<入れ替わり>この身体を奪いたい①~余命あとわずか~

余命あとわずかの男子大学生。

そんな彼は”入れ替わり”の力を手に入れる。

その力を使って彼女と入れ替わった彼は…?

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余命あとわずか。

男子大学生の山井 兵吾(やまい ひょうご)は、
病室のベットから、外の景色を見つめる日々を送っていた。

どうして、こうなってしまったのか。

いいやー
自分のせいではないのかもしれないー。
世の中、どうすることもできないことがある。

兵吾は、とある病気に蝕まれていたー。
既に治療をすることができず、
延命治療を細々と行いながら、
けれども、逃れることのできない”死”の
瞬間を待つ日々。

自分の身体が日に日に弱っていくのが
イヤでも実感できてしまうー。
そんな日々だ。

兵吾の病気は、原因もよく分かっておらず、
明確な治療方法もない。

何が悪かったわけでもないー

強いて言うのであれば
”運”が悪かった…としか言いようがないのだ。

「ついてないな…」
兵吾は静かに呟くー。

満開の桜が、風に吹かれて散っていくー。

”もう、この桜を見ることはないだろう”
兵吾は、そう思うー。

余命を最初に宣告されたとき
”もってあと3か月”だったー。

それが、去年の10月の話。

だからー。
こうして”桜”を見ることができたのは
奇跡なのかもしれないー。

「--…おはよ~!」
病室の扉が開く。
同じ女子大生で彼女の田宮 藤枝(たみや ふじえ)が
お見舞いに来てくれた。

大学で出会い、いろいろな活動を通して
意気投合して、彼氏彼女の関係になってから2年ー。
まさか、こんなことになってしまうなんてー。

藤枝は、兵吾が余命宣告されてからも
兵吾を見捨てることなく、
こうして、毎日のようにお見舞いに来てくれている。

「どう?身体の調子は?」
藤枝がベットの横に座りながら心配そうに言う。

「--まぁ…ぼちぼちかな」
兵吾は苦笑いしながら呟く。

”今は”まだ、普通にしゃべることができる。
だが、これもいつまで続くか、分からないー。

「--……」
藤枝は寂しそうに窓の外の桜を見つめるー

「--来年の桜は、窓越しじゃなくて、
 生で見れるといいよね」
藤枝は言う。

”そんなことはできない”
藤枝も、兵吾もそれは分かっている。

けれどー
藤枝は絶対に後ろ向きなことを兵吾の前では
言わなかったし、
兵吾の前で涙を見せることもなかったー。

”余命宣告”をされた人間の気持ちは
藤枝には分からない。
正直、どうしていいのかもわからない。
一緒に泣けばよいのだろうか。
一緒に怖がれば良いのだろうか。

色々考えた末に、藤枝は、
とにかく明るく振舞うようにした。
もちろん、それが正解かは分からないけれど、
”残された時間が決まっている”のなら、
その残された時間をとにかく楽しく、と
そう思っていたー

「--あ、そうだ!おみやげー!」
藤枝が、書店の袋を取り出す。

その中には、兵吾がいつも楽しみにしていた
漫画の最新刊が入っていた。

「お!サンキュー!」
兵吾が嬉しそうに漫画を手にする。

「--結構、残り少なくて
 売り切れそうだったよ~」
藤枝が笑う。

「人気だからな~!
 この漫画」
兵吾が、嬉しそうに漫画を読んでいる。
とても、楽しそうにー

藤枝はそんな兵吾の顔を
嬉しそうに見つめるー

こんな顔を見ていられるのもーーー

「--あ」
兵吾が、読んでいた本を落としてしまうー

手に、力が入らないー

「--あ……」
兵吾は悲しそうに、現実に戻されたかのような
表情を浮かべるー。

「--はい!」
藤枝が、暗い表情にならないように気を付けながら
兵吾が落とした漫画を拾って兵吾に手渡すー。

「---…あとで読むよ」
兵吾はにっこりと笑いながら、横のテーブルに漫画を
置いておいて、と呟いた。

「--そっか」
藤枝は兵吾に言われたとおりにするー。
兵吾の手がぶるぶる震えているー

”もしかして、もう、本も持てないのかも…”
藤枝はそう思いながらも、
明るく振舞い、兵吾と色々な雑談をしてから、
大学に向かうのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

兵吾は、就寝時間を迎えて、
窓の外に見える月を見つめるー

”人は、死んだら、どこに行くのだろうー”

そんな風に思っていると、
人の気配がしたー

「-!?」
”こんな時間に、誰だ!?”と思いながら
振り返ると、
そこにはーーーー
不気味な老婆がいた。

”……ふふふふふ…死ぬのは怖いか?”
老婆がガラガラした声で言う。

「--え……」
兵吾は驚く。
この老婆は誰だ!?
第一、なんで病室に!?

「--そ、、そっか…死神とか、
 そういうやつ…?」
兵吾が言うと、
老婆は首を振った

”死神ではない…
 お前を助けに来た”

老婆が言う。
禍々しい黒いオーラが周囲に浮かんでいるー。

この老婆はいったい…?

「--助けに…?
 そ、そうは見えないケド…?
 病気、治したりでもしてくれるのか?」
兵吾が言うと、
老婆は頷いた。

”---これを”
老婆が、ベット横のテーブルに何かを置くー。

謎のカプセルが、2錠ー。

「なんだこれは…?
 俺の病気が…治る薬?」
兵吾の言葉に、老婆は首を振る。

”そうと言えばそうだが
 違うと言えば、違う”

とー。

「は…?いったいどういう…?」
兵吾が言うと、
老婆は呟いたー

”この薬をお前と、もう一人別の誰かに飲ませるんだー。
 そして、薬を飲んだ者同士で、手を握ればー
 お互いの身体が入れ替わる”

老婆が言う。

「か、、身体が…!?」

”そうだー。”
老婆は頷く。

”別の誰かと入れ替われば、
 お前は死なないー。
 まだ、生きることができるんだ”

老婆はそれだけ言うと、笑みを浮かべたー。

「--俺が…生きることができる…?」

”----ただし、入れ替わる相手とお前の間に
 ある程度以上の”絆”がないと、入れ替わりは失敗する

 他人に使っても意味がないから、気を付けることだな”

それだけ言うと、老婆の姿が薄れていくー

「え!?ちょ、待ってくれ!」
兵吾が叫ぶー。
しかし、老婆は消えてしまったー

”入れ替わりー”
”ある程度の絆がある相手…”

兵吾は、表情を歪めるー

得体の知れない薬を飲んでくれそうな
”親しい”相手ーーー

それはーー
彼女の藤枝ぐらいしか思い浮かばなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「----」
兵吾の体調は日に日に悪くなっていくー

ここ数か月間、案外体調が安定している気がしていたから
”もしかしたらこのまま生きることができるのかもしれない”
などという希望を少しだけ抱いてしまった。

だが、やはり”死の運命”を避けることはできないー

まるで、兵吾の体調が悪くなり始めるタイミングを
知っていたかのように、あの老婆は入れ替わりの薬を
渡しに来た。

いいやー
あの老婆のせいで、体調が悪くなったのかもしれないー
そもそも、本当に入れ替われるかどうかも分からない。

「---…藤枝……」
兵吾が呟く。

「---え?」
藤枝が兵吾の方を見る。

「--…いや、、なんでもない…」
兵吾は目を背けた。

自分はなんてことを考えているのかー。
藤枝と入れ替わる…
そうすれば自分は藤枝として生きることができるー
けどー兵吾の身体になった藤枝は…死ぬ…

兵吾は、迷っていたー

その日も結局、何もせずー
兵吾はその夜ー
激しい頭痛に襲われてーー
そしてーー意識が飛んだー

気付いた時には、2日も経過していたー

「あ……」
兵吾は悟るー

”もう、自分は長くない”
とー。

そう思ったとたん、死の恐怖が自分の中で
膨れ上がったー

”愚かなー”
老婆が再び姿を現す。

”早く…早く入れ替わるんだ。
 藤枝と”

老婆が呟くー

「--でも…
 藤枝に代わりに死んでもらうなんて…そんなこと…」

”死んだら、終わりだー
 人に優しくして死んだら、それで”無”だ。
 無に何の意味がある?
 
 死んだら人間、すべてが終わりだ。
 奪え。藤枝の人生を奪え。
 藤枝になれば、この先50年は生きられる。
 意味のない情けで、お前は50年のチャンスを
 失うのか?

 奪え。死んだら無だ。奪え”

老婆はそう呟いて姿を消したー

「死んだら…おわり」
兵吾は呟く-

そして翌日ー

兵吾は決意したー

「藤枝…」
お見舞いに来てくれた藤枝に、
例の薬を渡すー。

「---なにこれ?」
藤枝が不思議そうに薬を見つめるー

「もし、もしもさ、俺と藤枝が同時にこの薬を飲んだら
 俺が助かる、って言ったら、信じてくれるか…?」
青ざめた顔色のまま、兵吾が言う。

「---え?」
藤枝が驚いた表情を浮かべるー。

「--うん!信じる!
 少しでも可能性があるなら、わたしは何でもするよ!」
藤枝が、兵吾のことを全く疑う様子も見せず、
持っていたペットボトルのお茶を手にする。

「同時に飲めば、兵吾が助かるかもしれないなら、
 いくらでも飲むよ!」

「---ありがとう」
兵吾はそう呟きながら、少し悲しい表情を浮かべるー

この薬が本当かは分からない。
恐らくはイタズラだろう。

でも…
もしかしたら本当に”入れ替わる”可能性だってあるー。

そんなひどいことをしようとしているのに、
藤枝は自分のことを何も疑っていないー

”俺は、藤枝をだまして身体を奪おうとしている”

罪悪感に襲われながらも、
兵吾は”死に対する恐怖”から、薬を手にする。

藤枝は「どうしたの?」と兵吾のほうを
不思議そうに見つめている。

もう、薬を飲む準備が出来ているようだ。

「---……」

”奪え”

老婆の声が聞こえて来る

”奪え”
”死んだら、終わりだ”
”藤枝に対する愛も消える”
”藤枝も、どうせお前のことを忘れる”
”かっこつけるな”
”たとえ地面を舐めたとしても生きろ”
”奪え”
”奪え”

老婆の声が聞こえるー。

「--くっそおおおおおお!」
兵吾はそう叫んで薬を飲む。
藤枝が兵吾の方を見ながら首を傾げるー
そして、藤枝も薬を同時に飲んだー。

直後、二人は激しいめまいに襲われて、
そのまま倒れたー

「---…ん…」
藤枝が先に目を覚ます。

「え…お、、、ほ、、、本当に…!?」
藤枝がわけのわからないことを
つぶやきながら自分の綺麗な手を見つめる。

「ほ、、本当に、、俺、、藤枝に…」
藤枝は、自分でスカートを触るー

あれが、、ない…!

そして、胸のふくらみを確認する。

”あるーー”

藤枝はニヤニヤしながら笑みを浮かべると、
”やった…!やった…!”と
ブツブツ呟きながら
そのまま倒れたままの兵吾を見つめる。

藤枝(兵吾)は、罪悪感から逃げるようにー
そのまま、兵吾(藤枝)が目を覚ます前に、
病室から走り去ったー

ーーーー!!!

しばらくして、兵吾(藤枝)が目を覚ます。

激しい身体の痛みと倦怠感ー。
もうすぐ死ぬ身体の感触を味わう藤枝ー。

「あ……」
兵吾(藤枝)は鏡を見つめるー

自分が、兵吾になっている。

病室に藤枝(兵吾)の姿はないー

「---……そっか」
兵吾(藤枝)は悲しそうに呟くー。

兵吾は藤枝の身体を奪って
生きようとしているー。
そのことを、頭のいい藤枝はすぐに悟ったー。

悲しい気持ちになりながら、
兵吾(藤枝)は複雑な表情を浮かべる-。

「--そうって言ってくれれば……
 それでもよかったのに……」

兵吾(藤枝)は呟くー

「でも……こんな風に騙されちゃうと……
 悲しいな……」

身体を入れ替えられて、
自分が死ぬ立場になってしまった藤枝は
兵吾の身体で静かにそう呟いたー

②へ続く

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コメント

生きるために、お見舞いに来てくれていた
彼女と入れ替わって、その身体を奪ってしまうお話です…。
果たしてどうなるのでしょうか~?

続きは明日デスー!

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