修学旅行の最中に薄暗い森に
迷い込んでしまった4人の女子生徒たちー。
森から響き渡る少女の笑い声ー
その目的は…?
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わたしはー死んだ。
あんたたちのせいで。
いじめた側は覚えていないでしょうね?
2年前に死んだ、わたしのことなんてー。
でもねー
された側は、忘れない。
永遠にー
例え何年経っても、何十年経っても、
細かいエピソードのひとつひとつまで、
何もかも、覚えてるー。
だから、わたしが思い出させてあげるー
あんたたちが、わたしにしたことをー。
わたしのことをー。
そして、あんたたちの身体を乗っ取って、
あんたたちの身をもって
体験させてあげる。
わたしが、受けた仕打ちをー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「------」
リーダー格の菜緒が、倒れているー
菜緒は、もう動かないー
菜緒は1年生の頃、
”ゾンビ”扱いされていた女子生徒をからかっていたー。
何故、ゾンビ扱いされるようになったのかは、わからない。
けれど、菜緒は悪気無くからかっていた。
次第にその行為はエスカレートし、
ゾンビは消毒しなくちゃ!と笑いながら
殺虫剤をその子にかけたー。
菜緒にとっては何気ないイタズラだったのかもしれないー
でも、殺虫剤をかけられたその少女にとっては
屈辱的で、ひどく傷ついたことだったー。
だからー
菜緒の身体を乗っ取って、消毒してやった。
身体ごと、ぜんぶー。
「---はぁ…はぁ…」
4人の女子生徒が森を走るー
優等生の早緒莉
噂好きの美津子
大人しい女子生徒・瑠香
真面目な千尋ー。
4人は、ゾンビのようになった菜緒が
追ってきていないことを確認すると、
森の中で一息つくー。
「--な、なんなん、ここ?」
美津子が呟く。
自分たちは、修学旅行の最中だったはずだ。
飾り物を売るお店に入って
そこのおばあちゃんに出迎えられて
そしたらー突然風鈴の音がし始めてー
意識を失いー
意識を取り戻したあとに、そのお店から
飛び出したら、この森にいたー。
「---あのお店…」
早緒莉が呟く。
”どこかで見たことがある気がする”
なんとなく、そう思った。
菜緒に噛まれた場所を抑えながら
早緒莉が苦しそうに言うー
「----」
早緒莉が、まじめな女子・千尋の方を見て言う。
「ねぇ…あのお店、どこかで見たことない?」
とー。
「--お店?」
千尋が早緒莉の方を見る。
「うん。なんか…前にも、行ったことあるような…」
早緒莉の言葉に、他の2人も戸惑った様子を浮かべる。
”ねぇ、みんな”
薄暗い森の空から、声が響き渡るー。
”菜緒ちゃんは、死んだよ”
クスクスと笑う声。
「--えっ!?」
噂好きの美津子が驚くー
”あんたたちも、早く、
思い出さないと…
菜緒ちゃんと同じ目に遭うよ?”
脅すようにして呟く少女。
「--な、、なんなん?
うちらに何の恨みがあるの!?」
美津子が叫ぶ。
”ーーー覚えてないんだ”
森から聞こえる少女の声が歪むー。
”覚えてないんだぁぁぁぁぁ…”
怒りの声ー
森の木々が揺れるー
激しい風が吹くー
「ひっ!?!?!?!?」
あまりの強風に美津子が、目をふさぐー。
そしてー
目を開けるとーーー
周囲にいたはずの3人がいなくなっていたー
「--え」
美津子が驚くー
”ねぇ、本当に覚えてないの?”
森の中から声が聞こえる。
「--う、、うちは、あんたのことなんて知らない!」
美津子が言うと、
”へぇ~”と
低い声で森の少女が呟いたー
そしてー
背後から足音がするー
”こんなにヒントをあげてたのにー”
「--!」
美津子が後ろからやってきた少女を見て驚くー
”あんたたちは、、わたしのことなんか
覚えてすらいない”
震える少女ー
”許さないー
許さないー
同じ目に遭わせてやるー”
「--ちょ…!?
そ、、そっか、思い出した・・・!
ま、、待って、うちは…!」
美津子は驚きながら叫ぶー。
2年前ー
1年生の頃も、美津子は噂好きだった。
人の秘密や噂話を握っては
面白おかしく、それを広めたりするー。
それが美津子の悪い癖でもあった。
そんな美津子にとって
”いじめられているクラスメイトの少女”は
面白い話題のネタだった。
いじめを受けている彼女の
あることないことを他のクラスメイトたちに
言いふらす。
「うち、見たの~!トイレで一人でエッチしてたの~!」
「うち、見たの~!あの子が万引きしてたの~!」
美津子は、作り話をクラスメイトたちにしてー
いじめをうけていた少女の孤立をさらに深めた。
美津子本人に、悪いことをしたという罪の意識はない。
ただ、周囲といじめを受けていた本人の
反応を見て、面白がっていたー。
当時、美津子にはお気に入りのお店があった。
そこはーーー
風鈴や飾り物を売る、古くから存在するお店で
いじめを受けていた少女の祖母が昔から
やっているお店だった。
少女の実家だとは知らずに、
美津子は、そこの飾りものが大好きだった。
昔ながらの味がある小物たちがー。
ある日、美津子は、そのお店のおばあちゃんが、
”いじめを受けている少女”のおばあちゃんであると知るー
そして、つい、いじめのことを口走った。
あることないことを吹き込んだー
おばあちゃんの孫である少女が、トイレでひとりエッチをしてることや
万引きしてること、男と遊んでばかりいることー
おばあちゃんの悪口を言ってたことー
ぜんぶ、美津子の作り話だー。
深く、考えていなかった。
でもー
おばあちゃんは全部真に受けて、
酷くショックを受けて、
そのまま、首をつって死んでしまったー
”わたしのおばあちゃんは、あんたが殺した”
少女が、笑うー。
「---…ひっ、、ちが、、うちは…うちは…!
そんなつもりじゃ」
美津子が逃げようとする…
だが、身体が動かない。
”ねぇ、知ってる?
美津子ちゃん、今日、自殺しようとしてるらしいよ?”
少女が笑うー
噂好きの美津子が、大好きな”噂”を口にしながらー
「---じ、、自殺なんかしないよ!」
美津子が涙目になりながら叫ぶー
”するの”
黒い霧のようなものに包まれた
”1年生の時にいじめられていた少女”が
美津子の方に近寄って来るー
”--おばあちゃんと同じように、
首を吊って、あんたは、死ぬの”
そしてー
少女は、美津子の中に吸い込まれていくー
「ひぅっ…!?」
美津子の身体が震える。
「ふふふふふふ…♡
うち…死んじゃう」
乗っ取られた美津子は笑いながら言う。
服を引きちぎるようにして破りながら、
裸になる美津子ー
森の中で裸になった美津子は
クスクスと笑うー
「わたしがトイレでひとり、エッチなことをしてるって
嘘の噂…あれもつらかったなぁ…」
美津子が笑いながら言うー
”や、、やめて…うちは、、そんなつもりじゃなかったの!
ただ、ただ、ちょっと、ちょっと、面白いことがしたくて!”
乗っ取られた美津子本人が心の中で叫ぶー。
「ふ~ん」
美津子が呟く。
「--あんたも、”ごめんなさい”の一言も言えないんだね」
失望した様子で、乗っ取られた美津子は呟く。
”ひっ…ご、、ごめんなさい!ごめんなさい!”
美津子が叫ぶー
「--もう、遅いよ。
わたしも、ちょっと面白いことがしたくなっちゃった」
裸の美津子が、近くの木を見つめるー
そこにはー
予め首を吊るための準備が出来ていたー
「--ふふ…美津子…
おばあちゃんはね、苦しんで死んだの。
自宅で首を吊ってね。
おばあちゃんがどんなに苦しかったか、わかる?」
美津子の口で呟く少女。
そのままクスクスと笑いながら、
木のほうに向かっていくー
”やめて…!うち、なんでもするから!許して!”
心の中で泣き叫ぶ美津子ー
美津子はーー
修学旅行中に入ったあの店がーー
”2年前に自殺したクラスメイトの実家のお店”で
あることを悟るー
あのお店にいたのはー
死んだ、いじめを受けていた少女の
死んだおばあちゃんー
これはーー
あの子の、復讐ー?
”やめて…お願い……うち、死にたくない…”
「---あっそ」
美津子の口から吐き出されるのは冷たい言葉…
そして、少女に乗っ取られた美津子は、
そのまま、木に引っかかったロープで…
首を吊り始めた。
「--ばいばい」
にっこりと笑う美津子ー
少女が美津子から出ていくー
「はぅっ…う…」
じたばたともがく美津子ー
けれど、もうどうすることもできないー
「あぁ…うあ…あ…」
美津子は必死に視線を泳がせるー。
首を吊っている美津子
笑いながら見つめる少女ー
美津子は、全部思い出したー
美津子にとって”どうでもいいこと”で、
すっかり忘れていたー
2年前の1年生のときに、
自殺した同級生のことなんてー。
「あの世で好きなだけ噂してなよ…ふふ」
それだけ言うと、少女は立ち去ったー。
美津子はそのまま…
無残な姿を森の中に晒すことになってしまったー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「--美津子ちゃんもいなくなっちゃった…」
大人しい瑠香が言う。
「---はぁ…はぁ…」
憑依されてゾンビのようになった菜緒に噛まれた
優等生の早緒莉が血の出ている場所を
苦しそうに抑えているー。
「---……」
真面目な千尋が、周囲を警戒しているー
”ねぇ、みんな”
薄暗い森の空から、声が響き渡るー。
”美津子ちゃんは、死んだよ”
クスクスと笑う少女ー
「----え…」
優等生の早緒莉が唖然とする。
「---ど、、どういうこと…」
大人しい瑠香も震える。
”あんたたち…
わたしに何か言うことはない?”
”わたしのこと、思い出さない?”
漆黒の森から、少女の声だけが
響き渡るー。
「---…」
優等生の早緒莉はスマホの時計を見るー
14:45のままー
「ここはどこなの!」
早緒莉が叫ぶー。
”ふふふ…
そうね…わたしにとって、
最後の思い出の場所…”
少女が笑うー。
この場所は、おばあちゃんの死に絶望し、
そのあと、ある生徒の”決定的な裏切り”に
絶望した少女が、自ら命を絶った場所ー
少女は、すべてに絶望し、森に足を踏み入れて
自ら命を絶ったー。
この場所は、その森を模した異空間ー。
少女が死んでから2年間で蓄えた怨念によって
作り上げた、漆黒の森ー。
森がずっと薄暗いのはー
少女の暗い感情が、影響しているー。
”次は、あんたの番よ”
少女が笑うー
森がざわめき始めるー。
「---瑠香!千尋!」
優等生の早緒莉が瑠香と千尋を呼ぶー
さっきと同じー
美津子がはぐれた時とー
早緒莉の提案で、三人は近寄って手をつなぐー。
はぐれるのはまずいー。
しかしー
いつの間にかーーー
「--!?」
早緒莉の横にいたはずの瑠香がいないー。
「--瑠香!?瑠香!?」
そこに残っていたのは、早緒莉と千尋だけー。
「--こ、、今度は瑠香が…!」
早緒莉が絶望の表情を浮かべるー
早く、この森から逃げ出さないといけないー
”何を勘違いしてるの?”
森の中から声が響き渡るー
”はぐれたのは、瑠香ちゃんじゃない…”
「--!?」
”次は、あなたの番よ…”
森の中の少女はクスクスと笑ったー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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第2話でした~!
次回が最終回になります~!
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