とある森に迷い込んでしまった女子高生ー。
不気味な笑い声が、
森の中に響き渡る…
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修学旅行2日目ー
賑わう高校生たちが、
グループ行動を開始するー。
女子高生のグループが、
自由行動で、普段見慣れない街並みを見て
楽しそうにしていたー
「あ!!!面白そうなお店~!」
リーダー格の女子・菜緒が笑いながら
お店に入っていく。
そのお店は、キラキラ輝く飾りを
売っているお店だったー。
「いらっしゃい」
おばあさんがほほ笑む。
「---も~!菜緒ってば~!」
面白そうなお店を見つけては
すぐに飛び込んでしまう菜緒に対して
優等生・早緒莉が苦笑いしながら
ついてくる。
「--あんまり寄り道してると、
うちら、集合時間に間に合わなくなるよ~!!!」
噂好きの美津子(みつこ)が、店の入り口のほうから
そう言いながら、店内に入ってくる。
「---」
大人しい女子生徒・瑠香(るか)も
後から店に入ってくるー。
♪~~~~
お店の中に風鈴のような音が響き渡るー
「---?」
不思議な音色ー。
「あれ?」
菜緒が気付く。
いつの間にか、店主のおばあちゃんが
いなくなっていることにー。
「--さっきまで、お店のおばあちゃんいたよね?」
菜緒が言うと、
優等生・早緒莉が、「どこ行っちゃったんだろう…?」
と不思議そうに呟いたー。
風鈴のような音がさらに大きくなるー
店の入り口が、突然大きな音を立てて閉まるー。
「え!?な、、なに…?」
♪~~~~~~~
風鈴のような音がさらに大きくなるー
「えっ!?!?」
おかしいー
女子たちがそう感じた直後ー
霧のようなものが現れて、
全員、気を失ってしまったー
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
「----……うっ…」
菜緒が目を覚ますーー
目を覚ましたのは、
さっきの、飾り物を売っているお店だった。
「-みんな、大丈夫…?」
菜緒が、倒れている4人のクラスメイトを見つめるー。
「---あ…」
大人しい瑠香が、目を覚ます。
他の3人も続々と意識を取り戻す。
お店に入った途端、風鈴のような音が聞こえ始めて
店主のおばあちゃんが急に姿を消してー
扉が勝手にしまったと思ったら、
最後には霧のようなものが出てきて意識を失ったー
いったい、何が…?
「あ、やばっ!?」
菜緒が時計を見るー
だがー
14:45-。
特に時間は進んでいなかったー。
「-ふ~、集合時間に間に合う~」
修学旅行2日目の自由行動は
15:00までで、15:10には指定地点に
集合するように言われているー。
「--…そろそろ集合場所に向かいましょ?」
優等生・早緒莉が言うと、
菜緒も頷いた。
お店の入り口の扉を開けるとーーー
「---え…」
外に広がっていたのはー
さっきまで菜緒たちがいた街ではなくーー
薄暗い、不気味な森が広がっていた。
「--えっ!?!?」
菜緒が驚く。
「--わぁ~すっご~い」
噂好きの美津子が笑いながら言うー。
店の外はーー
不気味な薄暗い森になっていたー
「--ちょ!?」
菜緒が慌てて店から飛び出して、店の
周囲を見渡すー
あたり一面、森ー。
「--ど、どういうこと!?」
菜緒が戸惑った様子で叫ぶー。
「--え、これって、もしかして、
なんか、あの、異世界に飛ばされちゃった的な?」
菜緒は、笑っているー
こういう、あり得ない展開が、菜緒は大好きだからだー。
「--笑ってる場合じゃないでしょ」
クラスメイトの千尋(ちひろ)が、そう言いながらスマホを取り出すー。
ボロボロにひび割れたスマホを操作しながら、
千尋が「え…」と唖然としているー。
千尋のスマホは”圏外”となっていたー
「ちょ…わたしも!?」
「うちも!?」
他の女子たちも驚くー。
スマホが全員”圏外”になっていて
位置情報を調べることができない。
「どういうこと…?」
菜緒は不安そうにしながらも
”と、とりあえず、森の出口を探そう!”と
能天気に呟いたー。
5人の女子が、森の中を散策するー。
八嶋 菜緒(やしま なお)
班のリーダー的存在で、いつも活発な
ショートヘアー女子。
堀本 早緒莉(ほりもと さおり)
みんなのお姉さん的存在で、優しい性格ー
成績3位の優等生。
市山 美津子(いちやま みつこ)
噂好きの女子生徒ー。
松川 千尋(まつかわ ちひろ)
とにかく真面目な女子高校生ー。
真面目すぎて、融通が利かない一面も。
永井 瑠香(ながい るか)
大人しい性格の女子生徒。
正反対の性格の菜緒とはなぜか仲良し。
5人は、10分以上森の中を歩き回ったものの、
森の出口は見当たらないー
どこに進んでも、同じような光景が
広がり続けているー。
「---……ねぇ、さっきから同じ場所ばかり歩いてない?」
菜緒が言うと、
優等生の早緒莉が「わたしもそう思う…」と不安そうに呟く。
瑠香、千尋、美津子も不安そうにしている。
”---ふふふふふふふふふ”
ー!?
突然、森の中に少女の笑い声が響き渡るー。
”--ふふふふ…
あははははは…
ふふふふふふふふふふ…”
「--だ、、誰!?」
菜緒が叫ぶー。
薄暗い空から聞こえて来る、
不気味な笑い声ー。
”わたしの森へようこそ”
少女が笑いながら言う。
「--だ、、誰なの!?
こ、ここはいったい!?」
優等生・早緒莉が叫ぶと、
謎の少女は笑ったー
”漆黒の森ー、
とでも言っておこうかな…ふふふ”
答えになっていない。
「--ど、、どこにいるのよ!?
姿を見せなさい!」
菜緒が少しパニックに陥りながら叫ぶー。
森の木々が不気味に揺れるー
”姿ー?”
少女の声が歪んだー。
そしてー
木々がさらに激しく揺れるとー
黒い光のようなものが、空から落ちてきてー
それが、菜緒に直撃したー
「ひぅっ!?!?」
ビクンと震える菜緒。
「--な、、菜緒!?」
噂好きの美津子が叫ぶ。
「-------」
菜緒が、ビクンビクン震えながら
目をぐるんぐるんと回転させているー
「ちょ!?!?菜緒!?大丈夫!?」
早緒莉が駆け寄る。
心配そうに千尋と瑠香も菜緒の方を見つめる。
「---あぅ…あ…あ…」
菜緒が苦しそうに身体を震わせながらー
早緒莉の方を見つめるー
そしてー
「シャアアアアアア!」
突然、菜緒が奇声を上げて、ゾンビのように
早緒莉にかみついた。
「--いたっ!?何するの!?」
早緒莉が菜緒を振り払う。
菜緒がよたよたとふらつきながら倒れるー。
「…うっ」
早緒莉が、手首から血が出ていることに気がつき、
止血しながら菜緒の方を見る。
起き上がった菜緒は、
再びよろよろと歩き出すー。
”この森にはね…
怨念がさまよってるの。
菜緒ちゃんには、その怨念を憑依させたー。
怨念に乗っ取られた菜緒ちゃんはー
あんたたちに襲い掛かるだけの
そうね…”ゾンビ”と化したの”
森の少女が笑うー
相変わらず声しか聞こえてこないー
「--ゾンビ……」
噛まれた早緒莉が唖然とするー。
”何か”を思い出しそうになりながらー。
「--ちょ、う、、うちだよ!美津子だよ!
菜緒!しっかりして!」
噂好きの美津子が、菜緒に向かって叫ぶ。
だがー
怨念に完全に乗っ取られてしまった菜緒は
「うあぁ~~」と言いながら涎を垂れ流して
美津子の方に向かってくるー
「--に、、逃げよう!」
真面目な千尋が叫ぶ。
大人しい瑠香も既に後ずさっているー。
”ふふふふふふふふ…
逃げなさいー
この森から無事に出ることができたらー
見逃してあげるー”
森の少女の声はクスクスと低い声で笑い始めたー
・・・・・・・・・・・・・・
薄暗い森の中を逃げまどう4人ー
噛まれた早緒莉の顔色が良くないー。
「大丈夫?」
大人しい瑠香が不安そうに尋ねる。
「うん…」
早緒莉が、少しだけ笑みを浮かべながら言うー
”噛まれるとゾンビになる”
そんな映画か何かを昔、見た気がする。
まさか、わたしも…?
早緒莉はそんな風に思いながらも、
他の3人と共に走るー。
”ねぇ、何か思い出さないー?”
森の少女が笑うー。
「--ど、、どういうこと!?」
噂好きの美津子が、少女の声がする薄暗い空に
向かって叫ぶー
”あんたたち4人の罪…”
「-え?」
大人しい女子・瑠香が不安そうな表情を浮かべる。
”---わたしに、何か言うことはない?”
森の少女が笑うー。
逃げていた4人の女子は
顔を見合わせるー
しかし、思い当たることはない。
”そっか、そっか。
罪を犯した側は、覚えてないよね”
薄暗い空から、不気味な声が聞こえるー。
”だったらーー
思い出させてあげるー”
少女は、憎しみのこもった声で
そう呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うあ…あ…」
菜緒がよたよたと歩くー
ゾンビのようにー
怨念に憑依された菜緒は
”意識”を残されたまま、
完全に支配されていたー。
「あ…あ…」
”ねぇ…覚えてる?”
薄暗い森から少女の声が聞こえるー。
”わたしを、ゾンビ扱いしたこと”
森から聞こえる声ーー
「---あ…う…」
菜緒は”ゾンビ扱い”の言葉を聞いて、
遠い過去の記憶を思いだしそうになるー
身体は自由に動かない。
涎を垂らしながら、無様にゾンビのように
歩き続けているー
自分が、どこに向かっているのかもわからない。
他の4人は、無事だろうかー。
菜緒の身体がよたよたと、森の中のベンチのほうに向かうー
そこには、不自然に、殺虫剤が大量に置かれていたー。
「----あ…う」
菜緒は、その近くまで歩いていくー
”----!!!”
菜緒は、思い出したー
ゾンビー
殺虫剤ー
そして、この声ーーーー
1年生のときーー
わたしはーーー
菜緒は、自由にならない身体を
なんとか取り戻そうと心の中で暴れるー
けれどー
”ゾンビは、消毒しなくちゃ”
薄暗い森から少女の声が聞こえるー
「ゾンビはーー消毒しなくちゃ」
1年生のときーーー
菜緒はーー
とある生徒を”ゾンビ扱い”して、
からかっていたー
そして、
ある時、菜緒は、その子に向かって
”ゾンビは消毒しなくちゃ”と笑いながら
殺虫剤をかけたーー
その子は、1年生のときの秋にーーーー
「うあ…えへ…へ…」
乗っ取られたままの菜緒は、森の中のベンチに
置かれた殺虫剤を手にして笑う。
そして、口を開いて、ノズルを自分の口の中に突っ込む。
「わたし…ゾンビだから…消毒しなくちゃ」
菜緒の口が勝手に動く。
やめて!やめて!助けて!と菜緒は心の中で叫ぶー
”---復讐”
薄暗い森に少女の声が響き渡るー
”あんたたちに、かつてわたしにしたことと、
同じ目に遭わせてやるー”
薄暗い森の中に潜む少女が、笑うー。
乗っ取られたままの菜緒は、口の中に
殺虫剤を次から次へと吹きかけていくー
喉に激痛が走るー
身体がおかしくなるー
それでも菜緒は笑いながら
殺虫剤を次から次へと口に突っ込んで
躊躇なく、それを吹きかけるー
それを続けてー
菜緒はあおむけに倒れてピクピクと痙攣するー
”わたしのこと、思い出してくれた?”
薄暗い森から、少女の声が聞こえるー
「あ………」
菜緒は、痙攣しながら、
”少女”のことを思い出すー
けれどもー
もう、手遅れー。
菜緒はそのまま動かなくなってしまうー
2年前ー
1年生の頃、わたしは、死んだー。
”いじめ”を受けてー。
嫌がらせに疲れ果てたわたしはーー
自ら命を絶ったー。
この森はーーー
わたしが命を絶った森を模した森ー。
あなたたちに復讐するために、
わたしが作り出した、怨念の森ー。
ここでー
わたしはあんたたちに復讐するー
わたしにしたことを、
その身体で、実演させてーーーーーー
漆黒の森に潜む少女は、静かにほほ笑んだー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・
コメント
このお話は、一度お蔵入り
(ネタは浮かんでいるけど、書かなくてもいいかな…という感じ)
だったのですが、
元々書く予定だったお話が、
色々な都合でダメになったので、
このネタを書くことになりました~!
続きは明日デス~
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