ
パチ パチ パチ パチ

巫女服姿のレナも拍手を始めるー

「---」
物影から、カメラを持って、これまでも竜馬らを
監視していた女たちが出てきて拍手をしている

パチ パチ パチ パチ

「え!?なになに!?」
竜馬が驚いていると、弥吾と神崎が叫んだ。

「監督!お疲れ様でした!」

「--監督!?」
わけが分からず、竜馬が振り返る。

倒されたはずの妖艶な女が立ち上がるー
妖艶な女の耳から、クラゲのような
宇宙人が半分飛び出しているー

「--みんな!お疲れ!」
宇宙人と妖艶な女が同時に同じ言葉を叫ぶ。

「今日でクランクアップよ」

「-!?」
竜馬は戸惑う。

巫女服のレナが、妖艶な女と嬉しそうに抱き合って
キスをするー

「あ…あの…!?え…」
竜馬が弥吾に何が起きているのか聞こうとしたが
弥吾も嬉しそうに拍手をしていて、
答えてはくれない。

「--ふ~!
 ”レジスタンスⅢ~抵抗軍の希望~”も
 ヒット間違いなしね」

巫女服のレナが言ったー。

レナの耳から、クラゲのような宇宙人が飛び出すー
レナが虚ろな目になって、だらんとマリオネットのように、
操られているー。

弥吾からもー
神崎からもー
宇宙人が飛び出す。

「えっ!?!?み、、みんな…どういう…」
竜馬は戸惑うことしかできないー

「バカね…」
レナが目をぐるんぐるんさせながら笑うー

「人間のレジスタンスなんて、あるわけないじゃない。
 お前ら家畜は、俺たちのものだ」
レナが、涎を垂らしながら笑うー

宇宙人が半分、耳から飛び出していて
レナの身体はおもちゃのようにいびつな動きをしているー

「--映画の撮影の協力、ご苦労様」
妖艶な女が笑うー

レジスタンスなど、存在しなかったー
レナも弥吾も、みんな、宇宙人に憑依されて理由されている人間ー

これはーー宇宙人が楽しむための映画、
”宇宙人と人間のレジスタンスが戦う”
映画の撮影だったー。

カメラを持った女が竜馬たちを見ていたのは
映画の撮影だったためー。
竜馬や弥吾らの戦いを映画のワンシーンとして撮影していたー

「え…で、、でも、、今まで何人も乗っ取られた人間を…」
竜馬が言うと、
弥吾が不気味に笑う。

「お前ら家畜の身体なんて、いくらでもある。
 映画の撮影のために、人間の身体を殺したって
 全然問題ないのさ

 人間の身体が死んでも、俺たちはその身体から出ればいいー」

今までの戦いはぜんぶー
”宇宙人のための映画撮影”

レナも、弥吾も、神崎も
宇宙人の俳優に憑依されて、
レジスタンス役を演じていたに過ぎないー

「--くくく、あんた、最高だったよ
 何も知らずに必死こいて戦って。

 おかげでいい映画が撮れた」

巫女服姿のレナが足を組みながら
椅子に座る。

「---そ、、そんな…俺は…俺は!」
竜馬が叫ぶ。

「最後に教えてあげる。
 あんたが工場から逃げ出したのはあんたの意思じゃない。
 洗脳で、そう仕向けただけ」

妖艶な女が笑う。

「嘘だ…嘘だ…!」

この世界の人間は”家畜”だー。
宇宙人に、どこまでも利用されて、
そして、利用価値がなくなれば、
廃棄される。

「---ご苦労様」

レナが、机に置いてあった銃で、竜馬の頭を撃ちぬいたー

血が吹き飛ぶー
ナイトクラブの床に倒れる竜馬。

「あ…うあ…」
弥吾が、倒れた竜馬の頭を踏みつぶして、そして
飛び散った目玉をおいしそうに食べるー

宇宙人にとって人間は主食のひとつでもあるー

「--ふ~!
 じゃあ、あとは映画公開に向けたPRね」

映画監督でもある妖艶な女がほほ笑んだー

・・・・・・・・・・・・・・

数か月後ー

映画”レジスタンスⅢ”は公開されたー

大勢の憑依された人間たちが、
それを見つめるー

宇宙人に洗脳されて、
永遠に働かされている女性スタッフが、
嬉しそうに映画館に、宇宙人たちを案内する-

レジスタンスⅢは宇宙人たちの間で大ヒットー。

地球は、宇宙人の植民地ー
今日も、ナイトクラブでは、人間の最後の瞬間を競うショーが行われー
コロシアムでは闘人が行われー
精肉店では人が肉にされているー
繁殖工場では、憑依された人間たちが順番に妊娠・出産を繰り返しー

人間にとって地獄のような光景が、
いつも通り、続いているのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・

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この地球はもう救えないですネ…
宇宙人に生まれるしかないデス!汗

お読み下さりありがとうございました~!

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憑依<地球は植民地>

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