<憑依>漆黒の森で笑う少女②~怨念~

修学旅行の最中に薄暗い森に
迷い込んでしまった4人の女子生徒たちー。

森から響き渡る少女の笑い声ー
その目的は…?

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わたしはー死んだ。
あんたたちのせいで。

いじめた側は覚えていないでしょうね?
2年前に死んだ、わたしのことなんてー。

でもねー
された側は、忘れない。

永遠にー
例え何年経っても、何十年経っても、
細かいエピソードのひとつひとつまで、
何もかも、覚えてるー。

だから、わたしが思い出させてあげるー
あんたたちが、わたしにしたことをー。

わたしのことをー。

そして、あんたたちの身体を乗っ取って、
あんたたちの身をもって
体験させてあげる。

わたしが、受けた仕打ちをー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「------」
リーダー格の菜緒が、倒れているー
菜緒は、もう動かないー

菜緒は1年生の頃、
”ゾンビ”扱いされていた女子生徒をからかっていたー。
何故、ゾンビ扱いされるようになったのかは、わからない。
けれど、菜緒は悪気無くからかっていた。
次第にその行為はエスカレートし、
ゾンビは消毒しなくちゃ!と笑いながら
殺虫剤をその子にかけたー。

菜緒にとっては何気ないイタズラだったのかもしれないー
でも、殺虫剤をかけられたその少女にとっては
屈辱的で、ひどく傷ついたことだったー。

だからー
菜緒の身体を乗っ取って、消毒してやった。
身体ごと、ぜんぶー。

「---はぁ…はぁ…」
4人の女子生徒が森を走るー

優等生の早緒莉
噂好きの美津子
大人しい女子生徒・瑠香
真面目な千尋ー。

4人は、ゾンビのようになった菜緒が
追ってきていないことを確認すると、
森の中で一息つくー。

「--な、なんなん、ここ?」
美津子が呟く。

自分たちは、修学旅行の最中だったはずだ。
飾り物を売るお店に入って
そこのおばあちゃんに出迎えられて
そしたらー突然風鈴の音がし始めてー
意識を失いー

意識を取り戻したあとに、そのお店から
飛び出したら、この森にいたー。

「---あのお店…」
早緒莉が呟く。

”どこかで見たことがある気がする”
なんとなく、そう思った。

菜緒に噛まれた場所を抑えながら
早緒莉が苦しそうに言うー

「----」
早緒莉が、まじめな女子・千尋の方を見て言う。

「ねぇ…あのお店、どこかで見たことない?」
とー。

「--お店?」
千尋が早緒莉の方を見る。

「うん。なんか…前にも、行ったことあるような…」
早緒莉の言葉に、他の2人も戸惑った様子を浮かべる。

”ねぇ、みんな”
薄暗い森の空から、声が響き渡るー。

”菜緒ちゃんは、死んだよ”
クスクスと笑う声。

「--えっ!?」
噂好きの美津子が驚くー

”あんたたちも、早く、
 思い出さないと…
 菜緒ちゃんと同じ目に遭うよ?”

脅すようにして呟く少女。

「--な、、なんなん?
 うちらに何の恨みがあるの!?」
美津子が叫ぶ。

”ーーー覚えてないんだ”
森から聞こえる少女の声が歪むー。

”覚えてないんだぁぁぁぁぁ…”
怒りの声ー

森の木々が揺れるー

激しい風が吹くー

「ひっ!?!?!?!?」
あまりの強風に美津子が、目をふさぐー。

そしてー
目を開けるとーーー
周囲にいたはずの3人がいなくなっていたー

「--え」
美津子が驚くー

”ねぇ、本当に覚えてないの?”

森の中から声が聞こえる。

「--う、、うちは、あんたのことなんて知らない!」
美津子が言うと、

”へぇ~”と
低い声で森の少女が呟いたー

そしてー
背後から足音がするー

”こんなにヒントをあげてたのにー”

「--!」
美津子が後ろからやってきた少女を見て驚くー

”あんたたちは、、わたしのことなんか
 覚えてすらいない”

震える少女ー

”許さないー
 許さないー
 同じ目に遭わせてやるー”

「--ちょ…!?
 そ、、そっか、思い出した・・・!
 ま、、待って、うちは…!」

美津子は驚きながら叫ぶー。

2年前ー
1年生の頃も、美津子は噂好きだった。
人の秘密や噂話を握っては
面白おかしく、それを広めたりするー。
それが美津子の悪い癖でもあった。

そんな美津子にとって
”いじめられているクラスメイトの少女”は
面白い話題のネタだった。

いじめを受けている彼女の
あることないことを他のクラスメイトたちに
言いふらす。

「うち、見たの~!トイレで一人でエッチしてたの~!」

「うち、見たの~!あの子が万引きしてたの~!」

美津子は、作り話をクラスメイトたちにしてー
いじめをうけていた少女の孤立をさらに深めた。

美津子本人に、悪いことをしたという罪の意識はない。
ただ、周囲といじめを受けていた本人の
反応を見て、面白がっていたー。

当時、美津子にはお気に入りのお店があった。
そこはーーー
風鈴や飾り物を売る、古くから存在するお店で
いじめを受けていた少女の祖母が昔から
やっているお店だった。

少女の実家だとは知らずに、
美津子は、そこの飾りものが大好きだった。
昔ながらの味がある小物たちがー。

ある日、美津子は、そのお店のおばあちゃんが、
”いじめを受けている少女”のおばあちゃんであると知るー

そして、つい、いじめのことを口走った。
あることないことを吹き込んだー

おばあちゃんの孫である少女が、トイレでひとりエッチをしてることや
万引きしてること、男と遊んでばかりいることー
おばあちゃんの悪口を言ってたことー

ぜんぶ、美津子の作り話だー。

深く、考えていなかった。

でもー
おばあちゃんは全部真に受けて、
酷くショックを受けて、
そのまま、首をつって死んでしまったー

”わたしのおばあちゃんは、あんたが殺した”
少女が、笑うー。

「---…ひっ、、ちが、、うちは…うちは…!
 そんなつもりじゃ」
美津子が逃げようとする…

だが、身体が動かない。

”ねぇ、知ってる?
 美津子ちゃん、今日、自殺しようとしてるらしいよ?”
少女が笑うー

噂好きの美津子が、大好きな”噂”を口にしながらー

「---じ、、自殺なんかしないよ!」
美津子が涙目になりながら叫ぶー

”するの”
黒い霧のようなものに包まれた
”1年生の時にいじめられていた少女”が
美津子の方に近寄って来るー

”--おばあちゃんと同じように、
 首を吊って、あんたは、死ぬの”

そしてー
少女は、美津子の中に吸い込まれていくー

「ひぅっ…!?」
美津子の身体が震える。

「ふふふふふふ…♡
 うち…死んじゃう」

乗っ取られた美津子は笑いながら言う。

服を引きちぎるようにして破りながら、
裸になる美津子ー
森の中で裸になった美津子は
クスクスと笑うー

「わたしがトイレでひとり、エッチなことをしてるって
 嘘の噂…あれもつらかったなぁ…」
美津子が笑いながら言うー

”や、、やめて…うちは、、そんなつもりじゃなかったの!
 ただ、ただ、ちょっと、ちょっと、面白いことがしたくて!”
乗っ取られた美津子本人が心の中で叫ぶー。

「ふ~ん」
美津子が呟く。

「--あんたも、”ごめんなさい”の一言も言えないんだね」
失望した様子で、乗っ取られた美津子は呟く。

”ひっ…ご、、ごめんなさい!ごめんなさい!”
美津子が叫ぶー

「--もう、遅いよ。 
 わたしも、ちょっと面白いことがしたくなっちゃった」
裸の美津子が、近くの木を見つめるー

そこにはー
予め首を吊るための準備が出来ていたー

「--ふふ…美津子…
 おばあちゃんはね、苦しんで死んだの。
 自宅で首を吊ってね。

 おばあちゃんがどんなに苦しかったか、わかる?」

美津子の口で呟く少女。
そのままクスクスと笑いながら、
木のほうに向かっていくー

”やめて…!うち、なんでもするから!許して!”
心の中で泣き叫ぶ美津子ー

美津子はーー
修学旅行中に入ったあの店がーー
”2年前に自殺したクラスメイトの実家のお店”で
あることを悟るー

あのお店にいたのはー
死んだ、いじめを受けていた少女の
死んだおばあちゃんー

これはーー
あの子の、復讐ー?

”やめて…お願い……うち、死にたくない…”

「---あっそ」
美津子の口から吐き出されるのは冷たい言葉…

そして、少女に乗っ取られた美津子は、
そのまま、木に引っかかったロープで…
首を吊り始めた。

「--ばいばい」
にっこりと笑う美津子ー

少女が美津子から出ていくー

「はぅっ…う…」
じたばたともがく美津子ー

けれど、もうどうすることもできないー

「あぁ…うあ…あ…」

美津子は必死に視線を泳がせるー。

首を吊っている美津子
笑いながら見つめる少女ー

美津子は、全部思い出したー

美津子にとって”どうでもいいこと”で、
すっかり忘れていたー
2年前の1年生のときに、
自殺した同級生のことなんてー。

「あの世で好きなだけ噂してなよ…ふふ」
それだけ言うと、少女は立ち去ったー。

美津子はそのまま…
無残な姿を森の中に晒すことになってしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「--美津子ちゃんもいなくなっちゃった…」
大人しい瑠香が言う。

「---はぁ…はぁ…」
憑依されてゾンビのようになった菜緒に噛まれた
優等生の早緒莉が血の出ている場所を
苦しそうに抑えているー。

「---……」
真面目な千尋が、周囲を警戒しているー

”ねぇ、みんな”
薄暗い森の空から、声が響き渡るー。

”美津子ちゃんは、死んだよ”
クスクスと笑う少女ー

「----え…」
優等生の早緒莉が唖然とする。

「---ど、、どういうこと…」
大人しい瑠香も震える。

”あんたたち…
 わたしに何か言うことはない?”

”わたしのこと、思い出さない?”

漆黒の森から、少女の声だけが
響き渡るー。

「---…」
優等生の早緒莉はスマホの時計を見るー

14:45のままー

「ここはどこなの!」
早緒莉が叫ぶー。

”ふふふ…
 そうね…わたしにとって、
 最後の思い出の場所…”

少女が笑うー。

この場所は、おばあちゃんの死に絶望し、
そのあと、ある生徒の”決定的な裏切り”に
絶望した少女が、自ら命を絶った場所ー

少女は、すべてに絶望し、森に足を踏み入れて
自ら命を絶ったー。

この場所は、その森を模した異空間ー。
少女が死んでから2年間で蓄えた怨念によって
作り上げた、漆黒の森ー。

森がずっと薄暗いのはー
少女の暗い感情が、影響しているー。

”次は、あんたの番よ”
少女が笑うー

森がざわめき始めるー。

「---瑠香!千尋!」
優等生の早緒莉が瑠香と千尋を呼ぶー

さっきと同じー
美津子がはぐれた時とー

早緒莉の提案で、三人は近寄って手をつなぐー。
はぐれるのはまずいー。

しかしー
いつの間にかーーー

「--!?」
早緒莉の横にいたはずの瑠香がいないー。

「--瑠香!?瑠香!?」

そこに残っていたのは、早緒莉と千尋だけー。

「--こ、、今度は瑠香が…!」
早緒莉が絶望の表情を浮かべるー

早く、この森から逃げ出さないといけないー

”何を勘違いしてるの?”
森の中から声が響き渡るー

”はぐれたのは、瑠香ちゃんじゃない…”

「--!?」

”次は、あなたの番よ…”

森の中の少女はクスクスと笑ったー

③へ続く

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第2話でした~!
次回が最終回になります~!

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